少女の身体は無傷。 今まで、悲しみにふけって現実から逃げていたから当然だ。 戦いもせず、ただ、ことが終わるのを待っていた彼女はどこまでも弱く、つまらない女であったろう。
だけど、だ。
聞こえてくるみんなの悲鳴と、必死に絶望へ抗うその声を聴いてしまえば、少女の中に様々な思いと記憶が噴出する。
其れは、たった一人の少年が起こした奇跡であった。
其れは、たった一人の青年が過ごした季節であって。
其れは、たった一人の大人がつないだ世界のはずだ。
消えようがない死闘の数々は、少女が体験したこともないことだらけだ。 その中でもあれは立ち上がり、間違った道を行くものを時に正し――
――――時には葬り去っていった。
みるモノが見れば怖気が走る行為でも、その実これしかない苦渋の決断のモノだったと、少女は同い年の女の子の中でも誰よりも早く見抜いていた。
だから、そんな決断ばかりしてきた彼から目が離せなくなり。
そんな決断しかさせられない自分たちの無力を、呪いもした。
その結果が………………しかし、報われるとはだれも言わなかった。 そうだ、何時かは役に立つ力かもしれない。 けど、それがたった今使えるとはだれも言っていなかった。 あの、最強の戦士ですら。
故に起こった、悲劇。 もう、誰も傷つくこともないと思った矢先に起こった消失に、少女の胸の内はついに張り裂ける――――こころが、砕け散る。
「レイジングハート、狙いはつけなくていいよ……」
優しい声だ。 今にも切り崩されてしまいそうな、浜辺にある砂の城を思わせる細い声は、きっと誰の耳にも届かなかっただろう。
「―――――――みんな壊してやる……ッ」
[あの、小娘……!]
故に、彼女の感情の起伏に、誰もが気付けずにいた。
クウラが夜空を仰ぐ。
その先にあるのは同じく絶望、 自身が数百の機械を従えるのならば、彼女もまた数百の兵隊を従えている。 ……正確には、数百のアクセルシューターが彼女の周りを運河の如く埋め尽くしているのだが。
「……た、高町……」
「あいつ、なんて量を」
「あれが、なのはなのか……!」
見て、感じた結果がこの言葉だ。
魔導から遠い剣士は当然として、一番近くにいるはずの騎士たちですらこの反応だ。 少女が作るこの現象が、いかに現実から逸脱しているかがわかる。 ……そうだ、あの少女の力量ではありえない光景がいま、世界を埋め机いていくのだ。
「…………っ!」
引きつりそうな声。 其れは悲しみ? ……決してそれだけではないだろうことは誰もが知りうる現実だ。 レイジングハートを振りかざした彼女は、そのまま運河の流れを変えていく。
「…………キッ!!」
見開かれる目。 その中に映る鋼鉄は、今もなお自身を嘲笑っているように思えて、それだけで彼女の心を逆なで、ざわつかせる。 気に入らない許さない…………その存在を消し去ってやる。
既に自身の能力の限界を超えた彼女は、いま、流れを変えた運河を――――
「うわああああああッ!!」
―――――――――――解き放つ。
一斉に流れ落ちる数百のアクセルシューター。 威力だけならなんてことはないだろうが、数が数だ。
[小賢しい真似を!!]
クウラが言葉を吐き捨てるのも、仕方がない事である。
……だが、鋼鉄の帝王よ。 果たして事態は吐き捨てる程度に収まりの聞くモノだろうか?
[――――――ギ!?][…………っ!!?]
―――――――――瞬時、クウラが二体消失した。
いきなりだ。
横合いから襲い掛かる25個のアクセルシューターが、クウラの胴体を貫けばそのまま全身を虫食い状態にしていたのだ。 さらに数十のシューターが襲えば残り片を食い散らかして跡形をも消し去っていく。
この間わずか数コンマの時の流れしかない。 ……周囲は、自意識を手放しかける。
「……おい、シグナムあれ……」
その中で何とか言葉を発したのは赤いおさげの女の子……ヴィータだ。 彼女は今起こった“非常識”を脳内で整理をきかせれば、隣にいる剣士に質疑を投げかけていた。 その顔を、驚愕に染め上げながら。
「……おそらくだが」
その先に居る剣士は落ち着いた表情。 ……否、どことなく冷静さを表に出しているだけに過ぎない彼女は、その心中を荒波にさらわれながらも、白きドレスの少女を見上げていく。
「修行は、ある意味で完成していたのだろう」
『……え?!』
吹き飛ばされていくクウラの大群。 なおも攻撃をやめないなのはが、手に持ったレイジングハートを神々しく輝かせる。
「奴は元々、内に宿らせている魔力が常軌を逸していた。 だが、その存在を知らずに育った故に、ちからの使い方と対応する心身を育むことが出来ずにいた」
「……」
「そこを、おそらくだが孫の奴は見抜いていたのだろう。 ……いいや、それをも見越してさらに発展した修練を課したに違いない」
杖から発せられたバスターは、クウラの悪あがきをいとも簡単に消し去っていく。 漆黒の空を染め上げた桃色の魔力はそのまま空気へ溶け込み、存在を忘れさせていこうとする。
……次の攻撃が来るまで……だが。
「しかし、その修行も相対する人物の事すら気遣う高町の性質が“歯止め”をかけていたのだろう」
「……どういう事だよ」
「思い出せ。 我らは知っているはずだ……その内に眠らせている潜在能力を、ある感情をトリガーにして引きだす、最強の遺伝子の持ち主を」
「…………あ、アイツの」
「そうだ」
まさかの攻撃を前に、もはや怨嗟の声が上がるクウラ。 しかしその声も、高町なのはの怒りの戦哮を前にかき消される。 石が、砂粒となって大地に還るように。
「鍛え抜かれた心と身体は、持っている魔力の行使を実践レベルの使用に耐えさせ、さらに修練で積みあげたチカラを感情という起爆剤で劇的に上昇させているんだろう」
「……アタシ等には到底できない代物だろうな」
「…………さぁな」
「?」
クウラ――――残機5体。
自身の持っているデータからはあまりにもかけ離れた攻撃を前に、舌打ちを隠しようがない。
[何が起きた? なぜ奴の戦闘力がここまで上がる……]
消えそうだった、既に尽きていたと言っても過言じゃない敵の力を、その真の威力を見た奴が歯噛みを止めようはずがない。
いいや、出来ない。
[今のオレでも十分に対応できる程度の戦闘力しか持たぬはずだ……]
奴の目の中がわずかに発光する。 見えてくるのは幾学かの数式と、サーモグラフを思わせる人体映像。 少女を映し出すそれは、彼女の全てをさらけ出していく――筈だった。
[……た、たかが数百しかない戦闘力でなぜこうも追い込まれる? サイヤ人の平均戦闘力もないただの地球人に]
それでも、見えないモノは見えない。
消え入りそうな笑みと破滅を願う嘲笑が入り混じったと思えば、すぐさま無表情となって自身を呪いはじめる少女。 苦しそうに、全てを終わらせたそうにしているその姿は、闇が付け入るのには十分なはず。 でも……
「お前だけは決して――」
[――くッ]
叫ぶなのはがレイジングハートを掲げる。 桃色の閃光があたりに散らばれば、機械の身体が次々と崩れていく。 アクセルシューターが高速の連打を繰り広げているのだ、故にクウラはそれに対応すべく身体をくみ上げようとしていくのだが。
[なるほど、再生が追いつかないな]
「うぁああああッ!!」
[馬鹿な――]
あくまで冷静に、決して取り乱さぬように己が状況を把握していく。
今目の前の少女は確かに不確定要素の塊だ。 急激な戦闘力の上昇はかつて相対したサイヤ人の息子を彷彿とさせて不気味だし、魔導師のくせしてここまで力を付けたのも納得がいかない。
[そのような無理をし続ければいずれ……]
だけどクウラには、この時焦りの文字はとうに消え失せていた。
[……5]
「うぁああああ!」
つぶやかれる言葉。
同時に繰り出されたなのはのバスターを、身を捻るだけで躱して見せたクウラは氷よりも冷たく冷静だ。 そのあとに繰り出されるシューターも、周りにいる同じ体を持つ機体たちですら躱していく。
[4、3、2、1]
「……はぁ……はぁ……うくっ!?」
不意にアクセルシューターが消え去っていく。
クウラを囲い、動こうものなら打ち抜いて行った凶弾がいとも簡単に霧散してしまう。 奴が何か行ったのか? 周りにいる者達は視線も鋭くあたりを見渡すが、答えは見つかるはずがない。
だってそうだろう。 今起こった力の消失は、其の言葉の通りの意味しか持ち合わせていないのだから。
[残存魔力が尽きたようだな]
「はぁ……はぁ……」
そう言うところまで師匠譲り。
敵たるクウラの弟。 その仇敵と同じ過ちを犯した少女を凍った視線で射抜けば――
「ぷ、プロテクショ――」
[遅い]
「ぐぅぅっ!?」
白い衣を業火にて焼かれる。
爆炎が上がれば少女が吹き飛び、遠くの大地へクレーターを作りながら不時着させられる。 この時に舞い上がった土煙が姿を隠してくれるのが幸いか? ……いいや、そんなものは奴には通用しないだろう。
クウラの、右目が細かく輝いていく。
[ほほう、戦闘力が消えないところを見るとまだ息はしているようだな]
彼等お得意の技術の内の一つ、スカウター。
それは相手の戦力を数値化して、さらには惑星単位で存在を把握するという我々には到底真似できない代物。 そこに彼が孫悟空より奪い取った技と、もともと収めていた能力を掛け合わさってしまえば…………――
[――――……どうした、まだ寝るには早いんじゃないのか?]
「あう!?」
少女の眼の前へと、難なく現れて見せる。
前髪を無造作に掴まれ、持ち上げ、吊るされていく少女の身体はやはり軽い。 頭部に襲い掛かる痛みは首筋を伝い脳へダイレクトに伝わってくるようだ。 ……まだ、挨拶程度地獄の開幕に、さすがの少女の顔が少しだけ引きつる。
[所詮、この程度]
「ぐ、ぐぐ……」
凍るような笑み。 その冷酷な態度が騎士たちを泣かせた……その、冷たい笑みが彼を殺した――
「お、お前だけは!」
[殺してやる……か? 無理だな、貴様程度では]
「う!?」
少女の腹に拳が収まる。
バリアジャケットをいとも容易く貫いてくる衝撃に、胃の中の物が急激にせり上がってくる。 その中身を純白のドレスを汚すのは別にかまわない、そんなことを気にしている場合ではないからだ。
でも、それでも少女が許せないことがある。
「ぐぅぅ……」
歯を食いしばれ、まだあきらめるには早いだろ?
心のどこかから聞こえてくる言葉は厳しいモノである。 でも、それにどうしても反論できない……いいや、むしろ肯定の意すら見せ得るなのはが、その眼の中に光を灯し始めた。 小さな光だ、ほんの些細な衝撃で崩れてしまいそうな弱い光。
そんなものはこの、闇をも呑み込んだ冷鉄の前では無力に等しいだろう。
……なんの、意味も持たないくだらない玩具に過ぎないだろう。
「…………」
[喋る力も失ったか……脆いな、地球人]
そう、光が彼女だけだったら確かに弱かっただろうよ。
「ブラストファイヤー」
[ぐ!?]
あぁそうとも、その光がたった一つでは確かに弱かっただろう。
駆けぬける熱線にクウラの腕がもげ落ちる。 その断面はまるでバターの様に見え、今のが実際に熱を持つ攻撃であると判断した奴はバックステップ。 おおよそ100メートル程離れたクウラは月夜を見上げる。
そこには、灼熱の太陽が怒りを燃やしていた。
「……大丈夫ですか、オリジナル」
「しゅ、シュテルちゃん……」
攻撃の温度とは違い表情は冷たく、しかし心は烈火よりも燃え上がっている。
明らかに怒りに燃えているその姿は自身の生き写し。 高町なのはは、今まで見ていた彼女を思い起こすと信じられないと言った顔をする。
「驚きました……」
「え、あ、うん……わたしも」
そんな冷たい表情をしたまま途轍もない怒りを秘めているなんて……言外に呟いた彼女の心境を、しかしシュテルは否定する。
背を見せ、その漆黒のドレスに月光を浴びれば不意に奴へと視線を向ける。
「この私に、このような感情が渦巻くなんて」
「……え?」
「本当に……信じられない」
何を、信じられないのだろうか。
其れは出された庫渡場以外の意味合いが強いだろう。 その全てを問い出すということはなのはにできない。 なぜならシュテルの黒いドレスが、月光の光りのせいだろうか、あまりにも儚げに映るから。
なにが信じられないかなんて、いまさら聞く必要もないから。
「気を付けてシュテルちゃん、あのクウラは――」
「えぇ、分っていますオリジナル」
大地に降り立った殲滅者はただ、目の前の鉄屑を睨みつける。 涼風のような視線の中に見え隠れするのは黒い感情に他ならない。 黒いドレスの彼女はいま、この世界に降り立って初めてその感情を爆発させる。
「あれは…………私の敵です」
[……ほう]
クウラが口元を吊り上げる。
気に障った? ……否。 彼は嗤ったのだ。 この期に及んで、自身を敵と認識できる存在を。 この、いまや世界最強を自負できる、圧倒的な力を手に入れた己をまだ、敵だと呼んでいる哀れな作り物を。
尾が揺れる。 其れと同じくドレスがヒラリ、宙を舞う。 一向に動かない彼女たちを、既に月すら暮れてしまった星空が眺めている。 静かな時はほんの少しの間だけ。 彼らは、ゆっくりと動き始める。
「――ッ」
[ちっ]
小さく言葉を吐いたのはクウラが先である。 数瞬の間に距離をゼロにした彼女たちは、お互いの武器を……拳と杖とで盛大な金切り音を鳴り響かせては火花を散らす。 その光景を、体力が尽きた高町なのはは見守ることしかできない。
「…………■■■■」
何度かの衝突の末に紡がれた言葉。 それを吐き出したのは黒衣のドレスを身に包む彼女だ。 杖の先端にありったけの魔力を叩き込み、収束し、一気に高めれば豪炎が周囲を燃やし尽くす。
そう。 高町なのはのコピーと自嘲する彼女は、その実……只の模造品ではない。
「堕ちなさい」
[なに?!]
クウラの右半身を爆炎が通り過ぎる。 その熱は空気を伝導して周囲を燃やし、近場にあった機械の成れの果てを焦がし、溶かしていってしまう。 明らかに常軌を逸した攻撃を前にクウラがついに驚きに顔を染め上げる。
だがその表情を見て少女に喜びも無ければ当然隙もない。 彼女は、更なる追い打ちをけしかけていく。
「――――」
[追尾弾か]
不意にクウラの周囲を取り囲む豪炎を纏いし光球たち。 それはなのはのアクセルシューターにも見える軌道を見せつけ飛行すると、そのまま周囲へ散っていく。 いきなり襲いかかる真似はしない。 奴は、そんな単純な攻撃には付き合ってくれないのだから。
ひとつ、円を描けば奴の注意を一瞬だけ引けば。
ひとつ、高速で突っ切ればクウラの右わきを掠り。
ひとつ、螺旋を描きながら翔けぬければヤツの腕にぶち当たる。
幾度でも何度でもヤツを追い詰める豪炎の光りたちは、シュテルの意のままに、ただ、クウラを鉄屑に分解していこうと飛び交う。 その連携についに奴の身体は悲鳴を上げたのであろう。
[――ちッ]
奴の半身に大きな亀裂が入る。
「砕け散れ!」
[グォォオオ!?]
無数の追尾弾が奴の身体にぶち当たり、奴の金属の身体から悲鳴が上がっていく。 亀裂が入り、割れ、欠け、砕けていくクウラの身体。 その中でも彼女に油断の文字は無く、更なる呪文を紡げば無数の光弾が奴の周りを取り囲む。
全身に亀裂が走った機械の皇帝を前に、追尾弾が嵐となって吹きすさぶ。
[!!]
腕で防御を――その腕は既になく。
脚で落す――その足は地面に張り付いてはがれない。
尾で弾く――遠くの方で地面に転がる物に何を頼る?
自動追尾弾の雨あられに、さしものクウラも手も足も出せていない。 周りの同型機の援軍を出せばいい……そう思った矢先に映る内蔵型スカウターの映像は真っ白。 この、戦場の中でついに彼はたった一機となっていたのだ。
「そんな馬鹿なと、思わないでください」
[……な、に?]
冷徹に、そして嘲笑うかのように少女が疑問の答えを埋めていく。 しかし攻撃の手を緩めることは無く、一方的な虐殺を展開したままでだ。
「オリジナルが貴方の数を減らしている間、私が何もしなかったと思うのですか?」
[陽動……だとでも言うのか]
「……それはそちらのご想像に任せます」
薄笑いすら零れる、冷酷を極めた少女。 “他よりも手ごわい”クウラを爆炎の嵐で包み込むと、そのまま持った杖に魔力を叩き込む。 その光景はまさしく高町なのはのソレ……そう、彼女の専売特許の収束砲撃魔法。
「消えなさい……クウラ」
[――――!?]
その、たった一言だけがクウラへの手向けの花。 言わんばかりの最後の攻撃に包まれた奴のボディーは文字通りにこの世から消え去ってしまう。 砕け散った鉄の破片が地面に散らばり、残った下半身が無残にも大地に投げ捨てられる。
その半身すらも原型を何とか保っている状態だ、普通の感覚さえ持っていればこれで終い……そう、思ってしまいたいはずなのに。
「我が王よ、しばしお願いします」
【封時結界だな、任せよ】
残りの半身を、軽く振るった右手から打ち出した魔力で包み、消失させる。 その中で交わされる会話により、あたりは薄暗い背景に包まれていく。
「……オリジナル」
「シュテル、ちゃん」
薄暗い世界の中で、視線だけ動かした先で横たわるのは自身と同じ容姿の女の子。 彼女は傷つき、裂けた白いドレスに身を包みながら大地に這いつくばっていた。 もう、出せる気力も魔力も使い果たした彼女は、それでもシュテルの視線が和らぐことはない。
「肩を……一端ここから離れます」
「う、うん」
差し出される手を見て、促されるままに掴んだなのはは周囲を見る。 薄暗い空はいつか見た覚えがある。 それが結界の類いだと思い出したときには彼女の身体はほんの少し宙を浮き始めていた。
「どこに……」
行こうとしているのか。 戸惑い隠せないなのはがシュテルを見つめる中、それでも彼女は何もしゃべらない。 時間がないのだと悟った時には彼女たちは群集の中に降り立っていた。
「なのはちゃん、大丈夫?」
「は、はやて……ちゃん」
その中に居た儚き女の子。 以前、取っ組み合いをしたとは思えないほどに線が細いのはきっと気のせいではないだろう。 彼女にとって大事な人物を二人、何の覚悟もないままに奪われてしまったのだ、この位で済んだのはまだマシというところか。
さらに見渡せば見知った顔がいくつか。 でも、今はそれを正確に把握できる精神状態ではなく。 彼女は担がれた肩を解かれれば、力無く地面に膝をつけドレスを汚す。
「わたし……」
仇なんて、討てなかった。
口ごもる彼女の代わりに表情が語れば、だけどみんなは何も言わない。 落胆は当然として、励ます声もない。
「とにかくこの状況を打破するのが先決ね。 それで、奴と交戦した人からいろいろ聞きたいことがあるのだけれど……」
紫色のドレスを妖艶という言葉と共に着飾る女が居た。 プレシアだ。
彼女は今にも崩れそうな少女を見るや視線を閉ざす。 少しだけの考察の中で数多の計算式を浮かび上がらせると、プレシアの目はすぐさま開かれる。
「プ、プレシアさん」
「……大体分かったわ」
「え?」
あっという間に組み上がった勝利への方程式。 だが、それにしたってこの合間の無さは不自然極まりないだろう。 何かが変だと勘付くのに時間はいらなかった。
「あ、あの――」
それを口にしようとした時だ。 高町なのはは見る。
「…………もう、あれを使うしかない」
普段ならば決して見ることが無い姿。
其れは本来ありえないモノである。 プレシア・テスタロッサという人物は常に自身に満ち溢れていた。 其れは己が行うことに迷いがないということを意味し、彼女自身、そんな自分が間違っていないという確証の元、そんな態度をとっているのだから。
かつて、大きな過ちを起こしたという経緯がより一層に迷いを消しているのだろう。
だが、そんな彼女がここに来ていつもの勝気というか、強さの鳴りを潜めてしまっているのだ。 心配を通り越し不吉すら浮かべるのはどの人物だって共通してしまう。 ……そうだ、彼女は何かを悟ったのだろう。 あの怪物を斃すには、なにか途轍もないことをしなくてはならないと。
「それにはまず……」
その途轍もないことを実行に移したいのだろう。 プレシアの視線はここにきてようやく横へスライドしていく。 映るのは儚き少女に他ならず、そんな少女を見たプレシアはここにきて、またもため息をひとつ吐き出していた。
「八神……はやてちゃん」
「は、はい……?」
それと同時につぶやかれた言葉はどれほどに弱々しかっただろうか。 今の言葉が名詞だと理解するのだって少しの合間が必要で。 だからこそ、八神はやてと呼ばれた彼女は数秒遅れて反応を返すことが出来た。
さて、ここまで暗い表情を見せつけられたはやては思う。 この人がいま、どれほどに深刻な状況の下自分に話を持ちかけてきたという事を。
「どないしたんですか……?」
すこし、様子をうかがってしまう。 会ってまだ数日しかないはずの間柄、だけどひと目見て、話しを聞いて、一緒に過ごしてしまえば嫌でもわかるこの魔女という人物のキャラクター性。 およそ淑やかさからはかけ離れている存在感は、逢う者に強烈な印象を残すには十分すぎて。
それが判るくらいには一緒に居るはずのはやてですら、思う。 今ここにいる魔女が、どうにも深刻に過ぎるということを。
「無茶を言うのは承知の上よ」
「え?」
「でも、どうしても必要なの……貴方の力が」
「………………」
やはり……その言葉が一番先に来たのは、どこか自分でもわかっていたから。 ここから先、こんな地獄のような世界を救うにはもう、出し惜しみしている場合ではない。 出せる力はすべて使わなければ、取り返しがつかなくなるのは少女にだってわかっていた現実だ。
例えそれが、忌み嫌われた
「ま、待ってくれ!」
「シグナム……」
「確かに状況は最悪だ。 しかしだからと言って、主は今まで戦いの外だったんだぞ!」
そしてそれを止めるモノは当然として騎士たちだ。 彼女たちが今まで戦い、やりたくもない闇討ちすらしてきたのはただ、儚き少女を守りたいがため。 たとえそれがどんな結末になろうとも、ただその一瞬を守りたかった彼女たちは、だからこそ彼女の参戦を拒む。
握られた拳は力なく、奮い立たせた身体に生気が無かろうとも、これだけは譲れないと眼光を鋭くする。
――――でも。
「ええんよ」
「…………主?」
それでも、彼女は騎士たちを引かせる。
「わたし、戦うゆうのがイマイチピンとこない。 けどな、これだけはわかる」
けれどそれは諦めでも、己が身を捨てるような自暴自棄でもない。
「ごくうとリインフォースが護ったこの時を、決して無駄にはしたらあかん。 もしもあの二人の決意を無駄にしたら、きっと“むこう”に行ったときにウンと怒られてまうし」
「あ、主……はやて」
その声は酷く穏やかだった。 まさについ先ほど、肉親とも言える間柄の者達を奪われた者とは思えない穏やかさは却って不気味の一言だ。 けれど、その声の中に一欠片ほどの憎悪もない。
「ここで縮こまっていたらどうなるかなんて、世間知らずなわたしにだってわかる」
彼女の脳裏にはある出来事が流れ込んでいた。
「みんなが必死になって守ってくれて来たんはうれしいけど」
其れはあるはずがない記憶の彼方。
機械の惑星が、今にも崩壊していく最中。 それでもたった二人の戦士は居残り、身体から血を流しながらも立ち上がり。 壊れゆく肉体に鞭打って鋼鉄へと立ち向かっていく。
そのときの彼はまさに決死の覚悟であっただろう。
そのときの“青年”はどこまでも力強かったろう。 ……いまはまだ、彼のように啖呵を切ることも、力強く敵を否定することもできない。 けど、だからこそ彼女は言わなくてはいけないのだ。
「――――“やんなきゃならない”ときは、必ずあるから」
立ち向かうことを恐れるな。 いまはただ、これ以上の悲しみを増やしてはいけない。 少女が決意を胸に刻み付け、その目に強い光を携えた時だ。
「な、なに?」
「これは!?」
八神はやての周りを小さな光たちが溢れ出す。 いくつもの光たちはまるで少女を励ますかのように揺蕩えば、腕を包み込んで袖。 腰回りに留まりスカート。 背に乗れば黒き翼をはためかせ、彼女に力を授けていく。
その姿、その輝き……いままで戦い抜いてきたもの達にはどこか見覚えがある。
「リインフォース……さん」
つぶやいたのはフェイトだ。 彼女はいままで、そう、本当にいままで戦ってきた相手の名を小さく吐き出していた。
儚き少女が戦装束をまといし事の時、ようやく世界は元の風景に戻っていく。
「ようやく自分の足で歩きだしおったか」
「王様……!」
その姿を見て、悪態付きながらやってくるのはディアーチェだ。 しかしその顔はどことなく嬉しそうに映るのは果たして……八神はやては、激励だと受け取るや否や騎士たちを見渡す。
「頼りない主やけど、みんな……一緒に戦ってな」
「……主」
皆に賭ける激励などない。 彼らの士気は最高潮になっているのだから。 敵はたった一つ、やる事は至極単純。 倒して終わりのこの戦、もう、後は走り抜けるだけだ。 遂に戦場へと降り立った夜天の主を見る騎士たちに、いままでよりも一層の活力がみなぎってくる。
あの儚い女の子が立ち上がるのだ、なら、自分達がやるべきことはなんだ?
「当然です。 我らはそのために居るのですから」
烈火が激しく燃え上がる。 怒りを秘め、その拳から迷いと曇りを晴らせば業火が一気に火柱を上げる。 ……開戦の狼煙が、上がる。
「なのはちゃん、こっち来て」
「はやてちゃん……?」
呼んだのは最近出来た友達。 傷つき、既に魔力を使い果たした彼女は戦う事が出来そうにない。 でも、その心だけはまだやる気に満ちていて……悟ったはやては、そっと彼女の両の手を包み込む。
「少しだけ、力貸してあげる」
「…………あ」
暖かい、風が吹く。
高町なのはの傷付いた身体を少しだけ癒すそれは、おそらく自然な力の働きではないのだろう。 何らかの治癒魔法と、魔力の譲渡が行われている今、少女たちは支え合いながらも大地から膝を離す。
「はやてちゃん……脚!」
「少しだけな、リインフォースが頑張ってくれたみたい」
「え?」
満面の笑み。 いままでできなかったことに対する喜びだろうが、果たしてそれは一体何に対するモノだったろうか。 測りかねる感情は、その実なのはにとっては一番わからないといけないことである。
「ようやっと、皆と同じように歩いて行ける……戦える!」
「…………っ!」
今まで追いかけてきた背中。 どこまでも遠く、自身を突き放してしまう彼。 おいて行かないでと言うのは迷惑だからと、頑張って背中を追いかけて行った彼女は知っていた。
誰かが、自分のために傷ついているのを見ることしかできない苦痛を。
だから今の言葉を聞いて、はやての気持ちを全て理解した。
だからここから先、彼女を気遣う戦闘はしないだろう。
だって、同じ道を、肩を並べて歩く仲間なのだから。
「なのは! ……はやて!」
『フェイトちゃん!』
娘が三人集う。 其れはつい数か月前には誰もが予測しなかったメンツだろう。 戦うということを知っているだけの少女、痛みだけで戦うということが出来なかった少女、戦いを知らぬ少女。
彼女たちはそれぞれ別の道を歩き、決して交わることなどなかったはずだ。
それが今、こうやって肩を並べて同じ敵へと向かって行く。
一体どれほどの不確定要素がならべばこうなったのか。 集う力と、重ねられる想い。 それぞれが交わり束ねられたとき、いま、舞台にすべてのキャストがそろう。
「すこし、待て」
『!』
それに歯止めを、先走りに制止の声を。 王を名乗る少女が皆を引き止めれば、そのまま視線が横に流れていく。 星光、雷刃、そして君主。 同じように三人がならべば、どこからか光が流れていく。
「お前たち、覚悟は出来てるな?」
「えぇ」
「もっちのロン!!」
「しゅ、シュテルちゃん! 身体が!?」
うっすらと、消えていく彼女たち。 まるで存在自体を世界に否定されたかのように、その身を蜃気楼が如く消し去ろうとしていく。
「よく聞いてください、オリジナル」
「あのね? 僕たちは強いよ? でも、まだまだ足りないんだ」
「そう、あの冷鉄を打ち砕くためには個々の力だけでは足りぬ。 以前、斉天のヤツがやったように力を束ねなくてはならん」
反対に、力があふれていくのはオリジナルと言われた三人。 彼女たちのバリアジャケットが神々しく輝けば、手に持った杖の形状が盛大に変化していく。
「その身も、心も、斉天のに鍛え上げられたお主らなら……」
「ですが気を付けてください。 これは所謂無茶というもの」
「いっしゅんの油断でカラダがボーン! ……なんだよ?」
白い杖。 赤い宝玉を中心に金色の装飾品が鋭角さを身に着ける。 今までのスタイルからはかけ離れたそれは、例えるならば槍の様。 その身体をどこまでも攻撃的に変えれば、槍の付け根にある排気口から熱気が上がる。
「…………がんばりなさい、おりじな……る」
黒き斧。 黄色い宝玉が煌めけば、斧だと思わせていた刃が展開。 柄の部分はそのままに、黄色い魔力刃が展開していく。 しかしそれはいつものようにか細い鎌の形状ではない。 切っ先が伸び、その幅はロングソードの比ではない。 かつて侍が馬を切るために用意した狂った兵器を彷彿させるその剣は、魔力の刃を固定する。
「………………もうすこし、あそびたかったなぁ……」
最後に、八神はやての、その背中に生えし小さき羽根は巨大な翼となり、頭髪は栗毛色からまるで銀を混ぜ込んだようなカラーへ変わっていく。
「これでダメならあきらめもつくだろう? …………せいぜいあばれ……てこい……」
プレシアの目が振るえるようだった。 ありえないと、言外に訴えるそれは仕方がないだろう。 娘たちの相棒に仕込んだ隠し技は、最後まで隠していてほしかった荒業。 故に厳重なプロテクトを施したはずなのに、今この時、自身がなんら手を付けることなくそれが発動してしまった。
まるで、相棒たちが己が意思で枷を解き放ったかのように。
少女達の力は、ここで臨界を迎える。
「……シュテル、ちゃん……」
しかしその前にはもう誰もいない。 先ほどまでの、自身と鏡合わせになっていた彼女。 冷たく、けれどどこか温かなものを持っていた彼女はもういない。 ……その意味を理解した時だろう。
「…………ありがとう……っ」
少女達の喪失に、三人が俯き――――一気に大空を睨みつける。
「なのは!」
「うん、感じるよ……」
「この薄気味が悪くて、嫌な感じの魔力」
三人が見た空の向こう、そこには只の星空しかない。 月の無いそこはどこか空虚さを醸し出した殺風景な場所であり、そんなところを見て何をするのか……魔法の力を持ち合わせない人間にとって疑問しか沸かない行為である。
だが、それに意味があるとしたら?
「高町なのは、レイジングハート・エクセリオン――行きます!!」
白い少女が杖を構える。 其れはどこかの物語の魔法使いというよりは、近代兵器を身に着けたソルジャーの様。
「ディバイン・バスター!!」
手元にある鋭利な武器が桃色に発光すると、大空に轟音が轟く。
夜空が戦場に切り替わる中、少女達は各々光る翼を展開する。 足首だったり、背中だったり、各自それぞれの場所に生やしたそれは戦士たちで言うところの空を跳ぶ技法の前準備である。
そして、それが意味することはというと。
「な、なのは!」
「お兄ちゃん……」
「お、おまえ――」
戦場がこの地より移動するという事。
それを理解した時、高町の長男はすぐさま妹に駆け寄る。こんな時、またしても手助けすら出来ない自身を呪い、こんな中途半端な力しか持ち得ない己を悔む。 また、見送ることしかできない自身を、ふがいないと責めるしかできない。
守るのは長兄たる自分の役目の筈なのに。
自身が剣を握った理由を、そのときを。 彼は走馬灯のように思いだして行けば歯ぎしりを起こすしかできない。
「行ってきます」
「っく!!」
その一言だけ言ってしまえば、途端にこの地上から消えて行った天使たち。 羽ばたく翼が散らしていく羽根が、魔力光の粒子だと気付かぬまま、高町恭也は一人届かぬ空へ向かって手を伸ばしていた。
――――同時刻、上空。
【聞こえる、貴方たち】
「プレシアさん?」
身に纏う魔導の装飾に大幅な変化をきたした少女達。 彼女たちが地上を去って幾秒かした頃だろう。 肌に突き刺さる冬の寒さがより一層の厳しさを増す中、魔法少女達の思念の中に、独りの会話が紛れ込んでくる。
【本当なら私たち大人が気張るべきなのだけど――】
「残してきた皆を守るのに、わたしたちの魔法は不適切ですから」
【えぇ、まさにその通りよ】
砲撃、遠距離特化の高町なのは。
近接、ゼロ距離特化のフェイト・テスタロッサ。
広域、拡散攻撃特化の八神はやて。
彼女たち三人の戦力を即座に見渡し、それでいて出来ることを託したのは魔女の仕業。 そう、ここにいる中で戦闘特化で在るのは彼女たち位だ。 ……プレシアもつい先ほど、奇跡の御業でその一因になったものの……
【ユーノ君にあの坊やが居ない今、私やネコ娘たちしか頼れる防衛力がない。 だからこうなるのは……】
「はい、分ってます」
手薄となった地上を集中攻撃される未来は、なんとしても防がなくてはならない。 いざとなれば封時結界を張り巡らせ、自分達だけでも身を守る所存の彼女たち。 そうすることで最悪の展開をわずかでも逸らせれば――そう思うなかでも、やはり思うところはあるようで。
プレシアの声が、わずかに振るえる。
「心配しないで母さん」
【フェイト……】
何も死に行くわけじゃない。
言外の台詞は、思念故に相手に伝わる所業であろう。 金色の魔力をはためかせ、少女の声は一層の強さを帯びていく様だ。
「それにわたしらみんな、必ず帰ってきますから」
心配しないで。
漆黒の翼を空へ打ち付けると更なる速度を引きだし、大空へ飛翔していく。 力強い飛行はそれだけで彼女たちの力量を表すかのよう。 既に、数分前とは別次元のレベルとなった彼女たちは……
『絶対、この戦いを終わらせる』
たった一つの信念の元、暗い闇の中を飛んでいく。 そこにあるのが敵の根城だろうと、地獄の門だろうと関係ない。 彼女たちはただ、未来へ向かって進むだけなのだから。
【そこまで言うのなら、止めることはしないわ。 けど気を付けなさい、奴がどれほどに力を蓄えているかなんてわかりはしないのだから】
「はい。 でも、プレシアさんやシュテルちゃんがくれたこの力があれば」
「うん。 きっと負けない……勝って見せる」
「そうや。 そんで帰ったらみんなで祝勝パーティーの続きや。 ……今度こそ、本当の」
皆で平和を祝うのだ。 ひと時ではなく、永劫の祝福。 其れはかつて、一陣の風が望み、遂には叶わなかった夢物語。 雲を揺らすはずの風が、踊るように揺蕩う雲に見とれていたあの頃に、もう、戻らせないために。
闇をこの手で払うために、少女達は大空を駆け上がっていく。
「――――見えた!」
高町なのはが叫ぶ。 狙撃主たる彼女の遠視能力が発揮される中、空が不意に歪んでいく。
「ホントにこんなところにあった。 ……いままで、こんなところでわたしたちを――」
同じく、フェイトの口元が歪んでいた。
悔しさと、自身の不甲斐なさとが重なった憤りは、けれどまだ爆発させるわけにはいかず口を紡ぐ。 ……ここまで感情を制御しなければいけない彼女はいったい何を発見したのだろうか。
「ここから見える全部があの機械の根城……全長200メートル位やろか?」
「肉眼で見えなかったのは暗い空のせいだけじゃなかったんだ」
「そうだねなのは。 ……きっとステルスか何かを張られてたんだ」
其れは、要塞というにはいささか不気味に過ぎる形状であった。
小さな星……そんな形容が成立してしまいそうなほどの真円は、かの戦闘民族の力を引きだすあの星をも思い起こさせる。 それほどに丸い星、そこまで純白な飾り付け。 あまりにもあんまりな飾りっ気の無さに、見た者へ却って不安感をあおらせる。
「此処まで近づいてもむこうから攻撃の反応は無い……このまま突っ切る?」
突撃先行!! いまや大剣となった相棒を片手に、フェイトが皆に意見を聞く。 普通、此処までの過程で対空防御の一つがあってもいいはずなのだが。 其れすらないことに、逆に不安を巻き起こしてしまうのは仕方がないことだ。
そもそも、相応の攻撃を覚悟でここまで来た彼女たちにとって、これほどまでの手薄さは予想外の出来事に他ならない。
……敵は、何を考えているのだろうか。 気にならない訳がなかった。
「此処は二手に分かれよう思うんやけど」
「二手……?」
「そうや。 オフェンスにフェイトちゃん、バックスがなのはちゃんで先行する」
「う、うん?」
「後ろで何かあった時のためにわたしが待機。 不意打ちが在ったら転移魔法で駆け付けるし、それが間に合わなかったら――」
いつの間にやらこの分隊の指揮を始めていたはやて。 読書家だという彼女は、やはり戦略に関する書物も目に通していたのであろう。 わりとスムーズに進む作戦会議にフェイトもなのはも頷く以外の行動を取ろうとはしなかった。
だが、しかし。
ここで、高町なのはは思い知ることになる。
普段よりニコヤカで、誰よりも優しく、正に陽光と形容できる人間が心底怒りに燃えた時――――
「ブロックごと要塞を削り取るから……ね?」
『…………あ、ははは』
何よりも恐ろしいということを。
「なのは」
「な、なに? フェイトちゃん」
「一瞬、初めて超サイヤ人に成った悟空を思い出したのは、気のせいじゃないよね」
「…………奇遇だね、わたしもだよ」
儚い儚いと言うけれど、それはそれとしてこの少女はどうにも芯の方が強すぎるようだ。
「それじゃはじめよっか」
「そうだね」
「うん。 ……一刻も早くこんな戦い終わらせないと」
これが互いを分かり合うための闘いならばまだいいだろう。 彼女たちは徹底的にどこまでも付き合うはずだ。 けど、命を刈り取るためだけの一方的な虐殺となったこの戦い。 そんなものは許容できようはずがない。
さっさと終わらせてしまいたいのはこの戦場皆の総意であるはずだ。
「それじゃ先に行くね」
「援護、お願い」
「了解や、まかせてな」
だから彼女たちは飛ぶ。 その先にどんな絶望が在ろうと、薙ぎ払い、消し去るために。
「どうにか表面に来たのはいいけど……」
「入口……なんてないよね」
つぶやいたなのはがあたりを見渡す。 星と形容できるそこは、やはり地表と呼べるものしか無く、入り口にあたる門も無ければデッキもない。 ……ならば敵はどこからやってきたのか? などと疑問にすることはなかった。
奴にはいらないのだ、出入口など。 孫悟空のもつ秘術を使えば、物理的な隔たりはもちろんの事、空間的な壁すら乗り越えて見せる。 故の閉ざされた世界、だからこその圧倒的な隔たり。 これにはさすがの名の刃も困った顔をして――
「フェイトちゃん、お願い」
「雷光一閃ッ!」
隣に居る相棒に、道を作ってもらう。 ……のだが。
「か、硬い!」
「……さすがに簡単にはいかないか。 ……だったら!」
十字に切られた要塞の壁面。 だが、其れは表層を傷つけることしかできず、まだ彼女たちは内部に侵入することができない。 それでもあきらめが悪いのは師匠譲りな高町なのは。 彼女は魔力を杖に叩き込むと、一気に呪文を紡いでいく。
「ディバィィィン――バスター!!」
巨大な壁に、やはり巨大な十字を刻まれた丁度中心点。 そこにこれまた巨大な砲撃がぶちこまれていく。 もはや冗談なのではないかという巨大の連続に、眼下の人間たちは果たして何を思うだろうか。
其れは知ることが出来ないのだが、その代わり彼女たちはついに――――
「開いた!」
「……正確には創った、だけどね」
この星の中身を、知ることになる。
「……機械だらけ。 当然と言えば当然だけど」
「アースラなんか目じゃない。 ……本当の機械の城って感じかな」
あたり一面が銀に支配されているそれは、事態を知るモノが視るならば卒倒モノであろうか。 煌めくメタリックな色彩は、近未来的だと称賛されるかもしれないのだろうが、なにせ相手が相手だ。 この色が全て敵の手の中にあると思わされれば、背中に怖気ぐらいは走るというもの。 なのはは、二呼吸の間に神経を研ぎ澄ませる。
「…………ここをずっと行った先に、とんでもなく嫌な魔力を感じる」
「うん。 たぶんなのは程じゃないけどわたしも感じるよ」
遠くを見渡しながら、肌で感じる嫌な空気を掴み取れば、その根源を睨みつけていく。 急げ、時間は無いはずだ。 こうやって口を動かしている間にも、奴は力を全盛期へと近づけようとしているはずだから。
だから彼女たちは即座にその場から消えてしまう。 瞬間的な加速を持ってして、あっという間に風を切るほどにまで早くなった彼女たち。 急いでいる、邪魔をしないで――言外の迫力を持ってして、様々な障害を乗り越えていく。
[…………]
「いきなり……」
「こんなところで」
遂に遭遇した、一体の冷機。
先ほど戦った存在となんら変わりばえの無いメタリックボディ。 それが意味するところは量産という文字に他ならず、奴が本体ではないと即座に理解する。 先ほどまでならば息を呑み、警戒心を全開に引きだしていた相手なのだが。
「そこをどいてください! 急いでるんです!」
[貴様らどうやってここに――]
「一刀…………両断ッ!」
[な……に!?]
今現在のなのはたちにとっては敵ではないのは、もはや言わずともわかるだろうか。
なんの警戒の無い、フランクな対応と言えようか。 クウラに対して最早舐めきっていると言っても過言じゃないそれは、言葉通り、彼女たちにとってこの量産型など敵ではないからだ。
「これがリミットを解いたバルディッシュの力……」
「それに“みんな”がちからをくれたから。 今ならいつもできなかったことが出来る気がする」
既にそれを実行しているなどと、誰かが言わなければ分らない現象。 それはつい先ほど地上で披露しているのだが、分らないものは分らない。 もはや“己の一部”と化したその力を、何の狂いもなく操る彼女たちは先を急ぐ。
「それにしても、こんな要塞いつから――」
「そうだよね。 アースラのセンサーに引っかからないのは仕方がないとして、ずっとあるって事だったら遅かれ早かれ悟空くんが気付くはずだし」
高性能マシンよりも頼りになる男。 そんな彼を幻視すれば、双方同時に頷くばかりである。 なら、この要塞はいつから有ったのか? どこから介入していたのか……溢れんばかりの疑問符に、彼女たちは言葉をしばしおいて行ってしまう。
そこからは無言の飛行が続いていた。
襲い掛かる量産型を片手間に葬り去り、迫る鉄の触手はフェイトが切り刻んでいく。 とどまることを知らない少女二人は、圧倒的な速さを持ってしてこの要塞の中を駆け抜けていく。
「どこ、どこにいるの――」
「早くしないと……」
かかる時間に比例して、少女達の表情に焦りの色が濃くなっていく。
この、強くなった姿だっていつまで保持していられるかなんてわかりきった事じゃない。 悟空のように永続的だと甘く見て、チャンスをふいにしたくない。 彼女たちは、ひたすら要塞内を廻っていく。
回る、廻る……どこまでも続く其処に、いい加減違和感を持つようになった頃だろう。
「フェイトちゃん、少し待って」
「なのは?」
なのはが不意に空中で止まる。いままでの快速急行が嘘のような停滞は、しかしここからが彼女の本領発揮である。 目を閉じると見渡していく世界。 彼女は今、道ではなくこの要塞全てを身体の感覚で探っていく。
「――――居た」
構えを取る。
手に持った相棒を向けるのは……壁。 只分厚く、堅牢だと主張する銀色の壁を前にして、なのはは無言でレイジングハートの先端に光を集めていく。
「ディバイン・バスター!!」
放たれた桃色の閃光は、いまなのはの目の前にある壁に迫っていく。 いつも以上に力を集めた自身の砲撃に“絶対に出来る”と心に決めた一撃。 それが要塞内を照らせば衝撃波が駆け巡る。
攻撃は、確実にヒットした。
「…………そんな」
「無傷?!」
だが相手が悪い。
何事もなかったように無傷なそこは正に鉄壁。 この先にどうしても行きたい二人の少女に真っ向から立ち塞がり、彼女たちの心を静かにかき乱していく。 こんなところで消費する時間など皆無だ。 なのはは、少しだけレイジングハートを握る力を強くする。
「フェイトちゃん、少し下がってて」
「……なのは?」
魔力とは、すなわちこの世に満ち溢れた力の事を指し示す。
外界……つまり己の外から取り入れた魔素をリンカーコアにて力へ変え、様々なプロセスを経て攻防といった手段に変換する。 それを行なえる量と速度には個人差はあれど、高町なのはが膨大な魔力を持つという意味は、これの蓄積量と回復速度が上気を逸しているからだ。
「…………」
そしてさらに、外界より力を借りることを最終奥義とした男に師事した彼女は取り入れる魔力を、自身の意思でコントロールすることも可能……の筈だった。 いままで、試すことが叶わなかったのはその制御があまりにも難しいから。 そうだ、そもそも世界の王を名乗るものでも、技の構想は出来ても実践が叶わなかったのだ。
そう、易々と出来るはずもなく。
「はぁぁああぁあああ!!」
「なのは?!」
少女がそれを行うには多大な無理が必要であった。
「射線軸固定……ロック……オン!!」
なのはの身体に光が集まる。
急速に、集中線を描くかのような無色の光りは大気中に散らばっている魔力の素。 常時漂っているそれは、普段なら目に見えないほどにしか取り入れることができないはずだ。 しかしこれがどうだ。 彼女を中心として集められた魔素は色がないながらも確かに彼女に力を与えている。
「魔力集積……スターライト!?」
ここでフェイトは守りを固める。 決して自身に銃口が向かっているはずがないとわかっているものの、その威力は幾度も見てきて知っている。 二人の戦闘民族に大したダメージを与えてきたあの技。 今ここで使おうものならどうなるか分かった物じゃない。
フェイトが出来得る限りの障壁を張る刹那、なのはの銃口が一気に光を解き放つ。
「エクセリオォォン……バスタァ――――!!」
「!!?」
フェイトの視界が真っ白になる。
全てが吹き飛んでしまったのではないかと思えてしまう攻撃に、思わず表情を引きつらせてしまう。 だが、それもつかの間。 すぐさま全身に突風が駆け抜けると、目の前の風景が一変する。
「……こ、これは!」
目に映るのは暗い世界。 どこまでもを飲み尽くすそれは、かつて自身を包む込んだものと酷似していた。 ……それだけでわかる。 これが、“奴”だということが。
耳に意識を集中すれば、たとえこの暗い世界でも状況くらいは把握できる。 おそらく50メートル四方の広い個室、しかし部屋の中だというのに何かが脈打つ音が不気味さを一層引き立てる。
なにか、生命を模した存在が居る。
そう思わずにはいられない程の脈動は、フェイトの警戒心を引き立てる。
「どこにいるの!!」
叫ぶ声。 ……高町なのはだ。
彼女は白いドレスを華麗にたなびかせると、狙いもつけずレイジングハートを前方へ向ける。 ……決して取り乱しているわけではない。
「すぐに出てこないなら、こんな部屋ブチ抜くんだから!!」
「――!」
目に映るすべてが攻撃範囲なら、構えをどうしようが問題ないという事だ。 隣でフェイトが冷や汗かく中、なのはが部屋中を見渡す。 すこしだけ吐いた息が、そっと薄暗い空気の中に霧散した時だ。
「鬱陶しい奴らだ」
『!!』
聞こえてくるのは……肉声だ。 今まで聞いてきた機械の音ではない、只の声。
今まで、本当にいままで聞いてきた機械的なものではない、生の感情が入り混じった声だ。 それを耳に入れてしまった彼女たちは、なぜだか身体の感覚を一瞬だけ見失う。 まるでなにか氷の先端を身体に突き付けられたかのような寒気に、思わず後ずさりしてしまう。
「……この期に及んでまだ悪あがきをするとは」
姿は見えない。 それでも感じる冷たくて暗い空気に、なのはもフェイトも直感ながらに感じ取る。 …………こいつが、諸悪の根源であると。
「どこ!?」
「姿を現せ!」
「くくく…………」
高々と声を張り上げるなのはと、攻撃の意思を剣に込めていくフェイト。 そんな彼女たちの心意気を嘲笑う声が遠くから聞こえれば、少女達の翼が羽ばたく。
「そこ!」
「いま……すべてに決着をつける!」
「……ふん」
どこまでも続くと思われた通路に終わりが来た。 飛行速度を落としつつ、今まで声が飛んできた方へ顔を向ければ、少女達の顔色が変わる。
「…………」
「そ、その姿!?」
「貴方が、クウラ……」
首だけなのだ……奴は。
さらに右の頬からマユあたりまでしかない元の皮膚。 それ以外は機械で縫合され、見るも無残な姿にされている。 正直、直視するのも耐えられないその姿は――
「どうした? ……怖いのか」
『…………』
背中に怖気を走らせる。
どれほどに強くなろうとも、今目の前の醜悪な存在には目を背けずにはいられない。生物から遠く離れ、機械に肉を食われ、一体となった宇宙の帝王。 どうしてそこまでして生き延びる? なぜそんなになってまで生にしがみつく……普通ならば耐えきれぬ惨状に、それでも奴は声も高らかに告げる。
「以前の戦いでソンゴクウにより失われたこの身体。 しかし脳だけはなんとか無事だったオレは偶然にもある機械群と出会った」
それは己が欲望を満たすために他者を取り込むコンピューターチップ。 その、成れの果て。 いくつもの機械、そして残留したエネルギーをかき集めたそれはやがて星と呼べるほどに形を肥大化させていった。
語るクウラは、しかし即座に顔色を変える。
「それでもだ。 ……その機械群をも利用しても勝てなかった!!」
あの、新ナメック星での最後の決戦。
たった二人のサイヤ人に、全てを再び奪われた皇帝はまたも宇宙空間を彷徨う羽目になる。
「危うくベジータにコアチップを破壊されるところであったが、幸いバックアップたるオレが無事でな。 ……長い年月を宇宙で彷徨った」
星の光りすら届かぬ宇宙の果て。 そこで冷鉄はいつまでも待った。 遠い時の果て、必ず奴らに復讐してやると、暗い感情を煮えたぎらせながら。
「で、でも! そんな脳細胞だけの貴方がどうやってこんなところまで!?」
「悟空くんの居た世界の人が、どうやってここに来たの!」
その問いは至極当然だ。 なにせ時空管理局ですら手を焼くほどの捜索難易度を誇る彼の世界。 そこから来たのだ、なにかとんでもない力を持っているのかもしれない……高町なのはは、奴の力を暴くためにも奴を問いただす……だが、そんな奴の口から出たのは――
「来た、というよりかは……くくッ」
「なにがおかしい!」
「連れてこられたのだよ……貴様らの世界の人間にな」
『!!!!』
衝撃の事実であった。
フェイトは閉口し、なのはは呼吸すらも忘れる。
今まで、散々苦しめられてきた機械の軍勢が、まさか攻め込んできたのではなくこちらから招いていたという事実。 しかし次に浮かんできたのは身内への疑い。 誰がこんなものを招き入れたのか……その、目的はなんだ!?
なのはだけじゃない。 フェイトも同じように顔色を青に染め上げる。
「安心しろ、このオレがこんな世界の誰かと共謀などするわけがないだろう」
「え?」
「そもそも、オレがこちらの世界に来たこと自体、奴等はわかりなどしないだろうさ。 奴らの狙いはただ一つ、“とある魔導師”の所に来た筈だった闇の書を回収するためだったのだからな」
『闇の書!!?』
頭部だけのクウラが冷酷に笑う。 滑稽だと、言葉にするでもない笑いは聞くに堪えかねる。 だが、彼女たちは知らなくてはならない。 目の前に居る冷鉄が、どうしてここまで来てしまったのか、その訳を。
「その魔導師とやらは途轍もない力の持ち主だったらしい。 その力は時として宇宙を破滅に向かわせることも可能だとか」
「……」
「だがそんなヤツも最後は呆気なかった。 当初はオレもソンゴクウあたりにでも倒されたと思ったが……くく」
一端の笑い。どこまでもおかしいと、歪な笑みでなのはたちを呑み込まんとする奴に、負けじと足を踏ん張る彼女たち。 それをみて、またも口元を吊り上げたクウラは……告げる。
――――――自身が生み出した魔物に喰われたそうだ。
正確には人の形をとった悪魔らしいのだが、その事実はなのはたちに届くことが無かった。 そもそも、宇宙を破滅に導くという時点で想像が及ばない。
彼女たちは、少しだけ息を呑む。
「宇宙を彷徨うはめになった闇の書は困っただろうな。 そもそも、奴意外に魔導の素質のあるものなどなく、有ったとしても力が自身を上回り取り込むなどできないからな」
それが誰かなどクウラ自身分らない。
普段はどスケベで、その気になれば限界にまで力を高めた戦士の力量を限界以上に上げることができる高名な存在……否、神の存在など、奴にわかるはずもない。 そんな一つの可能性など切り捨てて、奴は薄気味悪く口元を動かす。 壊れ果てたその機能を機械で補い、更なる絶望を少女達に叩き込む。
「そんな折に闇の書とオレは出会った。 奴も何も知らなかっただろうな、まさかこんな小さな脳細胞を取り込んだせいで、己のプログラムを大きく改変させられるなど。 そしてそんなこととはつゆ知れず、発見した闇の書を回収した貴様らの世界の住人もさぞかし間抜けだった」
――――自身が見つけた宝に殺されるのだからな。
その、言葉でなのはの右手が震えた。
どうしてこの人は、他人の命を簡単に奪えるのだろうか? 怖くないのか、己が誰かの人生をダメにしているということが。 その人の、これからという道……可能性を潰してしまう事への罪悪感すらないのだろうか。
だが、それは言葉に出されることが無かった。
「さぁ、昔話はここまでだ。 いい冥土の土産が出来ただろう?」
「!?」
「精々あの世で聞かせてやるんだな。 あの無様に死んでいったサイヤ人に」
『!!?』
そうだ、此処までだ。
奴との因縁も、今までの苦労も絶望も。 そして――――
「クウラ!」
「必ずお前を――」
少女達の、堪えも……だ。
『倒す!!』
「やれるものならやってみるんだな……餓鬼どもが!!」
殺されていったもの達の想いをその背に乗せて、少女達の戦いは今はじまる。
ユーノ「どうも、です」
クロノ「手の中にあるものは、いつか消えて行ってしまう。 しかし、それを望まぬ者がいた」
ユーノ「零れ落ちるならつかむ手を強くすればいい。 たとえ、その身が崩れようともそこにあればいいと、口元を歪めながら」
クロノ「次回、魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~ 第70話」
???「おめぇたちがやらなくて誰がやる!!」
なのは「……え?」
フェイト「こ、の声」
クウラ「馬鹿な……貴様は確かに!?」
???【……】