「おぉ、遊戯!帰ってくるなら連絡をよこしてくれればいいのに!」
武藤遊戯は久しぶりに実家へ戻った。アストラル世界でのハイクラスとの戦いから数か月間、遊戯は再び旅に出ていた。一つの目的は自らの修行のため、そしてもう一つはキッド・プライスターの弟 ネオンの手掛かりを探すためであった。武藤遊戯が生きる時空 プロン時空とは異なるもう一つの時空 レクシブ時空でいなくなったとはいえもしかしたらプロン時空に来ているかもしれない。世界の各地を旅し遊戯はネオンの消息を追った。そんな中、遊戯のライバル 海馬瀬人から遊戯に連絡が入った。だから遊戯は一度童実野町に帰ってきたのだ。実家扉を開けるとそこにはエプロンをつけたキッドが立っていた。
「わぁ!どうしたの!?」
「遊戯!久しぶりだな。」
「久しぶり…で、その恰好どうしたのさ?」
その質問には双六が答える。
「遊戯が自分の部屋を使っていいとキッド君に言ったじゃろ?わしもタダで貸そうと思っていたのじゃが彼がいいとしなくての。このカード屋を手伝ってもらうことを家賃やら食費やらにするということにしたんじゃよ。」
あたかも自分が頼んだわけではないとアピールしたがる双六だが、孫である遊戯は彼が楽をしたがっていたからキッドに手伝わせていることはすぐわかった。だがキッドも嫌そうな顔をしていないためそこに触れるのはよした。
「そうだ、キッド!僕と一緒に海馬コーポレーションに来てくれない?海馬君が呼んでいるんだ。」
「海馬瀬人が?」
「うん、明日の朝に旅支度を済ませてこいって。」
「わかった。」
その日の夜、遊戯の部屋で遊戯とキッドは川の字で寝ることにした。
「なぁ遊戯。お前は俺のために旅に出てくれたんだろ?」
「勿論それもあるけどそのためだけじゃないよ。」
「どういうことだ?」
「遊那ともう一人の僕の戦いでもう一人の僕はコムニオ召喚をしたんだ。しかも彼の力で遊那も知らないコムニオ召喚 ハイ・クラス・チェーンを創り出した。」
「らしいな。どのようなものなのか俺はいまいち知らないが。」
「もう一人の僕は遊那を倒して得た
「…。」
「でも僕にはハイ・クラス・チェーンが出来ないんだ。発動条件が満たされていてもブラック・ソーサラー・コムニオのカードの絵柄が現れることはない。」
そういうと遊戯はαβ
「僕はこのカードをもう一人の僕…いやアテムみたいに使えるようになりたいんだ。そのためにはいろんな経験がしたくて…だから旅に出たっていうのもあるんだ。」
「そうか…アテムはすごいな。」
「うん…すごいよ。」
翌朝、二人は海馬コーポレーションの社長室に通された。そこには海馬と彼が作ったデュエルアカデミアの卒業生 遊城十代が立っていた。
「十代君!」
「遊戯さん、お久しぶりです!キッドも久しぶり!」
「あぁ、会えてうれしいぞ。だがなぜここに?」
「海馬社長に呼ばれたんだ。」
そこに海馬とその弟 モクバが入ってくる。
「揃ったようだな。では今回呼んだ理由について言おう。モクバ。」
「うん、兄様!まず数日前に兄様宛にあるデータが送られて来たんだ。それはレクシブ時空への転送装置のプログラムだった。」
「なんだって!送り主は誰なの?」
「
モクバに引き継いで海馬が話す。
「このプログラムをデュエルディスクにセットすれば時空の移動が可能となる。」
「よっしゃ、これでキッドはレクシブ時空に帰ることが出来るんだな!」
「だがそううまくはいかない。このプログラムはアストラルの記憶をもとにして作られた曖昧なものな上にエネルギー装填までかなりの時間を有する。そしてレクシブ時空のどこの次元に転送されるかもわからないとまで来た。」
「なるほどな…だが俺の弟はレクシブ時空で消えた。ならばレクシブ時空で探す方が賢明だ。みんな、今までありがとう。」
キッドは頭を下げる。だが遊戯はその頭を上げさせた。
「お礼を言ってもらうのはまだ早いよ。」
「そうだぜ、キッド。海馬社長、俺たちのデュエルディスクにもセットは出来るんだろ?」
「あぁ、どうせ貴様らがそういうと思って三人分準備してある。」
「まさかお前ら…!」
「当然だよ、僕たちもレクシブ時空に行く。一緒にネオン君を探そう!」
「一人よりみんなの方が早く見つかるにきまってるぜ!」
「だ…だがもし行けたとしても帰ってこれるのか?」
「プログラム上はな。だが先ほども言ったようにエネルギー装填にはかなりの時間がかかる。一度行けばしばらくは戻ってこれないと思え。」
海馬の脅しに引き下がろうともせず遊戯と十代はデュエルディスクをモクバに預けた。
「二人とも…ありがとう。」
キッドも外しモクバに渡すとすぐにデータ転送を行う。数分後、モクバは三人にデュエルディスクを返した。
「もうボタン一つでレクシブへ移動できるぜ。」
「ありがとうモクバ君!」
「気を付けていって来いよ!エネルギーが溜まればわかるようにしてあるからよ。」
「じゃあ行ってきます!」
「海馬、感謝する。」
「フン、あくまで貴様らはこのプログラムのモルモットに過ぎん。さっさと試して来い。」
三人は同時にボタンを押す。数秒と待たずに三人はレクシブ時空へと転送されるのであった。
第七十五話「レクシブ時空への旅立ち」
レクシブ時空 スタンダード次元。この地では数日前まで舞網チャンピオンシップが行われていた。しかし大会開催中、融合次元の
「シンクロ次元へ向かうのは明日のはずだったよな。なんで呼ばれたんだろう。」
「さぁな。だがこの男 権現坂、ランサーズの一員としてやるべきことは必ずやる。さぁ行くぞ遊矢!」
「お~!遊矢に権現坂じゃねえかぁ!お前らも呼ばれたのか?」
振り向かずとも声の主はLDS所属の沢渡シンゴであることはわかった。三人は同じエレベーターに乗る。
「赤馬零児もわかってるぜ。ランサーズの中でも俺は特に優秀だからな。こんな朝から呼び出してきたんだろ。」
「あぁ、そうだな。」
「んだよ!元気ねえな。あ、柊柚子のこと気にしてんのか?」
「当たり前だ!すぐにでもシンクロ次元に行きたいのに…。」
「遊矢、もしかしたらシンクロ次元行きが今日に早まったのかもしれんぞ!」
「なんだと!?そしたらパパに頼んでスイートミルクアップルベリーパイとろけるハニー添えをいっぱい食っておくんだったぜ!」
エレベーターが社長室のあるフロアに到着するとそこにはランサーズの面々である黒咲隼、セレナ、デニス・マックフィールド、風魔月影が立っていた。
「俺たちだけじゃなかったのかよ!!」
「遅いぞ沢渡。さぁ入るか。」
セレナが社長室の扉を開ける。そこには零児と零羅が立っていた。
「揃ったか。」
「赤馬零児、なぜ俺たちを今日呼んだ?お前はシンクロ次元へ向かうのは明日と言っていただろう。」
「落ち着け、黒咲。明日予定していたシンクロ次元行きだったが…延期とする。」
その場にいた全員が驚く。真っ先に反論したのは遊矢だった。
「待て、どういうことだ!?すぐにでもシンクロ次元へ行って柚子を助けて仲間を集めるんじゃなかったのか!?」
「中止とは言っていない。延期だと言ったはずだが?」
「じゃあいつ行くんだ!?」
「未定だ。」
「そんな…!」
今度は黒咲が社長室を出ていこうとするがその行く手を中島が遮る。
「どけ!やはり俺一人でも融合次元に行ってやる。貴様らを待っていてはいつまでたっても瑠璃を救うことなどできん!」
「待て、アカデミアに一人で乗り込むなど無謀だ。アカデミア出身の私が言うのだ。聞け!」
「ええい、黙れ!」
「おい、仲間同士で争うのはやめんか!この男 権現坂…」
「ちょっとちょっと~、みんな肩の力入りすぎだよ。もっと僕みたいに楽しんで…」
「馬鹿野郎!楽しんでいられる状況か!このネオニュー沢渡様の出番がなくなるんだぞ!」
あっという間にランサーズのメンバーはもみくちゃになる。零児は手を一度鳴らす。
「理由を今から述べる。聞いてもらおうか?」
全員静かになった。
「ここ数日でLDSの優秀な生徒が何人か行方不明になっている。」
「黒咲…お前また!」
「赤馬零王の取引に赤馬零児が使えないと分かってからLDS狩りはしていない!」
「聞け沢渡。LDSだけでなく梁山泊塾をはじめとする優秀な塾の塾生や講師も行方不明になっている。我々がシンクロ次元に行けるのは彼らの存在があったからだ。」
「どういうことだ?」
遊矢は冷静に尋ねた。
「簡単に言えば我々がシンクロ次元に行った後にこのスタンダード次元に融合次元からの侵略があった場合どうするのか…という話だ。先日来たばかりであるためすぐにまた来るとは考えにくいが念のためだ。」
「なるほど。ランサーズがいなくなったスタンダード次元を守る者たちが消えてしまってはスタンダード次元は丸裸同然。確かに意味がないな。」
「そんなことは俺には関係ない。行かせろ!」
権現坂は理解したようであったがエクシーズ次元出身の黒咲はそのようなことはお構いなしだとでも言わんばかりに出ていこうとする。
「先ほどセレナが行ったようにアカデミアへ単体で乗り込んだとしても無駄だ。ランサーズに入ったからには協力してもらおう。」
「く…!」
「とにかく行方不明の
「じゃあ俺たちが出来ることは何かないのか!?その決闘者たちが見つかればすぐにでも柚子を助けに行けるんだろ!」
それを聞いた零児は中島に舞網市の地図を持って来させた。
「LDSの生徒の何人かのデュエルディスクに発信器を付けていた。その中で消息を絶ったものが消えた場所に行って手がかりを探してきてもらおう。」
地図に何か所か印をつけ、ランサーズを数人に分けた。各地点をそのグループごとで回ることにした。遊矢は沢渡、権現坂、セレナと共にその場所の一つへと向かった。
「んだよ、なんもないじゃねえか!」
沢渡が石を蹴りながら言う。工場跡地であり彼が言ったように何も置いていない。手がかりになるものと言われても全くわからないため遊矢は困っていた。
「なぁ遊矢。」
「なんだ?セレナ。」
「発信器がこの地点で消えたということはもしかしたら次元を移動したのではないか?」
「ん…まぁそうなるな。」
「ならここで次元を移動した奴!そいつがきっと犯人だ!」
「まぁ…そうだな。」
「誰かがここで次元を移動するのを待つぞ!そうすれば犯人が分かる!」
「毎回同じところで移動ってするのかな…。」
そう遊矢がつぶやいた瞬間、別の世界から人間が転送されてきた。
「ビンゴ!沢渡!そいつが犯人だ!」
転送されて来た人物をセレナは指さし、沢渡はそれに応じてデュエルディスクを起動させた。
「よっしゃ!」
「え、え…これ一体どういうこと?」
転送されていた男はあたふたしている。
「へっへ~!お前が誘拐犯か!ネオニュー沢渡様が相手してやるぜ!」
「何々いきなり!?相手って決闘!?」
「当然!行くぜ!」
「どういうことだよ…もうー!」
「「決闘!」」
「先行は俺がもらった!俺は手札から妖仙獣 鎌壱太刀を召喚!」
妖仙獣 鎌壱太刀
効果モンスター
星4/風属性/獣戦士族/攻1600/守 500
(1):このカードが召喚に成功した場合に発動できる。
手札から「妖仙獣 鎌壱太刀」以外の「妖仙獣」モンスター1体を召喚する。
(2):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、
自分フィールドにこのカード以外の
「妖仙獣」モンスターが存在する場合に
相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。
(3):このカードを召喚したターンのエンドフェイズに発動する。
このカードを持ち主の手札に戻す。
「鎌壱太刀の効果発動!手札から妖仙獣 鎌弐太刀を召喚だ!」
妖仙獣 鎌弐太刀
効果モンスター
星4/風属性/獣戦士族/攻1800/守 200
(1):このカードが召喚に成功した場合に発動できる。
手札から「妖仙獣 鎌弐太刀」以外の「妖仙獣」モンスター1体を召喚する。
(2):このカードは直接攻撃できる。
その戦闘によって相手に与える戦闘ダメージは半分になる。
(3):このカードを召喚したターンのエンドフェイズに発動する。
このカードを持ち主の手札に戻す。
「さらに鎌弐太刀の効果!!鎌壱太刀と鎌弐太刀をリリースし魔妖仙獣 大刃禍是を召喚!」
魔妖仙獣 大刃禍是
ペンデュラム・効果モンスター
星10/風属性/獣族/攻3000/守 300
【Pスケール:青7/赤7】
(1):自分フィールドの「妖仙獣」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
その攻撃モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで300アップする。
【モンスター効果】
このカードはP召喚でしか特殊召喚できない。
(1):このカードのP召喚は無効化されない。
(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、
フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。
(3):このカードを特殊召喚したターンのエンドフェイズに発動する。
このカードを持ち主の手札に戻す。
「いきなり上級モンスターを!」
「へへ、驚いたか!大刃禍是は特殊召喚すれば手札に戻っちまうがアドバンス召喚なら問題ねえ!この3000の壁を突破できるやつなんてそうそういないぜ!さすがネオニュー沢渡!ターンエンドだ!」
□□□□□
□ □ ??LP4000 手札5
○○○○○ □
□ ○○●○○
□ □ 沢渡LP4000 手札2
□□□□□
「僕のターン、ドロー!僕は手札からコストダウンを発動!」
コストダウン
通常魔法
手札を1枚捨てる。
自分の手札にある全てのモンスターカードのレベルを、
発動ターンのエンドフェイズまで2つ下げる。
「そしてレベル4となったブラック・マジシャン・ガールを召喚!」
ブラック・マジシャン・ガール
効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1700
(1):このカードの攻撃力は、お互いの墓地の「ブラック・マジシャン」
「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数×300アップする。
「ブラック・マジシャン・ガール、僕に力を貸して!」
ブラック・マジシャン・ガールは何の返事もしないがその男は満足そうな顔をする。
「おいおい、なーにソリットヴィジョンに話しかけてるんだ?」
「彼女は僕の相棒の友達だったんだ。僕の相棒の友達ってことは僕の友達でもあるでしょ。」
「なーに言ってんだこいつ…。早く進めろ!」
男は手札から魔法カードを発動させる。
「手札から魔法カード 賢者の宝石を発動!」
賢者の宝石
通常魔法
(1):自分フィールドに「ブラック・マジシャン・ガール」が存在する場合に発動できる。
手札・デッキから「ブラック・マジシャン」1体を特殊召喚する。
「出てきて、ブラック・マジシャン!」
ブラック・マジシャン
通常モンスター
星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100
魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。
男のデッキからブラック・マジシャンが姿を現した。そのモンスターに遊矢は驚く。
「通常モンスターだって!?」
「なんだかこの男の決闘は俺たちとはだいぶ違うようだな。」
「あぁ、でも何かを感じる…。」
遊矢と権現坂は決闘の観戦を続ける。
「通常モンスターの魔法使いが出てきてどうなる。大刃禍是の攻撃力は3000。2500程度じゃ勝てないぜ!」
「勿論わかってるよ!でも攻撃力でモンスターの強さを決めるのは間違っている!手札から魔法カード
黒・魔・導・爆・裂・破
通常魔法
(1):自分フィールドに「ブラック・マジシャン・ガール」モンスターが存在する場合に発動できる。
相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。
ブラック・マジシャン・ガールの杖から放たれた攻撃で大刃禍是は破壊される。
「んなあ!?」
「行くよ、ブラック・マジシャン・ガールとブラック・マジシャンで君にダイレクトアタック!
二人の魔法使いが放ったエネルギー弾により沢渡のライフは尽きた。
沢渡LP4000→0
「ワンターン…キルだとぉ…。」
リアルソリットヴィジョンではなかったものの沢渡はショックのあまり気絶する。男はそんな沢渡に駆け寄った。
「ちょっと君!大丈夫!?」
「待て、動くな!今度は私が相手だ!」
セレナがデュエルディスクを構える。だがそれを遊矢は止めた。
「ちょっとまて、セレナ。この人は関係ない!」
「なぜそう言える!」
「セレナだって少しは分かってるんだろ?この人の決闘、1ターンだけだったけどすごくドキドキした。だからお前だって決闘中は口を挟むことをしなかった。」
「ク…。」
構えていた腕をセレナが下したのをみると遊矢は男の方を向いた。
「すいませんでした、あなたは?」
「僕の名前は武藤遊戯。よろしくね!」