魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~   作:群雲

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結論から言いましょう。 今回でもまだあの子の真名は解放されません。
つまり決着がつかないということですのであしからず。

超サイヤ人という、ある意味、種の絶滅に反応したかのように現れたサイヤ人最強の変異。
その、絶滅の根源ともいうべき一族を根絶するべく、孫悟空は過去からの因縁にケリをつけるべく拳を打つ。

穿ったその未来に、何が待っているかも知りもせず。

りりごく53話です。


第53話 涙拭うは祝福せし風のごとく

「いったい何が起こっている……」

 

 大空を漂っていただけだった。

 機械、生物、異形……そのすべてを飲み下したかのような体躯を持つソレは、今ここに来て、世界の異変を感知した。

 

「戦闘力……戦闘力が先ほどまでの倍だと!?」

 

 震える大気、割れる大地。 うねりを上げる潮は、近くの島を軽々と呑み込む。 紅よりも赤いはずの世界に上がる…………金の煌めき。

 そのどれもが彼の中に有る情報集積体を刺激し、今ある危機を自身に知らせるに至る。

 

「馬鹿な! あの体のどこにそんな力が――いや」

 

 思い起こされるのはやはり過去の出来事。

 力を吸い取り、己がものとして取って捨てたあのサイヤ人たちは、最後にいったいどうしてきたかを忘れたのか?

 

「そうだ、あの猿どもは最後の最後の悪あがきが異常なまでに厄介だった。 そんなことを忘れてしまうとは……だが」

 

 それでも、不敵に笑うクウラに死角はない。

 戦闘力がたとえ“さっきまで”の倍になったとしても、今の自分には遠く及ばない。 しかも自分には闇の書から吸収した様々な特典がある。 今の自分を止められるものなど――

 

「がふッ!?」

 

 突然、クウラの脇腹に衝撃が走る。

 きたした症状は、腹部の軽微な破損に体内のシリンダーの異常、背部神経ケーブルの断裂に骨格の亀裂……

 

「な、なんだこれは!? 内部ダメージが!」

 

 外面ならまだいいモノだが内面を覗けばかなりの物。 ズタボロにされたこの攻撃……この、物体の中に“徹す”この攻撃はデータにない。

 クウラの中からひとつ、余裕の湖面が揺れていく。

 

「ちぃ、なにか新しい技でも使ったのか……? だが、これしきのダメージなどすぐに回復してくれる」

 

 魔導師の回復魔法と、かつてビッグゲデスターとリンクしていた頃の応用ですぐさま肉体の補完を終えていく彼は、そのまま眼下を睨みつける。 高感度センサーと、望遠センサーでの合わせによる遠隔探知は、今の攻撃の犯人を捕らえる。

 捉えたはずなのに。

 

「何者だ……アイツは」

 

 そこには孫悟空などいなかった。

 

「先ほどまでの超サイヤ人ではない。 何かが変わっている」

 

 超サイヤ人、孫悟空ですらない。

 

「データに存在しない存在。 どういうことだ、あんな姿は確認されないとは……まさかこの期に及んで」

 

 更なるパワーアップを……?

 思わず握った右こぶしが語るのはおそらく焦り。 ここに来てついに見てしまったサイヤ人の可能性。 大猿以外の変異の更なる先を見たクウラは、しかしここで引くことなどありえない。

 奴は鞭の様な尾を振り回すと……――――

 

「――――……きえぇぇえええい!!」

『!?!?』

 

 一気に距離を詰める。

 不意に現れた鋼鉄の手刀。 それが悟空の背中に襲い掛かると同時、月村忍は己の目を覆った。

 この中に居る地球人ではおそらく最高の身体機能(ポテンシャル)を秘めた彼女だけが追えた一連の動き。

 しかしその先は見るも無残な未来だと、脳が判断したからこそ覆った視界は――果たして正確な判断だったのだろうか。

 

「…………あ?」

「…………遅ぇよ」

 

 次に手をどけた先にあったのは、その首を180度ひん曲げたクウラの頭部であった。

 電子音が鳴り、火花が散る中でも彼らの戦いはまだ終わらない。 それを証明するかのようにクウラの口元が震え……戦慄き……音声を発する。

 

「ば、馬鹿な……」

「…………」

 

 その声は驚愕というより、むしろ恐れを含んでいたかもしれない。

 表情は鉄よりも冷たいはずなのに、その声だけなら何よりも弱々しかったに違いない。 クウラの中に有るかつての感情が――敗北の感覚が走馬灯のように駆けると、彼はもげそうな首をそのままに胴をまわす。

 

「こんな馬鹿な!!」

「……っ」

 

 ケリ。

 胴の回転を含めた威力が高いそれに、だけど悟空の表情は涼しいまま。 姿勢を変えるだけでその足刀を涼風が如くやり過ごし。

 

「――ッ!」

「おぐぉ!?」

 

 気づけばクウラがうめき声を上げるに至る。

 

「いま悟空さんなにしたの?」

「あの怪物がいきなり叫びだしたような……攻撃したとは思うけど」

「いまのは――」

 

 この瞬間に恭也の耳には何かの衝撃音が4重に聞こえはしたが、今の状態では何が起こったかを判別するかは不可能。 しかし、予想だけならできる。 彼は……

 

「あのクウラとかいう怪物に右足で2発、両手で1発ずつ攻撃を加えた……と思う」

「わかるんですか!?」

「いや、神速という技を重ね掛けしてはいるものの、既に追っているのは残像でしかないはずだ。 でもそこから予想位は出来るからな。 あいつのダメージも見て、ただそうやって判断したに過ぎないよ」

『……はぁ』

 

 超絶な高速戦闘を、モノの見事な静けさで放っているのだと。

 恭也の説明が終わると同時、爆風が高町関係者の周りに行き渡る。 風が、大気ですらその動きについて行けず、やっとここでアクションが出来た……彼らの戦闘が既に、音速を超えている証しでもあった。

 

「こ、ここまでのパワーアップを――なぜだ!!」

「……」

 

 恭也たちを置いて行くようにクウラの独白にも近い恐慌が始まる。 今あるのは間違いなく今までとは次元の違う戦闘民族の果て。

 でも、認めてはならないのは今の自分よりも上の者がいるという事実。 彼は狂者ではあるが強者でもあるのだ。 ならば、このような――こんな事態は己がプライドが許しては置けない。

 

「しかしその余裕もここまでだ」

「……」

 

 だからこそ己が身体に鞭を打つ。

 

「このオレはまだ、変身を一つ残している」

「……」

 

 あのときの戦いですらなされなかった自身の最強の姿――機械であるためにできない身体の変態を、最恐の自分を今、世界に披露してくれよう。

 

「この姿を――はぁぁぁああああ」

 

 身体が急激に膨れ上がる。

 腕も足もひと回りずつ体積を増すと、そのまま全身に力の流れをまわしだす。

 

「見てしまったからには――死んでもらうぞ必ず! サイヤ人!!」

「…………」

 

 身体の大きさと、気の膨大さが一気に膨れ上がる。 力という力が――ステータスが莫大な数にまで上がると、クウラの鋼鉄の身体は更なる変異を遂げていく。

 肩が、腰が、胴が――そして頭部には破壊の象徴たる4本の角が。 彼の身体に荒々しく攻撃的なデザインを施していくと、そのまま荒れ狂う気は静かに収束していく。

 

「……驚いた」

「――ふっ」

 

 其の一言だ。 孫悟空が口を初めて開いたのは――しかしたったの一言。

 なんでもないとすら思わせるその視線の変化の無さに、心のどこかにさわるものが在ったのであろう。 クウラは浅く息を吐くと大地を踏みしめる。

 

「きゃあああ!?」

「じ、地割れが――」

「…………」

 

 たったのそれだけで大地は陥没し、翠屋の一角が大きく傾いていく。

 周りにいる子供たち、夫婦、友が怯える中。 孫悟空の視線は少しだけ鋭くなる。

 

「はぁ……hぁあああ――ふはははは!! なったぞついに!! 力だ……全てを超えるパワーを手に入れたぞ!!」

「……―――」

「圧倒的なパワーだ、これさえあれば貴様など!!」

「――――……」

「……な、に?!」

 

 そうして上がった咆哮の中には、既に高町の面々はどこにもいなかった。

 あたり一面には人っ子一人いない。 静寂が支配する翠屋のわきにて今、孫悟空は最強を自称する怪物へと歩みを進める。

 

「貴様があんまりにもうるさいもんだからよぉ、アリサやすずかの奴が今にも泣きそうだったんだ。 だから悪いが、ギャラリーってのには退散願った訳だ」

「…………い、いつの間に」

「瞬間移動なら大したことはないだろ。 それくらい、貴様にだってわかるはずだ」

 

 冷徹にまで硬いブーツが奏でる音。

 こつんこつん……と言う規則正しい音は却って不気味さをもたらすまでに至るだろう。 しかし悟空の表情は変わらない。 どこまでも、どこまでも静かで――――

 

「そうだろ、クウラ」

「が!? がが……が!!?」

 

 冷淡であった。

 

「お、お前いつの間にッ!!」

「……」

 

 クウラの……クウラの背部から突き出た腕。 それはあまりにも当然のようにそこに在ったものだから、当の本人もつい数秒まで気づくことが出来ずにいた。

 まるで切られたばかりの刺身の如く、彼はカラダをケイレンさせる。

 

「“いまの”が瞬間移動じゃないのはわかるよな」

「こ、こんな馬鹿な……ッ!!」

 

 数回の会話の後に鳴り響く爆音。

 風が爆ぜたそれは、今の攻撃力の高さを忠実に再現するかのように音量を最大にまで上げている。

 けたたましいそれを持ってしても、クウラの疑問の感情を払拭することは不可能なのだが……

 

「もうあきらめるんだな。 今のオレには貴様なんかじゃ遠く及ばない。 さっさとなのはたちを返して……」

「ぐ、ぐぅぅ」

 

 その冷たい目が――悟空の冷淡な視線がクウラを射抜くとき。

 

「この星から消えろ」

「こ、このぉぉぉォォオオオ!!」

 

 彼は、ついに冷静さを見失う。

 

「貴様なんぞに!!」

「……っ」

 

 振った腕は掠ることすらなく。

 

「貴様なんぞに!!!」

「……馬鹿な奴だ――与えてやったんだぞ! 最後のチャンスをッ!!」

 

 上げた脚は悟空を捉えることが出来ない。

 どこまでも開いた戦闘能力の差に、もはや驚くことすら出来ないクウラ。 悔しさと惨めさ、さらに優越感から落ちたショックで彼の心境は既に地の底へ落ちている。

 余裕のない姿というよりは、まるで思い通りに行かなかった子供の駄々にさえ見えてしまう彼の姿はどこまでも哀れだ。

 

……そんな優しいことを思ってやるほど、今の悟空は穏やかではないのだが。

 

「大人しく消えていれば――」

「あが!?」

 

 振るわれたクウラの右腕。 上体をそらすだけでかわすと、左手で手首を持ち身体全体をコマのように回転させて……関節を極める。

 

「殺されないで済んだ物を」

「があああッ!!」

 

 そこから先で鳴らされた音はまるで小枝を折るかのようでいて……その実岩石を砕いた音とも形容できただろう。

 転がる大きな金属片は、そのまま動かず大地に置き去りにされる。 同時、その塊の上から。

 

「うでが……このオレの腕がッ!?」

「……本当に、馬鹿な奴だ」

 

 透明の鮮血が降り注ぐ。

 機械ゆえに身体を廻るのは血液ではない。 しかし、その代用品は確かに存在していて……その飛沫が上がる頃、何やら5、6回ほど空気を叩く音が聞こえると悟空は背を向けて佇む。

 

「がぁぁぁああああッ!!!?」

「終わりだ……クウラ」

 

 瞬間。

 クウラの五臓六腑がぶちまけられる。 5分割された彼に反撃のチャンスなどある訳もなく、ただ、無様に地面に転がり醜態をさらすのみ。

 

 孫悟空はそんな姿を見ないで、遠くの空を眺めるだけであった。

 

「…………おめぇら一族には二度と会いたくねぇ」

 

 そんな、一言を残しながら。

 

 

 

「さぁて、この後はどうしたモノか」

 

 クウラのヤツは取りあえず放っておいてもいいだろう。

 あそこから再生は出来るだろうが、残った魔力と気が少ないせいか今はその反応が薄い。 ……ここからだ、ここからどうやってなのはたちを助けるかだが。

 

【孫、貴様これからどうするつもりだ? 主たちをどうやって】

「……あぁ、そのことなんだが……どうするかな」

【お、おまえ……はぁ】

 

 んで、結構驚いたことなんだが。 どうやらさっき取り込んだシグナム達とは、まるでテレパシーを使った時のように話せるみたいだ。

 消えちまったと思ったときはどうするかと悩んでは見たが、こうも簡単に話が出来るなら、きっと後でどうとでもなるだろう。

 さてと、シグナム達の事は一端置いておくとして。 なのはやフェイト……取り込まれちまった奴らをどうするかだが。

 

「……こうなったら一か八かだな」

【何か考えがあるのかよ?】

「まぁそんなに焦るなヴィータ。 こっからはオレにだってわからない領域ってやつなんだ」

【……おう】

 

 いきり立ちそうなヴィータには取りあえず引っ込んでもらって、オレはまず気を探る。 相手は当然だがなのはとフェイト。 そのどちらかさえ分かりさえすれば……ち、ダメか、全然わからねぇ。

 

「シャマル、悪いが手を貸してくれ」

【え、わたしですか?】

「そうだ。 いまからなのはたちの所に“行く” それにはあいつ等の居場所を掴まないことにはどうしようもない。 だからここで活躍するのはお前の転移のチカラだ」

【せ、責任重大ですね】

「そうだ。 しっかりしてくれよ?」

【はい!】

 

 やり方はこうだ。

 まず、いつものようにオレは瞬間移動の手順で気を探る。 そのときにちゃんと居なくなったあいつ等の事もあたまの中でイメージする。

 そんで、次にシャマルの持つ転移のチカラでアイツ等の居るであろう“場所”を探ってもらう。 ……居るのは当然クウラの中だろうが、それはあくまでも瞬間移動の手助け程度にはなるはずだ。

 

 そしてその場所と、今のオラが最大にまで高めた気の探知でイメージを固めて……狙いが固まったところに一気に瞬間移動する。

 もう、これしかねぇ。 結構強引だが、これ以外考え付かねぇ。

 

「いいか、時間も限られてるから手早くやるぞ。 一度だって失敗は許されねぇ」

【……】

「集中しろ? 少しの動揺もダメだからな」

【…………】

「もしもここでクウラの奴が起き上がったら次のチャンスは無いかもしれねぇ。 絶対にやり遂げるぞ」

【……………あのぉ、少し静かにしててもらいませんか】

「……あ、あぁ」

 

 少し張り切りすぎたか。

 シャマルのヤツに怒られちまった。 まぁ、あまりアーダコーダ言ったところで結果が良くなるわけでもないしな……任せるか。

 さっきとは比べ物にならない程にあげた集中力。 今のオレに探知できる最大の範囲……感覚で言えば宇宙の果てに行くというよりは閻魔界に行くかのような感覚をかなり引き上げたそれは、少しだけ、本当に小さなあいつ等の気と魔力を――

 

「…………オレの方は見つけたぞ」

【わたしの方も大体……行けます!】

「よし。 それじゃ行くか……アイツ等の所に」

 

 しっかりと混ぜ合わせるようにまとめたオレとシャマルのイメージ。

 暗くて……冷たい。 とっても嫌な感じの気を感じ取ってしまったときはどうしたもんかと思ったが……そう言うのはあいつ等を会ってから考えるべきだな。

 

 飛ぶ……跳ぶんだ――あいつ等が居るところに…………――――

 

 

 

 

「…………終わったのですか?」

 

 外の方が静かになった気がする。

 あの者の叫びも、クウラの怨念もいつの間にか消え、この闇の世界に元の静寂が戻っていく。 また、あのくらい日々が続くと考えると身震いするようだ……ん、身震い?

 

「もしやと思いはしましたが、まさか私があの温かさを日常と思いはじめていただなんて」

 

 愚かですよ……本当に。

 もう、何度繰り返してきた破壊と再生に身も心もあきらめという感情に染まりきったはずなのに。

 このひとは――今代こそは――などという甘い言葉で自信を保ち、絶望と共にその者すら喰らい尽くす。

 価値がないのです、私には。

 生きていることすら実感のないこの無間地獄で、私は光をただ欲していただけ。 でも、それすらも間違いなら。

 

「消えるしかないじゃないですか」

「――――…………きえる? なんのはなしだ?」

 

 この静けさも、もしかしたらいつか消える宿命にあるのかもしれません。

 あのモノだって、結局クウラのチカラに及ばず負けてしまったのでしょうし……やはり光など届かないのです。 こんな世界は。

 

「だけど……だけどこんなことって」

「なぁ! なぁったら!!」

 

 それでもあの方だけは……今代の主だけはお救いしたかった。

 何よりも暖かく、優しい彼女は――けれど持っていた闇はそれと同等に深かった。 忘れてもらいたかった、辛い過去などなければよかった。

 そう思った願いも、天邪鬼なこの魔本にとっては主を喰らう口実にはしかならなかった。

 結果、こうも複雑な精神を構築してしまったあのお方に、私はもう謝る術もない。

 けど、もう一度会うことが許されるのならば一言……たったの一言で良い。 言葉を交えたい。

 

「いいえ、許しを請いたいだけなのでしょうね。 この感情は」

「…………どうすっかなぁ。 置いて行っちまうか」

 

 このどんな闇よりも深い漆黒の世界に、たった一つだけでいいから……奇跡よ起きろ。 幾重にも渡る悲しみの連鎖を砕き、断ち切る極光をこの世界に……

 

「……なぁ、シグナム。 コイツってあれだろ? おめぇの姉貴だったり母親だったりすんだろ。 だったらどうにか――」

【無理言うな。 ほぼ初対面な上に、見かけからは想像もつかない程の強烈な思い込みキャラクターなぞ、この私にどうにかできるものか】

「……おめぇ、結構厳しいのな」

【なに、こうも厳しいのは…………身内だけさ】

 

 何やら周りが騒がしいような……いいえ、ありえませんね。 この空間に私以外の侵入者など今代の主以外ありえない。 ……ですが、そう言えばつい最近その禁を破った能天気が独り……

 

「あの者なら……?」

「……お?」

 

 むぅ……いえいえ、ありえませんよこんなこと。

 なぜに目の前にこんな和みを与える黒い瞳があるのでしょうか。 ツンツンと野良猫よりも自由に伸びた頭髪に、そよ風にでも当てられたかのような茶色い尾。

 こんな特徴的な人物は、今まで存在してきたただ一人ですが……事態が事態です。 今この場に来れるわけがありませ――――痛い!?

 

「なにゅっ?!」

「いや、おめぇがあんまりにも人の話聞かねぇモンだから……」

 

 だからと言っていきなり人の頭をブン殴るものがありますか!

 しかも男が女を……いいえ、神代の時代ではこのようなことにこだわりはないのかもしれませんがしかし! それでもこんな不作法をですね、あぁ、もう、少しコブが出来ているではないですか――ひぐっ!!

 

「痛いです……」

「いや痛くしてんだから当然だろ? なんならもう少し痛くしてやろうか」

「……おやめなさい」

 

 は、話しが逸れてしまったのはこちらのミスです。 この際ですから正直に謝りましょう。

 しかし、……ん?

 

「お……や?」

「……ん?」

「えっと……」

 

 あ、……え? な、ぜ。 どうしてこの場に……え、え!!?

 

「へへ」

「ど、どうしてそのような得意げな顔をするのです。 というより貴方は今戦闘中の筈では!!」

 

 まさかあの怪物を放っておいてこの場所に来るなどと戯けた事をほざくのではありませんか? もしもそうならば呆れを通り越して――失望すら覚えます。

 このわたしが、いまさら助けられるのを今か今かと待つモノだと思っている甘い存在だと思うのなら見当違いです。 外の者たちの安全は!? 世界の均衡は……守らなければいけないモノなど、この私以外に山ほどあるでしょうに……本当に、まったく。

 

「ふふん」

「…………?」

 

 なんでしょうか。 いきなりこの者の表情が童子のように朗らかになっていく? 何がどうしてそんな顔をするのです。 こっちはこんなに真剣になって……

 

「心配しているとこわりぃけど、戦いな。 とりあえずケリはつけてきたんだ」

「……はい?」

 

 ケリ……決着?

 いえ、幾らなんでもあり得ません。 私が垣間見た記憶の中に、貴方があのクウラを倒せる可能性は等しくゼロの筈でした。

 託した守護騎士の残滓ですら効果的に活用できるとも思いませんし……なによりそれほどにあの怪物は強い、強すぎるんです。

 それを貴方は……

 

「―――――と、おめぇは思ってるだろうけど。 結構、おめぇが託したモンが、とんでもねぇ事態を起こしたんだぞ?」

「は、はぁ」

 

 それでもニヤケル顔をやめないあの男。

 人差し指を立て、必要以上に顔をこちらに向けたかと思うと片目を閉じてくる。 ウィンクのつもりでしょうけど、そんなボロボロの身体でされても説得力が少ないです。

 ……まぁ、信じないことはありませんけど。

 

「結構いい具合にクウラの奴をケチョンケチョンにしてやったからさ、隙を見ておめぇ達を引っ張り出せねぇかって、シグナム達と相談してここまで来たんだが……相変わらずじめじめした嫌な気が立ち込めてんなココ。 キノコでも生えそうだぞ」

「……キノコって。 というよりシグナム達? あの者たちがどうしたのです」

「ん? あぁ~~いろいろあったんだ。 いろいろな」

 

 ……いよいよ事態を把握しきれなくなってきました。

 あの怪物に吸収されてから今まで、外の様子は全くと言っていいほどに分らなかった始末。 だからこそ、先ほどまで諦めが心を覆い尽くそうとしていたのですが。

 

「それをこの男は……もう」

「どうかしたか?」

「なんでもありませんよ。 えぇ、なんでも」

 

 姿どころか顔を見て、声を聞くだけで健やかな空気が入ってくるよう。

 この男が何をしたわけでもないのに。 ただ、そこにいるだけで守られているという感覚……こんなものは今まで全くと言っていいほどなかったでしょうね。 あぁ、こんな空気に触れれば、確かにあの子が心を許してしまうのもうなずける。

 

「とりあえずひとり確保だな。 この勢いであと2人だけど……」

「高町なのは、フェイト・テスタロッサの両名ですね」

「あぁ。 あいつ等助け出してやらねぇと、このままここに居させるわけにもいかねェし」

 

 あの者たち……ですか。

 かなり楽天的に探そうとはしていますが、正直厳しい戦いになるはずです。 なにせこの世界の奥深く。 数多くのプロテクトと攻撃性のウィルスの雨あられ……それを掻い潜り、2,10,60進法のパスワードを全て解いた上で管理者コードを…………――――

 

 

 

 

「つまりですね。 ここから数百にも及ぶ扉をイチイチ開けて……え?」

 

 なんだか、闇の書の娘っ子がブツブツと独り言を話し出したけど。 ……すまねぇな、こっちも急いでんだ、だからさっさと瞬間移動でアイツ等から漂って来る気と魔力のところにこさせてもらったぞ。

 

「ここは……フェイト・テスタロッサの気配をすぐ近くに感じる!? いったいいつの間に、というよりどうやって……まさか!」

「へへ、わりぃけど今回は急ぎ足ってことで」

「貴方、そう言うことも……」

「まぁな」

「……や、■■の書のプロテクトが……あぁ」

「どうした?」

 

 お、おい急に丸まってどうしたんだよ。 あぁ~今度は床にへばりついてもぞもぞと妙な動きで……ん、いきなり立ち上がった。

 

「この際、貴方の変質的な技の数々は忘れましょう。 ……■■の書でさえ写しきれていない部分もあるようですし」

「なんかいったか?」

「いえ。 とにかくせっかくここまで来れたのです。 早くあの者たちを連れ出しましょう」

「そうだな」

 

 舞空術見たく全身から出した魔力で飛んでいく娘。 へぇ、なかなか速いし、魔力の出力も安定してる。 それでもまだ力の1割も出てないところを見ると、やはりなのはたちよりも数段……いや、次元そのものが違うレベルだなコイツ。

 

「なんでしょうか?」

「いや、なんでもねぇさ」

 

 じっと見てたんがバレたか? まぁ、別にどうってことはねぇだろうし、なんでもいいか。

 さてと。 いい感じにあたりを飛んではみるモノの、気を感じるだけで一向にフェイトの姿を確認できねぇ。 そもそも、この空間自体闇の書の中にあるってだけにかなり複雑な魔力が充満してて、周囲の気を探りにきぃ。

 数か月前だったらこんなことはなかったんだけどなぁ。 ……シグナム、おめぇ達いろんなヤツの魔力を食わせすぎだぞ。

 

【面目ない……】

「まぁ、はやてのためだってんだから仕方ねぇか」

「…………?」

「お? あぁ、なんでもねぇ」

 

 ちぃと独り言が多かったな。 不審に思ったんだろうあの娘が、少しだけこっちに目配せしてきたんだ。

 すかさずオラは片手上げてやって返事を返すと、何事もなく周囲を探り出す作業に戻ってくれる。 ……あんまし他人に深入りするのを良しとしないタイプと見た。

 

「孫悟空」

「なんだよ? オラまた独り言が多かったか?」

「そうではありません」

「ん?」

 

 いきなり真剣な目つきでこっちを見てきた娘。

 鋭さのレベルを例えで言うなら、エッチな本を見つけた時の亀仙人のじっちゃんよりは上で、フェイトの部屋に妙なちっこい機械を置こうとしていたプレシアよりは柔らかい程度だな。

 でもいきなりどうしたんだコイツ。 ま、まさか――

 

「腹でも減ったのか?!」

「貴方じゃないんです!! そんな訳があるものですか!!!」

「……お、おぉ」

 

 ……とんでもなく怒られちまった。

 

「じゃあなんだよ?」

「……アレを見てください」

「――!!」

 

 娘が指さす方向。 大体で数百メートル先あたりか、そのあたりに見たことのある人影がある。

 身長は子供の背丈でも、その実、中にある魔力はどんな大人にも負けねぇくれぇに大きい奴……髪の色からしてありゃあ。

 

「フェイトか」

「おそらく」

 

 なんだかマユみたいのに顔だけ出されながら包まれて、ぐっすりと眠っちまってるな。 あんまりにも気持ちのよさそうだから、プレシアあたりだったら起こしてやるのが逆に悪いと感じちまうくれぇだろうな。

 

「さ、引きはがすか」

「……相変わらず容赦がないですね」

「そうか?」

 

グズグズはしてらんねぇンだ。 下手すると魔力を全部取られてショック死しちまうかもしれねぇし。

だったら多少の遠慮はいまは無用だ。 さっさとここから出してやんねぇとな。

 右手でマユを引きはがしながら、フェイトの体に当てない程度に気功波で焼き払って……

 

「……!? お待ちください」

「え?」

 

 右手に気を集めているところに掛かってきた声。 闇の書の娘がひと睨み効かせながらオラの手を掴んできやがった。

 いったい何の用だ? さっさとコイツ出してやんねぇと……

 そう、言おうとした時だ。 思わぬ発言が出てきたんだ。

 

「このまま無理矢理引きはがすと、死んでしまう恐れがあります」

「…………なっ!?」

 

 なんだってそりゃあ!! ここから出したら死ぬ?! いったいどういうことだ……焦ってたんだろう、オラは思わず娘の肩を掴むとそのまま前後にゆすっていた。

 少し乱暴だったか? けど、そんな些細なことを気にしてる場合じゃねぇし、時間も限られてる。

 お願ぇだ。 頼むからオラにわかりやすく説明してくれ――

 

「いいですか。 この子たちは魔導師の心臓とも言われるリンカーコアを掌握、さらに魔力を吸い上げるパイプのような物をつなげられているのです。 そんな重要器官を複雑に捕えられたところを無理矢理にでも引きはがせばどうなるか……」

「……そう言う事か。 つまり、いまこの世界とフェイトは強い力でつながってるんだな?」

「はい。 その通りです」

 

 参ったぞ。 正直、そう言うのはオラの専門外だ。 力で何とかってんならどうにでもなるかもだったけど、こりゃあ一端戻ってリンディやクロノにでも協力してもらった方がいいのか?

 ……けどグズグズしてたらクウラが完全復活しちまう。 今度またあの変身が出来るとは言い難いし……どうする。

 

「おめぇのチカラでなんとかならねぇか?」

「……難しいですね。 今現在、システムの大部分をクウラに奪われている状態ですから」

「そうか」

「しかも彼女の心は、おそらく強い拒絶で自ら閉じこもっているはず。 一筋縄ではいかないでしょう……なにか、より強い切っ掛けがあればおそらく――」

「拒絶……切っ掛け……かぁ」

 

 娘の方も相当参ってんだろうな。

 目に見えて申し訳なさそうに目線をさげて、暗い声で謝ってくる。 ……おめぇのせいじゃねぇのはわかってるからよ、そんな顔しねぇでくれ。 オラの方も不安で仕方なくなるじゃねぇか。

 

 こういうとき界王さまや神さまにでも相談できれば一番なんだろうけど……

 

「…………いねぇモンはいねぇ。 こうなったら自分たちの手で何とかするっきゃねぇよな」

「孫悟空?」

「少し、試してぇことがある」

 

 今思い出した界王さまたちの事で、浮かんだ案がひとつ。

 いつかの戦いで、オラは直接他人の心の中に声を出したことがある。 もしも、それが今のフェイトに届けられれば。

 

「直接話して、あいつの意思を強く思い浮かび上がらせる。 そうすりゃあ、この変なマユに抵抗してくれるかもしれねぇ」

「抵抗ですか?」

「……たぶんな。 オラも正直そんなんでうまく行くとは思えねぇよ。 けどもう、打てる手は全部打ちたいんだ」

 

 闘い以外のたたかいだ。 こうまで苦戦するのは仕方ないとして、負けることが許されねぇ人の命がかかった戦い。

 いつもみたいに喜び勇んで――なんて、悠長なことは言ってらんねぇ。 やるぞ、絶対助けんだ。

 

「もしも外で何か変化が在ったら、そのままどうにかしてコイツ助けてやってくれ。 もしかしたらオラの気を全部使うことにもなるかもしれねぇから、お前が頼りだ」

「……わかり……ました」

 

 左手はマユを掴んだままにして、右手をフェイトの顔に近寄らせる。 少しだけ頬に触ってやって上下に揺さぶる。 ……大ぇ丈夫、絶対うまく行くかんな。 だから安心して眠ってろ。

 そして、頬に置いた手を今度は上に持っていってデコに当ててやる。 ……行くぞ、精神集中だ。

 

「前にリンディの記憶を探った時と要領は一緒の筈だ……」

 

 目をつむって、一息置く。

 瞬間移動よりも鋭くさせた精神統一は、そのまま吐きだした息と一緒に爆発的に増幅させていく。 見えない――分らねぇ……フェイトの意思を感じ取るんじゃなくって、覗くだけに留めてさらに集中。

 出来るところからゆっくりやろう。 出来なきゃ何もかもが無駄になる。

 4月の時も、8月の修行も何もかもだ……そんなの、嫌だもんな。

 

「そうだろ? フェイト」

「…………」

 

 ゆっくりゆっくり。

 前にリンディが飲んでいた奇妙なお茶みたいに、どんどんオラの意思をフェイトの中に溶け込ませる感覚。

 掴むんじゃなくって、入り込ませる?

 とにかく、無理やりとは反対な方向でコイツの中を探っていく。 ……ん、だんだん意識が……いい感じに溶け込んできたか?

 

「…………おら、いくから……あと、たのんだ」

「……はい」

 

 あの娘の返事を聞くとそのまま意識を手放す。

 真っ暗なところに、どこまでも落っこちていく様な感じに……オラの意識がオチていく。

 

 

 

 

 

「フェイトぉー?」

「え?」

 

 誰かに呼ばれた気がしたんだ。

 でも、聞いたことのない声だった気がする。 ……うんん、やっぱりそんなことないや、だってこの声はわたしが大好きなあの人の声なんだから。

 

「どうしたの? 母さん」

「おねぇちゃん見なかった? もうすぐお夕飯なのに帰ってこなくて……」

「あぁ、そう言えば――」

 

 姿を見てないかな?

 思い立ったらどこまでも……自由奔放な性格なんだもん。 捕まえることなんてできないよ母さん。

 そう言うところは■■に似て……?

 

「あれ、今誰の事……」

 

 パッと浮かんでは消えていく……もう、さっきまで誰の事を考えていたのかが分からない……そうだ、きっと疲れてるんだ。

 昨日だって夜遅くまで――

 

「おそく……まで?」

 

 何やってたんだっけ?

 なんだかとっても大変だったような……でも、また同じことがしたいと思うのはなんで? 大変で、辛くて、とっても疲れて。 それなのにやめたいと思えない事。

 普通ならそんなこと忘れるわけがないのにどうして……

 

「フェイト? さっきから呆けてしまってどうしたの」

「うんん。 なんでもないよ」

 

 ずっと難しい顔をしてたみたい。 心配顔で母さんがこっちを見てくる。 ……忘れよう、こんなこと。 きっとなんでもない事とか、夢の事とかがごちゃ混ぜになってるんだ。 ほら、最近とっても大変だったし。

 

「そうだよ。 なんでもないんだから」

「?」

 

 いまはとっても幸せで、“ほかのしがらみが何もない”こんな素敵な時間は、今までで感じたことがない位いい気分にしてくれる。

 これでいいんだ。 ずっと、こんな幸せに包まれていたい。 どこにも行かず、ただ、幸せな暖かさに身を包まれて眠り呆ける猫のように。 私は――ずっとここにいるんだ。

 

「だから……」

「だから? だからずっとこんなつまらないところにいるの?」

「!?」

 

 この世界に、母さん以外の声が入ってくる。

 だれ……とは言わない。 だってその声はあまりにも私に似ていたから。 そう、そんな声を出せる人物なんてあのひとしかありえない。 私の……わたしの――

 

「…………アリシア」

「あーー!! またアリシアって言ったぁ。 おねぇちゃんって言ってって何度も何度も言ってるのに~~」

「ご、ごめん」

 

 私より5つも年下のおねぇちゃん……アリシア。

 さっきまで母さんが探していた人で、私とは正反対に活発で、行動力が並はずれて高い女の子。 背も私よりも幾分小さいはずなのに、それに反して気の強さは私とは比べ物にならないくらい大きい。

 

「もう、フェイトはいつもそうなんだから」

「……?」

 

 そんなアリシアが、少しだけ頬をふくらませながらこっちを見てくる。

 ……そんな姿がどう映っているのかな? 母さんが幸せそうに“わたし達”を見て、小さく微笑んでくれている。

 

「いつもいつも、自分は■■■だなんて後ろ暗いこと考えて」

「え?」

「気にしだしたら止まんなくて、それでも辛いだなんて言い出せなくて」

「え、え?」

 

 なに……いってるの?

 私そんな……それに“だいがえひん”ってドウイウコト?

 

「だからそんなことを小さいって、激励してくれたあの人がまぶしかったんだよね」

「あのヒトって……誰の事」

 

 わたし知らない。 そんな、こんな自分に笑顔をまき散らしてくる男の子なんて――知らない。

 

「生まれもどことなく似ていて、それでかな。 いつの間にか自分と重ね合わせて――あの人がいたから今の自分が居たなんて思ってる。 そして」

「や、やめて……」

 

 何言ってるのさっきから!

 私そんな人知らないし。 誰かを自分に当てはめて考えたことなんて一度もない!! 私は……わたしは……

 

「自分が自分だなんて気付くことが出来たのも、あのヒトが力強く自分の過去を断ち切ったから。 そんな心がまぶしくて、いつの間にか近づいて行ったんだよね? まるで街灯に引き寄せられる羽根虫のように」

「お願いだから……」

 

 やめて……やめてよお願いだから――

 

「だからそんなあのヒトが誰かのモノだったのが許せなかったんだよね?」

「違う!」

「裏切られたと思ったんだよね?」

「そんなことない!!」

「裏切るだなんて……そんな言葉すらおこがましい位、貴方一人の勝手な勘違いだったのに」

「うるさいッ!!」

 

 なんでそんなこと言うの!? 余計なお世話だよアリシア。

 もう、忘れたと思ってたのに……忘れたかったのに。 どうして人の心の傷に、そうやって簡単に触ることが出来るの!

 

「おかしい? なんでこんなこと言うのか」

「わかってるならどうして!?」

「それはね……」

 

 もう、何も求めないから。 これ以上、幸せなことなんていらない――今が一番楽しいんだ。 だからもう、いじめないで……わたしを追い詰めないで!!

 

「フェイト。 貴方には前を見てもらいたいの」

「いつだって……みてるよそんなもの」

「嘘だね。 それじゃなんで目の前のあの人に気が付かないの? いつまでも暗い過去(アリシア)の事なんて見ていちゃダメだよ」

「………………それって」

 

 ――――…………風が、吹いた気がしたんだ。

 どこにでも吹きすさんで、でも、だからこそ誰の心にもある鬱屈とした空気を吹き飛ばしてくれる……そんな風。

 あたたかくて、とっても暖かくて……でも、その温かさは今一番こころが痛い。

 

「……よっ」

「どうして……」

 

 あの笑顔。 いつも見ていたあの顔。 ……その顔を見るだけで胸が痛い……張り裂けるようだよ。

 

「なんとか入ってこれたな。 いやー、結構探しにくいからもう駄目かとおもったぞ」

「だったら探してくれなくてよかったのに……」

「ん?」

 

 いつもの笑顔が少しだけ歪んだみたいだ。 そうだよ、貴方が探していた人なんてこんな狭量な人間なんだ。 だから……だから早く呆れるなりしてここから帰って。

 

「……む」

「…………うぅ」

 

 なんでこっちをいつまでも見てるの? いいでしょ、少しくらい我が儘を言っても。 いつもいつも我慢して、押さえつけて、みんなの邪魔にならないようにそっと後を追うように静かに生きてきたんだ。

 これくらい……なんでもないはずなんだから。

 

「まだだな」

「…………え?」

 

 また、微笑んだ。

 しかもさっきよりも全然違くて、見せつけるような明るさがすごく眩しい。 どうしてそんな顔が出来るの?

 

「おめぇはすぐため込むタイプだからな。 もう少し、言いたいこと言っていいぞ?」

「…………っ!?」

 

 どうして……なにも言ってないのに。 なんでこんなに――

 

「人の心がわかるの……」

「そんなことねぇさ」

「だって今!」

「いまのはさぁ……なんていうか」

 

 なんなの? 少しだけ腕組みをして、すっと顔を上に向け始めた。 なんだか困ったようでいて、それでも一生懸命さが伝わってくる。

 慰めて……くれようとしてるの?

 

「なんたっておめぇは、ずっと前ぇからの友達だしな。 最近じゃ師匠だなんてやってるし、そう言う細かいところなんかは……な?」

「…………むぅ」

「ん? どうした?」

 

 期待してたのとは少しだけ違う答え。

 ちょっとだけ頬を膨れさせたのは――には内緒。 でも、きっと直ぐにばれちゃうんだろうな。 こういう気遣いは、何となく上手だし……なにより――

 

「さてはおめぇ」

「……」

「コイツの前だからって、遠慮でもしてんだろ?」

 

 ……ちがうモン。

 

「……? というよりコイツなにモンだ? なんだか姿だけならフェイトに良く――おお!? なんだおめぇ! すんげぇフェイトに似てんなぁ!!」

「ふふん。 相変わらず二ブチンなんだからぁ。 おにぃちゃん」

「お、おに?」

 

 なんだろう。 アリシアがとっても親しげなんだけど。

 今あったばかりだよね? まるでずっと前から、でもアリシアは……うんん、そうじゃない、ちがう。 アリシアは――

 

「もう、気が付いてるんでしょ?」

「……でも」

「認めようよ。 ここが、こんなところが現実な訳ないじゃない」

「だって……それじゃアリシアが!」

 

 せっかく母さんも本当にうれしそうに笑って。 私もとっても嬉しくて――でもアリシアだけがいないんじゃ意味がないよ!

 

「いいの。 前に、誰かが言ってたんだけど……」

「だれか?」

 

 ひっそりとしていながら、分りやすく視線を……視線を……悟空に移したアリシアは。あ、一瞬だけ怪訝そうな顔……どうしてそんな顔をするの?

 

「わたしはもう、この世界には“生きていないはず”の人間なの、ホントはね。 だからこうやって今生きている人の足を引っ張ったりしちゃいけないんだ」

 

「足を……そんなことない!」

「でも、もしもわたしがフェイトの前に現れたら……不安だよね?」

「え……」

 

違う、そんなことない。 アリシアが居なくちゃいけないんだ、本当は。 だって私、本当は――

 

「――その先はダメ」

「あり……しあ?」

 

 そっと唇に押し付けられた……人差し指。 アリシアの小さい指が私から懺悔の声すら奪っていく。 でも、きっと――

 

「自分で自分をなかったことにしようとするのは無し。 フェイトはフェイト、アリシアはアリシアなの。 それにもしも二人が一緒に居たとしても、あのママがどっちかをないがしろにすると思う?」

「あ、……それは……ないかな」

「でしょ?」

 

 これでいいんだ。

 

「おにぃちゃん取られちゃって悔しくて、残念なのはわかるよ。 だってこんなにやさしい人だし。 でも、それと一緒に自分すら否定しちゃダメ。 そんなことしたらママもわたしも悲しいし……おにぃちゃんだって嫌だもんね?」

「ん? ……そうだな」

 

 ただ、出会った順番がおかしくて。 不幸な事故だったと――あきらめることはできないけど。

 それでも今ある奇妙な関係はきっと、どの世界中探しても見つからないようなおかしな関係で。 そんなつながりだからこそ、もしかしたら普通よりも強い絆が生まれるのかもしれない。

 友達で、親子の様で、でも……

 

「フェイト……」

「アリシア?」

「あ、おにぃちゃんは向こう向いてて!」

「お、おう?」

 

 そっと耳元に口を添えると、右手で悟空を追い払うアリシア。 初めてする姉妹での内緒話だけど……内緒にする相手が悟空っていうのもなんだか。

 

「……頑張ってねフェイト」

「な、なにを?」

 

 もしかして恋の応援ってやつなの? でもダメだよアリシア。 だって悟空にはもう相手の人はおろか、お子さんだって――

 

「大丈夫だよ。 この世界でなら、きっと結婚ぐらいはできるから」

「……はい?」

「だっておにぃちゃん“セキ”が無いもん。 それなら両者が納得すればいつかは――」

「ちょっとアリシア!?」

 

 こ、この姉。 この歳にしてなんてことを言い出すの!? 

 自分と姿容姿が似通ってる分、まるで自分の中にいる小悪魔が悪事を囁きかけているかのような錯覚が……あぁ、だめ、揺れてはダメなの私――

 

「いつか帰るって言い出したら……でも大丈夫。 だっておにぃちゃんは――うんん、これは自分で聞いた方がいいかな?」

「……どういう事?」

「ふふ。 こればっかりは当人同士の問題だよ~あはは」

「アリシア……」

 

 イタズラゴコロ全開の私の姉は、そのまま一歩後ずさりする。 その先に居るのは……悟空。 山吹色のズボンに背中を預けると、不意に視線を90度上げて悟空を見上げだす。 そっと微笑んで、ニンマリと怪しげな影を作ると。

 

「フツツカ者の妹ですけど、お願いね?」

「ふつつか? 前にキョウヤとシノブが言ってたあれか。 いやぁ、オラそう言うのはもう――チチに殺されちまうぞ」

「浮気がダメっていうの? ……もう、見た目に似合わない硬派っぷりなんだから。 フェイト、思ったより手ごわそうだから頑張るんだよ」

「ア!? アリシア!!」

「あはははは!」

 

 とんでもない爆弾を放っていくのでした。 ……あぁ、きっとこの引っ掻き回す性格は母さん似なんだ。 それじゃあ私は父親似? 顔は知らないけど――

 

「アリシア、おめぇあんましお痛が過ぎるとダメだぞ?」

「大丈夫だもーん。 ずぅっと後で、きっと折れちゃうんだから!」

「……はは」

 

 きっと、苦労人だったんだろうな。

 

「……そんじゃそろそろだな」

「……あ」

 

 静かに目を鋭くする悟空。

 そっか。 もう、夢の時間は終わりなんだね。 とっても幸せだったけど夢は夢、いつかは終わらないと嘘だから……だから。

 

「アリシア、少しのあいだだったけどありがとう。 なんだか心のつかえが取れた気がする」

「そう? 思ったことを只言ってただけだから気にしなくていいよ」

「うん」

 

 そう言ってわたしたちから離れていくアリシア。 スキップしながら……まるでまた明日って約束をした友達同士のようにこの世界の奥へ行く……わたしのお姉ちゃん。

 背丈は小さいけど、その中にある思いはきっとわたしよりも大きいんだね。 だから、わたしが欲しい物をこうやってなんでもない風に手渡してくれるんだ。 ……とっても、つよいひと。

 

「…………!?」

「悟空?」

 

 もう、追別れという時にいきなり悟空がアリシアを見つめる。

 その目はなんだか驚いた感じで見開かれてて……どうしたの悟空? そんな顔したらアリシアが――

 

「えへへ、わかっちゃった?」

「まぁな。 オラ“そう言うところ”に行ったことあるし、そう言うやつには会ったことがあるからな」

「そうなんだ……そう言えばそうだったね」

「??」

 

 ふたりしかわからない会話。

 そう言うところ? どういうところなんだろう。 悟空しか行ったことがなくって、特別な場所で……パオズ山?

 それとも神様の宮殿ってところの事? なんのことだかさっぱりなんですけど……

 

「そんじゃよろしく言っておいて。 『どこの誰かは知らねぇが』この場は任せておいてくれ――ってな」

「うん。 よろしく言っておくね」

「アリシア? 悟空?」

 

 むぅ。 ふたりしかわからない会話、ちょっとヤダな。 別にアリシアに嫉妬とかそう言う事なんかじゃなくって、ただ何となくヤキモキというか……その。 ごめんなさい、やっぱり嫉妬みたいです。

 うぅ、わたし誰に謝ってるんだろう。 もう、悟空も悟空だよ。 もっとわかりやすく話してもいいのに。 いつもはあんなにおとぼけな正確なのに重要な時だけ大人になっちゃうんだから。

 

「ほれ、もう行くぞフェイト。 一端ここから出て、そとにいるあの娘と合流すっぞ」

「あ、うん――アリシア」

「うんうん、肩を抱き寄せられるところなんか完全に親子だね。 ごちそうさまでした」

「アリシア!?」

 

 もう、こっちはこっちで最後までからかってばかりなんだから。 悲しいお別れだと思ったのにこんなに明るい気持ちだなんて。

 ……誰に似たの?

 

「わかってるくせに……ねぇ~」

「な? まったくこういうところで知恵が回らねぇのは誰に似たんだか」

「……誰でしょうね」

 

 話が進まない。 もう、こうなったらさっさと済ませちゃうんだから――

 

「ほら、悟空行こう! 外でなのはが待ってるんでしょ?」

「おっとそうだった。 今度はなのはの番だもんな。 そんじゃすまねぇけどアリシア……」

「うん」

「“また今度な”」

「は~~い!」

 

 また……こんど? それってどういう意味…………――――――

 

 

 

 

「行っちゃった」

 

 闇の中に一人残るのはアリシア・テスタロッサ。

 既に幻影の世界は消え果て、ここにあるのは現実のものでしかないその中でも彼女は存在し続けていた。

 それほどにフェイトの懺悔の念が強かったか? だからこそこうまで残留思念が強く残ったのだろうか……いまだ消えることを良しとしない彼女の存在は――――……

 

「すごい。 相変わらず時間ぴったしだね、おにぃちゃん」

「そうか? おめぇ以外の気が消えたから来たんだが……そんなにズバッといい感じにこれたんか」

「あんまりにもぴったりだから鉢合わせするところだったよ」

「……そ、そっか」

 

 消えず。

 

「そんじゃあいつの手助けも終わったことだし、おめぇの我が儘もここまでだな。 あっちの世界に帰ぇるぞ」

「あっち? どっち?」

「さっきまで居たとこだ。 ここに長く居すぎると、またオラが余計な事しちまいそうでいけねぇ。 さぁ、オラに捕まれ」

「はーい」

 

 不意に現れた青年の手を掴んで、二人共々この世界から消えていく。

 夢幻を終わらせるかのように、有限という枷のある世界へ帰還するかのように……彼らはこの世界から飛び立っていく。

 

 

 

 

「―――――――――…………ただいまっと」

 

 なかなか飛んでもねぇことになってやがんな。 アリシアの出現に、この世界に現れたもう一つの……いや、今はそんな余計なことを考えてる暇はねぇはずだ。

 

「考えるのはクウラをどうにかした後だ。 じゃねぇとみんな殺されちまうしな」

 

 んで、それをやるには後もう二人助け出す必要があるわけだが……その前に。

 

「フェイト、紹介しとく。 コイツは――この古本の中に住んでる気難しい娘っ子の……」

「誰が古本娘か!!」

「いてぇ!?」

 

 あー! いてぇ。

 ちっくしょ~何も本気で殴らなくてもいいじゃねぇか。 いくらオラでもいてぇモンは痛いんだぞ? それをこいつはわかってんのかよ。

 

「あ、あなたはさっきの……?」

「……先ほどはすみませんでした。 主の乱心を抑えきれずこのような」

「は、はぁ」

 

 とまぁ、体よく自己紹介の方がうまく行ったところで……――――

 

「ほい、なのはのところに到着! ……って、い゛い゛!!?」

 

 な、なんだこれ?! な、なのはがさっきのフェイト見たくマユにグルグル巻きにされてんのはいいとして。 でも、いくらなんでもこりゃあ……

 

「野球のボール見たく、でっけぇ球っころにされてんだけど」

「ドウイウコトデショウカ」

「それはわたしが聞きたいよ」

 

 闇の書の娘もフェイトも、オラと同じ感想だってのは間違いないようだ。 しっかしなんだこれ……なんだこれ?

 フェイトなんか着込んだバリアジャケットの肩口がずれこんでる始末だ。 ……ほんと、どうすんだこれ?

 

「なぁ」

「ダメです」

「いや、オラ何にも言ってねぇだろ?」

 

 喋ろうとしたオラを制して、闇の書の娘がジトォーっとした目でこっちを見てくる。 うげぇ、なんかやな感じだぞおめぇ。

 

「いま、あのマユを気功波で焼き払おうとしましたね?」

「うぐっ!?」

「悟空……」

 

 い、良いじゃねぇか少しくらい。 あんなにいっぱいあっちゃ、さっきのフェイトみたく接触できねぇだろうに。 それに今くらい、いちいち気功波を使わなくても――

 

「かめはめ波で消し飛ばして……」

「よしなさい!」

「じゃ、じゃあ気合砲で」

「それ以上しゃべると良い目をみませんよ?」

「……ダメか」

「だめです」

 

 結構妙案だとは思ったんだけどなぁ。

 聞く耳持たないっていうか、こっちの事なんかお見通しだぞ――って言われているような。 ……女ってみんなこうだから困っちまうぞ。

 

「……悟空が大雑把なのもイケナイと思う」

「え?」

 

 フェイト、そりゃあおめぇどういう意味だよ。

 

 訝しげな眼でこっちをみて、ふぅっと息を吐いたフェイトは疲れたような目をしてた。 いやまぁさっきまでここにとっ捕まってたんだし無理ねぇか。 早く休ませてやらねぇと。

 

「……あの、今悟空って、どうしてこんな表情してるかわかってるんでしょうか?」

「あのトウヘンボクにそんなレアスキルなどありません。 精々見積もって、貴方の気の減少具合から体力の低下を心配している止まりでしょう」

「ですよね」

 

 耳打ちなんかしちまってやな感じだなぁ。 はぁ、なんだかこっちまで疲れてきちまったぞ。

 

「……はやく終わらせましょうか」

「そうですね」

「……だな」

 

 満場一致って感じで、取りあえずなのは救出隊が出来たのはいいけど、これからどうするかだな。 強すぎる攻撃はそのままなのはをあの世に連れて行きかねない、かといってもたもたしていられねェし。

 

「いよっ」

『!?!?』

 

 めんどくせぇや。 クリリン、技を借りるぞ!

 右手を振りあげて、そのまま気を円状に放出していく。 そのまま形を保って気の流れを収束……高速で回転させていくと――

 

「気円斬――――!」

 

 クリリンの18番の完成ってな。

 遠くに向けて飛ばした気円斬はなのはを包んでいると思われるマユの3分の一を切り裂いていく。 すっぱりと開いたそこには只、グルグルと渦巻いた白い糸が見えるだけでゴールはまだ遠そうだ。

 

「そんじゃもう一丁!」

『あ、あぁ!』

 

 今度は反対側をきれいにスライス。 おぉ、なんだか調子ついてきたぞ。 これなら一気に救い出せんじゃねェのか?

 ひし形っぽくなったマユの2本あるうちの一本のとんがりに向かって――すかさず!

 

「そぉれ!」

 

 気円斬!!

 すぱんっと気味の良い音が響くと、そのまま切り離されたマユを気功波で焼いていく。 ……モクモクと山火事みてぇな匂いがするのはイタダケねぇな。 こりゃあちぃと失敗だったか。

 こんどは一気に消滅させねぇと。

 

「もう一丁!」

 

 残った一角に向かって最後の気円斬。

 これでなのはを包んでいるマユのほとんどが消え――――かすん?

 

「お、おぉ!? い、いいいいいいいま!?」

「な、なのは!?」

「高町なのは――」

 

 顔だ、今の気円斬でなのはの顔が露出した――――

――前にタレた髪の一房を切り裂きながら。

 

「あ……あっぶねぇ~~! 今完全に当たってたよなぁ」

「あ、危ないってもんじゃないよ悟空! もうすぐでなのはの首と胴がサヨナラするところだったよ!?」

「助けに来たんですか? それともトドメを指しにきたんですか……はぁ」

 

 は、はは……失敗失敗。 今のはさすがに心臓が止まりそうだったぞ。 調子に乗りすぎたな、幾らなんでも。

 ……まぁ、結果的になのはを目視で確認できたし良いとは思うけどよ。 いや、まずいか。

 

「さ、さて。 そんじゃこの勢いでなのはをぱぱっと救っちまおう!」

「悟空が珍しく狼狽えてる」

「当然でしょう。 危うく仲間殺しの汚名を被るところだったのです。 いくら神龍が居たとしても、自分が殺したという事実だけはなくなりませんし」

 

 

 

――――――やっとこさ見つけた高町なのは。 その前にひと悶着あったが、それはそれとして気持ちを切り替えた悟空はやはり冷静であった。

 さぁ行くぞ……そう言ってフェイト・テスタロッサにやったように、精神世界へとダイブしていく彼が見たものは?

 世界は? 高町一家との亀裂はあるのか?

 大から小まで様々な不安を抱え込みながら、孫悟空の潜航は始まるのでした。

 

 

 クウラ復活まで、残り30分。

 




悟空「オッス! オラ悟空!」

アリサ「悟空って……あんなにすごかったんだ」

恭也「アリサちゃん?」

アリサ「とんでもないとんでもないって思っていたけど、それ以上に――アイツを見た時の安心感が……」

恭也「……アイツ、このままだといろんな意味でこの街を破壊しかねないな。 さっきのかめはめ波といい勝負じゃないかこれは」

すずか「悟空さん……あぁ悟空さん」

忍「こっちの症状は完全に末期ね。 仕方がないと言えばそうだけど――夜の一族って、宇宙人相手でも”平気”なのかしら?」

恭也「心配する部分がおかしいことに気付こうな忍。 では、次回!!」

悟空「魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~ 第54話」

恭也「真名――おくりもの――」

悟空「夜天ぇぇーーん」

闇の書の娘「…………」

悟空「やてーーん!!」

闇の書の娘(おこ)「貴方の息子じゃないんですか! 変なアクセントをつけるのはおやめなさい!! いいですか? 私の名は――――」

悟空「やてぇぇ――ん!!」

闇の書の娘「……もう、ヤテンでいいです」
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