それは内在する闇がはじけたからであろうが、もしも最初からそんなものがない人間が、鬼神のように怒りに溺れたら、いったいどうなってしまうのか。
自己を見失い、他者を傷つけ、周りを破壊する――ただの殺戮者になってしまうのではないか?
最初から持っているものと、そうでない者。 違いはあれど、もしかしたら行きつく先は同じなのかもしれない。
けど、彼はそれに抗い続ける。 巣食った野獣を理性で縛り、荒れ狂う力をぶつける方向を見失いで――いま、超絶なる青年は天に吠えて敵を穿つ。
りりごく30話です……どうぞ。
PS――
今回、ある方の告白は原作にないただの作者の予測の代物です。 なので、多作品へ持ち出したり、こんなこと言ってねェよ、などというのはお控えください。
……いや、無いとは思いますけど(汗)
では。
そこはとても暗いところでした。 どこまでも深くて、冷たくて……でも焼けるくらいに熱い身体にはちょうどいいくらいのそこは、なんだか居心地がよくて――わたしはもう少しだけそこに居ようと思ったのですけど……
「……起きろ」
「…だれ………?」
急に誰かがわたしの腕を引っ張ったのです。 とっても強く、痛いくらいな勢いで“引き上げようとする”その人は、見たことのないヒト。 でも、その声はどこかで聞いたことがあったような気がして。
「おまえはまだそこに行っちゃいけねぇ」
「そこ? ……ここの事?」
「そうだ」
とっても口数のすくないヒト。 わたしを見る目も鋭くて、つい声が出なくなっちゃう……だけど。
「どうしてここに居ちゃいけないの?」
「まだ、居るべきところがあるからだ。 そこにはお前が来るのを待っている奴がいるはずだ」
「居るべき……とこ?」
ちょっと抽象的、よくわかんないや。 でも、その時の顔が必死そうで……そんな顔をされてしまうと困っちゃうよ。 ……わかったから、ここからでるから。 だからそんな顔をしないでよ。
「そうだ、こんなさびしいところじゃない。 もっと楽しくて――あったかいところだ」
「あったかい?」
「あったかいのは嫌いか?」
「……ううん。 好きだよ」
「そうか。 だったら――」
……あれ? 今このひと笑ったの?
とっても鋭い目を一瞬だけ崩したように見えたけど、うーん? 気のせいなのかな。 でも、ホントに鋭い目だなぁ……髪だって見たことないくらいに逆立って、不良さんみたい。
……みたいだけど、すっごくキレイな色。 フェイトちゃんが金髪だったら、この人はどう表現すればいいんだろ? えっと、黄金色なのかな。
それくらい、この人はきれいな髪をしていて――
「このまま、オレについて来るんだ」
「……はい」
わ! う、浮いた!! ……あ、飛行魔法使ってないのに。 このひとがナニカしたのかな?
「あ……」
「…………」
なんだろう。 とってもあったかい。
まるでお日様に照らされてるみたい。 ホントに……あたたかい。
「道案内はここまでだ。 あとは自分で行けるな?」
「は、はい」
「もう、迷うんじゃねぇぞ……」
「大丈夫だよ。 ――くん じゃないんだもん、そう何度も道になんて迷わないよ」
「……そうか」
あとは一人でか。 ……大丈夫だよね、言われたとおりにするだけだもん。
それにしてもこのひと誰だろ? 声はどっかで聞いたことがあるんだけど……わからないや。
「あ、あれ!?」
いない? いまさっきまでそこに居たのに、あのひと急に消えちゃった。
「……なまえ、聞けなかった」
まるで最初からいなかったみたいにいなくなってしまったあのひと。 でもまぶたを閉じればどんな人だったかはすぐに思い出せちゃうかな。 だって、とっても派手なヒトだったし、声も――くん にそっくりだったし……あ。
「そっか。 そうだった」
さっきあの人が言ってたこと、そう言う事だったんだ。 わたしの帰るところ……それってみんなのところなんだ。 ――そうだよ!
「どうして忘れてたんだろう。 わたしあの時――!」
あのとっても怖い怪物にお腹を貫かれて……それでそのあとから記憶が無くて。 きっとみんな心配してるよ。 早くここから出てみんなに合わないと……わたし行かなきゃ!
「……う!? なに? 急に周りが光って」
何が起きたの? 何もなかったところが急に金色に光って……あ、でもなんだかとってもあたたかい。 とっても気持ちよくて――
「まぶたが……重く……うぅ」
つい目を擦って、意識がもうろうとして……そうして『は!』っとしたときには。
「…………」
「え?」
目の前にはボロボロの知らない人がいて……その人がわたしを抱き上げていて。 さっきのひとと同じ髪型と色、そして碧色の澄んだ目。 その表情と相まって、とっても怖い印象を持ちそうなんだけど……
「…………どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」
「――――おまえは今、ただゆっくり眠っていればいい」
まるで初めてみたフェイトちゃんと、いっしょの顔をしていました。 毅然としていて、でも、どこか何かに押し潰れてしまいそうな……そんな人が言ってくれた一言はとっても優しくて、安心できて。
「……うん」
わたしはただ、言われるがままに意識を深く沈めたのです。
戦士が居た。 彼は己が限界をひたすら登り、ようやくぶち当たった“壁”をも登り詰め、それでもひたすら進んでいき――そうしてついに超えてしまった。
超えてはならない一線。 それはなんにでもあるのであろう。 そんなことも露とも知らず、踏み越え、あまつさえ踏みにじった目の前の怪物に――青年の堪えはとうとう限界を超えたのだ。
[なにが――なにが超サイヤ人だ! あ……あれはただのおとぎ話で――]
「……」
つい数分前に怪物は言っていたはずだ。 “仲間が傷つけば強くなる? 怒りで圧倒的に強くなるのか?”……と。
その時の返答を今返そう。 答えは――YESだ。
大事な……そう、とても大事なものを嘲笑い奪い去っていくものに純粋な怒りを――圧倒的な憤りを覚えてしまった彼は今。
[このオレと同じ最下級の戦士である貴様如きになぜ!!]
「……うるせぇよ」
もう、誰にも止められない。
それを身体で理解したターレスはここで小細工にでる。 戦士としては最低で、しかし戦闘としては効果は上々。 先ほどの気功波の打ち合いと同様に、大猿はその手をアースラに向けて――
『――――ッ!!』
[……なんだとッ]
「……おい」
掴み、止める者が目の前に居た。 宙に浮きながら、穴が開いているはずの腕で少女を抱え、もう片方の腕で大猿の樹木が如く剛腕を支え……押しとどめる。
掴んだ手は一向に動かない……微動だに“できない” 怪物がとった行動に怯えるアースラの面々を余所に、青年の憤りは急激に限界まで振り切れる。
「またあいつ等を狙いやがったな……」
[う、動かせ――ぐぅぅ!!]
「いい加減にしろよ、このクズ野郎が…………」
[ぐぁ……なにがどうなってやがる――さっきまで死体も同然だった奴がなぜ急に!]
叫ぶ困惑に、静かなる憤怒。 もう、これほどまでに怒りを感じたことは“今まで”には数回程度しかなく、それでも今回の相手がとる行動は青年の許容範囲から大きく逸脱していった。
関わりがあるものを次々に襲い、略奪し、傷つけ――
「フェイトを傷つけ、ユーノをなぶり殺しにし――よりにもよって、アイツにあんなことを――し や が っ て……!」
歯ぎしりが響く。 驚くほどに響き渡る耳障りな音、それはまるでターレスに対する青年の心情を映し出すかのように重い音。 歯が砕けるのではないかというくらいに鳴らされたそれは、次に青年が口を開くまで続いていた。
「ドラゴンボールがねぇこっちじゃ一度死んだらそれまでなんだぞ……あのまま死んでたら2度と会えなくなってたかもしれなかった――――それを!!」
[うぐああああ!!]
「貴様ぁぁ……!!」
大きくなっていく彼の声はまるで津波のよう。 その間に“ほんの少し”だけ腕に入れた力を手の先まで伝え、そのまま大猿を握る力に移していく。 上がる悲鳴はまるでさっきまでの光景と同じよう……ただ、立場だけが完全に逆転していたことを除いてだが。
[うごかせ……ない――動きやがれぇぇえええ!!]
「…………ギリ!」
[うぉぉぉおおおお!!]
ズダン! ……と、大きな音が聞こえてくる。 巨大な落下音はターレスが片膝をついた音である。 あまりの手の痛さに抗おうとして、できず、力の逃げ場を彷徨い……結果、地面へ後退した怪物の何たる無様な格好か。
これを見た周囲の面々は言葉を忘れたかのように何も発せない。 あれほどの好青年が、仲間をやられて怒るのは納得できても、こうまで変わり、尚且つ、戦力差を根底から覆してしまうほどに力を溢れさせているのは驚愕以外に言い表せる単語が見つからない。
【ユーノ】
「え?」
【いま、お前の心の中に話しかけている】
「ご、悟空さん!? ね、念話が――」
「わたしにも聞こえる」
「あ、アタシにも」
「アースラにいるほとんどの人間と会話を……どういう原理なのよ」
唐突に始まった会話。 先ほどまでならばそんな暇などなかったが、今はあいてがきちんと“待ってくれている”のだからできない事ではない。 その中で紡がれるのは青年のお願い……それは先ほど自分も世話になったあの魔法を――
【息を吹き返したと言っても、まだなのはは虫の息だ。 誰でもいい、早く魔法で何とかしてやってくれ……オレはコイツを掴んで居なきゃならねぇから“そっちに行くことができない”】
腕の中の少女にかけてもらいたいから。 生気がみるみる落ちていくなのはに対して、冷たくも心配そうな目をする青年は、徐々に口数を多くして、喋るペースを速めていく。
「あ、え、でも」
【………ち…】
「え?」
その声に戸惑うユーノ。 状況をいまだにつかめず、どうしていいかわからないとあたふたと思考をから回りさせる少年。 それが気に入らなかったのだろう……青年は小さく息を吸うと。
【ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ! このままなのはを放っておいたらどうなるか、分らないお前じゃないだろ!!】
「――うく」
【グズグズするな!! オレがコイツを押さえている間に、さっさと言われたとおりにしろ! ――急げ!!】
「ご、悟空……さん」
度を超えた罵声を浴びせる青年は、見た目通りに感情をむき出しにして小さな子供に当たり散らすかのように大声を上げる。
静まりかえるアースラ。 その中に二人だけ、氷のように冷静な判断で動いた者たちがいた。
「わたしが――え?」
「あなたはここに残っていなさい。 艦長職が滅多に外に出るのはよくないわ」
「しかし!」
「いま一番動けるのは消耗の少ないアルフとあの小さい坊やと私だけ……でもあの子たちは今ので及び腰になってしまったから結果的にわたししかできないのよね。 他のみんなは消耗が大きすぎるし、これしかないわ」
「ですけど!」
アースラの外と中、そこにいる大人二人は各々動き、それの片方を止めるのは……プレシア。 彼女もまた、病に体を蝕まれ先ほどの『ファランクス』で相当数の魔力を消費したはず。 それなのにもかかわらず行くという彼女をリンディは抑えようとするが。
「あ――ちょっと! ……もう、悟空君といいあのプレシアさんといい、みんなで勝手に……」
時またずして、紫の光りは黄金の輝きへと飛んで行ってしまった。 眼下にある崩れ行く『時の庭園』にて向かい合う怪物と戦士のもとに向かうために。
おおよそ、700メートルの飛行が始まったのである。
その光景を、決して目で見ることなく背中越しで感知するものが居た。 それはプレシアが目指す黄金の輝きを持ちし者。 彼はいまだに大猿となったターレスの片腕を掴んだだまま、いっこうに動こうとはしなかった。
「……気がひとつ近づいてくる」
「はぁ……はぁ……」
「この気はプレシアか」
「き、来たわよ……孫くん」
「……すまねぇな」
その彼に変わり、なのはが居る左側へと回りこむプレシア。 同時、少女を引き取る彼女の表情が引きつる。 眉が寄り、口元が引きつり……声が震える。
「あ、あなた――腕に穴が」
「気にするな。 “今は”普段通りに動かせてる。 痛みもない」
「……アドレナリンの強制分泌? それにしては……」
埃のように出てくる違和感の連続に首を傾げようとするプレシア、それもほんの一瞬の事、彼女はすぐになのはを抱えるとそのままケガの状態を確認する。
その手を、真っ赤に染め上げながら。
「人差し指大の穴が右わき腹に……酷い」
「治せるか……」
「完治は無理よ。 それほどわたし達の魔法は万能じゃない……けど」
「……」
「死を回避することは出来る。 でも衰弱が激しくなってきてるわ、いますぐに処置をしないと――でも、こんなところじゃ……」
「わかった……」
濡れていく手を気にも留めず、まるで自動車を修理する整備士のように、船の航路を決める航海士のように、渋滞を回避するタクシー運転手のように……とても素人には見えない手際の良さで診断するプレシアの、『死を回避できる』という言葉に口元を緩めた青年は、そのまま――
「ここを離れればいいんだな?」
「……え?」
[ギャアアアアアアア!!]
『!!?』
怪物を後ずらせる。 上がる悲鳴はターレスであり、彼は掴まれた腕に力が加わるのを感じると共にそのまま“しなっていく”
拳が、腕が、まるで弓なりに曲がっていくとその激痛が神経を伝わり彼に伝わっていく。 そこまで行きつくと今度は肩までダメージが行き渡り、外れそうな感覚に襲われる。 それを防ぐための態勢の移動がこの後退であり、青年の冷徹なまでの考えというモノであった。
「……あ、あっという間に庭園の端にまで……と、とにかくこの子を――」
「こほっ……こほ」
「待っていなさい、せめて表面だけでも治してあげるから。 わたしが持つ全魔力を使ってでも――あなたを死なせはしない」
その光景を遠くに眺め、地面に降りたプレシアの治療魔法は発動していく。
[は、はなせ!]
「まだだ……」
[離しやがれ――!!]
「もう、いいだろう」
地面を抉り、建造物をなだらかな大地に戻しつつ、怪物の大後退は幕を閉じる。 着いた場所はプレシアから100メートルほど離れた庭園の隅。 そこを彼らは――
[か、カカロット貴ッ――様ああああああ!!]
「これで最後だ、ターレス!!」
最終決戦の地に決めたのである。
唸る轟音。 既にお互いの身体は限界まですり減らされてきている。 超化した青年……孫悟空はもちろんとして、大猿化したターレスも例外ではない。
スターライトの直撃、8倍界王拳によるダメージ、10倍界王拳により威力をあげたかめはめ波の直撃、――そして無理があった元気玉の身を張った迎撃。 それらすべてをこの1時間以内にやりきり、尚且つパワーボールの作成で大きく“気”を減らしている。
だからこそ。
「…………」
[こ、こんなことがあってたまるか――]
「……」
[2度も、2度もカカロットに敗れるなどと!! ……在ってたまるものかああ]
男は焦り、歯をきしませる。
振り落とす攻撃を涼風のように躱し、尚且つカウンターを決め込んでいく悟空に向かって最後の戦哮を唸り、上げる!!
――――それを。
「ターレス。 てめぇは正直やりすぎだ……貴様はベジータのように再戦しようだなんて気も起きねぇ。 “フリーザでの失敗”もある――さっさと
[な、なんだと――!!]
驚愕の事実で流していく悟空。
それにおののき、さらに恐怖とも形容できる怖気を背筋に走らせ、ターレスは悟空に最後の質問をする。 あいつは、あの男はまさか――
[き、貴様! まさかフリーザのことを!]
「あぁ、おまえの想像通りだ」
[だ、だがなぜだ! ソレが本当ならばなぜオレを相手にあそこまで手こずる!? フリーザはこんなものではないはずなのに――なぜだ!!]
「……さぁな、どうして“こうなった”かは、オレにはわからねぇよ――だがな」
[……くっ!]
「てめぇをぶッ倒すくれぇならどうにでもできる! であああああ!!」
悟空の、嵐のようなラッシュが始まる。
残像拳で相手の懐まで入り、そこでまず足を天に掲げる――大猿の顎に目がけて。 怯むヤツに、悟空は容赦の気持ちもない。 顎を打ちぬいた彼はそのまま右こぶしを引きつける。
引いて……引いて……怪物の叫びが木霊し、それが遠くに消えた刹那。
「破ああ!!」
[――――ッ!?!?]
砲弾のような炸裂音がターレスの腹から鳴り、背中へと突き抜けていく。 吐き出されていく胃の中の内容物。
青い宝石がいくつか見えると、眼下の虚数空間へと落ちていく。
「いまので気がだいぶ落ちたな。 さっきまでの凄みがかなり消えてるぜ?」
[ご、ごはぁ……エホッ! がはッ!! こ、こんなこと]
それすらもどうでもよさそうに、悟空の碧色の瞳は大猿を――見ていなかった。 その目線は遥か後方。 なのはとプレシアの居る場所であった。 この時ターレスは悟ってしまう。 もうすでに、カカロットは――孫悟空は、自分のことなど眼中にないのだと。
「……もう、この世界の崩壊は止められないだろう。 ナメック星のように消えてしまうのも時間の問題だ」
[……うぐっ]
そして悟空も感じ取る。 この世界から命が消えていこうとするのを。 その崩壊の音を聞く中で、いまだに流れる彼の脳内の風景。 それが激しい濁流となって、悟空の記憶をかき混ぜていく。
――――待ってくれ! その願い!!
オレヲ不老不死にしろおお!!
この猿野郎が!
やめだ、今の貴様と戦っても…… バカヤローー!!
「っく」
――――や、やーどらっと?
僕は、20年後の……
む、息子!! ブルマの!?
あなたは病気でこの後……
闘えねぇのか、くやしいぜ!
「……ちっ」
[こ、こいつ……]
どこか物思いにふけっている悟空に、苛立ちを隠せないターレスは赤い目をゆがませる。 憎たらしく、憎悪をもって対峙したはずの奴が――既に自分を見ていないのだ、それは酷く彼を激高させ――
[カカロットおおおお]
「でああああ――!!」
[ぐはぁ!!]
悟空の胴回しを入れた重い蹴りが左方向から迫り、ターレスの首に直撃する。 止まる呼吸、同時に消えゆく目の前の光景に佇む金色の男は……無表情。
怒りも悲しみも、憐みすらない冷たい眼差しを受けながら、黒い男の意識はそこで途絶える。
散々巨大な攻撃を耐え忍んできた男の最後に受けたのがただの蹴り……それは、この戦いがどれほどに熾烈で、奥の奥の手まで使い果たしていたという証明であった。
強戦士は――
「…………」
虚数空間へと消えていく。
「――――っぐ!?」
落ちていった巨大な怪物をひと目見送ると、悟空は表情を苦悶に歪める。 全身の傷が思い出したかのように疼きだし、彼を激しく襲い出す。
「ま、マズイ……もう、この姿でいられる時間ってやつがなくなりかけてやがるのか。 はぁ……はぁ――いそがねぇと」
その激痛をも抑え込み、まだ“戻るわけにはいかない”と自身を奮い立たせて空を翔ける。 この短い距離だ、例えどんなに消耗していようがすぐにつかない訳がない。 悟空は、なのはの元へと黄金色のフレアをまき散らして飛び去っていく。
「……な、なんとか止血が出来たわ。 あとは彼女の生命力に働きかけ続けて――」
「プレシア!」
「孫くん!? ここに来たという事は」
「あぁ、終わらせてきた」
「……そう」
金の頭髪をたなびかせた悟空はそのまま上空を見上げる。 そこに浮かび上がるアースラと、次々に飛び出していく様々な色。
それが仲間たちだと知ると悟空はそのまま息を吐く、消えていく金色のフレア、そのかけら達があたりに舞う最中で、いまだ金の髪を逆立てる戦士に子供たちは次々に駆け寄っていく。
「悟空!」
「悟空さん!」
「ゴクウ!!」
「孫悟空!」
「…………」
だが彼は無口。 それもそのはずだ、今のいままで激闘に身を傷つけていたのだ、いつもの笑顔があるわけがない。 でも、それがわかっていても彼の笑顔を期待してしまったのは、それほどに子供たちの消耗が激しいから。
心も体も、既に限界寸前まで酷使していた彼らの疲労は、一般人には決して測り知ることのできるモノではないだろう。
そのなかで。
「もう、あと数分でこの世界が消える。 早くここから逃げるぞ」
『き!? 消える!!』
「前に見たナメック星の爆発と同じ気配がするから間違いねぇ。 みんな、取りあえず1か所に集まってくれ、アースラまで行くぞ」
『は、……はい』
悟空は世界の終りを感じ取りながら、最後の仕上げに入ろうとしていた。 プレシアのもとから抱き上げたなのはを、クロノとユーノのバインドで包むように眠らせつつ、もう左腕の動かせない悟空への最後のアシストをする子供たちも同様だ。
軽くうなずき、周囲を見て、孫悟空は右手を軽く握り、人差し指と中指をのばし――
「みんな、オレの――なっ!?」
「きゃ!?」
「よ、横揺れ! 悟空さんの言う通り崩壊が進んでいるんだ――いそがないと」
唐突に起こる振動に精神集中を途切れさせる悟空。 とっさに確認した周囲の人数は――自分を含めて7人。 数があっていることに安堵しつつ、そのまま続きを続行しようとする。
その彼を見つめつつ、プレシア・テスタロッサは庭園を見返していく。 あそこには“もう、何もない”置き去りにする者も、思い残しも何もかも――
あるとすれば今までの悪鬼にでも取りつかれていた自身の妄念が生み出した研究成果ぐらいであろうか。 それを一瞥し、まるで断ち切るかのようにフェイトのそばに寄ろうとすると――
「え?」
「……かあさん?」
『!!?』
足元が盛大に隆起する。
同時、傾いていくプレシアが居る地形は、そのまま地の底に引きずり込まれていく。 呆気ない声、そっけないリアクション。 そのどれもが無常であって、手遅れとなっていく。
――プレシアは、ひとり虚数空間へと引きずり落とされていく。
「……――いやああああ!!」
「フェイト! いっちゃいけない! あそこに行ったらキミまで死んでしまう」
「いやあッ! せっかく一緒になにかが出来たのに――帰ったらみんなで……みんなで!!」
皆で笑いあう姿を幻視しながら、フェイトは悲痛な叫びをあげていく……大粒の涙と共に。 それを必死に羽交い絞めにするクロノは……いいや、クロノですら表情を苦悶へと変えていた。 苦く辛いこの終わり方に、理不尽への憤りを感じつつ。
「手遅れなんだ。 虚数空間じゃ僕たち魔導師は飛ぶことはできない。 ただ、おちるだけなんだ」
「…………」
「魔導師じゃ……」
「そうだな」
『え?』
「――はっ!」
青年は一人、輪の中から外れていた。 コツコツと青いブーツの音を立て、金色に染まった髪をたなびかせて、彼は一人、今出来上がった崖につま先をそろえていた。
その行為はクロノにある確信を持たせるに至る。 彼は――あの、今にも崩れ去ってしまいそうな身体のあの男は……
「クロノ、おめぇはこの中で一番の年長だとオレは思ってる」
「……あぁ」
「みんなを、頼んだぞ」
「悟空……わかった」
振り返らない背中は血だらけで、それは本来自分たちが負うはずだったものであって。 それを償うこともできず、更なる追加注文を課してしまう自分たちの何たるふがいない事か。
言葉で出さずとも、歯噛みするその表情は確かに悟空に伝わり。
「フェイト! 先にアースラに行ってろ」
「でも!」
「おめぇの母ちゃんは、オレが捉まえてきてやる。 だから早くここから逃げてくれ――!」
「悟空――!!」
少女にこの後を託すと、青年は黄金色のフレアを巻き上がらせて、最後の飛翔を行う。 もう、追うだけの体力があるかも疑わしいその身体で、彼は消えゆくプレシアの気を探りながら……それでも見つからない彼女を追うべく、虚数空間へと独り落ちていく。
「因果応報……確かそういうのだったわよね」
ふふ。 この歳で自分にこういうなんて、ホントどうかしている。 いままでやってきたことは間違いだとは思わないけれど、それでもやっぱり人道に反していたのだと、彼らを見て思ったわ。
子が親を殺し、力なき者はすべてを奪われる……か。 悪逆非道と罵っても、わたしがやってきたことはきっと、彼らがやっていたことと大差はないのよね、きっと。 でも、どうしても願いを叶えたかった、だからあらゆる手を使ってでもと、この血に濡れた道を歩んできたはずだったわ。 ……答えなんて“あの子”と過ごす時間の中にあったはずだったのに。
「そうよ、いつもそう」
欲しいものは手に入らず、やっとできたものですらすぐに手の平から零れ落ちていく。 何もかもうまくいかない世界を呪ったこともあった、どうしてもできないという事実に周囲を破壊してやったこともあった――あの子を、苦しめたこともあった。
「わたしは、いつも――」
そんなわたしがおめおめと光がさす道を“あの子”と歩めるわけがなかったのよ。 だからこれは天罰でもなんでもなくて……ただの必然。
神というのは信じていないけど、きっとこんな私をさぞおかしいと思っているでしょうね。 だって、本当に欲しかったものなんていつもすぐそばにあったのだから。
そういえば――――は妹が欲しいって言ってたかしら。 ……もしもすべてがうまくいっていれば、きっとフェイトは――――の妹になっていたのかしら?
活発な姉に、いつも物怖じさせている妹……か。 きっと、とても毎日が楽しいのでしょうね。
……でもね。
「いつも、気付くのが遅い……ホント、馬鹿みたい――」
もう、何もかもが手遅れなのよ……そう、なにもか―――――「勝手にあきらめんじゃねェよ」
「え?」
……そんな、どうして。
「どうして……? いっただろ。 あとでみんなと一緒に“おんせん”ってとこに行くって――」
「心を……読んだ?」
「んなことしなくてもわかる…おめぇが完全にあきらめたいと思っていることくらいな…」
「…………それは」
こんな私が助かってもいいというの? ダメよ、例えおめおめと生きて帰ったとしても、とてもあの子に話しかけることなんて――
「だから言っただろ……おめぇは、いろいろと話さなきゃならねぇことがある……って」
「でも」
「アルフから大体は聞いてる。 それでよ、アイツ傷つけたのは、なにもお前だけじゃねぇ。 オレも大猿に変身した時――お前以上にひどいことをやったはずだ」
「それは――」
それはあなたの意思がなかったからでしょうに。 それに比べて私は――
「お、オレも……あとでアイツに頭下げるつもりだ。 おまえも一緒にやればいいさ……」
「それでも」
「フェイトがいつまでもぐちぐち言うやつじゃないってのは、お前が一番わかっているはずだ。 そして、お前が居なくなって一番悲しむのは――やっぱりフェイトだ」
それはわかるつもりよ。 でも、最後のはどうだか……きっと、わたしの事を少なからず恨んでいるはずよ。
どうしてこんなひどいことを――って。
「分るんだ。 もしこのままプレシアが居なくなっちまったときのアイツの気持ち」
「……え?」
「お、オレは……ガキん頃に育ててくれたじいちゃんをさ」
「……」
「大猿に変身して、踏み殺しちまったらしいんだ」
「――――!!」
……こ、この子。 そんな重いモノを背負って。
「そのあと、朝になって目が覚めてさ」
「……」
「隣で横になってるじいちゃんがさ、いつまでたっても起きなくってさ」
「…………」
「次の日、やっと気づいたんだ。 じいちゃん、死んじまったって」
「孫くん……」
……この子も、自分の大切なものを――自分の手で。 ……しかも知ったのが多分、そうとう経ってからの筈。
強いのね、それでもこんなふうに真っ直ぐな心であり続けられるなんて。 きっとその子供の時は多く泣いたのでしょう。 でもね、わたしは泣くことさえ――
「でも、わたしは……」
「オレは……泣かなかった。 まだ、実感ってのが無かったんだろうな……けどよ」
「……………え…?」
「朝、目が覚めた時に……いつも見る顔が無くてよ。 それ知っちまった時だ……オレは泣いたさ、思いっきり」
いつも見る顔……孫くん、あなた。
「アイツにそんな思いしてほしくねぇんだ。 あんな気持ちはあいつがデカくなって、心の準備ができてからでも遅くはねぇンだ! まだ……今じゃない!!」
「…………」
「生きろ! 生きるんだ――そんでアイツに謝って、そしたら“いままで”を取り戻せばいい!! それができねぇんなら……オレはあんたを一生恨む!!!」
「――ッ………そう…ね」
まるで、頭を鎚で叩かれた衝撃だったわ。
もう身体が動かなくて、声もかすれて……それなのにこんなに心を震わさせてくれて……強く、抱き寄せてきて。
卑怯よ。 こんな、こんな風に自分の思いを汲んでしまうなんて――反則よ。 こんなことされたら……あきらめるしかないじゃない。
「もう、死ぬのは止めね。 これからは……生きていかないと」
「――当然だ。 現世に居るのは生きてる奴だけだ。 死人はみんな、閻魔のおっちゃんとこに行く決まりなんだしよ」
「……ふふ。 おかしなことをいうのね」
「ホントの事さ」
「そうね……そうよね」
まさかこんな年下に説得されるなんて。 こうも強く心を揺さぶられるなんて。 最初映像で見た小さかったあの子からじゃ、とても想像できないくらいに……人間が、私なんかよりもできてる。 正直、その前向きさを分けてもらいたいくらいに……強いひと。
ふふ。 あの子はとんでもない子にココロを寄せてしまったようね。 あの年にして、人を見る目があるってことが判っただけでも嬉しい限りだわ。
「なにを笑っているんだ……?」
「なんでもないわ。 えぇ、なんでもないの」
「そうか」
「どころで……」
「どうした?」
助けに来てくれたのはホントにうれしいけど、あなた、ここからどうやって出る気なの? 随分と長い距離をおちているし、あなただって残りの体力はほとんどないはず。
「そうだな、確かにこのままじゃナメック星の二の舞だ。 でもな――」
「え?」
なに? さっきよりも強く抱きしめてきた? そんなに力を籠められると身体がつぶれそうになるからやめてもらいたいわね。 孫くん……?
「なんとかなるさ、……いいや、して見せる。 オレに残された最後の手段だ――こいつぁ“ヤードラット”にいた奴らに感謝しねぇとな」
「ヤードラット?」
「気……気……頼む。 見つかってくれ」
「孫くん?」
急にあたりを見渡した? ……あ、指を二本だけ額にくっつけて目を閉じはじめた。 これはさっきやろうとしていたモノでしょうけどいったい。
「……いた! ……これは、だれだ? なんだかとても懐かしい感じが。 それにこの周りにいる奴らはまさか――」
「……?」
何をする気なの? 空を飛ぶならともかく、何もしないでこのままいたら重力の井戸に。そしたらいくらなんでも私たちは……――――!!?
「なんでもいいや、たぶんこれがあるところに跳べばきっと――行くぞ! しっかり捕まってろ」
「そ、孫く―――― 」
様々な色を混ぜ合わせた空間の中、男と女はそろって消えていた。 あとに残された、空気の層が消えた空間を埋める音を残しながら。
「アースラはこのまま次元転移を敢行します! 総員、このまま発進の衝撃に備えて――」
「待ってください! まだ悟空さんとプレシアさんが――」
「出来ないわ。 もう数分だってここは持たないはずよ。 このまま彼らを待つのは全滅を意味します――お願い、わかって……」
「……リンディさん。 ――っく!」
次元の戦艦はその魔力炉を臨界にまで上げていた。 駆動するタービン音は激しさをまし、周辺温度を一気にあげて、艦に大きな振動を広げていく。
高速で回転するシャフトと、高熱のシリンダを熱暴走から守る冷却材が悲鳴を上げる中、今この船は崩れゆく世界から脱出しようと空を行く。 ……傷ついた戦士たちを置いたままに。
「悟空さん……」
「アイツ、あんなにボロボロなのに一人で……」
「悟空……かあさん――」
その、残った戦士に思いを馳せる子供たちはひたすらに願う。 どうか無事であるように、いつか必ずあの笑顔に出会えるように。
「悟空君……ごめんなさい……」
「母さん」
それでも……と。 今下した決断が、この先どうなるかがわかるリンディは頬に一筋、水滴を垂らす。 きらりと光り、音もなく衣服に落ちたそれを救い上げる者はなく、彼女の弱い姿を、久方ぶりに見てしまったクロノはただ無言。
何をしていいかともわからずに、そっとその場を離れていく。
戦いには負けなかった。 それはこうして生きて帰還したのだから間違いではないだろう。 だが、これはホントに勝ったと言える終わり方なのか? 敵も味方も被害は甚大、失うものが多すぎるこれを、果たして勝利として受け取るべきなのだろうか。
「こんな終わり方……イヤだ」
誰がつぶやいただろうこの言葉。 まるで駄々をこねる幼子のように、それでもその“願い”はひたすらに純粋で――それは……
『!!?』
「ば、爆発音!?」
一つの大爆発と共に、彼らの前に現れる。 唐突に起こる巨大な振動、その正体と原因を急いで究明するエイミィは目を丸くする。
「……え?! 爆発地点――艦内、遺失物保管庫!!?」
「なんですって!!」
あまりにも物騒なところの爆発に走る緊張。 まさかこの戦闘で起こった何かの拍子で、保管場所のセキュリティーやら防護柵やらが破損したのでは――リンディはこの急転直下の事態に浮足立ち――
【だ、だれかーー! おーい……はやくたすけてくれぇ……】
「こ、この声……うそ」
聞こえてくる念話もどきに、思わず身体を奮わせる。
気づけばブリッジから、人影がすべて消えていた。
走るものは残された者全員。 廊下を走るなという注意書きにすら目を向けず、一同は保管庫へと走っていく。 まだかまだかと待ち遠しい気持ちは、床を蹴る速度に比例してドンドン早くなっていく。
そうして彼らは、遺失物保管庫へと到着した。
「ここに――」
「でも……」
『なんで?』
そこで膨らんでいく疑問は当然のモノ。 先ほどの悲痛な別れはいったいなんだったのであろうか……まさか気付かぬうちに船に引っ付いていたわけじゃあるまいし。 彼等の思いは強くなる一方。 それが限界を超えた時。
「あけるわよ?」
『は、はい』
彼らは、部屋の中に一歩、静かに踏み込んでいくのであった――そこには!
「お、おい……少し離れろ……よ」
「無理を言わないでちょうだい。 こっちだって変な壁画の下敷きになって動けないのだから」
「も、もう少しあっちに行ってくれよ。 あんまし引っ付かれるとアバラが――あがが!!」
『……』
組んで解れた灰色と黒髪がいたんだとさ。
痛いと悲鳴を上げた悟空と、それに絡みつくように上から覆いかぶさるプレシア。 上半身が裸の男と、深いスリットの際どいドレスを着込んだ女のそれはまるで美女、そして野獣を思い起こさせるアンバランスな絵。
それを呆けながら見つめる子供と大人はしばし無言……数秒の空白時間が出来上がると思いきや、そこで悟空は片手をあげて。
「……よっ! ただいま」
『悟空!!』
いつものあいさつをするのであった。 それはどういう意味での『ただいま』だったのだろう。 言った本人はおそらく何も考えていなくて……聞いた皆はきっと万感の思いで受け取ったはずだ。 それほどに、彼が居なくなった時間が長く感じたから。
「いやー危うくもう一回あの世に行くとこだったぞ」
「ほんとよ……もう、あんな目はこりごりね」
「オラもだ」
「母さん……悟空……よかった」
「悟空さん……いつもの悟空さんだ」
「よかった、ほんとうによかった」
「アタシは心配してなかったよ? あいつは必ずやってくれるって――「アルフ、おめぇその割にはやけに尻尾が暴れてるじゃねぇか?」……!? こ、これはその……ふん!」
『あははは!!』
ホントに長かった……笑い声。 これを聞くために、いったいどれほどの涙をのんだのだろうか。 ドッと沸いた室内で、悟空だけが周りを見渡していく。 この空気の中で、あの子だけが居ない……と。
「なあ……なのははどこだ」
「あ……」
「なのははいま、医務室で治療を受けてるんだ。 とても深い傷だったから」
「そっか……」
「悟空?」
そっと答えたフェイトの声に、小さく息を吐く悟空は全身から力を抜く。 今度こそ正真正銘の終わりだと、床に体を預けた――その瞬間である。
「――――がはッ!!」
『!!!』
青年の口から、赤いマグマが溢れ出す。
ドボドボとあふれるそれはとてつもないほどの鉄分を含んだ液体。 床を染め上げ、入り口に佇むフェイトたちの足元まで広がると、彼の口からはそれ以外のモノが出てくる。
「や、やべ……からだが――ゲホ! エホッ!!」
「悟空!?」
「悟空君!!」
それは弱い声だった。 戦時中の激しい怒気と共に失われていく生命力。 それが形となって現れ、ついに今までの無理の代償を支払わせることとなる。
全身を襲う痛みは壮大――指を一本動かそうものならば、腕の筋が拒絶し、針を串刺しにするかのような激痛が悟空を襲う。 彼の身体は今、完全に壊れてしまった。
「あが! ――イギッ!? はぁ……はぁ――」
「マズイ! いままで不思議なくらいに止まっていた腕の穴からの出血がまた始まった!」
「なんてこと……このままじゃもう、1時間だって持たないわ……」
「そんな!!」
「なんとかならないのかい!!」
鮮血が全身から吹き出してくるようになる。 既に切れている筋組織も、これに便乗して機能を停止していき、悟空の身体から“自由”を奪い去っていく。 どんどん自分のモノでなくなる彼の身体、それがたまらなく辛いのは、実は本人ではなく周りの者たち。
問題の青年は……そう、どこか達観していた。
「はぁ……はぁ……こりゃ、まいったなぁ」
「悟空!」
「まるで……ピッコロとさぁ……――の奴と戦ったときみてぇだ」
「しゃべらないで悟空君! いま、治療魔法を――」
「孫くん!」
「だめだ……オラ、わかんだ」
「なにを言ってるんだい!」
もう、既に体験したことのある“死の痛み”は彼にとってなじみのあるもの。 決して忘れられないそれを、歯を食いしばることもできずに享受しようとする悟空に、部屋の全員が叫びだす。 こんな姿は彼らしくない――最後まで、あきらめないのが孫悟空なのではないか――と。
……それでも。
「いま、オラの中で何かが消えちまった……もう、ダメだ――助からねぇ」
「悟空さん!」
「孫悟空!」
「はは……すまねぇ。 みん………な…――――」
『……――!』
つよき戦士はいま、その身体を――そっと地に伏せたのであった。
「悟空……うそでしょ……?」
「孫くん……!」
テスタロッサ親子の顔が蒼白に染まる。 自分たちを繋いでくれた彼が、これから先をと激を飛ばしてくれた青年が、自分たちの行く末を見送ることもなくその目を閉じたことが信じられなくて。
「……ちくしょう」
「悟空君……」
ハラオウンのふたりは顔をそむける。 呼吸音が聞こえない青年の無残な姿に心を締め付けられ、顔をくしゃくしゃに歪ませる。 目の前の傷だらけの男が負ったそれらは、本来ならば自分たちが受けるモノだったのに。
そのすべてを肩代わりし、尚且つ返させることすら出来ない現状にクロノは強く壁を叩く。
「目を開けなよ! ゴクウ!!」
「悟空君!」
同時に上がったアルフとエイミィの声もみなと同じモノ。 そのなかで、やっと今を認識したユーノは……走り出した。
「悟空さん! ダメだ――まだ、一緒にやりたいこと話したいことがあったのに。 なのはだってまだちゃんと話していないんだよ!? なのに……なのに!!」
悲痛が木霊する部屋の中で、彼らの声のその振動のせいだろうか? それとも悟空とプレシアがあらわれた時の衝撃のせいか。 “ソレ”は誰もが気付かないままに保管場所から零れ落ちる。
「こんなことってないよ!! こんな最後ボクは欲しくない!! “お願いだ”――だれでもいいから悟空さんを助けてよ!!」
『…………』
もう、かすれてしまうほどに出されたユーノの叫び。 それでもそんなことができる者などこの世界にはおらず、誰もが返事をすることなどできず。 静寂が世界を支配する……
「あ、あれ?」
――――はずだった。
「これ……なに?」
青年の身体に、何かオレンジ色の球が当たる。
「……光った?」
それを見たのは一番青年の近くにいたプレシア。 彼女は見つけたと同時に淡い光を放つそれに視線を奪われていた。 なんと暖かい光なのだろうか――まるでこの世界すべての奇跡を詰め込んだ命の輝き。
その中央に赤い一番星を携えた球体が、孫悟空の身体に触れた時……
「ご、悟空さん!?」
「孫くん!!?」
青年の身体は、黄色い輝きに包まれていく。
それは先ほどの黄金色よりもはるかに弱い光だった。 それでも十分すぎるほどに眩しいその光は、より一層強く悟空を取り囲んでいく。
「…………え?」
光が――縮んでいく。
決して光度小さくなっている意味ではなく、大きさそのものが変化しているというモノ。 その現象に皆が気付いた時には、青年の身体は既に120センチほどの大きさまでに縮小していた。
そこまでいって収まる謎の現象。 消えていく光りが桜吹雪のように黄色い残滓をあたりにちりばめていく。
「うそ……」
「なんだか」
「どこかで」
「見たことあるような……」
ようやく現れる青年だったものの全容。 それが皆の目に移るとき、彼らが最初に思ったのはやはりオレンジ頭の彼女の事であっただろう。
悲壮だった部屋の空気が、どこか訳のわからない温度にまで変化した時だ。
「――あり?」
『!?』
一人の子供の声が、部屋の中に木霊する。
「なんだ? オラどうしちまったんだ?!」
「ゴクウ……あんた」
「なんだよアルフ――ん? なんかおめぇデカくなってねぇか?」
「……えっと、そうじゃないんだよゴクウ」
「?? なんだよ、やけに歯切れが悪ぃじゃねぇか」
「う~~ん。 フェイトぉ~~」
「わ、わたし? ……どうしよう」
コロコロ変わる事態にもはや収拾がつかないアースラ組。 初めに目が合ったアルフに悟空が無邪気な質問をしている中で、せっせとバトンを放り投げたオオカミ少女をフェイトがフォローする。
どこから取り出したのか、小さな手鏡を彼に差し出すと、そのままにっこりと笑うだけ。 そんな姿が不思議でたまらない悟空は、その向こう側に映る人物とニラメッコ。 お? 気が合うじゃねぇか。 こいつオラと一緒の事しかやんねぇや――などと騒ぐこと20秒が経過する。
……そこで少年は、やっと気づいてくれた。
「なんだこれ鏡か? ――はは! オラこどもになっちまってらぁ! ……い゛い゛!?」
それは、とてつもないキレをもった乗りツッコミであったと明記しよう。 えらくなつかしいリアクションを取る彼に、周囲の疑問符は既に山のように作られていた。 これをいったい誰が片付けるのかは置いておき――
「どうなってるのかしら」
「なんだよ! どうなっちまってんだーー!?」
走る。
「奇妙奇天烈を絵にかいたような奴だったが、まさか死に掛けてこんなふうに復活するなんて誰が思うもんか」
「なんでオラ子供になっちまってんだーー!!」
「悟空さん……」
走り回る。
部屋中をほこりまみれにする悟空は軽くパニックになる。 背が圧倒的に縮み、既にアルフ程度まで小さい彼はまるで第21回天下一武道会――つまり、12歳当時の背丈にまでおちこんでいたのだ。
そりゃあ部屋中を駆け回ったって仕方ないだろう。 そんな彼に、皆がどうしていいかわからない眼差しを取ること数秒の事であった。
「なんでだーー――――…………ま、いっか!」
『いいわけあるかッ!!』
「あわわ――ぐへ!」
……なんだか勝手に自己解決してしまったようだ。 何ともあと始末に困らない人物である。
その彼を逆に放っておかない常識人たちは、一斉に悟空を囲もうとする……するのだが。
「なんでもいいや! とりあえずなのはんとこに行ってこねぇとな。 あいつ、今回すっげぇ無茶したもんなぁ」
「……あ」
「アイツの気……こっちか? ――――オラちょっと見てくるーー!!」
『いっちゃった……』
悟空は医務室へと向かっていく。 自身のケガも、状態もまるでなかったように振る舞う彼。 どうしてこんなことが起きたのか、なぜ彼にあのような変化が起きたのか……
「時間の逆行? それとも内在時間を操作しているとでも……」
プレシア女史が、きっといつか解いてくれるかもしれない……自身の握っているオレンジの水晶をカギとして……
皆がこの奇跡を理解せず、目の前に転がる石ころがどんな常態かを想像もできないアースラ艦内。 青年は少年になり、少女たちはこの事件で少しだけ大人になった――
「あ、悟空! そっちは食堂!!」
「あり? そうだっけか! はは、まちげぇた!」
……かもしれない。
わたし、高町なのは――9歳。
つい最近までごく普通の小学生だったんだけど、二つの石とふたりの男の子と出会ったことで生活が反転! とっても忙しい毎日を送って……居たはずなんですが。
「……あれ?」
なんだか、それがとっても信じられなくなっていました。 目が覚めて、知らない部屋に身体に合わないベッド。 全部が真っ白のそこはなんだか寂しい印象です。 それだけなら別にどうってことはなかったのですが……
「悟空……くん?」
わたしの目の前。 すぐそこに置いてある“ちいさな”椅子に器用な態勢で眠っている男の子に、わたしはどうしても今までの酷い出来事が夢なんじゃないかって錯覚してしまうのです。
そうだよ。 アレは悪い夢だったんだ――悟空くんはずっと小さいままだったし、ターレスなんて人もいなくて……大猿になんて悟空くんは変身なんかしていなくて。
「あるわけないよ……って、言えればよかったんだけどな」
けど、やっぱりどれも本当のことだって、おなかの痛みが教えてくれるんです。 ぽっかり空いたはずの傷は多分塞がっていて、でも確かに痛い箇所はわたしを現実に引っ張ってくれました。 ……でも。
「悟空くん、あの時たしかに大人の姿だったような?」
倒れる前の出来事と、今起こっている現状が一向にかみ合わないのですが……誰か説明してくれないでしょうか……あ、誰もいないや。
「……んぐぐ」
「あ」
起こしちゃったかな? ……なんだ、寝返りか。 ん~~あの時の悟空くんが本当だとしても、今の悟空くん――なんかかわいいかも。
いやいや年上なんだけど、でもやっぱりどうしてもそんな気が起きないんだよね……どうしてだろ?
「――ん!」
「あ……」
今度こそ起こしちゃった。
黒いウニみたいな髪がもぞもぞ動きながらこっち見てる。 あはは、目を擦っちゃってかわいい~
やっぱりダメかも。 なんだか悟空くんが年上さんに見えない。
「あ! なのは起きたんか!!」
「わわっ、いきなり暴れないで――」
「おわっ!? ……いてて、椅子から落ちちまった」
「にゃはは……」
うん。 とっても元気で騒がしい、悟空くんはこうでなくっちゃ。 ……ていうより、ここはどこでわたしはどうなっちゃったの? わからない事ばかりのわたしでしたが、遠くから聞こえる足音に鋭く反応してくれた悟空くんは。
「お! この気はリンディだな。 てことは飯の時間か!?」
「……えぇ~~」
事情……説明してよ。
「あ、なのはさん!?」
「おはようございます……」
「よかった。 もう、いいのかしら」
「はい。 おかげさまで」
悟空くんの歓喜の声と同時に入ってきたのは艦長職に就いてるリンディさん。 青い制服の上に桃色の布地のエプロンをつけてお母さんみたい。 あ、手に持ってるの土鍋かな? もしかして中に入ってるの……
「おかゆ……ですか?」
「ふふ、正解。 病人食の定番ってところかしら」
「ええーーおかゆ!? おらもっと歯ごたえの良いもんが――」
「別にあなたには用意してないのだけど……」
「いいじゃねぇか。 おら一応怪我人だったんだぞ?」
「もう筋肉痛すらないくせに。 この人はもう」
「にゃははは……は」
この二人、なんだか妙に仲がいい? よくわかんないけど、会話が何となくお父さんとお母さんみたいに聞こえる……へんな気分。
「あの」
「どうかしたかしら?」
「戦いの方は――」
「……そうね。 なのはさん、ずっと眠ってたものね」
「はい」
あれ? なんか変な空気が。 わたし何かわるい事でも言ったのかな? リンディさん複雑そうな顔になっちゃった。 ……どうして?
「終わったんですよ……ね?」
「えぇ、そうよ。 悟空くんがあのターレスを打ち倒してすべて終わり。 死に掛けた悟空君もなぜかあの姿になってほとんどのケガを回復させてハッピーエンド。 信じられないことの連続でしたけど」
……あ。 疲れの理由、悟空くんだ。 よし、リンディさんに悟空くん用の心得を言ってみよう。 これさえ念頭に置いておけば、今後何が起きても大きなショックは受けないはず!
「……わたし思うんです。 悟空くんに対して、常識を持ち出したらきっと負けなんじゃないかって」
「…………それができるのならこんなに苦労しないわよ」
「ですよね」
『はぁ』
「なんだよおめぇたち、ため息なんかついちまってよ」
『なんでもないですよ』
「ん?」
リンディさんにあぁ言ったけど、実はわたしも案外できてなかったりしてます。 だって無理だよぉ、悟空くん平気で奇天烈なことをしでかすんだもん。
「にしても。 なのはが目ぇ覚ましてよかったな」
「え?」
「だってよ? おめぇ“三日”はずっと寝てたんだぞ」
「……はい?」
えっと? 悟空くん、いま何て言ったのかな。 みっか? 3日っていったのかな……それって結構な時間なのではとわたしは思うのですが。
「でもま、よかったじゃねぇか。 一生目を覚まさないんじゃねぇかって、ユーノやフェイトたちが心配してたくれぇだったしよ」
「……そっか。 みんなに心配かけちゃったよね」
「そうだぞ? あいつら、寝ずの番をする! ……なんていってよ。 さっきまでここに居たんだ」
「そうなの!?」
そうなんだ。 あとでみんなにお礼言わなきゃ。 きっとすっごく疲れてるのにそんなことさせちゃったんだもん。 とっても大変だったはずだよね。
「いいんじゃねぇか? あいつ等がやりたくてやったんだしよ」
「え?」
「いまだってオラがリンディに頼まれてよ、無理やり筋斗雲で部屋に連れて行ったんだ。 だからそんな気負うとかしなくてもいいはずだと思うんだ」
「悟空くん……」
すごい。 まるで心を読まれちゃったみたい。 あんなにトウヘンボクさんだったのが嘘みたいな対応だよ……ホントに中身はお兄さんなんだ。
「さってと、そろそろ地球に着く時間だな」
「え? まだついてないの!?」
「そだぞ。 なんていえばいいんかなぁ?」
「いま、地球――時の庭園での次元空間は非常に不安定なの。 そして微弱なのだけどあの星を取り囲むように漂う謎の力場。 それらが相まって、いわゆる時差が生じているの」
「……じさ? 浦島太郎さんみたいなあれかな」
「たぶんそれで間違いないわね。 ふふ、なのはさんはお利口さんで助かるわ♪」
「その反応から察しますと……」
「えぇ、まったくそのとおりの事が起きたから大変だったわよ」
「はは……は」
リンディさん。 心中お察しします。
「ん!?」
「どうしたの悟空くん?」
「なんか他にも3人くれぇこっちに近づいてくる奴がいるな」
『え?』
ユーノくん達以外の人が来るの? 誰だろう。 わざわざお見舞いに来るような人ってこの船にはもういないと思ったんだけど。
「失礼します!」
「お取込み中のところ申しわけありません!」
「……あ、キミ目が覚めたんだね。 よかった」
「えっと。 どちらさまでしょうか?」
みんな知らない人。 局員の人っていうのは着てる制服でわかるけど、みんなそれぞれ包帯巻いてる……けが人さん? 右の人から腕、脚、おなか。 グルグル巻きにされてとっても痛そうにしてる。 ホントにどうしたんだろう?
「……あ!」
「悟空くん?」
「おめぇたち! オラがあんとき仙豆渡した3人だな!? なんで怪我したまんまなんだよ?」
「え?」
「そういえば」
センズ……あ、仙豆。 たしかなんでもケガを治しちゃうすっごいおマメだったっけ? それを渡したっていうけど、だったらどうして怪我をしてるの? 治ったそばからまた大怪我しちゃったのかな。 だったらそれはそれでかわいそう……
「いえ! 実はあの後3人で考えてまして」
「考えた?」
「はい。 コレの効能は艦長を見て確信に至っていた自分達ですが、正直、迷ったのです」
「おう……?」
あ……あの人たちがいきなり腕を突きだしてきた――っていうより! あの手に持ってるのって……
「これを自分たち程度の怪我人が使っていいのか……と」
「いや、使うべきだと思うぞ? 全員、骨が折れてたんだしよ」
「それでもいま、自分たちなどとは比べてはいけない程の重傷者が居ます」
「……あ」
「臓器損傷。 これは立派な重症です。 こんな彼女に使わないで自分たちが使っていたと思うと……それこそ一生後悔するところでした!」
「わ、わたし……」
「是非! 使ってください――失礼します!!」
……あ、行っちゃった。 言うだけ言って3人ともベッドの近くにある机に“ソレ”を押し付けるように強引に置いていって。 きっとあの人たちも痛い想いをしてるはずなのに。 ごめんなさい。
「んー、これじゃ使えばよかった――って言えねぇな。 あいつ等、結構いろんなこと考えてたのな」
「彼等は……まったく」
「ま! とにかくこれでなのはの怪我も治せる。 何はともあれよかったじゃねぇか。 さっそく使うぞ!」
「あ、うん」
転がってる仙豆をひとつ手に取って、手で転がしてみて……そっと口に持っていって。 若干硬いから強く噛みしめると、とっても大きい音がする。
これは豆を食べてる音なんだよね? なんだか生の大根かじってるみたいなんだけど……
「ん!?」
「お」
「もう、驚かないわよ。 これについてはいい加減慣れたものよ」
「おなかの痛みが消えた……やったよ悟空くん! 治った!!」
「はは……よかったな」
「うん! ――局員のみなさーん! ありがとーー!!」
『ははは!』
そうして高町なのはの、とても長い4日間が終わりを告げようとしていた。 悟空が怪物になり、彼とうり二つの人物に殺され――黄金を纏う『あのひと』に救われて。 その彼が一体誰なのかもわからないままに、春の季節は終わりを迎える。
アースラが海鳴に帰還する最中に、孫悟空がこの世界に来てから、ついに3週間目を迎えようとしていた。
悟空の世界放浪は、まだ始まったばかりである。
悟空「おっす! オラ悟空!!」
なのは「悟空くん、なんていうかその……」
悟空「どうかしたんか? えらく歯切れがわりぃじゃねぇか」
なのは「あ、その……なんていうか」
悟空「??」
士郎「あの子はまだ9歳。 だけどいまだ蕾のその花には、きっと測りきれないほどの思いが咲き誇るのを待っている――――」
恭也「嗚呼、このなんともどかしい思いか。 叶うことなら打ち明けたい……けれど思いが届かないときは……」
桃子「二 人 と も!?」
二人「……すんません」
悟空「変な奴らだなぁ。 ま、いっか! とりあえず帰ってきたんだ、めし食って! 風呂入って――寝るぞお!!」
ユーノ「そうですね。 ボクもなんだか……ふぁあ」
悟空「はは! でっけぇアクビ! そんじゃまずは風呂だな風呂!」
美由希「よし! 悟空君、リベンジだ」
悟空「なんだおめぇ、またいっしょに入るんか? やめといたほうが――」
美由希「所詮はわたしの心が弱かっただけのこと――いざ! 尋常に勝負!!」
悟空「オラ子供じゃねぇんだけどなぁ……アイツがやりてぇってんならいいか」
???「ぎゃああああ!! なにがどうなってるのおお!!」
なのは「あれ? おねぇちゃんは!? ――居ないや」
ユーノ「温泉の恐怖再び……とりあえず次回!!」
悟空「魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~ 第31話」
なのは「また逢う日まで?」
ユーノ「悟空さん、ミッドチルダに行くってほんとですか!!?」
クロノ「向こうへ行ったら、半年は帰ってこれない。 少しの間のお別れだ」
なのは「お別れ……なの? そんな……」
悟空「……?? 何言ってんだおめぇ達――あ、モモコーー! おら、晩飯までにはかえってくるからなぁ!」
クロノ「だから、次元転移は許可できないと――」
悟空「へっへーー! オラ、新しい技てにいれたんだ」
全員『え?』
悟空「いいか、これはな――――ん? もう時間か。 また今度だな、じゃ!」