神楽「適当な物を出してるからだろ。」
適当な物にした訳じゃないんですよ?ちょっと想像力が足りないのでした。
神楽「バーカバーカ。」
はいバーカでーす!それはともとして本編へどうぞ。
「ついたけど……誰もいなそうかな。」
神楽はそっと両手に持っていた塔の様な重箱を置くとふぅ…と一息ついて延々と上ってきた階段を見下ろした。以前ここに来た時は跳んで来た時は数分で済んだが今回は物が物の為ゆっくり、そして慎重にとは言わないが歩いて来なくては行かなかった為、数十分程掛かってしまったのだ。
「この時間はいると思ったんだけど……関係無いのか……」
彼は妖夢が店に来る時間などから夕御飯後の時間を彼なりに算出してみたのだが宛が外れたとがっくりした。
「取り敢えず待つか……」
重箱を見ながら階段にもたれかかると彼は昔激戦を繰り広げたあの妖怪桜の方をちらりと見て彼女とのあった日を思い出した。
因みにだが、これは彼女達がこの場所を離れて僅か三十分弱の話だった。
「さあて、私はお茶の準備をしましょうかねぇ。」
帰ってきたものはいいけれど何もする事が無い。取り敢えず異変へと出かけて渇いてしまった喉を潤しましょうか。
お茶は確か……あの子があそこにしまっていた筈よね…あぁ、あったあった。
私はお茶の茶葉と湯呑みの用意をしてお湯を沸かして一息つく。あの子が出掛けている昼間にはよくある事だけどこんな夜中にするなんて初めてかしら?
それにしても妖夢にもきちんとした他人への興味が生まれてくれるなんてね。主としては他人にも目を配れる様になって成長したと思えるけれど主への思いが減ってしまう様に思われて複雑な気分ね。
…………ふぅ、やっぱりお茶はあの子が入れてくれた方が美味しいわね。
そう思っているとコツコツと静かに階段を上ってくる音が彼女の耳の中に響いてきた。
(あら……こんな時間に一体誰かしら?)
彼女は玄関へと一直線へ向かい、階段の見える位置へと移動した。
「ごめんください。誰かいますか?」
すると怪しい塔を積み重ねた青髪の男性がそこには立っていた。
「……貴方は、どうして?」
彼女は目を見開き彼を何度も何度も見返した。そしてそんな言葉を口にするのも当然であり、彼女の目にした男性は何百年と前にこの場から忽然と姿を消した命の恩人とも呼べるほどの者であったからだった。
「どうして?ですか……強いて言えば良い時期に異変が起きたから……というべきですかね。」
「あーぁ、そういう事。いつ頃からか貴方の行方を紫から聞かれなくなったからてっきりに話したのかと思ってたけれど、別にそういう訳では無いのね。」
彼女は彼の一言で全てを察し、面白可笑しそうな表情をした。
「ええ、そうなんです。そして今日ここへ来たのは貴女へお礼をする為だったんです。」
「お礼?」
「はい、これまで誰にも話さないでいてくれたのでしょう?貴女は約束を守って下さったので粗品……とは言い切りませんがつまらない物を受け取って下さい。」
彼は首を傾げる彼女へ重箱を一つ手に取って蓋を開けた。彼女は中に何が入っているかを理解すると彼の持ってきた全ての重箱に目をやり、キラキラとした表情を浮かべて彼を白玉楼へと招いた。
「んー!貴方の作る卵焼き美味しいわねぇー!しかもこんなに食べれるなんて……幸せだわぁー!!」
「お口に合って良かったです。こんなに作ってきて門前払いなんてされたらたまったものではありませんから。」
「心配の余地なしに美味しいじゃないのー!そうそう、この箱はどうすればいいかしら?」
「はい、この箱は元々僕の魔力で形成した物ですからまとめておいてくれれば僕が勝手に魔力として取り込みます。」
「あらそう?じゃあ遠慮なく食べるから足場が無くならないようにどんどん消していってくれる?」
「はい?えっ、あぁ…………」
彼は彼女の言葉の意味を咄嗟に理解出来ず辺りを見渡してみると最早彼女の姿は近くに無く、足元にはすっからかんになった黒い箱が落ちているだけだった。
「ふうっ……もうお腹いっぱいだわ。」
「こんな短時間で……貴女の為にこれ程までの大量生産しておいて良かったですよ。」
満足そうにお腹を擦る彼女に彼は溜息をついた。それもそのはず、積んできた大量の卵焼きは彼女の胃袋へと消えて重箱はすぐ様彼の魔力へと戻っていった。彼は十数分前の光景を信じられない様子でいる。
「終わりよければ全てよしって言うからね。お茶を用意してくれない?」
「まぁ、仰る通りですけれども。はいどうぞ。」
「ありがとう…………それで?私は下の方へあまり行かないから分からないけれどどういう感じなの?」
「どういう……と表現するのは難しいですね。取り敢えず起こしている異変は殆どありませんし、問題の関わりは少ない方ですよ。」
「起こしてない、関わりは無いって断言しないのね。」
「僕は十割の善行為を行っているとは言い切れない身ですから。出来ない事、やれない事はしませんよ。」
「あらそう?」
彼女は意地悪そうに微笑むと温かいお茶で喉を鳴らした。
「僕も僕ですが貴女も貴女ではありませんか?しれっと冬とか延長してましたが危ない事やってますよね?」
「あら、かよわい女の子を苛める気?」
「別にそんなつもりはありません……が」
彼は彼女の振る舞いに呆れを浮かべると後ろの襖が急に開き、一本の月に照らされている剣が彼の首筋へと一直線に延びてきた。彼はなるべく顔を向けずに目だけ動かして剣の所有者を見据えた。
白くそして短髪な少女が鋭い視線でこちらを睨んでいる
彼の視界にはそう映っているのだった。
鈴仙さんと霊夢さんの弾幕ごっこが終わった為帰ってきてみたらこんな事になっているなんて思いもよりませんでした。
きっと幽々子様は「妖夢お腹すいたぁ〜」と仰るだろうと思い早めに白玉楼へと戻っていてある意味正解でしたね。
彼からは明確な敵意を感じませんが……幽々子様はこんな人と仲がよろしかったでしたっけ?
それにしてもさっきから気になって仕方ないのが彼から発せられる身の毛のよだつ様な圧迫感というか威圧感のような物……幽々子様と話している時には感じなかった危なげな気配がしみじみと伝わってくる。
話し合いで事を進める方がいいのでしょう。万が一の事もありますし。
「斬れば……分かりますかね。」
私は彼へと剣を一旦自分の頭の上へと振り上げて勢い良く彼へと振り落としました。
「斬れば分かる……か。」
彼は苦痛で顔を引き攣らせながらただ静かに呟いた。彼にとってこの言葉には特別な意味を含んだ訳では無い。しかし彼にとってこの言葉は大した意味は無いと受け取っただけでそうでない者だっている。
それが彼の目の前に立っている少女。魂魄妖忌という彼の弟子とも言えた男性の子孫の一人であったのだった。
「ちょ、ちょっと妖夢!いきなりなんて事をしているの!?」
「えっ?あっ……」
彼女は主の声で周りへの意識を強めた。そんな彼女の目の前にいたのは片腕を深々と斬りつけられて血を流している一人の男性だった。彼は立ち上がるともう一方の腕で彼女の肩を掴み、顔を耳へと近づけてこう囁いた。
「どうだい僕を斬った感想は?何か分かったかい?」
「……っ!!!」
彼女はその言葉を聞いた途端背筋が凍り、冷汗をダラダラと流し始めた。生命を危機を感じ素早く彼と距離を取ろうとしたが彼女の肩を掴んだ腕はそれを許さなかった。
「んー?もしかして一太刀では理解に及ばなかったのかな。それじゃあもう一度斬りつけてみてもいいんだよ?」
「……へ?」
彼の手は彼女の肩から腕、そして剣を持つ手へとどんどん下へ移動していった。そして剣の先を自らの方へと向けて迷い無く彼自身の体へと刺していった。
「い、嫌ぁ……っ!止めて…止めて下さい!!」
ズブブブと体を貫き続ける音と肉を裂き続ける嫌な感触を彼女襲い、あまりの恐怖に彼女は涙混じりの叫び声をあげた。
「ゴホッ、うぅ……それで何か分かった?僕を斬った事で、今も斬り続けている事で。」
悪魔の囁き。というより地獄にいるような得体の知れない化物の言葉。彼女の価値観を揺るがす様な問い掛けではあったがそこまで思考を張り巡らす余裕も無く、彼女はその場で気を失ってしまった。
「地味に痛てぇ……自然と直るからっていい訳じゃないんだなやっぱり。」
彼は溜息をついて流した血を能力で一箇所に集めて魔力共に取り込んだ。
「えげつない事するのね……貴方は。」
「主として僕を止めても良かったんじゃないの?」
「辛うじて失神しないだけ褒めて欲しいわ……そんな余裕を私にだって持ち合わせて無いのだもの。」
彼女は一呼吸置いて血色を取り戻した。
「取り敢えず僕は今回は帰るとするよ。知らない間に異変も解決したみたいだからね。」
彼はそう言って部屋から出ると彼女は直ぐに立ち上がり、彼に小走りで近づいて後ろをついていった。
「あらそれは少し惜しいわね。こんな機会は滅多に無いし貴方との話は楽しかったから残念よ。」
「また時間が取れればまた何時か。紫によろしく……とは言わずそういう念を抱いて彼女と接して欲しいな。」
彼は階段の前で立ち止まり彼女の方へと向き手を振った。すると彼女は口元に手を当てた。
「ふふっ、何よそれ。それではまた会いましょう。」
「えぇ、また何時か。」
挨拶を終えて階段を降り始めると彼の肩をガッチリと掴む手が現れた。
「どうしたの……?」
「どうしたもこうしたもある訳無いじゃない…………っ!!」
彼が振り向くとそこにはゼイゼイと息を切らした八雲紫の姿がそこにはあった。
いやぁ……ついに対面ですよ対面。作者のやりたかった事の一つが消化出来ました。しかしこれは作者の書きたかった話の序章に過ぎないのです。
神楽「自分自身でも妄想力は誇れる物だとか言ってるもんな。」
いぇぁ、猪突妄心ですから。それでは最後まで読んで下さってありがとうございました。質問、感想、批評……等々常時お待ちしています。
Twitterとかで積極的に話しかけてくれてもええんやで……