バカとIS   作:陸のトリントン

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これで、プロローグは終了です。


第三話 バカと「恋」

あの暴行事件以降、簪の学校生活は一変した。

 

毎日翔と一緒に屋上で、無言でお弁当を食べたり、一緒に無言で教室の掃除をしたり、一緒に図書室で期末試験の勉強をしたり・・・

 

周りのクラスメイトどころか、教師達も驚きを隠せなった。

 

水と油のような存在の二人の身に一体何があったのか。

 

初めの内は、(バカ)がパシリに使ってるのではないかと噂されたが、答えは簡単だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(転校生)(バカ)に惚れていたからだ。

 

さらに、(バカ)はそれに全く気付いてない。

 

 

 

 

 

翔は告白の返事を待っているのだが、彼女はいつも顔を俯かせ、顔を見ようともしない。以前より話しづらくなってしまった。彼女には、勉強でかなりお世話になってるため迂闊に聞くこともできない

 

・・・訳でも無く、積極的に質問をしていた。

 

「なあ、あの時の返事はまだか?」

 

「・・・まだ」

 

「いつまで待てばいいんだ?」

 

「明日・・・以降」

 

「明日からいつまで?」

 

「・・・うぅ」

 

彼女はまだ心の準備も何もできてないのに、彼の容赦ない質問が降り注ぐ。

 

「夏までに・・・」

 

「え?」

 

「夏までに・・・答えを出すから。その時まで、待って」

 

「分かった。夏休みが始まるまで待つよ」

 

「う、うん」

 

彼は、メモ帳に「告白の返事:夏休みが始まるまで」と書き終えると、彼女の手を握り図書室へ向かい、一緒にその日の授業の復習をするのであった。

 

 

 

 

 

 

「この問題・・・分かる?」

 

「xを移項して、そこからyに数字を代入して答えを出す」

 

「答えは?」

 

「・・・分からん」

 

「この問題を・・・解いて。そうすれば、さっきの問題・・・分かるから」

 

「おう」

 

翔と簪の勉強はいつもこうであった。

 

簪が問題を出し、彼が解けない問題がでたらそれより簡単な問題をやらせて、解けない問題の解法を導かせるというやり方で勉強させている。勉強が誰よりも苦手な翔のために簪が考えた勉強法であり、この勉強法のおかげで、中間試験の時は、全教科の赤点を回避できたのであった。そのため、翔は毎日簪と一緒に図書室で勉強して、着実に成績を上げようと努力しているのであった。

 

「よし。この問題の答え、当たってるか?」

 

「・・・当たってる」

 

「よし!簪と一緒に勉強すると、頭が良くなるなぁ」

 

「慢心・・・ダメ、ゼッタイ」

 

「分かってる」

 

彼女自身も翔と一緒に勉強するのが好きであった。自分を助けてくれた人が成長し、喜ぶ顔が見られる。それだけでも彼女は嬉しかった。

 

「なあ、簪」

 

「何?」

 

「お嫁さんになる条件ってなんだ?」

 

こういうバカな部分も含めて

 

「なんでそんな事聞くの?」

 

「昨日ワイドショーで『お嫁さんの裏事情』っていう特集で、『あなたの嫁なんかにならなければ良かった』って愚痴をこぼしてた女がいたんだよ。それでさ、お嫁さんになる条件っていったいなんだろうと気になっただけさ」

 

(なんでそんな所は覚えてるんだろう?)

 

困惑しながらも、彼女は自分なりの答えを出してみた。

 

「それは、幸せで・・・幸せで・・・幸せの絶頂の時になる・・・もの?」

 

「そうか、分かった」

 

「で、でもお嫁さんになったことないか「ああ、そこは大丈夫」え?」

 

「お嫁さんになる条件ってのが知りたかっただけだから。ほら、勉強の続きをするぞ」

 

「・・・勝手に話を進めないで」

 

少し頬を膨らませながらも、彼との勉強を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私「更識簪」は、「佐山翔」(バカ)が好きだ。

 

空気は読めない、デリカシーが無い、なかなか物を覚えない、覚えたと思ったらすぐに忘れる

 

だけど・・・強くて、優しくて、自分に素直で、何があっても自分を曲げない

 

私はそんなところが好き。バカな部分も含めて

 

今すぐにでも告白の返事がしたい。

 

だけど・・・

 

 

 

「翔・・・」

 

「なんだ?」

 

「その・・・告白の返事だけど」

 

「おう!言ってみろ。」

 

「私・・・私・・・あ、あなたのこ「更識さんいますかー?」はうぅ・・・」

 

「じゃあ、返事は明日以降でいいぞ」

 

 

 

いつも誰かに割り込まれて、返事がだせない。

 

私は自分の勇気の無さに落ち込みながらも、次こそは絶対に返事はすると心に決めた。

 

でも・・・どこで、どういうタイミングで返事をしよう?

 

夕方、学校の屋上で告白しようかな?

 

夜の公園での告白?

 

それとも、私が悪人にさらわれて採石場で・・・それはない

 

それに、彼はどういうシチュエーションが好きなんだろう。どういう言い方が彼は好きなんだろう。

 

そんなことを考えてるうちに期末試験は終わって、終業式前日の夜になっていた。

 

台所の食器を洗い終わった私は、テーブルに座り込んで明日の終業式の事を考えていた。

 

私は何度か告白の返事をしようとした。そのたびに誰かの割り込みで返事ができなかった。もし、終業式で誰かが割り込んで来たら・・・。明日はちゃんと返事をしないと・・・でも

 

「また・・・誰かが、割り込んで来たら・・・」

 

「どうなるの~?」

 

「告白の返事が・・・・・・え?」

 

振り向くとそこには、長い袖を振り回す少女が立っていた。

 

彼女の名前は布仏本音。いつも間延びした口調でのほほんとしている私の幼なじみで、私専属のメイド。

 

「かんちゃんが愛の告白を受け「ほ、本音!」むぐぅ~」

 

私は目にも止まらぬ早さで彼女の口を塞ぎ、そのまま自分の部屋に連れ込んだ。

 

途中、両親とお姉ちゃんが私を見て呆然としてたけど、気にしない。気にしない、気にしたら負けだから。

 

自分の部屋に着いた私は本音を放し、鬼のような形相で本音に近づいた

 

「本音。さっきの発言は・・・何も聞かなかったことにして」

 

「できないね~それは」

 

「どうして?」

 

「そういう部分が、返事ができない理由なんじゃないかな~?」

 

「どういう・・・意味?」

 

「たまには人の目を気にせずに、告白の返事をしたほうがいいと思うだけどな~」

 

ちょっと上から目線っぽい発言だったけど、そうかもしれない。

 

彼は告白の返事を待っている。たとえ教室だろうと、廊下だろうと、トイレだろうと関係ない。

 

彼は返事だけを待っている、ただそれだけのことであった。

 

私は本音に感謝をしつつも、今日話した内容を誰にも話さない約束をしてお風呂へ向かった。

 

「明日、告白の返事を・・・する!」

 

 

 

 

 

 

終業式当日

 

多くの生徒達はこれから到来する夏休みに胸を躍らせていた。

 

ただ一人(バカ)を除いては。

 

今日は告白の返事の最終期限日。なのだが、簪の様子がおかしい。どこかのオブジェクトのように動きがぎこちなく、どこか話しづらい雰囲気だった。

 

帰りのSHRが終わり、皆が家に帰ろうとしたとき簪が翔の席に近づいてきた。

 

翔も告白の返事だと感づき、簪に近づいた。

 

「簪。あの時の返事なんだが・・・」

 

「・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「そ、その・・・」

 

「うん?」

 

「わ、私・・・」

 

「・・・ああ」

 

「どんな返事であろうと受け止める」と言わんばかりの覚悟を決めた翔だったが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私・・・私、あなたの・・・お嫁さんになってあげる!」

 

 

 

 

周辺に沈黙が走った。彼女が一体何を言ったのか。告白の返事ではなく・・・プロポーズ。

 

「うえええええ!?なんだそれは!」

 

「だから・・・け、結婚してあげる!」

 

顔を赤くしながら、叫び続ける簪。周りは彼女の大胆発言に、開いた口が塞がらない状態であった。さすがに翔も、突然のプロポーズに困惑していた。

 

「結婚て、そういうことじゃなくて・・・」

 

「お嫁さんを見捨てて・・・行く気なの?」

 

「お嫁さんがどういう物か知ってんのか!」

 

「知ってる!・・・半分ぐらい」

 

「半分じゃダメだろ!」

 

「残りは、勉強する!」

 

「誰が教えるんだ!?」

 

「うぅ・・・」

 

上目使いで翔を見つめる簪。それに耐えられなかったのか、翔は叫んだ

 

「俺は童貞だ!」

 

「わ、私だって「言うな!はしたない!」」

 

もはや聞いてるこちらが恥ずかしいと言わんばかりの会話を繰り広げてたが、翔は無理矢理話を締め上げた。

 

「と、とりあえず。付き合ってもいいってことなんだな?」

 

「う、うん」

 

「よし、わかった。じゃあ、今すぐデートしよう!」

 

「分かった・・・て、ええ!?」

 

やはり彼はバカだった。

 

 

 

 

 

 

それからというもの、二人は仲睦まじく学校生活を満喫していた。

 

夏は二人で仲良くアニメ鑑賞お泊り会をして、互いに好きなキャラやシーンの話で盛り上がったり、秋には新作のヒーロー映画を観に行ったり、冬は年末のアニメ映画を観に行って新年を迎えたり、二人の恋が離れることはありませんでした。

 

他にも夏祭りや学園祭、クリスマスなど様々な事もありましたが、割愛させていただきます。

 

 

 

しかし、二人の恋は長く続くことはありませんでした。

 

それは中学三年生の冬であった。二人がいつものように図書室で勉強している事だった。

 

「IS学園?」

 

「知ってるでしょ。IS学園・・・」

 

「ああ。女性にしか使えない、ヨロイもどきの学校みたいな所だろ?」

 

「うん。私・・・そこに入学することになった」

 

簪の表情は暗かった。

 

春になれば、翔と離れる。例え会いに行けたとしても、一年の内の一か月と数日。

 

さらに自分は日本代表候補であるため、一か月と数日の内に彼に会えることすら怪しい。

 

こうなる事は初めから分かっていた、覚悟していた。それでも・・・翔と離れるのは、辛い。

 

「そうか、頑張れよ。俺、応援してるから」

 

「え?」

 

翔の突然の応援に、簪は戸惑いを隠せなかった。

 

「今・・・なんて」

 

「いや、頑張って日本国家代表になれよって話だよ。」

 

「・・・寂しくないの?」

 

「俺が代表候補生なんて絶対になれないし、IS学園に行くこともできない。できることと言えば、お前を応援することしかできない。だけど、別に寂しくなんかねぇ。お前、俺の告白の返事の時、『あなたのお嫁さんになってあげる』っていったろ?だから寂しくなんかない」

 

「・・・覚えてたの?」

 

「好きな人の告白だ。忘れるわけがねぇ」

 

「今日の授業の内容・・・忘れてるのに?」

 

「・・・まあな」

 

翔は苦笑しつつも、簪に語り始めた

 

「俺、ガキのころ『強くなってみんなを守りたい』っていう夢を持ってたんだ。けど、どれくらい強くなればみんなを守れて、みんなを守るには、どれくらい強くなればいいのか分からなくなっちまった。そのうち、ISっていうヨロイもどきがでできて、どっちが強くて、どっちが弱くて、どっちを守ればいいのかも、分からなくなっちまったんだ。だけど、簪と出会って分かったことがあった。別に無理して強くなる必要はないってことかな」

 

「・・・そうなの?」

 

「ああ。簪を愛するのに力とか使ってないじゃん。それに、俺の夢は変わってるしな」

 

「何?」

 

「お前と生涯を共に生きていく。それだけ」

 

「・・・・・・」

 

「なんか悪いこと言ったか?」

 

「・・・バカ」

 

「すいません」

 

受験生になっても彼はバカであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、簪はIS学園、翔は地元の高校に進学することになった。

 

例え遠距離恋愛になっても、二人の愛は誰にも引き裂かれることはないと信じ、それぞれの道を歩んでいった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだったが、その想いは1週間も経たぬうちに砕け散ってしまった。

 

 

 

世界で初めて、ISを動かす男性が発見された。

 

名は、織斑一夏

 

世界最強のIS操縦者「織斑千冬」の弟である。

 

彼の発見により、世界中は大きく騒いだ。

 

勿論、他にISを動かせる男性がいないのか各国は捜索した。

 

そして、佐山翔は「世界で二番目にISを動かした男性」となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS実技試験当日

 

「野良猫にエサ与えたいんで、帰っていいですか?」

 

ISを動かしても、彼はバカであった。




次からIS本編に入ります。

翔専用ISの登場は、結構後になります。
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