妙神山
猿神の話を聞き終えた一同は横島が目覚めるまで妙神山に待機することにした。
またこの機会に、大戦の詳細を知らなかったテレサはマリアの記憶データ共有を要求し、同じく大戦の詳細を知らない愛子も何が有ったのかを知りたく、結局は双方観れるように内臓スクリーンでの上映会となった。
一方で事情を知るもの達はそれぞれの気心が知れるもの達と行動していた。
魔鈴、エミ 唐巣神父は年長者として ピート、タイガー、雪之丞は横島の友人として カオスは猿神とそれぞれ話をしていた。
「…気に入らないワケ」
「エミ君」
「何もかもが気に入らないわ! 横島は実力はともかく精神的に未熟だった。それを都合よく利用して犠牲にしていた美神美智恵。…事件後に切り捨てたGS教会やオカルトGメン。…そして横島を一番に支えなければいけなかった令子」
全てが気に入らなかった。しかしそれはエミ自身も含まれていた。世界中のGSやオカルトGメンでさえアシュタロスとは戦わない道を選び逃げ腰だった。
そんな戦いを未成年の横島に全て負わせてしまった。GSの先輩として年長者として自分達はあまりにも無力だった。しかし大戦後に傷ついた彼を擁護することは出来たはずだ。
「小笠原さん」
「……挙句に魔族として指名手配? 抹殺指令? ふざけんじゃない!! アイツがどれだけ苦しんで戦ったか、どんだけ苦しい想いで選択したか…」
激情のあまり言葉に詰まるエミを唐巣と魔鈴は以外な眼差しで見つめていた。
小笠原エミは裏家業の人間であり、そこに私情を挟むことはないと言える。仲間に対しても一線を引いている印象が強いのだ。
だが実際はエミ自身否定するだろうが彼女は姉御肌なところが有り、かつて令子が死んだとされる折には冥子と横島を叱責して立ち直らせてもいる。
「エミ君、ならば今度こそ彼を支えねばいけないね。私ももう後悔はしたくない。令子君を信じて傍観していたが事態は最悪の方向に向かってしまったようだ」
「そうですね、…彼がこれ以上傷つき戦う必要は無いはずです。 彼1人に背負わせてしまった私達は彼に対して借りがあります。」
唐巣は正直、横島の傷を理解していながらも美神令子を信じて者傍観の姿勢を保っていた。弟子の事は師匠に任せるべきとの考えから任せていたが、彼の心理状態を見る限りろくにメンタルケアすらされていないのは明白だ。
そして美神美智恵の裏切り行為。もはや者傍観でいることなど出来ない。弟子の不始末は師の責任である。美神美智恵は一時とはいえ唐巣の元で教えを受けたのだ、ならば責任は自分にある。
これ以上横島に負担を強いる気も、世界の犠牲にするような真似は、唐巣は勿論エミも魔鈴も御免であり、自分達に何が出来るのかを考えて三人それぞれが覚悟を決めていた。
一方の友人組みの雪之丞、ピート、タイガーは
「ふざけやがって!」
此方も雪之丞が激昂していた。だがエミとは違い雪之丞は連中のやり口に最も腹を立てている。大戦時には手をこまねいていたくせに、都合の悪くなったからと横島を実験動物扱いや、まして始末しようなどと言い出した連中には殺意を覚えるぼどに
憤る雪之丞は直接殴りこみに行こうとしていた所をピートに止められていた。
「待て、雪之丞。今僕達が手を出せば状況が悪化するだけだ!」
「なら…お前はこのまま何もせずに傍観していろって言うのかよ!! 俺は…」
「何もしないとは言っていない!! 手を出すなと言っているんだ!」
ピートとて横島を魔族として捕縛に動いているGS教会やオカルトGメンには業腹ものだ。
だが今、直接手を出せば自分達はただのテロリストになり逆に連中に口実を与えることになる。そうなれば意味がないのだ。
「やり方を考えろ! 大儀を無くせば連中の思う壺だ」
「けど…」
「単純な暴力では駄目なんだ。」
「ちきしょー」
「…ピートさん、ではどうすれば良いジャー?」
「それは…僕にも解らない。」
ピートにとっての横島は親友と言える。人間達から迫害される経験の多かったピートは、それでも人間を嫌う事ができずに人間達の中に身を置いてきた。
そんな中で横島はピートを”美形”だからだとハッキリ口に出して嫌っていた。
そんな理由で嫌われたのは初めてであり、ピートに対して嫉んだりはするが決して見下したりはしなかった。妖怪を本当の意味で対等に見てる横島はピートの中で一番の親友になったのだ。
故に判断が難しいのだ。人間全体を敵に回すのがどれほど危険であるのかを理解しており、避けねばならないのだから…
「…そちらは我々に任せてくれないか?」
「先生、魔鈴さん?」
「GS協会は私が、オカルトGメンには魔鈴君が伝手が有る。我々は今から下山して向かうよ。」
「先生ならば僕も…」
「イヤ、戦闘をしに行くのではないから私達だけで大丈夫だよ。」
悩んでいる三人の所へ唐巣神父と魔鈴が来ていた。自分達に出来ることを伝える為に
そしてエミも自分に出来ることをするべく猿神の元へと
『話とは何かな? 呪術師殿』
「猿神殿にお願いがございます。私に『ウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修行コース』を受けさせて下さい。」
『御主は生長期をすぎておる。…危険度は上がるうえに能力的にもそれほどの成果は望めぬかもしれぬぞ』
「承知の上です。ですが私は正直、直接戦闘のタイプでは有りません。このままでは私は必ず足手纏いになります。」
『何ゆえ力を求める? …小僧のためか?』
「違います! 私自身のためです。私は、…私自身の矜持の為に力を求めます」
『よかろう許可する。奥の間にて行う』
「宜しくお願いします」
エミは万が一にも横島や他の仲間を利用する行動に出た者に対して、自分に何が出来るのかを考えた上で力を求めた。
美智恵の方は神魔にまかせれば良い、だがあの女だけは同じ弟子を持つ身として自分が決着を付けねばなるまい。その為には自身の力不足を自覚しており行動に出たのだ。
―――――俺は…
――――――――死んだのか?
意識が定まらない。何も考えられない。
「…逢いたかったな、一目だけでも」
『随分と女々しい事を言っているね。こんな奴にアタシは2回も不覚を取ったっていうのか。』
―――えっ
…この声は
意識が急速に覚醒する。
まさか、イヤありえない。彼女は文珠『滅』で死んだはず。
『…………久しぶりだね横島…そして今度こそ…終わりにするよ!!』
――――何故彼女が!?
「何故お前が生きているんだ! 『メドーサ』!!」
遅くなりました。仕事が忙しくて…
大体ですが二週間に一度ぐらいの更新になります