弾幕ごっこやスペルカードのルールなどがある程度決まり、落ち着いてくると神楽は前々から考えていた新しい家を建てることを決めた。場所は何処がいいのか、何処が適しているのかなどと考えながら卵屋の営業時間の合間を縫って幻想郷を散策していた。そんなある日の事だった。朝早くから出掛け、帰るついでに卵をとろうと鶏舎に立ち寄ると小さな子供が倒れているのを見つけた。
「ん?誰だろ。」
彼は不審に思って近づいてみると倒れている子供は金髪の少女だった。
「金髪?だとすればアリスか紫かルーミアの子供か?ハハハッ。」
彼はこの少女をどうするかに困った。この鶏舎の近くにいれば妖怪が近寄って来る事は無いのでそのまま放置をしておこうと思ったがこのままだと衰弱してしまうかもしれない上、起きて何処かへ行ってしまった場合は妖怪に襲われてしまうからである。だからと言って保護して関わりすぎるのもなどと思っていると彼女は目を覚ました。
「ふにゅう……私は一体……?」
彼女は目を覚ますと目の前には青い髪をした妖怪がいた事に気がついた。
「はわわわわわ。」
彼女は顔を青くしてガクガクと震え始めた。それに気づいた彼は少し考えてから鶏舎の中にある加工した肉を炙って彼女に渡した。肉を受け取った彼女は暫く肉を睨みつけていたが、肉の香ばしい匂いを嗅いでいるとお腹がなり、夢中で頬張った。彼女が気づいた時にはもう肉はほとんど無くなっていて恐る恐る肉を渡してくれた本人の方を向いた。彼はかごの中に卵を丁寧に入れていた。
「あ、あ、ああああの!!」
彼女は思い切って彼に話しかけた。
「ん?」
すると彼はちょうど卵を入れ終わり彼女の方へ向いた。
「ええっと……その……ありがとう。」
「ん?あぁ、どういたしまして。」
彼は彼女の持っていた骨を取り上げると粉々に砕き、餌箱の中に入れた。
「ねぇ、どうして骨をあの中に入れたの?」
「え?それは骨は人間や妖怪に関わらず体を作るんだ。それはきちんと摂らないと骨が弱くなったりするからこれで補ってるんだよ。」
「へぇ……。」
彼女は彼の言葉に興味を抱き何度もふんふんと頷いた。
「それにしても君はどうしてここに?ひょっとして迷子?」
「迷子じゃないもん!」
彼の発言に彼女は怒り叫んだ。静かな森に彼女の声だけが響いた。
「だったらどうしてここに?」
「私はね
魔法使いになりに来たの。」
「は?魔法使いに?」
彼女のいきなりの申し出に彼は間抜けな声を出した。
「うん、魔法使いになるの。」
「またどうしてなりたいのかは知らないけど、そう簡単になれるもんじゃないよ?」
「それでもなりたいの!」
「考えてる程生半可なものじゃないんだよ?」
「それでもなるの!なりたいの!!」
彼は頑固で引かない姿勢に少しの間迷った末にこう言った。
「じゃあどうやってなるんだ?」
「え?」
「どうやって魔法使いになるつもりなんだ?」
「え?」
「魔道書は?誰かの弟子にでもなるのか?」
「そ、それは……。」
「元がゼロなのに何か出来ると思ってんの?」
「で、でも私は……。」
彼のもっともな事に彼女は俯いて泣きそうになってしまった。彼はそんな様子を見て立ち上がり
「魔法使いになりたければついて来い。」
と言って森の奥へと進んでいった。
「えっ……?」
彼女はその後ろをとことこと歩いて行った。
十数分間歩き続けると木々の間から一つの建物が見えてきた。とても風情のある木造建築の家だった。神楽はその家のドアにコンコンとノックした。すると男性の声が聞こえ、彼ははその建物に入って行った。その建物の中には様々な物ではいっぱいだった。本や彫刻、装飾品などが主に多くあった。少女が建物のドアを閉め終わる頃には建物の奥から銀髪の男性がやって来た。
「おはよう神楽君。どうしたんだい?そんな可愛らしい少女を店に連れ込んで。」
銀髪の男性は神楽にそう問いかけた。
「おはようございます森近さん。誤解を招くような事言わないでよ。」
彼は森近と呼んだ男性に笑いながらそう答えた。
「それでこんな朝から来るなんて何か要件があるんじゃないのかい?」
「そうなんですよ。実はこの子が魔法使いになりたいって言って聞かなくて連れてきたんです。」
神楽は森近にそう説明すると彼は彼女の事をまじまじと見つめてから言った。
「もしかしてこの子は霧雨家のご氏族かな?」
「霧雨家?」
神楽は不思議そうに問いかけ直したが彼女はその名を聞いてはっとした。
「うん。まぁ、ちょっとだけ僕と縁があるだけなんだけどね。まさかここで再び巡り会うなんて思ってなかったなぁ……。」
森近は顎に手を当ててこう一人呟く様に言った。
「それでこの子を連れてきて僕に何をさせるつもりだい?」
「いやこの子の面倒をみてあげてよ。」
「え?いきなり君は何を言い出すんだい?」
神楽はそう言い出すと森近は少し驚いた様子でこう言った。
「別に大層な事じゃないと思うんだけどなぁ。」
「そう思うのは君だけじゃないかなぁ?」
神楽の返答に森近は苦笑いを浮かべた。
「でもこの子は魔法使いになりたいんじゃなかったんじゃ?」
「その為に魔道書を提供してあげてほしいんだ。僕とかアリスとかが一から面倒を見るよりは彼女一人でしっかりと頑張らせた方がいいと思うんだ。」
「なんだかお父さんみたいだね。」
「その役を森近さんに任せたいんだよ。」
神楽の言葉に、違う種類の笑みを浮かべそう言った。
「い、いやでも……いくら君の頼みとはいえ無償にとh「これまでのツケを全部無しでいいからさ。」いいのかい?」
森近が驚くのも無理はない。店を経営していけてるのは彼の援助のお蔭な上にたまに無縁塚へ物の収集も神楽が手伝っている事も多々あるからだ。ツケの料金は膨れ上がり今では莫大な量となっているのだ。
「別に大した事じゃないと思うんだけどなぁ。どうせ返してくれないんだろうから有効活用したいし。」
「まぁ、君は物凄く儲けているのに半分も使ってないだろうからね。」
「失礼な、半分は使ってるよ。」
「まぁ、それはそうとして彼女を引き取るんだっけ?その条件なら喜んで引き受けるよ。」
「それじゃあ頼んだよ。これから仕事だから飛んで戻んないと。」
そう言って彼は扉に手をかけようとした。すると金髪の少女から服を引っ張られてるのに気がついて振り向いた。
「あ、あ、ああの……ありがとう……。」
服を持つ手を震わせながらそう答えた。彼は頬を若干釣り上げて言った。
「君がきちんと努力してひたむきに頑張ればいつかは目標は叶う。大人になっても頑張り続けてたならいつか君に御褒美をあげるから。」
「本当に?」
その言葉を聞いて彼女は目を光らせながら目線を上げた。
「あぁ。それじゃあ元気で頑張れよ。」
彼はそう告げると外に置いてあった卵が入った籠を持って人里へと向かった。
「あれ?神楽今日は朝から機嫌いいね。」
「ふぁ〜、ん、そう?気のせいじゃ?」
彼は店番をしている最中に鈴仙からそんな事を言われた。彼には思い当たる節が無かったのでそう簡単に返した。
因みに後日完成した彼の新築は無縁塚と呼ばれる所を少し人里から反対方向に歩いたところに建てられた。三階建てで彼曰く「本がいっぱい入る。」との事だった。
満員電車はもういいよ……因みに補足ですが神楽の家は
人里 無縁塚 新築
的な位置にあると思ってて下さい。それでは皆さん夏休みゆっくり出来るように頑張ってください。僕はもっとゆっくりしたかった……え?ゆっくりしすぎ?ナンノコトカナー
神楽「茶番乙。」
うっさい!それでは最後まで読んでくれてありがとうございます。感想、アドバイス、批評など常時受け付けています。