嫌な予感がする……
私はそう思いながら再びあの部屋の前へと足を運んでいた。フランとあの男がこの部屋に入ったと聞いてから早一週間が経とうとしていた。耳を扉に当てると今でも戦う音が微かに聞こえる。信じ難いがまだ二人は戦っているという事だ。中は一体どうなっているのだろうか……それだけが気掛かりで最近ろくに寝れていない。
「お嬢様……。またここにいらしていたのですね。」
私はその声がする方を見ると私の従順なメイドがイスと紅茶を用意していた。
「咲夜……勿論気になるわよ。」
私は彼女の用意したイスに座り、紅茶に口をつけた。口の中に広がる香りも不安などの感情でかき消してしまっていた。
「何時まで続くのかしらね……。」
「きっとその内終わりますよ。」
「……そうね。それじゃあ部屋に戻りましょう。」
私はそう言って立ち上がると目の前の扉がバン!という鈍い音が極静かにだが聞こえた。私の彼女は今まで無かった異音が気になって扉に耳を当てた。
助けて
私達の耳は微かだが放たれたその言葉に息を呑んだ。咲夜は動けずにいたが私は妹の危険を感じ、全神経を手に注ぎ込み赤く大きな槍を作り出した。
「お嬢様!?落ち着いて下さい!!今行けばお嬢様の身にも危険が…………。」
「それが何よ!!!」
私は彼女にそう叫び返した。
これまで目を瞑ってきた自らの行いを改めるために
大好きな妹のためにも…………
妖力は最大限、スペルカードなんてくそくらえだ!
そして私は無我夢中で扉に向け槍を放ち
見事に貫通させた。
「フラン!!」
私は埃の中、宝石の様に輝く翼を持つ少女を見つけた。先程の槍のせいか崩れる壁や天井などから避けて外へと出た。
気がついた時は私とフランは同じベットで抱き合って寝ていた。
危ないところでした。
私が能力を使わなければ今頃二人共瓦礫の下敷きになっていたでしょう。
その後二人をベッドに寝かせた後あることに気がつきました。
「神楽様が……いない?」
私は気になって先程まで戦闘が行われていたであろう部屋……今になっては瓦礫の山になった場所へと向かいました。改めて見てみると不思議な光景でした。妹様と神楽様のぶつかり合いはとても激しい物だった筈です。妹様のぼろぼろの服や気を失うほどの力を使ったのならもっと壁が損傷していてもおかしくない程です。しかしそれはお嬢様が当てた槍の影響を受けた部分だけであってそれ以外は傷一つない様子でした。確かにパチュリー様は彼自身、結界を張りながら戦っていたと推測していたのでそれに間違いはないと思います。
しかし
あれだけ私達が手を焼いた妹様相手に高度な結界を張りながら満足に戦えたというのはとても驚きでした。
今の今まで忘れてましたが美鈴に何故いきなり彼を襲ったのかを聞いて置かなければなりませんね…………。
「お邪魔します。」
一方そのころ彼は大図書館に足を運んでいた。数歩歩くと奥の方から紫色の髪をした女性が歩み寄ってきていたのを彼は確認した。
「こんばんは、パチュリーさん。」
「……驚いた。魔法が消えたのを感じたから死んだかと思ったけどまさか生きて帰ってくるとはね。フランはどうしたの?」
彼女は近づいてくる彼に警戒心を持ちながらそう聞いてきた。
「さぁ?詳しい事はよく分かりませんが多分、咲夜さんに看病してもらいベットで寝てると思いますがね。」
彼は少し止まって思案した後にそんな様に言った。
「もういくつか聞いていいかしら?」
彼女は相変わらず疑念の思いを抱きながら次の様に質問した。
「はぁ、構いませんよ?」
彼は特に何も思わずノータイムで言った。
「貴方の方がこの紅魔館の中で一番強い。何故、レミィのあんな態度にされるがままで、しかも敬語なんて使っていたのかしら?」
彼は彼女の問いに目を少し開き、しばらく経ってから答えた。
「……考えた事無かったな。そういう態度されんのも初めてじゃなかったし、別に怒る程の物でも無かったし。………………まぁ強いて言うなら初対面の人には、まぁ今回は人じゃなかったけど礼儀正しく振る舞えって事かな。」
「そんな妖怪初めて見たわ……。今どき人間でもそういう奴は少ないんじゃないかしら。」
「まぁ僕はイレギュラーだからね……。」
「ふうん……それでもう一つ質問なのだけど。
あの不完全な魔法結界は何?」
彼女は彼を異色の存在だと再認識すると更に質問を続けた。
「んー?……あぁ、流石はプロよく分かってるね。」
「あれくらい歪なら少し齧ったくらいの魔法使いでも分かるんじゃないかしら?」
「そうかもね。それで聞きたいのはあんな不完全な魔法結界の作った理由?」
「えぇ、そうね。」
「それは簡単だよ。
フランドールには外へ出られない様に、レミリア嬢には中へ入れる様な結界を張ったんだよ。」
「…………何の為に?」
彼女は彼の真意を図りかねていた。
「それは問題の解決の為ってところかな。最初はそんな事するつもりじゃなかったんだけど、解決すればここら一帯の本を読めるかな……とまぁ思ったんだ。」
彼は何でもないかのように呆気なく事の次第を話した。
「そういう意図があって……。だとしても外側から開いて中からは開かない様にすればよかったんじゃ……あっ……。」
彼女の頭の中に疑問が解決しては出てくる状態である事を明らかにさせた。
「そう外から開いて中から開かないようにするにはそこまで難しいことじゃない、けれども」
「どちらも閉めて表裏の硬度を変えるとなると普通の術式では上手く行きにくい……って事ね?」
「正解。」
彼は正解を出されると微かにだが口を緩ませた。
「……そんな歪な術式をよく長い時間保ってられたわね……何者よ。」
「さぁ?しがない人里の卵屋だよ。」
彼女は驚きを通り越し呆れた声で聞いたが、そんな言葉も彼は何も答えることなくただただ自らの職業を告げただけだった。
「ふふふ……あははははは!!貴方面白いわね。気に入ったわ。この図書館の出入りを許可してあげる。」
「ありがとうございます。パチュリーさん。」
「貴方みたいな化物に敬語で話されると気味悪いわね。」
「まぁ、それも僕の良さという事で。」
「辞めなさい……。」
大きな図書館に二人の笑い声だけが微かに響いていた。
ふにふに
とほっぺをつつかれる感触を覚えた。別に不思議と嫌だった訳じゃなかったけれども私は目を開いた。
「んんっ……。」
私が目を開けるとそこには私と同じくらいの背丈程の女性とベットの中にいる事を認識できた。
「フ、フラン……。」
「お姉様……。」
「フラン……本当にごめんなさい。貴女にあんな事を…………フラン?」
「お姉様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
私は不安だった気持ち、安心できた気持ち、怖かった気持ち、嬉しい気持ち、様々な気持ちがグチャグチャになって、その気持ちを落ち着かせる為にお姉様へと抱き着いた。
「フ、フラン!!?」
いきなり抱き着かれたお姉様は困惑してて暫くの間だけ狼狽えてたけれども、泣き続けた私の背中をポンポンと優しく叩いて抱き締め続けてくれた。
「怖かったよぉ……。寂しかったよぉ……。痛くて恐ろしかったよぉ…………。」
心から漏れでた悲痛が難しい言葉、表現もちろん無くそのままの状態ででてきた。
「大丈夫よフラン。私がついてるから。もうあんな狭いところから出て、お姉ちゃんと一緒に遊ぼう?」
「…………遊ぶのはもういい。」
「えっ?」
「遊びたく無い……。もう怖い思いをするのは嫌だから。」
「そ、それってどういう意味よ?」
「遊びたく無い……けど、一緒にいてくれない?」
私は少し前までの記憶にきつく蓋をしながらお姉様にお願いした。我侭かもしれない、図々しく感じるかもしれない。けれども今は決死の覚悟でお姉様と向き合う事が大切だって学んだ。
逃げちゃ駄目なんだ。正直な気持ちを皆に……
私はそっと目を開くとお姉様は泣いていた。
なんでか分からなかった。
でもお姉様は答えなかった。
私達は再び強く抱きしめ合い、笑みをこぼすと夢の世界へと誘われた。
彼の張った魔法結界ですが、歪さの説明は前の話の中からは壊れない様に、外からは入られない様にという描写で描いてみました。あとこれからも少し紅魔館での話は挟みますが、紅魔郷はこれにてお終いです。次は久しぶりにあの方を出してみようかと思っています。最後ではあまり活躍しなかったので閑話の主軸として器用したいと思います。
神楽「活躍するとは言わないんだな。」
それでは最後まで読んで下さってありがとうございます。最近、感想が増えてとても嬉しく、舞い上がっています。……まぁ自分のミスが取り上げられるというのは悲しいものでもありますが。感想、質問、批評……などなど常時お待ちしてます。
神楽(今のは逃げというより無視じゃんか……)