「アンギャオォォォーーーーーーーッ!!」
竜化した小竜姫は耳をつんざかんばかりの叫び声を上げ、口から黄金の炎を吐き猿神の八卦封印の炎を散らして横島と自身の周囲を炎の結界で覆った。
『それに触るでないぞワルキューレ! すぐに避難するのじゃ!!』
「はっ!」
2人はカオス達の居る空間に慌てて避難した。黄金の炎(神炎)は猿神でもダメージを受けるが、その真価は物理法則さえも無視し、目的対象以外には一切の影響を与えない炎なのだ。故に横島にはダメージは無い。
「老師あれは?」
『竜神族は出産時には気性が荒くなり、つがいの雄ですら不用意に近づけば食い殺すというが。 …今の小竜姫は正にその状態じゃ』
「なるほど… ではこの場所は出産が終わるまで封印した方がよろしいですね」
『うむ、後でワシがやっておこう。先にアヤツらに話をする方がよかろう』
そう言うと客人達に目を向けるが一同あまりの光景に絶句していた。ある程度落ち着いているのはカオスと魔鈴のみで、実戦経験豊富なエミですら唖然としていたのだった。
「ふむ、では我々を呼んだ理由をお話して頂けるとういことですかな?」
そんな中でカオスの言葉に一同が我に帰る。
「横島を転生させるだけならワシらは必要なかろうて、理由があるから呼んだのだろう? …しかも転生を先にしたからには、横島には聞かせたくない話とみえる!」
『さすがはかの“ヨーロッパの魔王”と称されるほどの高名かつ優秀な錬金術師であるドクター・カオス殿ですな。ならば回りくどい話ではなく直球でお話させて頂く!』
「うむ。お願いいたします。」
『ではまずはワシの私室へどうぞ。…全てをお話いたします!』
一同、猿神に連れられて部屋へと向かうがマリアだけが拒否した。
「ドクター・カオス・マリア此処に居たい」
「此処では暫く何もおきんぞ!」
「マリア・横島さんの傍に居たい」
「…解った、好きにすると良い!」
「イエス・ドクター・カオス!」
以前には見られなかった行動なだけにカオスは嬉しさと寂しさが同居した複雑な気分に見舞われた。だが普段自分から言い出す事がないマリアが自らの意思を訴える行動に出たため、その意思を尊重することにした。
『さて、単刀直入に話すとしよう。今現在何がおきておるのか? そしてお主達にどう関係があるのかを…』
「まず私の方から、現在魔界では遺憾ながら過激派魔族が美神と横島をを狙っている動きがある」
ワルキューレがどこか忌々しそうに話していた。
「人間界では美神令子がアシュタロスを討ったことになっているが、神魔界では真実が伝わっている。故に魔神アシュタロスを直接討った横島は勿論、人間界でアシュタロスを討ったとされる美神令子に対しても我慢が出来ない連中は多いんだ… 」
「我慢ができない?」
「連中は人間が魔族に勝つのが無理だと証明したいのさ… ましてや美神令子は英雄として人間界で目立ちすぎているから過激派魔族には頭にくるのだろう“偽者の英雄”としてな」
「令子に関しては自業自得なワケ… で私達にどう関係あるワケ?」
「あくまでこの2人が死んだ後だが、大戦時に居たメンバーも狙われる可能性がある」
「上等だ! 返り討ちにしてやるぜ!!」
「雪之丞君! 熱くなりすぎては駄目だ! …魔界では止められないのですか?」
唐巣は頭に昇った雪之丞を落ち着かせるように話しながらワルキューレに聞く、ハッキリ言って過激派がどの程度の規模か分からないが仮に上級神魔クラスが複数出て来たら終わりである。
「デタントの名目で横島と諸君達には正規軍が護衛に付くが、美神令子に関しては…」
『そこから先はワシから話そう』
こちらもどこか忌々しそうに猿神が話し始めた。
『御主らは“霊破シュミレート”の存在を知っているか?』
「何ですかそれは?」
一同は霊破シュミレートの存在を知らなかった。知っていたのは令子、おキヌ、横島、西条、ヒャクメだけであり、もしカオスや魔鈴などが見れば気が付いていた恐れが有るため美智恵は隠していたのだ。
『表向きは、記録された魔物や妖怪の霊破動を再現してシュミレートする霊動実験室とされて物じゃが実態は違う! …あれは妖怪の捕獲を繰り返し行って解剖して霊破片を採取してその力を再現する心霊兵器実験所じゃ!!』
「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」
『アシュタロスの核騒動で全世界的に核は禁忌の兵器になった。 …おそらく美智恵は知っていたのであろう。その為に核に変わる戦略扱兵器が人々が求める事をな』
猿神とワルキューレはお互いの顔が歪むのを自覚しながらも話す事にした。
『その妖怪捕獲を先導して行っているのが“南武グループ”という組織であり“美神美智恵”も噛んでおる …そして裏で“横島忠夫抹殺”を指示しているのが美神美智恵じゃ!!』
驚愕の真実に一同は凍りついた。
今回は短めです。あと少しでタマモ登場しますが原作どうりではないです。