神楽「仕方無いだろ、本当はもっと勉強すべきなんだからな」
そうなんですけどね……あーあアニメが溜まっちまうぜ。そういえばですがこの小説もUAがなんと五万回を突破!そしてお気に入り登録数も三百件!と驚きの嵐が巻き起こっています。
神楽「そういえばで片付けるのも問題ですが本当にありがとうございます」
目指せUA十万件!それでは本編の方へどうぞ
二人は特に決まった話題もなく話を始めていたので話の内容もコロコロと変わっていっていた。例えば紅霧、春雪、永夜などのそれぞれの異変中での過ごし方であったり、彼女の魔法使い友達の話や人里での様子などなど話題は多岐に渡った。
そして話は知らない間に思わぬ方向へと進んでいった。
「そう言えば神楽、次に人里でやる人形劇の内容を考えているのだけれど一緒に考えてくれないかしら?」
「人形劇の内容……ねぇ、何時もはどんなのをやってるんだっけ?」
「私が人里でやる時は大抵妖怪の討伐とか、要は勧善懲悪の物語よ。昔はそれでも良かったんだけど何となくマンネリ化しちゃって……新しいお題を提供してくれると助かるのだけど」
新しいお題かぁ……と彼は額に手を当てて数秒程思案する。暫くして額から手はどんどん下がっていき顎を弄りだした時、口を開いた。
「心中物とかかな?」
「心中物……?」
「そう、男女が家柄とか身分とかの影響で叶わぬ恋となってしまったから二人共自殺して死後の世界で仲良く的な感じの物語にするって感じの話だったと思う。」
「……少し気持ちの良い話とは言えないと思うのだけれど」
アリスは少し怪訝そうな顔で彼を見つめるが彼は心外そうな顔で彼女を見つめ返した。
「そうかな?個人的にはオススメなんだけれどなぁ」
「そんな話にどう薦める要素なんてあるのよ」
「叶わぬ恋に叶わぬ思い。死すら乗り越える様なそんな恋。羨ましい限りだ……」
「え…………」
神楽は少し楽しそうな、悲しそうな笑みを浮かべている。彼は彼自身の中に渦巻いた感情を押し込めようと落雁を口の中へと運んだ。
一方アリスはというと突然彼の心情がポロリの漏れ出したので驚きのあまり固まっている。
「まぁ、僕の好きな作品っていうのは人間らしさが色濃く出た物なんだよね。自分自身に重ねやすかったりしたし、主人公に感情移入がしやすかったりするからさ」
「は、はぁ」
「アリスにはそういう心に留めてる奴とか将来を共に遂げたい奴とかいるの?」
「…………はっ?」
彼女はそれを聞かれた途端、世界が静止した様に感じた。さっきまでは彼女自身が固まってしまったという感覚に陥ってしまったが今度は違う。
頭の中が真っ白になって何も考えられなくなってしまったのだ。
落ち着いて……落ち着いて……と心に何度も何度も言い聞かせるが彼の問いを思い浮かべるとその度に乱されてしまう。彼の問いはただ好きな人はいるのか?それだけである。それだけであるのに彼女の視界には何も映らなくなり感覚さえ無くなりつつあるのだ。他の人にはそう大袈裟に思われてしまうだろう。しかし、彼女はまさにその状態に陥っているのだ。
「あらまぁ、これは聞かない方が良かったかな」
彼女の様子に気がついた神楽は少し呆れ顔を浮かべている。
「それで何の話をしてたんだっけ……か。あぁ、脚本の話だったかそれなら…………」
次の朝、私が目を覚ました時には彼がいなくなっていた。
何時からいなくなったのか……そもそも何時から眠りについていたのかも早々に思い出せない。色々な世間話をして人形劇の脚本を一緒に書いてお茶を出したのはぼんやりとだが覚えている。取り敢えず朝の支度をしようとして起き上がると手元に一冊の薄い冊子を大事そうに抱えていたのに気がついた。何かと思いパラパラとめくるとそこには様々な人形の絵や吹き出しが描かれている。
「これは彼の物かしら……?」
忘れ物をしてしまったのか?と思って読み進めていくとどうやらこれは人形劇の台本らしき物であると分かった。
「あっ、そっか……確か一緒に考えたんだっけ」
朧気な記憶がはっきりとした色彩を放ち始めるほど再形成されるとふととある事も頭の中に浮かんできた。
「…………結局神楽に思いを伝える事も出来なかったのよね」
神楽が帰った後、もどかしい気持ちと自分に向けての苛立ちが彼女に募っていって、その後ソファーに横になりそのまま不貞寝をして、朝を迎えたという我ながら恥ずかしい事だ。はぁ……と深い溜息を吐きながら再びパラパラと何気なく台本をめくる。
「心中…………ねぇ」
台本の中の叶わぬ恋の物語は自分の抱える物に似たような思いを感じて彼女自身、何となくこの物語に愛着を持ち始めた。
そして数週間後、アリスは大きな持ち物を持って人里に来ていた。中身は勿論数体の人形と糸、そしてその他諸々の小道具である。久し振りに彼女の様子を見た大人子供関わらず彼女の元へと近づいていった。
「お姉ちゃん、もしかして今日は人形劇してくれるの?」
「えぇ、そうよ。今日は神楽が……人里の卵屋さんが考えた物語なの」
「あの方が考えた物語ですと……?さてさて一体どのような物語なのでしょうか、是非とも楽しみにさせて頂きます」
子供だけでは無く大人までもが期待を露にして彼女へと話しかける。アリスは微笑みながら広場へと向かい、様々な思いと共に歩みを進めて行った。
広場に着くと噂を聞きつけた人で何人も集まっていて、偶々寺子屋を休みでいた慧音や妹紅、その他にも色々な者達が集まっていたが彼女の探している男はいなかった。
(いない…………か、まぁ今日やるとは言ってなかったからなぁ)
「お姉ちゃんまだ始めないの?」
「い、いえもう始めるわ」
アリスは視覚から指先へと神経を研ぎ澄ますベクトルを変え、淡く、儚く、それでいて聞いてて胸に残るような強い声で言葉を紡ぎ始めた。
どんなに頑張っても報われない。
どんなに抗っても敵わない。
なので二人はとある決断を下しました。
報われないなら諦めればいい。敵わないなら戦わなければいい。
愛のカタチは一つでは無いのだから……
そしてある日からその二人を見た者は誰もいないと言います。妖怪に襲われたという者もいれば、地底の地で仲良く暮らしいているという話も聞き、詳細は不明です。
ただ、この事件が起きた次の新月の夜になると里の外れにある大きな沼の中から二人の亡霊が出てきて人を襲うという噂が流れているそうです。
「『この話は恐ろしくて誰にも言えないが、何かの縁だ。せめてこの本だけにでも収めておこう』とお爺さんはそう記し物語は終焉を迎えましたとさ」
アリスが一言そう締めくくると里の中からは拍手が巻き起こった。子供達の多くはその拍手に困惑をしていたが拍手を贈っていた大人達には次節一筋の雫が眼から流れている。芝居に熱が篭って精一杯演技し終えた彼女はほっと一息をついてから姿勢を改めて頭を深々と下げた。
芝居を終えてから彼女は暫くの間、数多くの賞賛の言葉や聞き手の心の声で祝福されていた。そして観客が次々と去っていき、アリスが道具の片付けをし始めると一人の男が彼女へと近づいていった。
「お疲れ様、この短時間でここまでの物を仕上げるとは相当頑張ったんじゃないの?」
「あ、神楽見ていたの?そりゃ確かにかなりの時間、練習してたから他人に見せられるくらいまでの出来になったわ。それでどうだった、貴方の思い描いていた世界を再現できたかしら?」
「……お見事しか言えないよ」
「そう…………ありがとう」
彼は必要以上の言葉を述べる事なくただ彼女へと拍手を送る。彼女は少し照れくさそうにしながら手早く片付けを行った。そして彼女は片付けを終えると彼の真ん前に向き合って口をゆっくりと開いた。
「神楽……あのね、私貴方にずっと言おうと思ってた事があったの」
「うん?何かな」
「あのね私……貴方の事がす、す、
好き……なのっ」
彼女の声は段々小さくなっていったのだが『好き』という部分だけははっきりとした物となり彼の耳まで届かせた。彼は彼女から放たれた言葉を聞いてから顎に手を当てて何を考えている。
「ありがとう。アリスがそう思ってくれて僕は嬉しいよ」
「…………っっつつううう!!」
神楽から発せられた声で一瞬の間でアリスの頬がを紅潮する。
が、次の言葉で彼女の心は氷点下まで下がった。
「でもねアリス。
その気持ちを僕に伝えて一体僕にどうして欲しいの?」
「…………え?」
「僕と付き合ってほしいの?僕と籍を入れてほしいの?僕の子供を産んでほしいの?僕に一体どうしてもらいたいの?」
「そ、それは…………」
彼にして欲しい事……そんな物漠然とし過ぎてて彼女の頭には浮かんでこなかった。好きだ、と言いたい。好きだ、と伝えたい。その一心で……その思いしか無かった為、彼女はそれ以上踏み込んだ事まで考える事が出来ていなかった。
「私は……」
「それがアリスの心の中で固まった時に、アリスの言葉できちんと説明できる様になった時に……
またその言葉を掛けてくれよ」
じゃ帰るわ、と彼は軽く手を振ると夕暮れが差し込む道を歩いて行った。
「私が神楽にして欲しい事……」
彼女はその場で立ち尽くしてそれだけを呟いている。
いつの日か絡まってしまった人形遣いの糸は依然として解けないままであった。
次は皆さんお待ちかねの花映塚です。花映塚ー?なんかあるのー?どうせ花の話でしょー?とお思いのそこの貴方!永夜抄をゆかりんの話にしたこの私が通ります!どんな話かなー?大した事は起こらないのかなー?等と色々な事を想像しながらお待ち下さい。
それでは最後まで読んで下さってありがとうございました。感想、質問、批評……などなど常時お待ちしています。