GS協会とはGSの登録管理、免許手続きだけではなく一般の霊症相談にも応じるし、GSとの間に入って料金などの相談もする警察に近いものである。
よって唐巣は異常にすぐに気が付き戦闘態勢に入った。…人の気配が全く無いうえに監視しているであろう神魔の気配すら無いのだから
「これは認識阻害の結界?」
聖なる結界を身に纏い認識阻害を無効にして慎重に入るものの外からと同様やはり気配は無い
「……こ、これは?」
その内部にて唐巣は地獄を見ることになる。
———————————————————————————————————
西条は出勤前に東京タワーを訪れていた。ある人物に呼び出されたのだ。
「お呼びだてして申し訳ありません。先輩」
そこには魔鈴が待っていた。彼女はオカルトGメンの人間に接触するリスクを理解していてながらも西条を信じていた。だからどうしても直接本人に問い質したかったのだ
その上で出来れば此方に協力して欲しかった
「魔鈴君。こんな朝早くにどうしたんだい? …聞くまでも無いな。横島君の事だろう?」
「はい、先輩は何故あんな報道を許したのですか?」
魔鈴はまず大戦後の報道が気になっていた。あの報道では美神親子とオカルトGメンの西条が全ての作戦指揮を執り、他にも日本GS界のトップクラスが全員協力している中で、美神令子がアシュタロスを倒した事になっている。
一方で横島は戦争初期に人類の敵として報道され世界中の憎悪を一身に受けていた。後日スパイとして敵方に潜入していた一報が入るが記事自体が小さく、おまけに直後のアシュタロスを倒した報道で陰に隠れている。
その後は報道に一切名前が出なかった事で未だに横島は人類の敵として認識されている。
「何故、真実を公表しなかったのですか? 美神令子さんの為ですか?」
「……違うとは言い切れない。真相が明るみに出れば令子ちゃんは生きてはいけまい。…だが信じて欲しい! 僕は彼を見捨てる気なんてなかった。」
「……」
「彼がスパイとして潜入していた事、僕は何度もマスコミに流すように指示していたし彼を世間から匿う準備もあった。もっとも彼は僕を頼らずに雲隠れしてしてしまったがね」
西条は横島を大戦の犠牲にするつもりなど全く無かったし、望んでもいなかった。価値観や考えの違いが大きいが、西条なりに横島を認めていたしその身を案じていたのだ。
「……では今回の捕獲命令は?」
「先生は横島君の魔族因子が暴走して魔族となったと言っているが僕は……」
ズンッ!!
「…先輩?」
突如、西条の表情が虚ろになり目の焦点が定まらなくなった。あまりの事態に数瞬、思考が止まってしまい、それが魔鈴の命取りとなってしまった。
ドン! ドン!
「魔鈴めぐみ、横島忠夫は何処に居る」
「せ…先輩…何を…?」
「答えぬのであれば君を犯人蔵匿の罪で拘束する!」
問答無用に放たれた凶弾により魔鈴は重傷を負おい捕らわれてしまう。人が変わったかのような行動に薄れゆく意識の中で真実を悟りながらもどうすることも出来なかった。
「「はあぁぁぁぁああ!!!!!」」
ガキーンッ!! キイーン!
横島とメドーサの戦いはどちらも決め手が無く膠着状態に陥っていた。
『見事だ……。見事だよ横島! 今のアタシを相手にこうまで…』
メドーサは素直に横島を称賛した。今の自分は全盛期の魔力と実践で鍛えあげられた槍術の技を持っており、それでも互角の戦いに持ち込めている横島を改めて認めたのだ。
それは横島が格上の相手であるメドーサとの戦いの中で成長し始めていたからこそなのだが
(だが、まだだ! まだこの程度じゃダメなんだよ横島!)
一方、横島は接近戦には対応でき始めたが距離を離されると未だに不利な状況だった。
遠距離攻撃がサイキックソーサーだけであり、投擲モーションが必要不可欠なのだが、隙が大きすぎる為にメドーサ相手では使い物にならないのだ。
「……1つ聞かせろメドーサ お前何で俺と戦う?」
『はん、何を言い出すかと思えば…理由ならアタシのプライドを傷つけたことさ!』
シュッ!バジィィッ!!
繰り出される突きを霊破刀から瞬時に栄光の手に変化させ掴みとる。
『なっ!?』
「……嘘だな。以前のような殺気も俺に対する怨念や憎しみが感じられない」
『ふざけるんじゃない!!』
カッ!!
「しまっ……!!」
ドガアァァァァァッッ!!!
瞬間的に魔力を高め己の周囲を爆破させる。かつて香港で美神、エミ、冥子の式神を吹き飛ばした技である。
「…くそ!……痛ぇ…」
至近距離でまともに食らったためダメージも大きいが動けないほどではない。問題は吹き飛ばされ距離を開けられてしまったこどだ。
『今度は盾ごど砕いてやる!! 喰らいなぁ!!!』
先ほどより威力の高い連続魔力砲が体制の崩れた横島に向かってきた。
妙神山
「はぁ、はぁ、はぁっ」
そこには疲労困憊のエミが何とか猿神に相対していた。
『…それが主の眠りし才能よ。…やれやれ本当に手加減がこの歳になるとキツいわい!』
猿神が老人の姿に戻った瞬間、エミはその場に崩れ落ちた。体力、気力共に限界だったのだ。
『…解っていると思うが忘れるな! その力は諸刃の剣であり体の負担も大きい。ましてや完全解放すれば御主は確実に死ぬ!』
「解っております。ご助言ご指導、有難う御座いました」
そう言いながらエミは頭を下げた。猿神は本当にギリギリまで手加減をしてくれたのだ。
加速空間も独りで作っており言葉すら喋れなかったときは困ったが、いかにこの修行が猿神に負担になったか解らない。エミは感謝をこめて強くなる事を改めて決意し修行に励み、見事乗り切ったのだ。
(…老師、唐巣殿が帰還されました)
そこに猿神に鬼門から念話が届いた
(早いな、何かあったか?)
(…それが)
(何じゃ? はよう申せ)
(…ヒャクメ様が、……戦死されました)