魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~   作:群雲

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第91話 隠し子!? 悟空を慕う謎の少女

 

 

 久方ぶりの再会と、悟空の新たな秘密が新人達に暴露されてから早3日。 今日、悟空教室は新たな局面を迎えようとしていた。

 

 新たに迎え入れられた二人の教導官と新人達が共有する新たな問題が、浮上したのだ。

 

 

 

「おーい! スバル! 一緒に修行しようぜ!」

「え、あ、ちょっ! おじさん、まだ着替えてるから」

「なに勝手に入ってきてるんですか悟空さん!」

「ん? 別にいいじゃねえか着替えくらいさ。 秘密の特訓でもしてたんじゃねえんだろ?」

「………………いくら記憶も身体も子供になったとしても、これは此れで……」

 

 問題のあった曹長が、さらに問題のある悪ガキにクラスチェンジしたのだ。

 記憶は何処まで引き継いでいるのかは不明だが、どうにもスバルを知っているところをみるに、ジェイルとのいざこざがあった前後までは記憶のセーブが行われているらしい。

 ただ、ソレはつまりそれ以降の記憶が無いと言うことになる。

 

「悟空くん、勝手に行っちゃダメだよ」

「わわ! まずい、なのはの声だ……隠れねえと」

「……あのおじさんが必死に逃げ回ってるのはなんだか新鮮」

「というかなんで逃げ足なの悟空さん」

 

 どうにも高町なのはに苦手意識がある悟空。 それもそのはず、彼は、なのはとの初対面時にやらかしているのだから。

 

 

 

 

 ―――――――あ! おめえオンナか! 強えオンナは久しぶりにみたなぁ。

 …………ちょっと何処をなにしてるの悟空くん!!

 

 何をもってどう判断したかはこの際説明を省く。

 その後に雷のような一撃を顔面に受けて、そのままノックアウトしたところまでは良いのだが、その後に警戒心が上がってしまったなのはに、執拗なまでに構われた悟空は、ソレはもう存分に彼女への苦手意識を上げて行ってしまったのだ。

 

「もう、会ってすぐの頃は全然あんな事しなかったのに」

「悟空の幼児化、悪化してるよね、絶対」

「……プレシアさんに相談したら、もしかしてジュエルシードを限界以上に酷使した反動かもって言ってたけど」

「それってこの間の“超サイヤ人を超えた姿”に強制的になったから?」

「うん……」

 

 だから、今回悟空にあまり強く当たれないなのはさん

 彼をあそこまで追い詰めたのは自身の不甲斐なさだし、それを受け止めた彼に文句などどの口が言えたモノか。

 とりあえず彼がやりたいことを、やらせてあげるという、とても甘い選択肢を選んだ彼女は、訓練場でど派手にやり合っているスバルと悟空、さらにエリオを交えた三人の戦闘風景をそっと、見守っているのだった。

 

 

 

 

「それじゃ、今日はここまでだね」

『はい! ありがとうございました!!』

 

 本日の業務が終わり、無事修行を終えた新人達。 普段ならばここで即時解散、残業知らずの新人局員は自室のベッドで泥のように眠りに就くのが恒例行事なのだが……今日は、その疲労さえも超えて気になる事がある。

 

「ねえ悟空、今日はどうだった?」

「んー?」

「みんなでこうやって、一緒に修行して、勉強して……」

「それか! なんかな、おら亀仙人のじっちゃんとこで修行してるみたいで楽しかったぞ」

「うん、そっか……うんうん」

 

 最近になって配属となったフェイトという監察官。 なんとなく悟空の知り合いだと言うこと以外、まだ、謎に包まれた美人局員である彼女は、今日も悟空にむかって微笑み、会話し、その結果に一喜一憂している。

 

「ねぇティア、あのひとっておじさんとどういう関係?」

「え? うーーん」

「フェイトさんは、昔、悟空さんに生き方を……“自分”を教えてもらったそうですよ」

「……やけに詳しいね、エリオ」

「あ、えっと……実はフェイトさんって、ボクの保護者というか、引き取り人というか……」

「え? 親代わり!? へぇーそうなんだ」

「あ、はい……」

 

 ソレを聞いて、改めてあの二人の関係性を観ると、今のカタチは随分しっくり来る。

 あの、フェイトと悟空の位置関係は確かにしっくりくるのだ。

 

「でもなんでフェイトさんの膝の上におじさんは座らされているの?」

「……ボクも昔あんな感じで」

「抱き枕チックな雰囲気もする」

「たぶん、悟空さんとの関係がほぼ親子に近かったから……かな」

 

 距離感もへったくれもない。 パーソナルスペースゼロ距離抱き枕なのだ。 ソレはもう、この教導中ずっとである。

 

 曰く……

 

―――――悟空がもし、また変なことをしないか、わたしが観ていないと。

 

 などとのたまい、教導の傍ら、延々と悟空の頭をなでている姿は、身内ながら複雑至難な心境をエリオに与えるのだ。 一応、あの姿の悟空は自身とそう変わらぬ精神年齢らしいが、元が元なので……

 

「いまだ慣れない」

「いや、慣れる方が可笑しいんだけど」

「そうよエリオ。 ああいうのは本当はダメなのよ。 だからしょっちゅう高町さんがシバキ倒しにくるんでしょ?」

「もう、本当にウチの保護者ときたら……」

「エリオくん、お疲れさまです……あはは」

 

 ガックシと肩を落とす少年。 確かに、自身の親が自分の上司を子供のように扱っている姿など見たくはないだろう。 その光景が見事に合致しているところも含めてだ。

 

「というか、今更だけど悟空さんって何なんだろう」

「え? おじさんはおじさんでしょ?」

「分類出来ないっていう点では賛成ね。 いや、そうじゃなくて、いきなりあんな凄い力を使ったと思ったら一気に子供になっちゃうじゃない。 なにか、あったのかなって」

「サイヤ人の特異体質?」

「サイヤ人? ……なんですか、それ? エリオくんわかる?」

「え?いや、ボクもそこら辺は」

『あぁ、二人はそこからか』

 

 当然の疑問から、やがて公然の秘密へとステップを変えて、やがて驚愕の事実に向かって行く。

 すこしだけ驚き、だが、いつもの“アレ”を思い出せば何という納得感。 それでも彼を見る目が変わらないところはもう人徳と言うしか無いのだろう。 皆は悟空に対して理解を深めたのだ。

 

 深めたのだ、が……

 

「――――あれ、でもこれって結局悟空さんが子供になる理由がわからないよね?」

『…………おや?』

 

 それでも色々と問題だらけの悟空さんに、皆の興味は膨らみ続ける。

 

「はいはーい! 悟空くんの驚き体質の話はまた今度ね」

「なのはさんそれはないですよー!」

「もう少し知りたい……!」

「うん、わたしも気になる」

「……ボクはフェイトさんが正気を失う理由を把握しておきたい」

「あ、うん……エリオくんにはそのうち説明入れるとして……今日は、みんなにプレゼントがあるの」

『ぷれぜんと……?』

 

 教壇でなのはが手を鳴らすと、もう、身体中がへとへとでぐったりし始めていた彼等が視線を向ける。

 なのはが手の平をひらりとうごかすと、転移の魔法が発動して床に紋章が輝く。

 

「みんな、いままでとっても頑張ったから、この教室から贈り物を用意したんだ」

「こ、これ……!」

 

 歓喜の声。 現れた物品が中を舞うと、そのまま皆の席に落ち着き、動かなくなる。

 

「これってデバイスですか!?」

「うん、みんなの今までやってきた訓練をデータ化して、ソレに会わせた運用が出来るように調整した、みんなだけの専用デバイスだよ」

「やったー! アタシ、使ってたローラーブレードが限界超えちゃってて……」

「えぇ、こっちも銃口が焼き付いてて、騙し欺しだったからうれしい」

「使ってた槍より重いけど、とっても手になじむ」

「このグローブみたいなの、これって補助用のデバイスだ」

 

 疲れも吹っ飛ぶおもわぬサプライズに、皆が机を揺らしてデバイスを装着していく。 発動するまでもなくわかる、新しき力の片鱗、そしてなにより驚くべきなのは、エリオも言及していたフィット感である。

 なじむ、ではなく、まるで手に吸い付く感覚。

 初めから自身の身体の一部だったとさえ錯覚する使用感。 まさしく自身の為だけに作られたこのデバイス達だが、管理局からのプレゼントはこれだけじゃなかった。

 

「悟空くん!」

「……なんだ?」

「なんで身構えるの? もう、いい加減にキゲン直してよ」

「でもおめえ怒るとすぐあの物騒なのやるじゃんか!」

「もうお仕置きスターライトしないから、ね?」

「…………え、なのはそんなことしてたの?」

「あの教官アタマおかしい……」

「悟空さん、なにやったの」

「高町さん、話通りの人だった……」

「この人も感性カカロット。 こ、こわい……!」

「あ、いや! だって悟空くんいきなりスカートの中に潜り込んできたんだよ!?」

「だっておめえどうやってもオンナには思えなかったしなぁ」

「それは非道いよ!?」

「ジャッキーチュンよか強いおんななんか初めてみたぞ」

「……そ、それは……だって頑張って鍛えたし」

 

 子供相手にもじもじしている女子高生(年齢)の図は中々に言い知れないものが有るが、如何せんすべてを知っている周りからするとコメントに困る構図でもある。

 

「そんでおめえおらに何する気だ?」

「なにもしないってば!」

「じゃあ帰ぇるぞ?」

「あ、いや、あるある! 用事ならあるから少し待って」

「……わかった」

「もう、そんなわるいモノじゃないからね? …………じゃじゃーん!」

「棒?」

「デバイスですらない……?」

「でも、なんだかあれ……」

「なにか不思議な感じがする」

 

 出された悟空の武具だが、ソレは何ら変哲も無いオレンジ色の棒きれ。

 だが、そこはかとなく感じる武具の風格に、自然、新人達が息を呑んだのだ。 そう、なぜならこれは、あの世界では格段に特別な“神の道具”

 

「如意棒! おらの如意棒じゃないか!!」

「そう、悟空くんの如意棒だよ!」

「悟空の、如意棒……閃いた!」

「Do you want me to cool your head?」

 

 床に叩き付けられ、アタマから煙りを出しているフェイトと、背を見せながら右拳から煙を噴かしているなのはをそっちのけで悟空は渡された棒を振り回す。

 縦横と回転させていき、ただ、何も考えず横に振るったそれは演舞ですらなかっただろう。 だが、ソウは思えなかった者が居た。

 

「……いまの、なんだ!?」

「どうした? エリオ」

「ご、悟空さん、槍術の心構えが……」

「??」

「あぁ、悟空くんって最初は如意棒を軸に戦闘をしてたんだよ。 だから、あんな感じで身体と武器が一つになって見えるのは当然かな?」

「凄い。 まだ未熟なボクにすらわかる練度。 さっきまで上達ぶりに浮かれていたのが恥ずかしくなってきた」

「何ぶつくさ言ってんだ、おめえの方が出来るんだからしっかりしろよ」

「!!?」

「まぁ、今の悟空くんからすればエリオも随分と腕を上げたかもだよね」

「あ、うん……ごめん、なさい……」

「変な奴だな、褒めたのにおちこんでらぁ」

「……」

 

 なんだか狡をしている感覚なのだろう。 あの、天真爛漫な元曹長の期待を込められた眼差しを受けてしまうと嫌でも罪悪感に良心が締め付けられるよう。

 

「大丈夫」

「……高町さん?」

「悟空くんは単純だから、本当に思ったことしか言わない。 わたしも昔、運動音痴って馬鹿にされてたとき有るし」

『えッ!!? 高町さんが!?』

「だから悟空くんが凄いってほめた時は、素直に喜んでいいんだよ。 きっと大きくなっても同じ事言ってくれるはずだよ」

「……はい!」

「………………まぁ、修行に耐えられたらだけどね」

「………………はい」

 

 そうなのだ、この新人達は、残念ながらそう遠くない将来4倍界王拳かめはめ波を超える衝撃的な強さを身に付けてもらわないと困るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オチが付いたところでようやく解散。 それぞれが自室に戻っていく中、一人、自室から反対方向へ行く者が居た。

 

「悟空、お風呂入れてあげよっか?」

「そんなもん要らねえぞ、おら一人で平気だ」

「……そっか。 いやでも――」

「はーい、フェイトちゃんが入らなくちゃならないのはアツアツのお風呂じゃなくて冷たい洗面台だよ~~」

「あ、ちょっとまってなのは! 冷や水じゃぶじゃぶはもういやーーー!!」

「…………すげえ、あのフェイトをいとも簡単に掴まえちまったぞ」

 

 真のオチ担当がなのはに引きずられる中、その攻防をじっくりと見切った悟空が一人、息を呑み込んでいたのは、まぁべつにどうでも良い話だったりする。

 

 

 

 それから数週間が経ち。

 

 すこしハードルの落ちた訓練。

 悟空が生徒として同席する修行という異世界。

 段々と隠しきれなくなった高町教導官の悟空色。

 次々に消えていく新入り達の瞳に映るハイライト。

 

 などなど、数々の変化と進化を繰り返し、彼等彼女達は着々と魔法を覚えていくことになる。 元々がえげつない基礎訓練だったため、ソレを乗り越えた彼等の成長速度は目を見張る代物である。

 普通ならば3ヶ月とかかる新人教育を、彼等は既に終えてしまったのだから。

 

「…………えっと、みんないままで頑張ったね」

「おう! おら随分強くなっちゃったもんね」

「おじさん、あっという間にわたしたちを追い抜いちゃったんだけど……」

「何言ってんだ、一発の強さならスバルの方がすげえだろ?」

「そりゃそうだけど」

 

 総合力と、ここぞと言うときの爆発力の悟空に対して、新人達はとりあえず自身の戦闘スタイルを特化させることを目的とした。

 スバルなら一点突破の突撃力。

 ティアナは戦術眼と遠距離からの射撃。

 エリオだったら機動力による撹乱と陽動。

 キャロは重体患者すら即座に起き上がらせる各種援護と龍召喚の制御向上。

 

 こと、専門分野ならば“今の”悟空に比べれば格段に強くなっているのが現状だろうか。 だが驚くべきところは、ここまでを数週間で身に付けた彼等と、それを導いたなのは、フェイト。 さらに、狙ったかどうか不明だが、基礎中の基礎である身体作りを完遂させていた悟空の教育方針が、絶妙な具合にかみ合ったことだろうか。

 

 さて、そんな自身のからを破った新人……改め、訓練生達は、ここに来てついに最初のミッションを言い渡されることになる。

 緊張で思わず握った手の平、そこに流れる汗のひとしずくが床にこぼれると、高町教官から、驚くべき任務を告げられる。

 

「みんなには今日から、機密任務に就いてもらいます」

「い、いきなりとんでもないモノを……!」

「ね、ねぇティア? あのなのはさんの顔、なんだかどっかで観たことがある気がする」

「そうね、アタシ同意見だわ」

「任務内容は追って説明するけど、任務達成まで、絶対に外部への情報漏洩は控えて欲しいの」

「それって家族にもですか?」

「うん……あ、ティアナはいいかな?」

「え? お兄ちゃんにはいいんですか?!」

「うん、あの人も当事者だし」

『???』

 

 ますますわからないといった面々だが、ここで悟空の尻尾が飛び起きたネコのように暴れる。

 なんだ? と、首をかしげた彼だが、ソレがフェイトが持ってきた荷物が原因だと言うコトをすぐさま知ることになる。

 

「これからみんなには、このロストロギアを確保、封印する作業に従事してもらいます」

「?」

「水晶?」

「オレンジと、青」

「カタチがそれぞれ違う。 コッチは球状だけど、この青いほうは滴のようなカタチ」

「……不思議な感じがする」

 

 見せられた物品は、明らかに種類の違う宝石のようなもの。

 だが、その煌びやかな色合いとは裏腹に、ソレが内包する力は、おそらく全宇宙を揺るがすほどの力を持つであろう事など、彼等にはわかるはずがなかった。

 

 孫悟空ともう一人を除いては。

 

「あ!! これ四星球じゃねえか!!」

「スーシンチュウ? おじさん、しってるの?」

「おらのじっちゃんの形見だ!」

「……あっ! これ、あのとき祠でみた奴!!」

「へぇー! おめえも知ってんのかティアナ!」

「え、あ、その……昔、悟空さんに……その」

「おらが? んー、そういやおめえどっかでみたことあるような……」

「い、いまはそんなことどうでも良いじゃないですか! あ、なのはさん、これって確かアレですよね? その、願いを叶えるって言う……」

『!!?』

 

 ティアナが昔出会った奇跡。 ソレは魔法が普及し常識となったこの世界でも為しえない最大級の偉業を達成することが出来る代物。

 その話を聞いてしまえば、今、自分たちがどれほどに重大な事態に直面したかが嫌でもわかってしまった。 狼狽えて、でも、なんとか踏みとどまった少年、エリオは一応と付け加えて質問した。

 

「…………もしも任務を拒否したら?」

「うーん残念ながらここでの記憶とはおさらばしてもらうしかないかな?」

「記憶操作の魔法なんて……?」

「ううん、最近になって身内が覚えた処刑方法(りょうり)があってね? それをフルコースの満漢全席で平らげてもらう感じ」

「……食事で記憶を消す? すみません、少し意味が」

「うん、誰もわからない方が平和かもね」

『???』

 

 しかも記憶喪失が副作用で、本来の作用が腹痛に嘔吐、精神の不安定化に加えて意識の混濁まであるときたものだ。 そんなクソのような料理を冒涜した物体Xの話を聞いて「誰がそんな物食うのか」とか「ソレはもう実質逃がさないと行っているモノだ」など、エリオが苦笑いで返す。

 

「それでなのはさん、このドラゴンボールって、何処にあるとかわかるんですか?」

「うーん、この次元世界の何処かかな」

「それ実質無理ゲーですよね」

「それでも悟空さんは既に二回も集めたことがある」

「え!? おじさんが!!」

「そうだね。 一回目はプレシアさんの延命、そして……」

「お兄ちゃん……」

「ティーダさんを生き返らせるって、ホントだったんだ」

「うん」

「どっちも悟空くんのトンデモが解決したけど、似たような環境を整えればいつかは辿り着くんだ。 だから、もしもこれが悪用される事があれば恐ろしいことになる」

「死者蘇生すら叶える禁断のアイテム、ソレがロストロギア」

 

 叶えた奇跡の実績に皆が眼を丸くする。 あのティアナが冗談でもそんなことを言うことは無いのはわかりきっている。 だから、彼女の悲しげな表情はどんな言葉よりも強い説得力を与えてくる。

 そして、こんな話を聞いてしまったのならば、もう、後もどりは不可能だろう。

 

 

 なかば強制とも言える任務の通達ではあったが、そんなもの、この教室で悟空が超サイヤ人のネタバレをした瞬間から覚悟していた事だ。

 

 

「それと、このドラゴンボールの横にあるのは“ジュエルシード”といって、コレも願いを叶えるって言う特性があるの」

「……こんなモノがゴロゴロと……」

「コッチは基本魔力の塊で、よほどの事が無ければ無害。 でも、単独で発動する危険性もあるから管理は厳重にしないといけないの」

「……危険なモノばかりですね」

「だからロストロギアなんて呼ばれるんだけどね」

 

 それを集める任務とは言うが、皆は知らなかった。

 

「それじゃ、明日から次元世界を回っていくからね」

『はい!!』

 

 他のロストロギア捜索任務を難易度Bとして、これがすでに測定範囲を遥かに超えた激務だと言うことを。

 

 そして、その原因が今、皆の中心でなにも考えず只暢気に欠伸をかいているなど、夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに、無情にも始まった捜索開始時間。

 

 荒野だと思って何も考えずに進むと、呑み込まれるような樹海だったりと、落ち着かない世界。 そんな面倒な世界に、もしかしたら願い球が流星が如く落下したかも知れないらしい。

 初日と言うコトで、なのはフェイトが引率のもとで訓練生全員がひとまとめで捜索に当たることになる。

 

 当然、その中心には孫悟空が居る。

 

 …………そう、先ほどまでいたのだ。

 

 

「ねぇ、なのは」

「どうしたの? フェイトちゃん」

「悟空、さっきまでなのはの横にいなかったっけ?」

「……そのはずなんだけど」

「おじさーん! どこいっちゃったのーー!!」

「こんな冒険がしやすそうなところで悟空さんが一人……何も起きないはずも無いのよね」

 

 おきまりのようにいなくなった悟空に対し、湯水の如くあふれ出る不安。 勘の良いティアナを筆頭に、悟空教室の面々が次々に表情を堅くしたときだ。

 

 

 大地が盛大に揺れ動き、けたたましい咆哮が空を走り抜ける。

 

 

「当然、騒動を引き連れないはずもなく……いやな予感がする」

「どうしよう、フリード」

「……」(無言で首を振る) 

 

 身体中が警戒警報を発令。 今すぐここから全速力で逃げろと投げかける本能に、陸上選手が如く走り出そうとしたときだ…………

 

 

 

「おーい! ドラゴンボールあったぞーーー」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」

「居たのはドラゴンもですか悟空さんーー!!」

「全員退避!!」

「可能な限り悟空から離れて!!!」

『ギャアアアア!!?』

 

 ドラゴンボールと共にドラゴンと併走する孫悟空がハチャメチャを押しつけてくる。

 

 もう、どうあっても勝てる気がしない生物に対してフリードは即座に戦意を喪失し、あろう事か守るべき主の服の中に潜り込んで尻尾を垂れ下げている。

 

「フリード……」

「無茶だよキャロ。 ボクも気持ちはよくわかる」

「うん、だよね……今は他にやるべき事があるよね」

『速くここから逃げるんだッ!!!!』

 

 ドラゴンボールを持った悟空を追いかけるドラゴンから逃げる子ドラゴンを抱える少女というドラゴンづくし。

 ドラゴンボーイ孫悟空がとびっきりの笑顔で訓練生達を追い詰める中、教官達はすぐさま空へ飛翔。 そのまま標的に照準を合わせた。

 

「ファイア!!」

「シュート!!」

「GOOOOOOOOOOOO!!」

『……うそ、弾かれた』

「コイツおらのかめはめ波も効かなかったんだ、そんな豆鉄砲じゃダメだぞ」

「……そりゃ牽制射撃だったけど」

「なかなか威力はあったはず」

 

 ここのところ野生生物の強靱さが目立つが、その原因は悟空なのではないかと疑いはじめるここに居る全員。

 まぁ、そんな馬鹿げた話などすぐに放り投げると、フェイトがデバイスを展開、鎌状に広げた刃を振りかぶると、そのまま魔力刃が飛翔する。

 

「なのは!」

「うん!」

 

 刃がドラゴンの背中で霧散するも、言葉少なく、なのはがドラゴンの足に向かって狙撃。

 一発だけのソレが奴の肉質に弾かれるものの、その上をもう一発。 同じように弾かれるも、又同じところにもう二発。

 

「ね、ねぇスバル……いまなのはさん、あの動き回るドラゴンの足に立て続けに当てなかった?」

「しかも同じところを何度も……どういう精密射撃」

「動きが鈍くなってる。 効いてるんだ!」

「あのひと、すごい……」

 

 だがドラゴンの疾走は止まらない。

 こんなに成るまで追いかけられる悟空がなにをやったか興味は尽きないが、残念ながら彼等にはそれを議論している時間が無かった。

 

「ティア! 正面!!」

「崖ッ!? こんなお約束!!」

「みんな! すぐに散開して!!」

「キャロ、ボクに捕まるんだ!」

「う、うん」

「ティア!」

「わかってる!!」

 

 エリオがキャロを、スバルがティアナを抱きかかえて進路上から緊急退避。 そのままドラゴンから遠ざかり、勢いそのままに奴は崖へ向かって爆走する。

 いまだ自身の得物が、目の前に居る限り…………

 

「―――――って、悟空くん退避してよ!?」

「うりゃああああ!」

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA」

「なんでいつも周りを引っかき回すのもう!! 悟空!!」

 

一人、完全にタイミングを外した少年が居た。 もう既にドラゴンと徒競走みたいに(ゴール)を目指して爆走しているのだが、生憎とそこから先は奈落の底。 フェイトがお得意のスピードでなんとか悟空に手を伸ばすのだが……

 

「悟空――――」

「およ!?」

「GYAッ!?」

「だめ、間に合わない! 悟空!!!」

 

 周りが見えない程の白熱したバトルはこうして幕を閉じる。

 両者時間切れによる奈落へダイブ。 風を切り裂きながら眼下の滝壺へ落っこちていく少年とドラゴンは大きな水しぶきを上げる。

 

 巨大な水しぶきが上がるまでおおよそ20秒。 底までの距離を落ちて、水面に叩き付けられれば無事でいられるはずがない。 しかも、悟空は魔導師ではなく生身の人間だ。 いくらサイヤ人といえども、14才そこそこの彼はまだ、それほど強くはない。

 

 皆が、大声を上げて捜索を開始したが、滝壺の周囲に人影はなくあるのは無残に流されるドラゴンの背中だけ。 彼を完全に見失ってしまう。

 

 

 

 

 

 喧噪からは遠く離れた暗闇の中。 冷たい手触りの岩の上で、少年は眼を醒した。

 

「おいちちぃ……」

 

 どうやら無傷らしい。 彼自身が頑丈だったのもあるが、どうにも咄嗟にあのドラゴンを下敷きにして衝撃を和らげていたようだ。

 まだ視界の揺れるアタマを振ると、力なく尻尾を垂れ下げながら周囲を確認していく。

 どうやら、なのはやスバルたちとは遠く離れてしまっているらしい。 匂いも、気配も、最近覚えた“感覚”でさえも彼等の居場所を掴むことが出来ないからだ。

 

「いやぁ参ったぞ、ここどこだ?」

「おや、知らずにここにやってきたのですか、貴方は?」

「おう、おらこんなとこ知らねえ」

「それはそれは、なんとまぁ貴方らしいというか、奇妙な縁を持っているというか」

「へへ! まぁな……ん? ところで、おめえなにもんだ?」

「覚えてないのですか?」

「知らねえな」

 

 自身の独り言に割り込んで、勝手に会話を成立させた謎の存在が、居た。

 

 普通ならばここで悲鳴を上げて腰を抜かして正体を見ること無く気を失うところなのだが、残念、彼にそのようなかわいげなど存在していない。

 

「そうですね、私は……」

「ん?」

 

 それは、少しだけ迷ったかのように見えたが、どうにも表情は嬉しそうで。

 その意味がわからぬ悟空は、只、首をかしげるだけで、彼女の答えを待つだけであった。

 

「夜天と言います」

「ヤテン?」

「いえいえ、すこしイントネーションが。 こほん……や、て、ん」

「やてん……夜天か?」

「はい、それで大丈夫です」

「変わった名前だな」

「そうですか? 貴方とそれほど変わりないはずなのですが」

「ん?」

「ふふ……」

 

 本当に、とてもほんの僅かに表情を和らげたような気がしたのは、やっぱり悟空にはわからない事であった。

 

「さて、合流時間にいつまでもやってこないから心配していましたが、なるほど、やはり記憶を失っていたのですね」

「ん? なんだ?」

 

 言うと、優しく悟空のアタマの上に手を添えた夜天。 彼女はそのまま眼をつむると、宙空から本を一つ広げて見せた。

 只無造作に、しかしなにか意味があるかのように広げられた本のページには何も書かれていない。 いいや、彼女以外が覗いても“その本のページは決して理解出来ないモノが描かれていた”のだろう。

 

 自動で開いてはページを進めていくその本が、やがて緩やかに停止すると夜天の表情は少しだけ険しくなった……

 

 

「貴方、高町なのはのスカートに頭を突っ込んだのデスカ?」

「ソウだけど、なんで知ってんだ?」

「いい年した人物が子供相手にやっていいことでは有りません。 ほら、彼女真っ赤になって今にも貴方に星の光をたたき込もうと……あ、たたき込みましたね」

「ほしの、ひかり? あ! あのとんでもねえ気功波だろ! なのはの奴てかげんってものを知らねえんだ。 おら死ぬかと思ったぞ」

「……当然の報いですよ」

「??」

 

 あきれた風に会話を切り上げると、手の平をかざして魔力の塊を作り出す。 そこから出てくる淡い光りが暗い道を照らすと、彼女は悟空を先導するかのように歩き出して行く。

 

「出口知ってんのか?」

「えぇ、まぁ。 けれど今は出口に向かうべきではありません」

「なんでだ、おら早くあいつらのとこにいかねえと――――」

「ここには強力な戦士が眠っていて、その捜索をしているのですが、仕方有りませんね」

「――――よし! おら頑張っちゃうもんね!!!」

「ふぅ、子供時代の方が頭が回らないから扱いやすい」

「よぉし! やるぞー!!」

 

 仕事<ジュエルシード<ドラゴンボール<飯<戦闘……とまぁ、見事にわかりやすい少年の趣向。 夜天さんは見事に彼の手綱をたぐり寄せては、少年に道案内をさせる事を閃いたのだ。

 

「どうですか? 悟空」

「なにがだ?」

「えっと、なにか、そう、どこか特別なものを感じたりしませんか?」

「んー、んーー?」

「目で見るのでは無く、肌で感じて、音に聞き、最後にはすべてを悟るのです」

「何言ってるのか、おらにはわかんねえぞ」

「……はぁ」

「だけどどっちかって言うと向こうの方がおらなんか気になるな」

「では行きましょう」

「え、いいのか?」

「貴方の持つ“独特な嗅覚”は私には決して備わることの無い大事なものです。 ソレが此方と言うのですから、ソレに従いましょう」

「……おら適当に言ったんだけどなぁ」

「貴方はむしろその方がうまくいく」

 

 いわゆる気を読む作業なのだが、コレばかりはリインフォースには備わっていない。 そもそも魔道生命体に近いデバイスの一機能が彼女であって、当然気など存在しないし、無いものを使ってたどると言うことも出来はしない。

 コレばかりはいくら悟空の持つ記憶と技をコピーしたとしても備わることが出来なかった数少ない彼女の弱点だ。

 

「こっちのほう……あ! 行き止まりだぞ」

「洞窟の中に隔壁ですか…………これで良し、いまロックを解除したので通れるはずですよ」

「ありゃ、この先さっきよか暗いぞ」

「やはりここが入り口、貴方の感に頼って正解でしたね。 電源は生きているようですからこうすれば……」

「わ! 明るくなった! ひぇー! おめえなんだか凄いんだな」

「ふふ、当然です。 何と言っても世界最高峰の魔本でしたから」

「へー」

「……興味ないって顔ですね」

「うん」

 

 がっくりとうなだれてしまったのは、はやてには内緒である。

 

 リインフォースと悟空が先を進めて行くと、明らかに立ち入りを禁じるようなシャッターがそびえ立つ。

 

「ここはアクセス出来ませんね。 しかも魔力無効のフィールドを――」

「だりゃあ!!」

「打撃は有効でしたか……」

「この先だな? 行くぞ!」

「その無鉄砲さ、嫌いじゃ有りませんよ」

 

 シャッターの向こうには卵のようなカタチのカプセルが一つ。

 ガラス状の容器の中には怪しげな溶液で満たされており、そこには一つ、小さな影が浮かび上がっていた。

 

「なんだ? これ」

「…………まさかここまで進んでいただなんて」

「おめえこれ知ってるのか?」

「はい、大まかの事情は」

「ふーん」

 

 ソレは一つの命だった。

 今の悟空よりもさらに小さな躯を、拘束具のようにも見える衣服を纏わされ、必要最低限の呼吸器を装着し、ひっそりと、しかし確かに聞こえる鼓動でいまも“そのとき”を待って居るソレ。

 

 悟空が何の気無しに近付くと、後ろにいたリインフォースは眼を見開いた。

 

「い、いま……!」

「あ! こいつ今、コッチ見たぞ!」

「起きてんのか? こんな水ん中で窮屈じゃねえのかな?」

「…………」

 

 目が合う。 だがそこには生命としての輝きは無く、ただ無機質な瞳が悟空を写す。

 

「……」

「ん?」

 

 写り、留め、そして固定される。

 

 孫悟空という存在を確認した瞬間、ソレは、まるで吸い込まれるかのように彼を見つめる。

 

「…………ゴボゴボ」

「あ! なんか暴れ出したぞ」

「いけません、下がって」

「何でだ? こいつきっとここから出たがってんだ。 いつまでもこんなところじゃつまんねえもんな」

「そんな悠長なことを……!」

 

 遂に動き出したそれは、しかしなんら具体性の無い動きしかできない。 容器を叩くでも、悟空に近づくでもなく、手足を振っているのみ。 その姿は赤ん坊が駄々をこねているようにも見えるが、リインフォースには笑いの一つすらこみ上げては来なかった。

 

「…………最悪の事態になる前に、ここで」

「よーし、いま出してやっかんな!」

「はい、いまあれを外に……はい?」

「いくぞ! じゃーんけーん!!」

 

 待ちなさい。 そんなこえが上がろうかどうかというときには、既に悟空の鉄拳が容器を粉砕してしまった後。

 豪快な破壊音の後に、ドサリという音。 床に転がったソレを、悟空がゆっくりと担ぎ上げ、彼はリインフォースの方を見る。

 

「なぁ、手伝ってくれよ?」

「……仕方、ありませんね」

「………………」

 

 うなだれながら虚空からタオルを引きだすと、担ぎ上げられた“ソレ”に巻いてやる。 そう、悟空に担がれた――――

 

「あ、こいつ……」

「えぇ、その子は――」

「尻尾があるからオトコだな!」

「…………何処をどう見ても女の子でしょう」

 

 ――――――――――――悟空と同じ髪の色と、尾をもつ少女にだ。

 

 それを見て、リインフォースは確信した。

 そうだ、この次元世界には数多くの強力な魔道生物はあれど、そのどれもが彼等の世界では太刀打ちできないレベルだ。 しかも中にはそれらを取り込み、己が力に変える怪物すら居た存在もいた。

 この世界には彼等を超える存在が居ない。 どうやっても、戦闘種族を倒すことなどできはしないのだ。

 

「…………だからといって、やって良いことの度を完全に超えている」

「どうした? おらなんか変なことしたんか?」

「い、いいえ。 ちがいます、貴方は何も悪くない」

「ん?」

 

 ――――界王さまが言ってたんだ、オラが悪い奴を引き寄せているって。

 

「ええ、貴方は何も悪くない。 間違っているのは、この事態を引き起こす、欲深い愚か者たちなのだから」

「ん? 変な奴」

「行きましょう、悟空。 もうここには用はありません」

「え? でもつえぇ奴ってのにあってねえぞ!」

「今日は留守だったのでしょう。 さぁ、その子が風邪を引いたら大変です、ここを出ましょう」

「しょうがねえなぁ」

 

 渋々といった悟空を先頭に、彼等はここを出て行った。

 一人、容器に打刻してあった文字列を一言一句、残さず粉砕していく夜天の守護者に気づかれないように、彼を、前にして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……悟空くん、なにか言うこと、ない?」

「わわっ、なのはだ」

「もう、リインフォースさんの後ろに隠れちゃダメ!」

『あの悟空さんがあんな風になるなんて……』

 

 帰り着いた悟空を迎え入れたのは、笑顔ながら阿修羅を背負った教導官さま。 なのはがしゃがみ込んで悟空と視線を合わせる。 心配したんだからね? なんて言う彼女だが、その言葉をどれだけ悟空がくみ取れるか……

 

 そんな心境複雑の中、なのははリインフォースに目配せした。

 

【どうでした?】

【事態は動き出す寸前でした。 運良く、彼が例の存在をかぎつけ、こうやって確保することが出来たのですが】

【……本当に、あの子が?】

【おそらく……】

 

 二人が念話の合間に見た先には…………信じがたい光景が描かれていく。

 

「あー、うー」

「気をつけろ? アイツはなのはって言って、すげぇつえぇ奴でとんでもなく恐ろしいやつなんだ」

「あーうーあー? うー」

「なのはだ、なのは」

「きゃっきゃ!」

 

 悟空に背負われた幼子が、見た目に違う言語で悟空と意思疎通をしているのだ。

 

「ねぇ、悟空くん」

「なんだ?」

「言葉、わかるの?」

「わかるわけねえだろ? 変なこと言うヤツだな、おめぇ」

「…………でもさっきからその子と」

「なんとなくだぞ? 昔住んでたとこでも似たようなことはあったしな」

「野生児の感ですか、そうですか」

 

 というか、自分の悪評を勝手に植え付けないでもらいたいところなのだが。

 なのはがニッコリと笑顔で悟空に笑い駆けると、彼はゆっくりと後ずさり。 ゆっくりと吐き出されたため息には、様々な感情が込められて途轍もない比重を持たせていた。

 

「でもその子、悟空さんにそっくりですよね」

「ほんとだ。 特にこの黒髪……質感までそっくり」

「顔はそんなでも無いけどね」

「うん。 将来有望だ、かわいい」

 

 新人達も集まり、各々好き勝手に感想を述べていく。

 その中に悟空とそっくりという単語が出る度、リインフォースが浮かない顔をするのだが、如何せん元から表情が外に出にくいので誰も気づけない。

 

「よし、そんじゃあシゴトも終わったし飯食いに行くぞ!」

「わーい! 御飯の時間だー!」

「スバル! ちょっとアンタ待ちなさいよ!」

「キャロ、行こう」

「うん、エリオくん」

「あーうー!」

 

 

 

 そう、誰も気づかない。

 

 悟空と似ていると言うことは、これから先どういう事態に陥るかなんて…………

 

 

 

 

 

 その日、管理局の財政が一部傾くことになる。

 

 

 

 

 

 




悟空「おっす! オラ悟空!」

リインフォース「ついに影を見せた敵たち。 それを返り討ちにするのは--」

シャマル「わぁ、こんなに食べてくれるなんて感激です」

胃袋の戦士達「おかわりー!」

???「うー!あー!」

悟空「おめぇよく食うなぁ。 うっし! ドンドン食え! 食って寝て、ドンドン強くなっぞ!」

???「おー……」

なのは「ねぇはやてちゃん、前の職場にいた時ね、食費って上から6番目くらいにかかり費用だったんだけど……」

はやて「え? なに、聞こえない」

なのは「……現実逃避が始まってる」

はやて「ええんや、ええんや。 どうせ最後には本局に請求すればええんやから」

本局にいる責任者「ねぇ! これって本当に全部食費!?」

責任者の息子「おかしいな、悟空3人分なんだが」

リインフォース「……真の敵との接触前に、果たして管理局が保つかどうか。 次回!!」

悟空「魔法少女リリカルなのは~遙かなる悟空伝説~ 第92話」

???「その少女、戦闘民族につきご用心!」

全員『シャベッタ!!?』

???「うん、教えてもらったから」

悟空「ひぇー! おでれぇた! そんじゃ、又今度な」

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