はい、レミリア戦です。
さてはて、紅霧異変も佳境を迎えました。
それでもまだまだ続きます。
それでは、本編をどうぞ。
「…広い!」
四季が紅魔館へ入ること早30分…
道に迷っていた。
「誰も居ないし!無駄に広いし!なんか紅いし!
誰だよ!こんな変な館つくったのは!」
長時間の疾走に数回の戦闘が重なり流石の四季も疲労が現れ、何やら若干口調も変わりつつあった。
「はぁ…ホントにこんな場所に霊夢達来てんのかよ?」
そう言いながらも四季は走るのをやめない…
「チッ…せめて何か手掛かりでもあれば…ん?」
すると少し先にある、大きな扉が眼についた。
「あの部屋…怪しいな…」
直ぐ様、その扉に近付いた四季は、警戒しながらも扉を開けた…
するとその先には…
「あら?博霊の巫女かと思ったのだけど…
貴方は誰かしら?」
玉座に座り、青い髪にピンクの服を着こなし…
そして紅い瞳に蝙蝠のような翼を生やした小さな女の子が居た。
「…へー…お前が噂の吸血鬼か?」
四季は質問に答えず逆に質問をしたが…
「あら?私が先に質問したのだけれど?」
そう言って女の子はその紅い瞳を四季に向けた。
しかし四季は…
「お前に教える義理も道理もないだろ?
吸血鬼」
そう、女の子を睨み付け言った。
「ふふ…私好みの答えね
気に入ったわ
今の無礼は許してあげる」
そう言って椅子から立ち上がる吸血鬼の少女。
「それで…今回はどの様な用事で来たのかしら?」
「…今、幻想郷を覆っている紅い霧…
それを発生させているのはお前か?」
そう言いながらも四季は吸血鬼の少女を睨むのをやめない…
「そんなこと聞いてどうするのかしら?」
そう言って吸血鬼の少女も紅い瞳を四季に向けたまま動かない…
「…あの紅い霧のせいで困っている奴がいる…」
そう言って四季は霊夢が飛び出る前に言っていた言葉を思い出した…
――――――――――――――――――――――
「洗濯物が乾きゃしないわ‼」
――――――――――――――――――――――
下らない理由だが困っているのには変わらない…
そんな事を考えながら四季は言葉を続け…
「だからお前が、もし紅い霧を発生させているのなら…
止める…」
そう四季は静かに言った。
それに対して吸血鬼の少女は…
「ふーん…なるほどね
そうね…紅い霧を発生させたのは私よ」
自らが、この『異変』の犯人だと告げた。
「なら話は早い…この紅い霧を消せ」
犯人だとわかるや否や、四季は怒鳴るように叫んだ。
そんな四季に対して吸血鬼の少女は静かに…
「いやよ
なんで私が人間ごときの言うことを聞かなければならないの?
それに、あの霧を消したら私が満足に外に出られないじゃない?」
そう言った…
そんな、少女の言葉に四季は…
「満足に出られない?」
そう、聞き返した。
「えぇ、そうよ
昼間は太陽がでてるでしょ?
吸血鬼である私は日光に当たると徐々に身体が気化してきて最終的には消えちゃうの
だから、昼間でも外に出られるように紅い霧で太陽を隠したのよ」
そう言う吸血鬼の少女は、どこか楽しそうだった。
そんな少女に苛立ちを覚え…
「下らないな…」
四季はそう呟いた…
「なんですって?
人間…もう一度言いなさい
ことと次第によっては、ただじゃ…!」
そこまで言った少女は四季の瞳に宿る憎しみを感じとり口をつぐんだ…
そして…
「あぁ…何度でも言ってやるよ…
下らないって言ったんだよ
吸血鬼‼」
四季は叫んだ。
今までの幸せを…
これからの人生を…
唯一の親友を…
全てを奪った元凶である吸血鬼を憎み…
今、目の前にいる吸血鬼が関係ないと知りながらも…
「お前ら吸血鬼は、いつも自分勝手に周りを振り回しやがって!
下らない発言するぐらいなら、さっさと霧を消せ!
このバケモノが‼」
叫ばずにはいられなかった…
「…!」
そんな四季の気迫に圧倒された吸血鬼の少女は、無意識に一歩下がってしまった…
「…はっ!」
そんな自分の無意識の行動に気が付き、吸血鬼の少女は自らの吸血鬼としてのプライドを傷付けた男を睨み返し…
「言ってくれるわね…
人間風情が‼」
そう叫び…
「私にたてついた事を後悔する時間さえ与えずに…
殺してあげるわ‼」
死刑宣告をした。
その瞬間、吸血鬼少女は空に浮かび窓から外に移動した…
四季はそんな吸血鬼の少女の行動に…
「外に来いってか…?
いいぜ、乗ってやるよ」
従い、四季も窓から外に飛び降りた。
「ふーん…あの高さから飛び降りても無事なんて…
あいつ本当に人間かしら…」
吸血鬼少女は四季が窓から飛び降りて外まで付いてきているのを確認しながら、そんな疑問を浮かべた…が…
「まぁ、何者だろうと関係ないわ…
私を怒らせたことを後悔させてやるわ!」
そう言って紅魔館から少し離れた森の広場まで飛んでいった…
数分後…
「あら?
人間の分際でよく此処まで付いてきたわね」
「ふん…お前に逃げられると厄介だからな」
森の中の広場で吸血鬼少女と四季は対峙していた。
「あら逃げるわけないじゃない?
私は貴方を殺したくてたまらないんだから」
そう言って再び空に浮かぶ吸血鬼少女に四季は…
「そうかよ
なら、最初からお前の館でもよかったんじゃないか?」
疑問をぶつけた。
それに対して吸血鬼少女は…
「私の大切な城を自分で壊すわけにはいかないでしょ?
だから、ここまで来たのよ
それにここだと邪魔は入らない」
そう言ってあるものを取り出した。
「スペルカード?」
「えぇ、そうよ」
そのあるものとは以前、魔理沙に教えてもらったスペルカードだった。
「弾幕の出せない俺と弾幕ごっこでもしようってのか?」
スペルカードは弾幕ごっこで使用するものだと聞いていた四季は、吸血鬼少女がなぜスペルカードを出したのか疑問に思った。
「あら?そんなわけないじゃない
貴方、馬鹿なのね」
「な…!」
そう口にし、上品に笑いだす吸血鬼少女…
「お馬鹿な貴方に教えてあげる
スペルカードは殺傷レベルを設定できるの
普通、弾幕ごっこでは、殺傷レベルを低く設定するんだけど…」
「チッ‼」
吸血鬼少女が言い終わる前に四季は彼女の考えに気付いたのか急いで森の中に身を隠す!
そして…
「貴方には特別に…殺傷レベル最大で使用してあげるわ‼」
そう言ってスペルカードを掲げた…
次の瞬間…
「天罰『スターオブダビデ』‼」
吸血鬼少女は自らのスペルカードの名を叫んだ!
その声にカードは反応するように光輝きだし…
白い光が吸血鬼少女を包み込んだ!
さらに、包み込んだ光から弾けるように四方八方へ大きめの光の弾が飛び、途中で停止した…。
「?」
四季が特にそれ以上何も起こらないことを疑問に思い、隠れていた木から顔を少し出した瞬間…!
「弾けなさい!」
吸血鬼少女が叫んだ!
それと同時に大きめの弾が分裂し、無数の小さな弾となり飛び散った!
「クッ‼」
それに驚き急いで顔を隠した四季だが…
「痛ッ‼」
あまりの弾の速さに少し反応が遅れ頬をカスってしまった…
「チッ‼これじゃあ近付けやしない…!」
そう呟いて四季はその場から動けずにいた…
だがその間にも小さな弾は周りの木々に当たり木を粉々にしていく。
四季は、此処に隠れ続けられるのも時間の問題だと思い…
森の奥へと走った…
そんな四季の姿を吸血鬼少女は空からしっかりと見ており…
「あら?大口叩いてた割には逃げるのね?
でも…」
そう呟き…
「逃がさないわよ‼」
追い掛けた‼
「チッ…!」
吸血鬼少女が放つ単発の弾幕から逃げながら、四季は吸血鬼少女に勝つための作戦を考えていた…
「あの弾幕が有る限り…俺が出ていった所で狙い撃ちにされる…
もし弾幕を避けられたとしても…アイツが空に居る限り俺の攻撃は当たらない…」
考えれば考えるほど自分が追い詰められているのを実感していく四季…
「『血刀』を作って投げ付けても良いが…弾幕に消されるか…避けられる可能性が高い…
それ以前にまだ手の内を明かしてはいけない…
唯一俺があの吸血鬼にとって有利な点は…
『俺の能力がバレていない』ってところにあるからな…」
この窮地の中の可能性を考える…
「考えろ…その『バレてない』ってところを生かせれば…!」
そして四季は…
「…多少は危険だが…
いや、アイツから『奪った』これが有れば上手くいくか…」
思い付く…
「さて…殺し合おうぜ!吸血鬼‼」
自らが勝つための唯一の方法を…
「…いつまで追いかけっこを続けるつもりかしら?
人間…」
四季が急に逃げるのを辞めたことを疑問に思いながらも吸血鬼少女は…
「ようやく私に殺される気になったのかしら?」
その高貴な姿勢を崩さずに聞いた…
「いや…お前みたいな吸血鬼に殺される気になんて、それこそ死んでもならねぇよ…」
そう言いながら四季は隠れていた木から現れた…
ちなみに現在地は、四季が円を描くように逃げていたため、最初にお互いが対峙した広場まで戻っていた。
「あら?じゃあなんで現れたのかしら?
もしかして…今さら謝って許してもらう気なのかしら?」
そう笑いながら言う吸血鬼少女に対して四季は…
「馬鹿言うなよ
お前なんかに謝るもんかよ
お子さま吸血鬼
お前は俺に殺されるんだからよ」
そう挑発しながら吸血鬼少女を睨んだ。
「まだ…そんなことが言えるなんてね…
いいわ、そこまで言うならお望み通り…
私が貴方を殺してあげるわ‼」
吸血鬼少女は、そう言うと同時に新たなスペルカードを出し…
「冥符『虹色の冥界』‼」
直ぐ様発動した‼
「…!」
今度の弾幕は、先ほどの丸い弾幕とは違い、無数の縦に細長い弾幕が左右からバラ撒くように射ち出され、さらには吸血鬼少女を守るように周りに広がる弾幕が放たれた。
(上手く…見切って…最小限の被害にしなければ…)
そう思いながら四季は弾幕を避けることに集中する。
右に左にと体を反らし、時には移動し、時にはしゃがみ…次々と弾幕を回避していく…
「やるわね」
そう言って吸血鬼少女は次のスペルカードを取り出した…
「さて…じゃあ次のはどうかしら?
呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』‼」
今度の弾幕は、周りにいきなり小さな無数の弾幕が重なるように現れて時間差で左右に動き始めた。
しかし、その数は先ほどのスペルカードより少なく四季は軽々と避けていた…が…
「よし…この程度ならさっきより楽に…」
グサッ‼
「ぐッ…!」
四季は右腕に激痛を感じ、視線を向ける…
そこには…
「ナイフ…だと…?」
銀のナイフが四季の右腕を貫いていた…
「ふふ…まずは右腕よ…」
そう呟く吸血鬼少女の手にはいつの間にか銀のナイフが握られていた…
「チッ‼」
四季は小さく舌打ちをして、直ぐ様右腕に刺さったナイフを抜き捨てる。
(……右腕が潰されたか…)
そう思いながらも迫り来る弾幕を次々と避けていく四季…
だが…
「次は右足…」
ヒュンッ‼
「…!」
グサッ‼
「ぐあぁッ‼」
その合間を縫って吸血鬼少女はナイフを四季目掛けて投げてくる…
「く…クソ…ッ‼」
そう言いながら、右足に刺さったナイフも抜き捨てた…
そして、また弾幕を避けようとするのだが…
(く…足を潰されたのは不味いな…)
右足の痛みのせいで足がまともに動かせず…
ボンッ‼バンッ‼
「ぐあッ‼」
避けられる筈の弾幕にも次第に当たりだした…
バンッ!バンッ!
「ぐッ!がッ!」
「ほらほら早く避けないと死んじゃうわよ!」
バンッ!
「く…」
なんとか痛みに耐えながらも立っていた四季だったのだが…
とうとう…
バタンッ‼
倒れてしまった…
そんな四季を見ながら吸血鬼少女は…
「大口叩いた癖には、もうボロボロね…
まぁ…人間にしてはもった方かしら…
それに…私もそれなりに楽しめたから最後のチャンスをあげるわ人間…
今、謝ればさっきまでの無礼…許してあげる」
そう言った。
四季にとっては、これ以上ないくらい有難い提案だろう…
なんせ、右腕に右足は銀のナイフで貫かれ今だに出血が止まっていない…
さらには、逃走中に当たった弾幕と避けきれずに直撃した弾幕のせいで四季の身体は火傷まみれだった。
それでも彼はふらふらと手をつきながら片足で立ち上がると…
「何度も言わすな…
俺は吸血鬼に謝罪する舌なんて…
持ち合わせていない…」
真っ直ぐと吸血鬼少女を見ながら言った…
そんな四季の姿に吸血鬼少女は…
(なんで…なんで…この人間は謝らないの?
謝れば殺さないって言ってるのよ?
死が怖くないの…?
いや…それより…なぜ、この人間の眼は…)
そこまで考え…
「わかったわ
なら貴方は死になさい!」
彼女はラストスペルを…
「神槍『スピア・ザ・グングニル』‼」
発動した…
「これで貴方の心臓を貫いてあげる!」
そう言い…
神槍を手に持ち、投げる体勢にはいる吸血鬼の少女は、男に最期の質問をした…
「最期に教えなさい…」
「あ?なんだよ…?」
「貴方は、なぜそんなに吸血鬼を憎むの?」
そう聞いた少女は、男の憎しみを宿した瞳を見ながら彼の言葉を待った…
「ふん…単純に吸血鬼が嫌いなだけだ…」
四季は、ぶっきらぼうに答えた…
「そう…」
男の答えを聞いた吸血鬼の少女は、力強く神槍を投げつけた!
その速度は、あまりにも速く一瞬で四季の元に向かって行った‼
ビュンッ‼
「ッ‼」
グサッ‼
「ぐはッ‼」
四季の身体の肉を突き破り心臓に神槍は食い込むが、勢いは止まらず…
そのまま後ろの大木に張り付けにされる…
「ふふ…なかなか面白かったわよ、人間」
吸血鬼少女はそう呟きながら、自らの神槍を回収するため四季に近付き…
ズボッ‼
身体から槍を引き抜いた…
そのとき…
「あぁ…」
引き抜いた反動で四季の身体から大量の血が飛び散った…
ゴクッ‼
吸血鬼の少女は男の血を見るや否や喉を鳴らし…
「なんて美味しそうな血なのかしら…」
そう呟いた。
「はぁ…せっかくだし…はぁ…はぁ…飲んで帰りましょう…はぁはぁ…」
血を見て若干興奮気味の吸血鬼少女は…
ペロッ
神槍に付着した男の血を…
「ん…ふぅ…ぺちゃ…くちゃ…はぁ…ペロッ…」
美味しそうに…
「はぁはぁ…んぐ…ん…ペロッ…にちゃ…」
舐めた…
「はぁ~♪なにこれ…ん…この人間の血…はぁ…
今まで飲んできた血の中で…んぐ…ぺちゃ…はぁ…
一番…ゴクンッ‼
…美味しいわ♪」
そう言った吸血鬼少女は酔ったよう顔が赤くなり、その焦点の揺らぐ視線を…
「…まだ飲みたい…」
自らが殺した男に向けた…
「どうせ…はぁ…だから…はぁはぁ…
直接飲んじゃいましょう♪」
四季の血があまりに美味しく、その虜となった彼女は彼に近付き…
「…いただきます♪」
その、首筋に自慢の牙を当てようとした…
…が…
「俺の血は…そんなに美味しいのか?」
「!?」
吸血鬼少女は突然の声に驚き反射的に大幅に距離をとった。
「え…?」
その目の前で…
「俺を殺した責任…とってもらうからな」
ニヤリと笑みを浮かべながら男は眼を覚ました!
「なッ‼貴方ッ‼
どうしてッ‼」
吸血鬼少女がいきなり息を吹き替えして目覚めた男を、問い詰めようとした、次の瞬間…
ブシュッ‼ブシュッ‼ブシュッ‼ブシュッ‼
肉を抉る嫌な音が周りに響いた…
「え…?あ…あぁ…?」
音と共に腹部に激痛を覚えた吸血鬼少女は、ゆっくりと…
「…ひ!」
自分の…
「嫌…」
身体を…
「痛い…」
見た…
「痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい‼」
少女が叫び、倒れ出す…
そんな彼女の腹からは、四季の作り出した無数の『血刀』が内側から突き破るように生えていた…
「…あ…ぐ…痛い…」
なんとか痛みを堪えようと我慢する吸血鬼少女だが…
「あぁッ‼…痛い痛いッ‼」
それでも叫ばずにはいられなかった…
そんな叫び声を聞きながら四季はよろよろと起き…
自身も限界に近いのか、木に凭れるようにして立ち上がった…
「ぐ…」
四季が立ち上がったのがわかると吸血鬼少女は顔を上げた…
「貴方…なんで生きて…」
「なんで生きてるのか…だろ?」
吸血鬼少女の言葉を遮るように四季は言葉を続ける…
「そんなの簡単だ…俺が心臓を突かれて死ぬ直前に…別の奴から『奪った』命…まぁ、生命エネルギーみたいな物を利用してギリギリ生き長らえた…
それだけだ」
『共融』…これが、四季のもう1つの混血としての能力。
この能力は別名…接触融合呪詛『蝕離』と呼ばれる。
『蝕離』とは、簡単に言うと臓器移植のようなものである。だが、ただの臓器移植とは違い四季の場合は、彼が触れた生き物の肉体を『奪い』自分の中で『還元』し、怪我した部分や紛失した部分を治すことや再生させることができる。
さらに、この能力は、命を『奪う』こともでき、その場合、自分が死ぬ時まではストックされ、死んだ時に新たな命として『還元』される。
簡単に言うと、命を『奪った』回数だけ生き返れるのだ。
ちなみに、今回、四季が心臓を突かれて死ななかったのは、妖怪の森でオークにとどめをさす際にオークの命を、この力で『奪って』ストックしといたため生き長らえる事が出来た(さらに、オークの命を奪う際に同時に肉体も少し『奪った』ため、あの時の傷はすぐに治っていたのだ)
(やはりあの時『奪って』おいて正解だったな)
そんな事を考え、四季は、今は亡きオークに少しばかりの感謝をする…。
「俺にはそういう能力がある…
まぁ、この世界に合わせて言うなら…
『他者から肉体を奪う程度の能力』って言えばいいのか?」
「な……」
吸血鬼少女はしばし唖然としていたが…
直ぐ様痛みで現実に戻され…
「く…それが…本当だとして…ぐっ…
じゃあ…私の身体から出ている…この…
赤いモノは何なのよ‼」
吸血鬼少女は痛みの原因のこの『血刀』について聞いてきた。
「それも俺の能力の1つだ
言うなら『自分の身体を自在に操れる程度の能力』
俺はその力を応用して、お前が飲んだ俺の血を高質化・変化させ刀のようにして、お前の体内から腹を突き破らせた」
四季のその答えを聞いて吸血鬼少女は、彼の今までの行動を振り返り…
「!まさか…貴方…ぐ!
…はぁ…さいしょ…から…」
「あぁ、俺は最初から…
お前に血を飲ませることが狙いだったんだよ
身体に血を付着させて、『血刀』を作るより…
体内に流した血から『血刀』を作った方が効果的だからな…」
「……く…」
男の作戦を理解した…
冷静に考えてみれば…おかしな点がいくつか見つかった…
まず、彼は逃げ回るのを急にやめると何も隠れる所のない広場で姿を現した…
次に、彼は吸血鬼少女に対し、さらに挑発し攻撃を誘った…
この2点だけでも充分におかしかったのだが…
なにより、「殺す」と宣言しておきながら男は、弾幕を消そうとはせず体捌きで避け、吸血鬼少女に一度も攻撃を仕掛けてこなかった…
この能力があるのなら、攻撃の為に血刀を投擲…
また、弾幕を防ぐ盾にも出来たのにも関わらずだ…
なのに、能力を使わなかったのは…吸血鬼少女に最後まで自分の能力を勘ぐらせないためであったと考えられる…
その3点を踏まえ上で吸血鬼少女は…
(……この人間…なんて切れ者よ…)
彼に恐怖を感じた…
自らを犠牲に勝利だけを望むその考えを…
人とは思えぬバケモノ染みた能力を…
吸血鬼を憎むその瞳を…
幼い吸血鬼の少女は恐怖したのだ…
そんな彼女に四季は…
「それじゃあ…お前…
動けないだろ?」
続けて…
「……この紅い霧を消せ…
そしたら…殺さずに見逃してやる…」
そう提案した。
「ふ…ふふ…」
しかし、吸血鬼の少女はこの四季の提案を…
「嫌よ…」
却下した。
自らの存在を誇りに思っている吸血鬼少女にとって、人間に恐怖を感じ…
しかも、今はその人間に命を握られている…
この状況は彼女にとって屈辱を感じられずにはいられなかった。
だからこそ彼女は…その誇りを失わないため…
自らの命より吸血鬼としてのプライドをとったのだ。
そんな彼女の力強い瞳を見た四季は…
「そうか…」
短く呟き、少し離れた場所にいる吸血鬼の少女に近付くため…
足を動かした…
ガサッ‼ゴソッ‼バッ‼
その瞬間、吸血鬼少女に向かって一匹の赤い眼を光らせた狼が草むらから飛び出した!
どうやら2人の血の臭いに釣られて現れたようだ…
「…ッ‼」
そんな狼に気が付いた四季だが…
吸血鬼の少女はこちらを真っ直ぐ見ているため、横から来る狼に気が付いていない…!
「…チッ‼」
四季は、声を上げ吸血鬼少女に避けるよう指示しようとするが…
「グオォォォォォッ‼」
狼の速度は思いの外速く…
「…クソッ‼」
四季は指示するのをやめて…
吸血鬼の少女の元へ、傷だらけの身体に鞭を打ち…
バッ‼
走った!
「…?」
吸血鬼少女はいきなり男が走り始めたことを疑問に思った。
するとその時…
「グヲォォォォォッ‼」
横から獣の咆哮が聞こえ、即座に振り向いた!
「…ッ‼」
しかし、そこには吸血鬼少女の首へ…
今まさに牙を突き立て喰い千切ろうと…
赤眼の狼が目の前まで走ってきていた!
「キャッ‼」
咄嗟に眼を瞑り…
自らに訪れる突然の死に絶望する吸血鬼の少女…
グシャッ‼
辺りに肉の潰される音が響く…
ブシャッ‼
周囲に充満する血の臭い…
ポタッポタッポタッ…
血の滴る音…
そんな中、吸血鬼の少女は、いくら待っても自分の首に狼の牙が突き立てられないことを不思議に思い…
「……ん…」
ゆっくりと…
「え…?」
眼を開けた…
「なん…で?」
そこには左腕を狼に喰い千切られた…
四季が立っていた…
「ぐ…!」
腕が喰い千切られた痛みに短い悲鳴を上げる四季…
その視線の先には四季の左腕をくわえた狼がいる…
「…大丈夫か?」
狼に視線を向けたまま…彼は吸血鬼の少女の安否を確認する…
しかし少女は四季の言葉に答えることはなく…
「な…何してるのよ!貴方は‼
なぜ…ぐは…はぁはぁ…私を助けたのよ‼」
四季の血刀に貫かれていて痛む腹を抑え…
片膝をつきながら叫んだ…
そんな彼女に四季は…
「……約束…したからだ」
そう短く呟き…
狼を睨み付けた‼
その瞬間…
グシャッ‼ブシュッ‼
狼がくわえていた四季の左腕から無数の『血刀』が飛び出し…
「グギャアアアッ‼」
狼の顔面を無惨にも突き刺した…
「グ…ギ…」
バタンッ‼
狼が倒れたのを確認した四季は…
狼の元へ近付き…
「『貰うぞ』?」
残された右腕で静かに…その身体に触れた…
すると、みるみる狼の身体の肉がなくなり皮と骨だけになった…
それと同時に四季の身体にも異変が起きる…
「ふ…」
なんと、吸血鬼少女の戦いで傷付いた傷が瞬時に治り、さらには…
「ん…ッ‼」
先ほど喰い千切られた左腕が瞬く間に生えてきたのだ…
そう、四季は己の能力の『融離』を使い、狼の肉体を『奪い』、『還元』して傷の回復と左腕の再生をしたのだ。
四季のそんな不気味な姿を見ていた吸血鬼の少女は…
(まるで蜥蜴みたいね…)
そう思っていた。
身体が治ったことを確認した四季は吸血鬼の少女の元へ戻る…
「…!」
吸血鬼の少女は、とうとう自分が殺される番だと思い身構える…
だが、四季は彼女の目の前まで行くと…
「ほらよ」
そう呟いて右手の人差し指を吸血鬼少女に向けた…
「……?」
その意味がわからず、男の顔と差し出された指先を交互に見比べる少女…
だが次の瞬間に四季は…
「ぐ…ッ‼」
自ら差し出した指先の血管に『血刀』を作り、肉と皮膚を突き破らせ…
ポタッポタッポタッポタッ
血を滴らせた…
突然の彼の行動に眼を見開いて血を眺め出す少女に…
「ほら…飲めよ」
そう言った。
「え?」
「…吸血鬼って奴は血を飲めば多少傷の回復が早くなるんだろ?
だから、飲めよ」
言いながら指先を近付ける四季。
だが…
「なんで…貴方は私を殺すんじゃなかったのかしら…?
それに私を殺さなければ紅い霧だって消えないのよ?」
少女はそう言って四季を睨む…
「最初は殺そうと思っていたさ…
だけど、お前はあの吸血鬼みたいな奴じゃない…
そう感じた…
それに、この紅い霧を消すか消さないか、最終的に『異変』を解決するのは霊夢の仕事だ…
だから、俺はお前を殺さない」
(あの吸血鬼?)
そんな少女の疑問を遮るように四季は続けて…
「安心しろよ
別に飲んだ後で能力で『血刀』なんて作らないからよ
その証拠に、お前の腹を突き破っていた『血刀』も解除してるだろ?」
ニヤリと笑いながら言った。
そんな、四季の言葉に…
「ふふ…貴方、面白いわね」
少女も微笑み…
「んく…ぺちゃ…はぁ…ペロッ…ん…ゴクンッ‼」
血を飲んで答えた。
すると身体の痛みが次第に治まっていくのを感じた。
「貴方の血は、やはり美味しいわね」
少女は疲れたのか腰を下ろしながら呟いた。
「吸血鬼に、そんなこと言われても嬉しくもなんともないけどな」
そうぶっきらぼうに答える四季に少女は微笑みながら…
「あらそうなの?せっかく誉めてあげたのに、残念ね」
そう言った。
そんな、少女に苦笑しながら四季は…
「立てるか?」
聞いた。
「いえ、貴方が酷く突き刺してくれたせいで、まだ治るのには時間がかかるわ
だから、もう少し休まないと…」
そんな少女の言葉に「そうか…」と短く呟いて、四季は思い出したかのように聞いた…
「そういや
名前 聞いてなかったな」
その四季の言葉に少女は、「そうだったわね」と言い、ふいに立ち上がりスカートの裾を持ち上げて上品にお辞儀をしながら…
「私はレミリア…栄えある吸血鬼にして、紅魔館の主
レミリア・スカーレットよ」
そう自己紹介をした。
「…へぇ レミリアか
いい名前だな」
「な!」
突然の四季の言葉に顔を真っ赤にするレミリア。
そんな彼女を気にする様子もなく四季は…
「仲良くやろうぜ
俺は 四季」
そう短く名前を言った。
そんな四季に少し唖然としたレミリアは…
「あら?吸血鬼に名乗る名前なんてないんじゃなかったかしら?」
最初に四季が言っていたことを思い出し、意地悪そうに聞いた。
「ただの気まぐれさ」
そんなレミリアに顔を反らしながら呟く四季。
そんな時ふいに…
「ワオォォォォンッ‼」
獣の吠える音が聞こえた…
「チッ‼ここに居るのもあんまり良い状況じゃないな」
そう呟いた四季は、レミリアに背を向けしゃがみこんだ…
「?」
そんな四季の行動に疑問を浮かべていたレミリアに四季は…
「はやく乗れよ
ここは危険だから早く帰った方がいい
だから、今回はおぶってやる」
ぶっきらぼうに言った。
それに対してレミリアは…
「んな…栄えある吸血鬼である私が人間におぶされというの!」
顔を真っ赤にして叫んだ。
「あんまりデカイ声出すなよ
バケモノ共に気づかれちまう
それに、早くここを出ないと、またさっきみたいに殺されかけるかもしれないぜ?」
「ぐ…!」
四季の正論に、今だ顔を真っ赤にしたレミリアは…
「仕方ないわね…」
そう言って四季の背中に乗った…
「貴方…吸血鬼が嫌いじゃなかったのかしら?」
レミリアが乗ったことがわかると、ゆっくりと立ち上がりだした四季に向けて彼女は聞いた。
「あぁ 嫌いだ
でもレミリア個人としては嫌いじゃないさ」
そう言われたレミリアは…
「!?」
更に顔を真っ赤にした。
だが、続けて四季の言った…
「あっ 背中に乗ったからって血を吸おうとするなよ?」
そんな言葉に…
「す…するわけないじゃない!」
少し冷静さを取り戻したレミリアは小さく…
「この…バカ…」
誰にも聞こえぬように呟いた…
そして…
紅魔館へと帰る そんな2人の姿を…
大きな紅い月が照らしていた。
どうでしたでしょうか?
今作ヒロインのレミリアさんがでてきたのですが…
なかなか難しいですね…
ちなみに今作の四季は…まぁ後にキャラ紹介で書くつもりですが…吸血鬼のことをかなり嫌ってます。
理由は、使徒であるロアに身体を奪われ自分の生活をむちゃくちゃにされたからですね。
なのでしょっぱなレミリアさんに風当たりがかなり強かったです。
可哀想に…(他人事)
しかし、紅い霧を消してもらうだけなのに、えらく話が広がった気が…
まぁいいか…
さて次回はvsフラン戦ですかね
では、閲覧ありがとうございました。