横島の道   作:赤紗

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横島百合子

 

 

「グチャグチャと文句はなしだ 今度こそハッピーエンドで終わらせてやる!!」

 

「だからお前も信用してる奴には最低限誠意をみせろよ!!」

 

「…話すって事か」

 

「そうだ、さっきも言ったがお前を心配している奴らは、お前が考えるよりも多いんだから」

 

「…分かった」

 

そう言って2人は話すべき人達を集めることに

 

 

 

 

 

  六道家

 

「面倒になったわね~」

 

独特の喋りかたで緊張感がないが、その眼光は険しい六道女史 冥子の母親であり

第四十八代六道家・当主であるその人だ。

六道女史はアシュタロス戦後の美神親子の英雄化に頭を悩ませていた。

一般人からの高い人気に支えられた美神親子は、オカルト業界で存在感と発言権が急速に高まっていたのだ

女史は急激な英雄化の裏には美智恵の影がちらついていることも気が付いており

その狙いが六道家からの離脱なのも分かっていた。

(美神美智恵は過去、女史と唐巣神父双方の弟子でもある)

美智恵野心家である。

オカルトGメンでは対アシュタロス戦の地盤を固める為に勤め始めたが、それも実績が欲しいからであり、アシュタロス事件解決以降GSに復帰しないのは明らかにオカルトGメン内での地位や権力を欲しての事なのだ。それは六道家の傘下からの離脱を意味している。

 

 

「…そして問題はこの子ね  美智恵ちゃんはどうするつもりなのかしら?」

 

ふと手にした書類、それは大戦の真実が記載された極秘資料であり当然、横島やルシオラなどの詳細も書かれている、そして現在の横島の様子も…

Gメンで一応撤回報道がされているが、それはおざなりとしか言えないものだった

それより美神親子が世界を救ったという報道ばかりが繰り返されているのだ。

 

 

「美神家に取り込むつもりなのか、危険分子と判断して排除するのか? …判断が難しいね~」

 

 

「…ウチが先に捕まえるべきかしら~」

 

 

 

コンコン

 

「奥様、お客様です  …横島、…いえ紅井百合子様がお見えになりました。」

 

「えっ!?」

 

紅井百合子といえば横島の母親であると同時に村枝の紅ユリでもある

以前、横島を百合子がニューヨークに連れて行こうとし送別会を開いたが、この送別会に百合子を見たく女史自ら出向いたのだ

今は知る人は少ないが、村枝の紅ユリとは六道家でも無視できない影響力を持つ人物なのだから

 

「フミさん、すぐにお通しして」

 

 

 

 

 

「お久しぶりね~。 百合子さん~ 送別会騒動以来ね~」

 

「お久しぶりです。 六道さん」

 

「急にどうしたの~?」

 

「…今日は息子のことで来ました!!」

 

百合子は淡々と話すが、女史は一瞬ピクリと止まる

 

「息子ちゃんのこと~?」 

 

「忠夫の身に起こった事、その元凶」

 

「化かし合いをする気はありません。 …美神美智恵の事です」

 

「何のことかしらね~ 私は知らないわ~」

 

「…美神美智恵 六道家は彼女の死亡偽装を知っていましたね?」

 

「いえ、むしろ匿っていましたね …事件当時彼女の葬式を取り仕切っていたのは六道家でしたから死体が偽者かどうかは気が付くはず!!」

 

「……」

 

「六道家に、どのような意図があり美神美智恵を匿っていたのかは知りませんが…」

 

「結果、私の息子とその嫁になったであろう女性が犠牲になったんです。」

 

「…待って下さい、美神美智恵を匿っていたのは事実ですが大戦の詳細は私も知りませんでした」

 

あまりの殺気に背筋が凍る思いだった、六道家当主を威圧出来る人間など、何年もあったことは無い。

 

「六道家が知っていた事は、美神令子が魔族に狙われている事と世界的規模の大霊症が起こる事ぐらいです」

 

「魔神が人間界に侵攻する事も息子さんが関わる事も知りませんでした!!」

 

それは本当の事だ、美神美智恵から時間移動のさい掴んだとされる情報の中でアシュタロスが侵攻する事、その狙いが令子の魂にある結晶だという事

また横島忠夫とルシオラの悲劇などは一切聞いていないのだ。

 

「…わかりました。 でしたら今後、忠夫とその周辺には手を出さないで下さい。ちょっかいを出した場合は、徹底的に戦います」

 

「…肝に命じます」

 

百合子はそう話して帰って行った…

 

「美智恵ちゃんも大変な人物を敵に回しちゃったわね~。 もう終わりかしらね~?」

 

女史自身、親であるからこそ解った、百合子の怒りを…

百合子が現役の時、関係が深かった政財界の人物はみんな出世して大物になっている。

そんな百合子が心底怒りを出して潰しにかかるのだ、美智恵とて、ただですまないだろう。

まぁ増長している美智恵を潰すぶんには六道として問題はない。

オカルト業界として考えれば美智恵の失脚などが起これば大変な損失だが、六道家には損失では無いのだから

 

 

 

 

 

 

百合子は六道家からの帰り道、ホッとしている。さすがに六道家を敵に回すのは避けたかったのだ

実は百合子は六道家が大戦の情報を詳しく持っていないことは推測済みだった。

もし掴んでいるのであれば、娘の冥子を前もって遠ざけていた筈なのだ、当主が娘に甘いことなどは有名なのだし、それでも強気に出たのは主導権を取る為と警告であった

 

「六道家には、これで美智恵も頼れない。 …美神美智恵 アンタだけは …許さんで」

 

 

未成年であり護られるべきだった、息子をスパイに仕立て上げて、あまつさえ人類の敵などという消せない烙印を押したのだ。

例え戦いの後に一応撤回されたが、追い詰められていた時の人類に敵と認識された後では敵愾心を拭えるものではない…

どれほどの事情が在ろうと、どれだけの理由があろうと、親として赦せる訳がない。

 

そして過去から戻ってきた美智恵の行動も調べており、現在妊娠している事も掴んでいる

…恋人が自分の代わりに死に、世界を背負わされ、自身の手で恋人に止めを刺す。

そんな境遇になる事を知っていながら、あの女は、ウチの息子に手を差し伸べる訳でもなく、自分の夫とイチャついていた訳だ。 

 

 ――――ふざけるな

 

子供一人、魔族の女一人。 『その程度の犠牲』など等と言わせない。

 

人一倍痛がりで、人一倍臆病で、人一倍女好きで、分かり難く優しい息子は、まだまだ半人前の子供だ

その子供に、人では抗う事も許されないであろう圧倒的な存在に相対させた

正真正銘のバケモノとの戦いに最前線で、稀有な才能を持つ存在だからという理由で…

 

 ――――ふざけるな

 

大戦後に美神家の活躍で世界の危機を未然に防いだなどという、報道が流される。

そこには忠夫やルシオラの事は削除され、決戦には関わっていないようにされている。

…すべて美神家の功績にされている。結末を知りながらも身の保身のみに走っている

 

 ――――ふざけるな

 

 

全て赦せない、何もかも納得できない

…美神美智恵、最大の過ちは、同じ人の親である横島夫妻を甘く見ていたことである

我が子を想う気持ちは夫妻とて負けていないのだから…




百合子母ぶちギレ …大樹父も怒ってキレてます

次回は短編『愛子編』予定





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