魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~   作:群雲

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まさかまさかを繰り返す今回。
ラストがちょっとアレなのは、いろいろと暗い話が続いたから……そう思ってくださると幸いです。

りりごく42話 どうぞ。


第42話 油断?! 生き残るのは二人に一人

 華麗な曲線描きし夜の星。 白銀に輝く光は大地を静寂の中から見守り続けていた。 たとえ、どんなに過酷な物語が在ろうとも……彼は決して贔屓はしない。 常に皆平等に太陽の輝きを映し出しているそれは健気でありながら孤高で孤独。

 それが、どんなに寂しいかなんて人間が計り知れるモノではないし、あんな強大な彼に寄り添ってあげることなんて誰にもできない。 人間なんて、只、照らされることでしか己の存在を見せることなんかできないのだから。

 

「はぁ」

 

 そんな彼と同じ性を持つ少女……もうすぐ成人を果たそうかという彼女は軽い溜息をついていた。 今日はこんなにも星がきれいなのに、誘おうとした言葉を遮って出てきたのは……

 

――――悟空が修行に誘って来たから、俺も一緒に行ってくる。 心配するな、すぐに帰って来るから。

 

「恭也のバカ……」

 

 その言葉にどれほどの思いの丈が込められていただろうか。 男心なんかわかってやらないと、長い髪をふり乱した彼女は窓枠に手を這う。 妖しくも艶のあるそれはゆっくりと木製の枠をくすぐっていく。

 

「なのはちゃんがあのヒトになにか受けてるってのはすずかから聞いてたけど……だけど恭也まで白熱しなくても」

 

 置いてきぼりは嫌なのに……歳不相応な少女の声を喉もとで隠して、彼女――月村忍は月光のもとに潤った髪をまた一振り。 綺麗に流していく。

 

「そもそも、悟空さんも悟空さんなのよ。 人の恋路を応援するような事を言っておいて、いとも簡単に引き裂いていくんだから」

 

 そこから出た言葉は美しさに反比例した嫉妬混じりの愚痴。 男相手に……などと申せば鋭い爪で裂かれそうなほどに、いま、彼女は真剣に思い、悩む。

 

「早く……」

 

 うつむき。

 

「返してよ……」

 

 目元をうるわせ。

 

「わたしの――」

 

 最後の境地を踏み出す刹那――――…………彼女の背後から空間が逃げていく。

 

「恭也……」

「おい、キョウヤおめぇ呼ばれてんぞ」

「おい悟空。 これって住居不法侵入――というより人の彼女の家に勝手にな!」

「はは! わりぃわりぃ。 すずか以外だと、後はシノブの気ぐれぇしか辿れなくってよ」

「……それはそうだが」

 

「…………え?」

 

 ついでに逃げていく悲壮感。 空いた心の孔が埋められていく感覚に、思わず呆ける忍はよろめき立つ。

 

「…………」

「忍!」

「……あ、え?」

 

 誰よりも速く気付いたのは悟空。 でも、誰よりも遅く動いたのも……悟空。

 

「大丈夫か?」

「え、えぇ」

「……」

 

 一歩さがる彼の足元。 軽く微笑んだ後のそれは、まさしく気遣う大人のよう。 その視線の先にある、倒れそうだったお姫様を颯爽と抱き上げる剣士の様はおとぎ話のようである。 その物語を見過ごしていくと、さらに後ろにもう一歩。

 

「さってと……オラはこの辺で」

「……悟空様」

「お?」

 

 いつの間にか空いていた出入り口。 端正なドアの向こうに立っていたのは、そのドアよりもさらに端正……いいや、淡麗と形容できる藍色の女性。 綺堂というミドルネームを持つ彼女に、悟空が片手を上げるあいさつをすると、そのまま視線を上下させて息を吐く。

 

「少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「いえ、その……」

「なんだよ、言いたいことあんならさっさと言っちまえ?」

「え……えぇと」

 

 音を立てずに閉まる忍の部屋。

 さらにどうにも後がつかえる喉元に、若干ながら傾げた悟空の首。 45度の傾斜を誇るそれに対して、ヘッドドレスを冠する彼女は只まっすぐに答えてやる。

 

「どうして……半裸なのでしょうか?」

「ん? あぁ、これか」

「え、えぇ。 正直、女性の部屋から出てくるには誤解を多く含ませる格好ですから、気になって……いえ、決して悟空様を疑うわけではないのですが――」

 

 めずらしく狼狽えて見せるのは、決して悟空の半裸に目が行ったからではない。 その、堂々たる態度に、思わず何時もの通り外へ出してしまいそうになった自分を戒めるための一瞬のバグのようなものである……というのは彼女の言い訳。 本音はやはり前途の通りなのだが。

 

「いやちょっとよ」

「はい?」

 

悟空に取って、そんなことはどうでもいいようで。 やはりいつものように後頭部をさする彼は苦く笑う。

 

「昨日な、とんでもねぇ失敗しちまってよ。 偶然、オラ一人だけだったからうまく行ったみてぇだけど、下手したらキョウヤがユーノの二の舞になるところだった」

「……はぁ?」

「まぁ、いろいろあったんだ」

「……そうですか。 ですが、それはそれで悟空様、このままでは外に出すことは出来かねます。 どうか、是非を問わずにお召し物を……」

「メシ? 出んのか?」

「……なにか、服を着てください」

「あぁ! そういうことな。 そうならそう言ってくれよ、わかんねぇだろ?」

「……」

 

 どこからともなく取り出した紳士服。 このあいだの授業参観を思い出しそうになる服飾に、堅苦しいとニガイ顔。 悟空は、赤いネクタイを締めると、差し出された革靴に素足を通す。

 

「靴下を……」

「あれはいいや、なんか地に足が付いた気がしねぇから」

「そ、そうですか」

「ああ」

 

 黒いソックスを片手で抑え、そのまま廊下の窓枠越しに空を見る。 既に頭上を通り過ぎた白銀の星は、今はまだとサイヤ人に微笑むかのように、やんわりと輝いている。 三日月ともいえる曖昧さは、今月の“あの日”が近いことを悟空に告げるのである。

 それを見届けた悟空は、そのままノエルに振り向き。

 

「服、あんがとな」

「いえいえ、あのままでこの屋敷を出られるよりは全然」

「それもそっか。 あ、ところでキョウヤのヤツは……あ」

「……こほん。 いまの悟空様ならもしやと思いますが、あまり『無邪気』を働かせないよう、お気遣いください」

「そんな難しい言葉で言うなって。 それにオラだって『そんくらい』わかっぞ」

「……それは何よりです」

 

 今はもう閉ざされた忍の部屋。 あまりにも静かなのは、その実中では情熱を通り過ぎた感情渦巻く世界が支配しているのだが、 いかんせん、それにちゃちゃ入れるほど、悟空は暇ではないし――第一、趣味じゃない。

 

「そんじゃキョウヤはこのまま任せるとして」

「……ふふ」

「オラはこのまま帰らせてもらうかな。 ……せっかくだから、そうだな」

「はい?」

「あんときみてぇな格好だし、前になのはの奴がもう一回着ろってうるさかったしな」

「ええと?」

 

 そしてつぶやかれる言葉は、最近よく甘えることをするようになった女の子の要望。 でも、叶うことがなかったそれが偶然にもそろってしまった今、悟空の中にあるサービス精神というものが静かに動き出す。

 

「前に、ノエルには見せたんだよな」

「……?」

 

 拳を……握らず。

 

「最近じゃ修行の成果なんかな。 結構スムーズにできるようになったんだぜ?」

「なにを、でしょうか?」

 

 構えも取らず、ただ自然体で佇みながら……彼の身体に気流が舞う。 逆立つように吹き上がる頭髪は金。 フェイトよりも上質な光に満ちたそれは、ノエルの目をもってしても神秘と言わざるを得ない輝きを放っていた。

 彼は、超サイヤ人に変異“していた”

 

「……コレの事だ」

「ご、悟空様?!」

「……? なんだよ。 お前、これ見るのは2度目だろ? 何を驚いて――」

「あ、ああ。 あのときは! 確か、自分は別人だと!」

「……そういやそうだったな」

 

 メイドの狼狽えようは無理もない。 是非もなく、姿形が変わり果てた青年はある意味では人の身ではないのだから。 揺れる尾も、凍る世界のような碧の瞳も、何もかもが変わってしまった悟空には驚くことしか出来なくて。

 

「どういう原理で……あ、衣服も少しばかり光に照らされて明るい色合いに」

「……大体の奴が同じ反応なんだな。 やっぱり、滅多にやるなって言ってたプレシアの判断は間違いじゃねェのか。 ……マズイ、アイツに止められてたの一瞬忘れてた……どうすっかなぁ」

「……はぁ」

「さてと」

「へう?!」

「いちいち変な声を上げてんじゃねえよ。 ……オレはそろそろ帰るから、あいつのことは頼む」

「……」

「い い な?」

「は、はい!」

「よし」

 

 デフォルトで機嫌が悪く見える超化悟空。 フレアの無い、若干落ち着いた感じに見えるのもなのはたちとの修行の成果……だろうか。

 

「まるで悲しみを背負った眼差し――」

「そんなことねぇ」

「数多くの強敵(とも)と拳をまじわせ……」

「それはあってるな」

「一子相伝の技を、肉親同士で取り合ったような……そんな悲劇を籠もらせた――」

「あってるような全然違うような……いや、そうじゃなくてさ」

「はい?」

「オレは帰るんだっていったろ。 だから……あぁいいや。 とにかくもう行くからな、キョウヤとすずかによろしく言っておいてくれ! んじゃ!」

「はい……」

 

 悟空は超化も解かないまま、窓枠に足を掛けると体重を乗せる。 いつものヤツはどうしたのかと、聞くやつが居ればやっているであろうその質問は、今の時間を考えろと言う答案で十分であろうか。

 それは、悟空も承知の上。 だから……だけど。

 

「今日は胸の内が騒ぐんだ」

「……?」

「いつもみたいなわくわくじゃねぇ。 まるで飲み込んだ石ころが暴れ回ってるような……おかしな感覚がするんだ」

 

 落ちる水滴は汗。 動かされたのは眉。 彼は今、今月初めての焦りの顔をするに至る。 孫悟空はいま、月夜に向かって空を舞う武術を行使する。

…………約束の、時が近づこうとしていた。

 

 

 

 同時刻、ビル街。

 

 先刻からの戦い。 ふたり同時の相手は、いかに感覚を研ぎ澄ませることが出きるようになったなのはも相当の苦労を強いることとなった。 力も、経験もおそらくで相手が上。 ただ、習った先生が途方もなく強かったから、普段から感じていた力の差よりは遥かにマシ……それだけのことで、騎士相手に彼女は大健闘をしていた。

 

「はぁ――はあ! ……ふぅ」

 

 乱れ始めて数分の呼吸音。 力が落ちたと感じるのは気のせいではないし、速度も思う存分に発揮できないのも承知の上。

 

「くらえ!」

「まだ!」

 

 その間にも交わされる攻撃達。 赤いバリアジャケットのハンマーを、杖を片手に捌いていくと、今度は横合いに刀剣がきらめく。

 

「レイジングハート、お願い!」

「くっ?! 障壁か!」

 

 それを、かつて大猿の攻撃を反らしたフェイトのようにいなしたなのは。 真っ向から守るのではなくて、受け流すことで衝撃を緩和したそれは見事に狙い通りの構図を描いていく。

 

「どうなっている。 これでもう30手目だ、なのにどうしてここまで凌げる?!」

「戦い慣れとかじゃねぇ。 動きはまだまだ粗削りだし、無駄なところも多い。 けど!」

「ま、まけない……」

『どうしてここまで立っていられる!!』

 

 ふたりとの邂逅から既に40分の時が流れ、レイジングハートを握る手には血がにじんでいた。 それでも、その手をはなすことはしないしできない。 いま、ここであきらめるのは簡単だろうけど、そんな選択肢なんて……

 

「選ぶくらいだったら……死んだ方がましだもん」

 

 誰かさんを彷彿とさせるあきらめの悪さ。 もがき、苦しみ、それでも信じた道を歩んでいく。 間違いもあったかもしれないその道は、だからこそ貫いたときはいちばん輝かしくて。

 

「馬鹿な――」

「……ちっ」

 

 その光景を見た騎士たちからは、苦しい声が飛んでくるのであった。 出来ることなら反らしたい……それほどに純潔な決意の様を。 見せつけられた彼女たちの心には痛烈な刺激が走り抜ける。

 

「なにも殺すつもりはない。 ただ、お前の魔力が欲しいだけなんだ」

「何のために……!」

「言うかよそんなもん……」

「後ろめたい事なんかに……手なんてかせないよ」

『…………』

 

 辛い問答。 決して理由のない襲撃でも、意味のない略奪でもない。 これはただ、大事に思えるモノのための『たたかい』であって……であるのに。

 

「それでも……なにがなんでもいただかねぇといかないんだよ!」

「はああ!」

「……くぅ!?」

 

 辛い状況はなのはの方。 でも、辛い顔をしているのは……?

 聞こえてこない悲鳴は、金切り音をかぶせられてかき消されていく。 見るな……こんな困り果てた騎士たちを……と、語るかのように武器たちが騒ぎ立てる中。

 

「……あ」

「!」

「――――ッ!?」

 

 なのはの回避は、一歩間違えた動きをしてしまった。 狂う動きは、身体がもはや限界だと訴えるアラーム。 過剰分泌されたアドレナリンが誤魔化してきた疲れが、ついに限界を超えてしまったのだ。

 なのはは、空中にて足を踏み外す―――首元に騎士の剣が迫る中。

 

「……ぅ」

 

 響くうめき声。 反響する……コンクリートを砕く音。

 

「しっかりしな!」

「……あ」

「なんだ」

「アイツは?」

 

 騎士の剣は少女が居たところを確かに通過……否、透過していた。

 残像拳よりも緩いそれは常人で何とか判別できる高速移動。 野を駆ける野生が如く気高いその人物の拳が、空を突くとき――オオカミが吠える。

 

「アルフさん……」

「よくもやってくれるじゃないのさ。 あいつと“わたしたち”の友達にこんなことして、どうなるのか判ってるんだろうね!」

「増援か」

「……」

 

 その遠吠えに、安堵したのはなのはだけだったのか。 どうにも複数聞こえた気がしたため息に、耳を動かすオオカミ女はなのはを地面まで誘導。 そっと寝かせるとそのまま構えを取る。

 

「子供相手にここまでやったんだ。 あんたら、なにされても文句言うんじゃないよ」

「……ふん」

「いいだろう」

 

 狼の牙、風を超える風となる時が来た――

 

「はあああ! 鉄拳粉砕!!」

ゼロ距離(インファイト)!?」

「見てくれ通りか!」

「オオオオオンッ!!」

 

 振りぬいた拳が風になる。 聞こえてきた裂く音は、そのまま自身のダメージとなっていると気付いた騎士の一人は後退を余儀なくされ……敢えて前進する。

 

「この距離――私向きだ!」

「武器がつかえて動きが悪い癖に――よく言うよ!!」

『はああ!!』

 

 暴風のようなジャブを涼しい顔で受け流す騎士、しかし内心では焦り濃い色が充満している。

 

「くっ! (なんて激しい乱打! ここまでの者は“あの時の”孫ぐらいしか――)」

「くぅうらえええ!!」

 

 右のストレート、左のフック。 さらに戻した右でアッパーカット。 接近も接近のボクサースタイルのアルフは、そのまま相手に剣を振らせる隙を与えない。 長ものを持った相手の、一番恐ろしいのは武器が邪魔以外何者でもなくなること。

 それをわかっているからこその陣取り合戦は見事アルフが勝ち取っていた。 騎士の劣勢が続く。

 

「せいやああ!」

 

 気合一声!! アルフが悟空のように雄叫びを上げると、オレンジ色に輝いた右足が――足刀が騎士のテンプル目がけて飛んでいく。 すかさず防御をまわす相手も、その勢いに呑まれて。

 

「……ふ」

「あ、あるふさんッ……だめ」

「え?」

 

 “アルフから距離を離していく”

 

「策に溺れた……いいや、考えなしの乱打があだとなったな。 こうも距離を取らされれば、貴様のインファイトも意味はないだろ」

「そんなもん! あんただって一緒だろうに――」

 

 距離にして10メートル。 追撃にかかる時間にして2秒の範囲は……まさに致命的だった。

 

「レヴァンティン」

[Explosion]

「!?」

 

 またしても聞こえる撃鉄の音。 騎士の女性が本気の雰囲気を醸し出す中、力を溜めるように“溜め”の動作に入っていく。 同時、空気を焼きつかせるような温度を発熱させる剣。 そこから炎が噴き出すと……

 

「受けろ!」

「なに!?」

 

 脚力に任せて突撃を敢行する。 一瞬の戸惑いがあったのはアルフ。 相手の出方を伺った、その守りの姿勢が仇となった行動はもはや致命的。

 炎刃が眼前に迫る。

 

「紫電――」

「……このお!」

「一閃!!」

 

 解き放たれた一擲。 向かい打つアルフの障壁。 同タイミングのそれは激しい火花を散らすと……いとも簡単に勝負がつく。

 

「がは!?」

「アルフさん!!」

「…………」

 

 切り裂かれたアルフの障壁。 肩口から脇腹まで落ちてきたダメージ。 なぜ、切り裂かれていないかは受けた本人が一番知りたいだろうが、胴がつながっている事実はなによりも安堵させるのには十分。 ……でも。

 

「こ、こんな……いっしゅんで」

「アルフさん! アルフさん!!」

 

 片膝ついて、肩口からのケガをかばう彼女に勝機が失せていく。 もう、動けないと誰もがわかる症状に、周りにいるモノ全てがこれからの展開に心を固定する。

 もう、あるのは絶望しかない……そのときである。

 

「はは……あはは……」

「気でも狂ったか……?」

「あぁ、そうだねぇ……狂いそうだよまったく……おそいんだからあいつは」

「なに?」

 

 笑ったのだ……アルフは。 もう、反抗する力すら奪われた彼女に、今できる最後のあがき。 待ち人が来たと、向こうで倒れるなのはを勇気づけさせることが今、彼女が出来る最後の抵抗なのだろう。

 それに、大声で答える者がいるのだからこれは正解だったであろう。

 

 

 はあああああああああああ――――――だああああああああああああ―――――ッ!!!!

 

 結界が震える。

 おびただしい量で向ってくる高音は、すぐさま轟音へと成り変わる。 崩れそうになる世界、消えそうな時間軸のずらされた結界範囲。 世界が怯えるかのように震えるいま、次元世界最強を名乗れる男が――結界を物理的に粉砕しようとしていた。

 

「ま、まさかこの空間に物理干渉を――しかも外部から!?」

「ありえねぇ! こんなことできる奴なんて聞いたことねぇ!」

『くすくす……』

「なに……?」

「なんなんだよ!」

 

 もう、ボロ雑巾のようにくたびれた女どもがおかしく笑う。 常識にとらわれた愚か者たちを嘲って、嘲笑するそれは耳障りこの上ない。 だが、非難の声を遮って、彼女たちの笑い声は止むことを知らない。

 

「主役は後からって……まもりすぎだよ」

「あぁ、ほんとさ……」

『こいつら、さっきから何を――』

 

 ついに見せ始めた余裕。 何がここまで彼女たちを安息させる!? こんなになって、戦う術すら破壊され、機能停止させられ、それでもなんでこうも――おかしい! ありえないと困惑する彼女たちは……

 

「あ、あんたら……逃げるんなら今の内だ……わるいこと、いわないから」

「なんだと?」

「なにがおかしい!? 答えろ!」

「……………………………………」

 

『――――ッ!!?』

 

 文句の末にでてきた『回答』に、身を大きく奮わせていく。

 

 

 

 ――――雄叫びが上がる前の時間軸。

 

「なんだこれは……前に見た結界ってヤツにそっくりだ」

 

 その者は、境界線上に佇んでいた。 見えるむこう側、だが、その実すべてを感じることがないそこには、一歩たりとも立ち入ることが出来なくて。 力とはある種の別方向のなにかが、まるで彼を邪魔立てするかのように、世界と世界を遮っていた。

 

「フン……あの時と同じモノだって言うんなら、今のオレにはどうってことはない……」

 

 そんなもの。 そう捨て置く彼は空間に手を沿うように置いてやる。 力強く、逞しく握っていくと……静電気のような感電に襲われる。

 

「ちぃ。 あんときのとは随分と違うみてぇだな」

 

 狂った計算式に内心からの毒づき。 舌を打つと、嫌でも鋭い視線を余計に吊り上げる。

 

「今のオレの力に耐えるなんてな……しかも」

 

 段々ときな臭くなる目の前の結界。 空気も、大地もすべてが狂っている境界の向こう側に大きく興味を向ける彼。 気になる……断然気になる向こう側。 なぜなら。

 

「この向こう側から気が“すべて”感じられない」

 

 動植物、微生物、大気から地表から海面まですべての生きとし生けるものの気配を感じないから。

 

「ありえねぇ。 たとえどんなに小さい気であろうと、この距離でわからねぇはずは……」

 

 揺らし始めた尾は不規則。 言外ににじみ出る警戒心を表すソレは、動きを止めることを一向にしない。

 

「……気になる」

 

 行けばわかる。

 

「……この、とんでもなく嫌な感じ」

 

 道が塞がれていれば飛んでいけばいい。

 

「まるで……いや、今は止めておこう。 ……そんじゃ、行くのは確定だとして」

 

 そして、飛んでいく空さえないというのならば。

 

「…………この結界には消えてもらわねぇとな」

 

 眼前に立ちふさがる邪魔者全てを、消し去ってでも通り抜けるまで――ッ!

 

「…………ふぅぅぅぅぅ」

 

 うねる波。 際立つ結界。 全ての時間をずらしたそれに、魔法以外のアクセスなどできるモノではない……はずなのに。 薄暗い世界に金色のさばきが下る。 このまま邪魔をする愚か者に、極大の戦哮を見舞いしよう。 さぁ、聞け、怯えて竦め――これが、この男こそ。

 

「はあああああああああッ!!」

 

 最強の戦士なのだ……

 一瞬だけの抵抗虚しく、たわんだ風船のようにわななく結界。 強固さなど微塵にもないそれに、もう抵抗の余地もない。 だからだろうか。

 

「開いたな……ほんの少しだが」

 

 叫んだと同時に送り込んだ気。 それが全体に作用したと思った時には、ひと一人入れる程度の小穴が形成されていた。 そう、まるで無理に破かれるくらいなら……そんな意思さえ感じるかのような挙動で。

 

「……ん?」

 

 ひらりと舞うのは魔力の残滓。 白銀とも見えるそれは彼とは正反対の色彩。 だからなのだろう、気になって差しのべた手で……触れた瞬間に目を見開く。

 

「い、いまのは――」

 

 碧色の瞳が見開かれ、握った残滓を握りつぶす。 霧散していく残骸に破片、さらには内包されていた……気。

 魔力以外で、一番違和感を感じたそれに思わず、喉を鳴らしながら息をのんでいた青年がそこにいた。

 

「どういうことだ」

 

 狼狽える。

 

「なぜこの気が! こいつは……」

 

 思わず握りなおす右手は微かに震える。 力を籠めすぎて、筋肉が微細な運動を続ける中、青年の脳内にはたった一つの高笑いが木霊して。 最悪だった姿が映しだされる。

 

――――お前は、俺に殺されるべきなんだぁぁッ!!

 

「……フリーザ」

 

 かつての敵であった宇宙の帝王。 界王が恐れ、手を出すなとまで言いしめたあの――だが、それはやはり過去の事。 その存在は青年が蹴散らして……

 

「トランクスがケリを着けたはずだ……なのにどうして」

 

 冷静さを取り戻そうとする青年。 しかし金色姿のフレアは燃焼を拡大、知らずの内に燃え上がる夜空は、まるで光の柱がそびえ立つかのような光景だ。 この輝きが、更なる混乱を呼び寄せたとも知らず。

 

「ターレスの事もある。 もしものことを考えて超サイヤ人は解かないでおくべきか……いや、今はこんなことより――ッ?!」

 

 結界内に足を踏み入れた青年は、顔をしかめて奥歯で苦虫をかみつぶした。

 

「な、なのはだ……それにアルフも。 かなり弱っていやがる、どうしてこんなところに……!」

 

 軋み音が鳴り、続いて出たのは拳を握る音。 ギリリと締め付けられるその音は、内心を表すだけではない……彼の、今後の行動さえも表わしていて。 突然、その拳が解けるのである。

 

「なんでだよ」

 

 たんぽぽのような子であった。 それも、黄色ではなく白くなってしまった方の。

 

「よりにもよって、どうしてあいつらが居るんだ」

 

 そんな儚げな彼女を、守るように寄り添っていた者達が居たんだ。 姉であり、妹であり母で在り、父であり兄であり……そんな、只の家族よりも家族らしい笑顔で包まれていた彼女たちがここにいることが訳が分からなくて。

 

「答えろ! …………シグナム!!」

 

 青年は、思わず戦士の声を上げていたのでした。 ……ときは、再び元に戻っていく。

 

 

 

 ―――現在。

 

「何者だ……貴様は」

「……お前がどうしてこんなところにいる」

「いつの間に現れた!」

「…………この結界とかいうやつを作ったのはお前たちか」

「こちらの質問に答え――」

【オレの話に返事をしろ!!】

『……!?』

 

 響く空間に後ずさりする。 目を見て、視線を固定され、漂う雰囲気にものの見事に飲まれていく。 彼が纏う怒気――ただ単純なそれだったのなら、騎士たちはこの男にここまでの戸惑いを持たなかっただろう。 後ろから見え隠れする、正体不明の影に不安を抱いたからこそ、今目の前に居る金色に発光する男に対して、通常よりも大きく警戒心を募らせるのであった。

 

 だからこそ、彼等の会話が通じないのだとしても。

 

「こんなヤツの力を使えば、その内しっぺ返しを食らう。 ここでやめておくんだ」

「なにを言うかと思えば……まさかそんな意味の解らんことを並べて、我らの動揺を誘うつもりなのか」

「……」

「……?」

 

 警告のつもりなのだろう……そう考えるのは騎士の方。 青年は、孫悟空は決してそういった意味で言ってやっているのではないのだが。 言葉が足りない、後もう二言足りない状況は、それほどに今の状況が混乱しているから。

 その状況において、なのはは横たわりながらも彼を呼ぶ。 そっと手をのばして……答えてと懇願するかのように。

 

「ご――」

「なのは、よく頑張ったな。 周りの壊れ具合と、おめぇの服装で大体読めたぞ」

「……うん」

「アルフ! おめぇもよく踏ん張ってくれた。 おかげでなのはが大事にならずに済んだ、ありがとな」

「……そう言ってもらえて光栄だよ。 光栄ついでに、あいつ等をちゃっちゃかと倒してもらいたいんだけど?」

「…………」

「あん?」

 

 とどいたこえ。 いつの間にか彼女を抱き上げ、アルフの目の前に“居た”悟空は、金色のフレアを噴き上げる。 それは怒り? それは憤怒? 感情の爆発で起こったのだと、なのはとアルフが思い見上げる最中。

 それは正しい、間違っちゃいない。 こうなった“要因”であろうものに確かな怒りは燃えている。 だからこそ解けない超化はそれを物語っているのだろう。 ……だが。

 

「おめぇたち、今ので大体わかったろ」

『…………』

 

 悟空は、今度こそ警告を促すことにする。

 

「今のが目で追えねんだ、そっから先は言わなくてもいいはずだな?」

「……いま」

「なにが起こったんだ……!」

 

 その言葉で、ついに今起こった事を理解する騎士たち。 自分達から100メートルほど離れて横たわる白い少女を抱き上げていたかと思うと、今度はそこから自分たちを挟んでさらに遠くにいたオレンジ色の女性のもとでこっちを睨みつける男。

 常識とか、自然の法律とかを捨て去ったかのような移動は、既に常軌を逸した実力を持つと判断せざるを得ない……彼女たちはそう思ったのである。

 

「こんなところで油売ってねぇで、アイツが待ってるところにさっさと帰ぇれ!!」

『――ッ!!?』

 

 でも、この一言ですべてが狂い始める。

 

「アイツ? 貴様……なにを知っている……」

「……」

「どうして……のこと知ってるんだよ」

「…………」

「おまえを……」

「貴様を……」

「………………」

『無事に帰すわけにいかない!!』

「避ければなのはたちに――くっ!」

 

 圧倒的なまでの禁則事項。 不用心を極めた不用意な言葉に、花火の火薬庫に火炎瓶を投げこんだかのような光景が繰り広げられていく。 にじり寄る騎士たちが、己が武器の範囲に悟空を収めた時であろう。

 

「カートリッジロード! ……ラケーテ――」

「……」

「…………ン…な、え?」

 

 飛び出そうと、一歩踏み込んだ少女の身体が自分の意思とは関係なく上昇する。

 

「い、いつの間に」

 

 収めきれない動きがそこに展開されていた。

 怪我人二人がいつの間にか遠くに置き去りにされていた。 カートリッジで魔力の上昇を行なった後の空薬莢が、目の前の男が掴んでいた。 鉄槌のブースター部分が見る影もなく消え去っていた。 バリアジャケット――騎士甲冑が壊滅的ダメージを受けていた。 かぶっていた帽子が宙を舞って、腹に重いナニカがめり込んでいた。 痛みがのど元までせりあがって、電気信号で全身に恐怖の感情が渦巻こうとする……

 

 

――――そして、やっと空気の裂ける音が響き渡る。

 

 

「お、おぐぅ……がはッ!」

「ヴィータ! く、貴様ぁぁああああ!!」

「…………バカヤロウが」

 

 毒を吐いたのは戦士。 切れの無い拳を当てただけに過ぎないと、口で言う前に持っていた女の子を宙に投げる。 重なる風景は、かつて大猿がフェイトを殺しかけた時。 その景色が浮かぶように、剣を持った女のもとに、ヴィータと呼ばれた少女が放り込まれていく。

 

「くっ!」

「やめろ……」

 

 振る――躱す。

 

「このおお!!」

「やめろって言ってるだろ」

 

 振り下ろす――身体を横に背ける。

 

「きさまああああ!!」

「それ以上ちからを使うなって言ってんのが、わからねェのか!!」

「うおおおおおおおおッ!!」

 

 叫ぶ――聞こうともしない。

 苦しいまでの展開は、見ていたなのはたちに伝わる。 どうして、戦いの場で渦巻く感情がここまで痛々しいのは。 彼女たちには、どうしてもわからなかった。

 

 振ってから躱すかのように、完全なタイミングでやり過ごしていく悟空。 時間軸というものが明らかに違う両者の戦闘は、この先待ち受ける結果をいともたやすく連想させる。 それが見えるのは当然、生き残った騎士も同じで。

 

「……どうしてだ」

「なに?」

「なぜこんなことになるんだ!!」

「…………」

 

 切望とも取れかねない悲痛な叫び。 身体で受け止める悟空は、段々と表情を柔いものに変えようとして――振り向く!!

 

【シグナム!】

【こ、この声……シャマルか! 今帰ってきたのか!!】

 

 それと同時、剣士……シグナムの表情にも変化が訪れる。 散っていた仲間の増援に、焦りの色をそのままに応答を高速で行う。 見せないようにしているはずの隙を、必死に隠しながら。

 

【ごめん。 他の世界から帰って来るのに手間取っちゃって……そっちの状況は大体つかめてる。 あとはこっちに任せて】

【例のアレか? しかしあんな奴相手に当てられるわけが――】

【わかってる。 汚いけど、今回は仕方ないから……“あの子”を利用させてもらうわ】

【……くっ】

 

 姿が見えない話し相手。 シャマルは現在、穴の開いた結界の外で全体を見渡している。 まるでスナイプのようなポジションで、“古ぼけた本”を片手に魔法陣を形成していく。

 

「一瞬……一瞬でいいの。 みんなが逃げられる時間を――」

 

 その魔法陣は足元に。 魔法陣が形成する結果は彼女の正面に。 まるで西洋の大鏡のようなたたずまいのそれは、澄み渡った泉のように戦士を映し出していた。

 

「……はぁ」

 

 呼吸を整え始めてから5秒。 映していた画面が急に切り替わる……映るのは、白い服をボロボロにした女の子。

 

「一石二鳥とは考えてないけど……これで!」

 

 鏡面に近づく右手、触れようとすると起こる波紋は次第に大きくなる津波のよう。 彼女は知りもしない。

 

「……ごめんなさい!」

 

 この迂闊な考えが。 今行おうとしている“一突き”が。

 

「…………え?」

[ぐ、ぐぅぅぅぅううう!?]

 

 この後のせかいに、どれほどの悪影響を与えるかなんて。

 

 

 

 ――――結界内。

 

「なんだ? アイツ、急におとなしくなりやがった……」

「…………」

 

 不意に訪れた静寂。

 舌なめずり、這いよりし者、空虚な感覚。 どれもが該当しないで、どうしてか近い感覚を世界にしみわたっていく。 気味が悪いと、呟いたのは悟空ではなく。

 

「……どうしちゃったんだろ」

 

 なのはであった。 ……その彼女に、かすかだが不気味な影が射しこもうとしていた。

 

「なんだ!?」

「……?」

 

 叫んだ悟空は雷光が如く振り向く。 睨み、怯えさせ、狂わせそうになるほどの視線。 向けられたなのはが混乱する刹那、彼は確かに確認した。

 

「な、なのはの中に気がもう一つだと!? いったいどうなってやがる」

「え?」

 

 遠い彼女。

 先ほどの高速移動……否、けが人の負担を考えた瞬間移動により運んだなのはとアルフ。 前途の通り100メートルよりも先にいる彼女たちは、いきなりの危機に立たされていた。

 気づいていないという事実はさておき。

 

「なんか変だ! おかしい、こんなことはありえないはずだ!」

「え? ええ?」

「…………」

「なにをしやがった……! くっ!」

 

 飛ぶ。 超高速からでの移動と、重ね重ね使うことになった瞬間移動。 精神集中の時間は刹那のもの。 だが、それでも時間が押し悟空は、一瞬の内をさらに短縮していく。

 

「間に合え!」

「……」

「オレの勘違いで在ってくれ――」

「……」

「は、速く!!」

 

 なのはの中に現れたもう一つの気。 ソレが異常な速さで膨れ上がるとき、悟空の瞬間移動は完遂される。

 

「ごく――」

 

 いきなり現れた彼に、驚きの声しか上げられないなのはは動けないまま。 だが、その背後が淡く光ると、圧迫されるかのような苦しみが襲う……ちがう、襲おうとしたのだ。

 ……それから守護する者が居た。

 

「どいてろ!」

「きゃあ!?」

 

 現れ、片手で彼女を吹き飛ばす悟空。 もう、抱えて飛んでいくことさえ敵わなかった瞬間の出来事だ。 いくら次元が違うとはいえ、100メートル離れた相手が目をつむるのを防げと言われるようなもの。

 故に、彼の選択肢はこれしかなかった……そう、例えその結果。

 誰もが望まない事象に成り果てたとしても。

 

「………あ、あ…あぁ」

「ご、悟空……くん…………」

「あ、あんた……」

 

 悟空の、彼の腹から――――腕が一本付き出ていた。

 

「は――はぁ……あが!?」

「悟空くん!!」

「なんだよこれ! どうなってるのさ!!」

 

 あまりにも唐突に、どうしても現実味のない光景があらわれた。 人の腹から手が突き出るなんて、悪夢にもほどを作るべきなのだろうが……

 

「ぐああああああ――ッ!!」

「ねぇ! どうしちゃったの!!」

「あ、……あぁ」

 

 彼の悲鳴が、ことが現実であるのだと、頬を叩くかのように知らせてくる。 ケイレンする彼の体。 ありえない程のダメージを与えるそれは、実のところ体を貫かれたものによるところではない。

 

「……なんだ、あれは?」

「なに? この感触……」

 

 男の悲鳴を背景に、騎士たちは“ソレ”を視認する。 男のハラ……そこから伸びる女性の手、それだけではない、彼女の手先が掴んだ金色の光を――

 

「リンカーコア?」

「なんでしょうけど……でも、手に持った感触が物質なの!」

「なに? だがチャンスだ……シャマル!!」

「えぇ!」

 

 掴み取ったそれは石であった。 かつて悟空が呑み込み、今なお彼の味方をするもののひとつ。 それが最初の色とは違う……彼の頭髪と同じ輝き方をしているのである。 まるで、悟空の身体に合わせるかのような変異。

 それが分らぬ騎士たちは、暴虐の行為に打って出る。

 

「が、……がは!」

「蒐集……」

 

 血しぶき上げる悟空の口元。

 それを喰らうかのように、大口を開けるかのように開かれた“古い本”の白紙のページ。

 

「開始――!」

 

 彼女が持つ本のページがゆらりと動き出す。 白いページ……響きは清潔感が漂うそれは、実のところ腹を空かせた貪欲さを示した卑しき魔本としか機能しておらず。

 いま、シャマルの声を合図に……

 

「うああああああああ――――――ッ!!」

「悟空くん!!」

「ゴクウ!」

「ぎぃぃぃあああああああーー!」

 

 暴食が動き出す。

 痛烈な、なのはの叫びをかき消して、天に上がる獣の咆哮。 原始的で、知性のかけらもないそれは――ただ、痛みに耐える壮絶な苦しみに他ならない。 耐えられない痛みと喪失感に、悟空の身体は過剰な反応をする。

 

「……あ」

「かはっ!」

「…あぁ……あ…」

 

 降りかかる赤い雨。 あたまから被せられたなのはの鼻孔をくすぐるのは……鉄の匂い。 苦しみの音が激しすぎて、今何が起きたかもわからない彼女はただ、目元を走る鮮血を、涙で薄めることしかできずにいた。

 

「おいシャマル……なにか様子がおかしい。 蒐集している人間に――おい、聞いているのか!」

「……」

「シャマル!」

「……たいへん」

「……?」

 

 遠くより暴虐を行うものがぽつりと囁く。 信じられぬと、いま、風を起こす勢いでめくりあげられていく古き本を、口を半開きにして眺めるだけで、シグナムの声に答えることを忘れてしまっている。

 

「や、“闇の書”が――」

 

 めくる。

 

「どうした!」

「ぺ、ページ……30ページ」

 

めくられる。

 

「“そんなにあったのか”……しかしなぜあんな……」

「…………」

 

 めくられ、書き綴られていく。

 

 なんとか答えた声に、納得がいかないのは蒐集相手の尋常じゃない痛がりよう。 普通なら胸部にあるはずのリンカーコアも、アストラル体に近い存在も、ことごとく外していく特異な男。 その、取り上げた魔力の数値が常識の範囲内であることには納得して――

 

「さ、三百なの――」

「なに?」

「あの人から奪ってる途中なのに……もう、ページが三百三十を超えようとしてるの!!」

「なんだと!」

「通常の魔導師でも四,五ページで済めばいい位なものを――なぜ!?」

 

 あまりにも異質はここに極まっていた。

 まだ止まらないページの追記。 震えるカラダ、聞こえなくなっていくうめき声。 明らかに衰弱していく戦士は……

 

「……ちからが……体中のエネルギーを吸い尽くされてるみてぇだ……くそぅ」

 

 弱々しく吐かれる言葉と、共に、仲間たちを失意の底へと連れて行こうとして。

 

「は、は……」

 

 もう、指先だって動かすのもやっとのその身体を……

 

「うおおおおぉおぉおおおおお!!」

『!?』

 

 ラストスパートだと、馬車馬が如く鞭打っていく。

 

「“それ”は……あぶねぇモンだからよ――」

「え、なに?!」

 

 彼は、動かした。 いまだ本の追記が収まらないで、呆気にとられていたシャマルの隙をつくように。 でも、その動きは亀よりも遅く……それでも力は常人以上。

 

「これ以上は――やれねぇ……」

「い、痛い!?」

 

 掴み取られた彼の“コア”を、さらに掴むべく悟空は、なんと胸から伸びた腕を掴んで見せる。

 

「在りえん! 普通に剣か何かが刺さっているのとは違うんだぞ! それをアイツは――化け物め……」

「は、離して!」

「は、はは……はなしゃしねぇぞ。 せっかく捕まえたんだ……このまま――」

 

 加えられる力は、シャマルの腕に深く食い込んでいく。 見えた苦悶の表情は、まるで万力に捕まれているのではないかという圧覚さえ生ませる。 それほどに、悟空が持つ力は弱まっていたのだ……力を込めたつもりで握って、痛いと思わせる程度にまで。

 

「う、お、おおおお お お お ――――ッ!!」

「きゃあ!?」

「こっちに来やがれええ!!」

 

 それでも、悟空はその腕を引っ張り上げる。 引きずりあげられるシャマル。 腕をだし、肩を見せ、くるぶしを胸からはい出していく。

 あっという間に悟空の前まで引っ張られた彼女は固唾をのむ。

 

「…………キッ」

「こ、殺され――」

 

 確実なる死を予感させられ、下半身から力がなくなっていく刹那。

 

「飛んで行っちまえ――っ」

「やあああ!?」

 

 あさっての方向へと、掴まれた腕ごと振り回された彼女は消えていく。 止んでいた追記の音も、自己最高記録の333ページを記録して、そのまま浅い眠りへとつく。 眼の前から消える本に、悟空はそっと息を吐くと――

 

「おふッ――! はぁ、はぁ……」

 

――赤い塊も吐き出していく。

 

「こ、こんなことなら……最初からこんな結界は壊しておくべきだった」

「悟空くん!!」

「心配スンナ……ちょっとばかし、気が落ち込んだだけだ……ぐぅぅ!?」

「あ、……あぁぁ……」

「いいかなのは、今からここを脱出させてやる……そのあとは言わなくてもわかるな……」

「…………」

「いいな!」

「は、はい!」

 

 揺らした金髪は、確実に力が無いモノ。 体中の力を集める技を使うという事は、身体に多大な負担をかけるという事。 悟空は、超サイヤ人は、両の手で全ての力をかき集め、包み込む。

 

「かぁ」

「なんだ?」

「光?」

 

 集め、光らせ。

 

「めぇ」

「……悟空くん」

「こ、こんな時ですら頼らないといけないなんて……」

「はぁぁぁ」

 

 唸る悟空の足元が揺れる。 がたつく身体を気合で押さえつけ、薄れる意識は全身の激痛で呼び覚ます。

 

「めぇ――ッ!!」

 

『あれは……なんだ?!』

 

 みた、見てしまった。 騎士たちは初めて目撃する。 魔法の力もなく地を鳴らす武天の奥義を。

 

「アイツ、まさか――!?」

「あんな体で砲撃?!」

「波ああ―――――――ッ!!」

 

 空が唸り、天が叫ぶとき。 地表から稲妻が駆け上がる。 ライジング――誰かのデバイスがつぶやいた一言はどうしてだろう、恐怖よりも先に悦とした音声が認識できるのは。 そうして皆が見ている中、悟空のかめはめ波は天を穿つ。

 

「なのは、ゴクウの言う通り、ここから逃げるよ!」

「でも!」

「アイツの足手まといは嫌だろ! なんのために強くなってきたかを考えな!」

「……はい」

「いいぞアルフ……よく言ってくれた……はあ、はぁ……」

 

 光は一瞬。 行動は刹那。 転送系の魔法を築き上げていたアルフは、二人まとまっていたところでオレンジの光に包まれる。 戦士を置いて、この戦線から撤退していってしまう。

 それを、叱るどころか称える悟空はささやかに笑みを作る。 ほんの少しの強がりであった。

 

「シグナム、どうするの?! このままだと管理局に見つかっちゃう」

「……やむを得ない、撤退するぞ」

「……いいぞ、あいつ等も今のでビビッて逃げる算段を立てる気だな……狙ってはなかったが」

 

 解散の時間が訪れる。 聞こえてきた内緒話を傍受した悟空の身体から、やっと力が抜けてくる。 逆立っていた髪は……ようやくその任を解いて、しまう。

 

「……え?」

「……」

「シグナム?」

「…………」

 

 それを、ひとり認識出来た剣士は、持っていた剣を落としそうになる。

 

「どうしてだ……」

「そ、そう言う事か……道理で殺気立つわけだな」

「ねぇ、シグナムどうしちゃったの! 早くここから逃げないと」

 

 理解した瞬間。 片方は正体を、もう片方は……戦闘途中の疑問を。 破綻した物語の最後、それはやはり混沌とした感情が渦巻いてしまうのである。

 

「どういうことだッ……孫―――――ッ!!」

「おめぇ……へへ、今まで気が付いてなかったんだな……は、はは。 こんなこったら、超サイヤ人は解いておくべきだった……ぜ」

 

 崩れ落ちる無敵の戦士。 決して無敗じゃないのは、彼の道が激闘にすぎるから。 限界を超えて酷使された身体と……宝石。 もう、交わることがない視線が交錯したいと喚く中、彼は最後の仕上げに入る。

 

「いまは……こ、こんなところじゃなくて――アイツのところにいかねぇと……」

「孫! そぉーーーーんッ!!」

「どうしたの……もしかしてあの人が悟空さんだったの!?」

「限界だ……すまねぇが、消えさせてもらうぞ。 もう、意識を集中するので精一杯だ……――――」

『消えた!?』

 

 深夜2時50分。 夜明け前故の暗闇は、どんな夜よりも暗い。 月も地平の彼方に消え、太陽は大地から顔を出さないでくすぶったまま。

 闇が支配する静寂の中、かれらは……彼女たちはその場から動こうとはしなかった。

 

「覚悟はしていた、何かを傷付けるというのも…………だが、どうすればいい」

「シグナム……」

「どうしてこうなってしまったんだ」

「……」

「我らはただ、主を救いたかったのに……なぜだ、どうしてこうもうまくいかない!!」

 

 八つ当たり。 拳を振り切って、鋼鉄とコンクリートで塗り固められたビルをひとつ犠牲にする。 30階建てのそれは……たったの数秒で23階建てに成り変わってしまう。

 

「…………なんだ、いまのは!」

「どうしちゃったのシグナム!?」

「わ、わからん。 力任せに壁を殴っただけなんだが……訳が――」

 

 圧倒的過ぎる自身の力。 まるで何か異質なものが貸しているとも言えるパワーは、彼女たちの常識からはすでに逸脱していた。 そう、こんな力はまるで……先ほど傷つけたあの人物のような。

 

「あの、よくわからないリンカーコアのようなものから収集をしたからなのか……?」

「それとも、悟空さん自身に何か問題があるとでもいうの……」

『…………どうなっているんだ』

 

 増える疑問に比例して、忽然と彼女を取り囲む力。 肉体の著しい変化は見られないモノの、何か底の方から湧き上がる異質さはどういうことだ。 シグナムは、殴った手のひらを開けたり閉じたりしながら、自分を確認していく。

 

「……なにも、感じない。 なにも、分らない……クッ!」

 

 歯噛みして、見せた白い歯は軋ませられては物凄い音を奏でている。 迷い込んだ通路の中、迷宮地獄へと入っていく騎士たちは……焦りを隠せない。 こんな謎解きの様な時間も、後悔の期間も余裕もない……

 

「我等には……時間がないというのに」

 

 夜空に向かって零す言葉。 静かな空気は大気が停滞していることを意味している。 激しく動き始めた事態の中で、こんなにも異様な生ぬるくも冷たい夜があるものなのか……肌で感じる不気味さに、シグナムの髪留めが……解ける。

 

 ひるがえる長髪は、そのまま彼女のバリアジャケットを流れていき、重力の思うがままに垂れ下がる。

 もうすぐ、夜が明ける…………はずである。

 

 

 

 ――同時刻 ミッドチルダ、プレシアの家。

 

「今日も遅くになってしまったわ……あさ、起きれるかしら? さすがに4徹は勘弁よ」

 

 シャワーの蛇口をひねる。 おびただしい量が降り注ぐ光景は、華厳の滝かのよう。 不吉極まりない噂立ち込めるそれは、まさしくこれからの事態を案じているかのようでもある。

 

「湯船……は、今日はいいわね。 髪と身体を洗ったらさっさと出てしまいましょう」

 

 其の中にいる人物。 当然ながら、一糸まとわぬ姿で40度の湯を胸からかけて、全身へと流していく。 シャワーを使うのだ、身体を洗うのは当然だ。

 

「それにしても、彼の使う界王拳は本当に規格外だわ。 身体にかかる負担はともかくとして、出力をほぼ無制限に上げられるって……最大で20倍までしか上げられなかったとかいうけれど、仮に5000万ある魔力を20倍なんてやったら」

 

 温めた身体をそのままに、今度は長髪を温めていく。 しっとりと濡れたそれが、肌にまとわりつかぬよう姿勢を崩しながら、器用に洗う姿はどうしても一子を持つ人物には見えない。

 

「……ちょっと、洒落にはならないわよね。 まぁ、あの子たちやわたしたちが使えるものを遥かに逸脱しているし、正直言ってそこからは人体で出せるモノではなくて、魔力炉レベルの出力だもの……考えなくてもいいかしら」

 

 泡を立て、頭髪全体に行き渡らせると手で梳いていく。 男のように力任せではなく、例えは微妙だが、ソバかそうめんを手で撫でるかのような流れ。

 

「ロングは好きだけど……うぅ、この時はどうも面倒ね……短髪は似合わないから嫌だけど」

 

 流水で流し、排水溝に泡が消えていく。 手で水気を絞り、うまくまとめて傍らにあるフェイスタオルで包み込んでいく。 しばらくの放置は、決して髪質にいいものではないのだが。

 

「体を洗った後にシャンプーはありえない――と」

 

 彼女なりの信念が成せる業……随分と大げさだが。 それはともかく、体中にボディーシャンプーを行き渡らせると、そのまま汗と老廃物を掻き落としていく。 真新しい細胞がこんにちは、みずみずしい肌は正に20代後半のモノにも見えて。 でも。

 

「はぁ……リンディさんがうらやましい。 あんなに若々しくて――」

 

 そこいらの同い年が聞けば、激昂ものな贅沢をつぶやいていた。 悟空には遠く及ばない若作り。 ……というより、大体で自然にこうなったと豪語するそれは既に異常現象であろう。

 

「ふぁぁ……もう日が出るころね……んん。 4時間だけ、4時間だけ布団の中に……」

 

 唐突に出たあくび。 掛けてあったバスタオルを手に取ると、体中の水気をふき取りながら脱衣所にでる。 重いまぶたを擦りながら、今日の成果をあたまの中で響かせて……

 

「無理、今日はもう寝ましょう」

 

 身体にバスタオルを巻いて、濡れた髪に悪戦苦闘。 鏡の前でドライヤー片手に眠気と戦っていると――――…………

 

「……孫くん?」

 

 聞き覚えのある振動音に、思わずタオルを握りながら背後を見て……

 

「………ちょ…ちょっとあなた!!」

「……はぁ、はぁ」

「どうしたというの倒れて!? ま、まって、今……」

 

 血相を変える。 激変した空気、思わず抱え込んだ黒服の戦士を、揺さぶらないで気道だけを確保するプレシアの処置は、あわててはいたものの的確。 悟空は、膝に頭を乗せられながらも、ここに来た理由をつぶやいていく。

 

「せ、せんず……前におめぇたちに預けておいたはずだ……」

「あ、あれの事!? 大怪我した坊やに使うってフェイトが……あ、一つは研究用にとって置いてたはず……どこだったかしら!?」

「あわてなくていい。 ……死ぬほどつらいが“いつかの心臓病”よりは随分ましだ……」

「死にそうな顔して無理をしない! えっと、地下の研究室に……」

「……はぁ…はぁ…」

 

 悟空の……発言がおかしいとはだれにも見抜けない。

 いま、彼が呟いたのはありえない程に遠く、忘れそうになるほど過去のでき事。 混乱する記憶の中なのかどうなのか、探りを入れられる人物がいないまま、彼はそのまま……

 

「…………」

「孫くん……?」

 

 目をつむる。

 

「待ちなさい! あなたそのままなんてこと……」

 

 返ってくる声はない。 いつかのように、身体が発光するようなこともない。 何かが壊れてしまったかのように、彼はいつもを繰り返さない。

 

「ねぇ……!」

 

 低くなり続ける体温。 増したように思えるひざ上の重み。 恐ろしいくらいに静かな戦士を、まるで看取らされるプレシアの心境は大きく揺れる。

 

「しっかりしなさ――?」

 

 激昂するようにも見えた彼女の感情。 しかし、それもすぐに落ち着いて見せる。 彼の、不規則だった呼吸音が……不意に静かになったから。

 

「うそ……」

 

 もう、乱れることのないそれに、頭を叩かれたような衝撃が心に走る。 まさか……最悪の事態を想定して、こんな場面でも冷静に次を考える自分に嫌気が射して。

 

「……こんなこと。 あなたが死んでいいのは! わたしが死んだあとなのよ!? なのに……なのに!」

「……」

「目を開けなさい!」

「……おねがいよ」

「…………」

 

 帰らない彼。 苦しいともがくこともしないそれに、狂うほどの声が自宅に駆け巡る。

 

「…………ぐぅ」

「……………………は?」

 

 悲壮感が、全力で全壊していく。

 

「すぅ……すぅ……」

「眠っている……だけ?」

「んん……すぅ」

「こ、こんなに身体にダメージがあるのに、ここまで穏やかに眠れるなんて……はぁ、そう言えばそうよね、この子がこれしきでどうにかなるのならあの時にはもう――」

「ぐがががが~~」

「心配して損した……と、今はほっとしておきましょう」

 

 柔いひざまくらで安眠をし始めるサイヤ人。 かつて、心肺停止から自力で蘇生した回復力は伊達ではないのだ。 そう、言い含めるかのような彼の身体機能に安堵して、静かにバインドを発動していくプレシア。

 

「とりあえずベッドに運んでおこうかしら? 寝たままでは何も口にはできないでしょうし」

 

 バスタオル姿そのままに、指先ひとつで悟空を宙吊りにした彼女は……にししと笑う。

 

「……そうだわ。 わたしをここまで心配させたのよこの子は。 だったらそれなりの報酬を受け取ってもいいはずだわ。 えぇ、こんなに傷ついている人間にするのは酷だけど……」

 

 一瞬だけ目配せしたプレシア、まるで彼の容体を確認するかのように微笑むと。

 

「そうねぇ。 体温は低いみたいだし、ここはひと肌で温めて“貰いましょう”」

 

すぐさまイジワルな顔を作り出す。

 

「…………フェイトに」

 

 そのまま脱衣所を後にして、わが子が眠る寝室へと歩を進める彼女。 そこからは驚きの連続だった。

 気配を消し、気付かれないままに布団をバインドで括り付けて宙に浮かす。 それから悟空を転移魔法でフェイトの真横に召喚すると、そのままふとんの位置を戻す。 ……なんて、魔法の無駄な運用方法か、ランク下位の者たちが見たら涙は禁じ得ないだろう。

 

 そうこうして、そろそろ限界が訪れたプレシアは自室へと向かう。

 

「あとは流れでフェイトが看病をするとして……わたしは彼にする質問をかんがえなくてはね。 どうして、ああもキズついたのか……を」

 

 危機的状況も、しかしいまは自分もかなり限界。 伊達に3徹はしていない。 プレシアは、半裸のままに布団を被るとそのまま安息の時間に入っていく。

 

「アラームは……3時間半後でいいわね。 限界……寝ましょう」

 

 起きぬなら、それまで寝よう、孫悟空。 プレシア一家の夜は……終わる。

 




悟空「………………もふ、ふぉわぼふう」

フェイト「あははははは!!」

プレシア「すこし……やりすぎたわね」

フェイト「ああああああははははは――――ッ」

プレシア「9歳女児にはいささか刺激が強かったかしら」

フェイト「    」

プレシア「あ、気を失った……ちょうどいいから次回! 魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~ 第43話」

悟空「激高の戦士、静けさを取り戻すとき」

フェイト「…………はぁ」

プレシア「普段は大人のような振る舞いでも、所詮こどもは子供……アダルティな雰囲気には耐えられなかったわね、ごめんねフェイト」

フェイト「……何にも、してこなかったんだ」

プレシア「…………はあ?」

フェイト「してこなかったんだ……」

プレシア「……ちょっとあなた、何言っているの!?」

リンディ「それはあなた以外のすべてのみんなのセリフです。 はぁ、自分の娘に何をやっているのやら……それではみなさん、また今度」



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