横島の道   作:赤紗

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決意

 

「うおおおおおおおおおおーーーッ!!!」

 

横島の咆哮とともに魂の質が変化し始めるのをメドーサは感じていた。

そして人間では出すことが不可能な霊圧で魔竜の顎ごと食い破ろうとしている。この技はメドーサの切り札であり、攻撃力では手持ちの中で最強の技なのだ。

 

(…いよいよか。見せてみな!! お前の真価を、可能性を!!)

 

「おおおお……おおおおおおッ!!」

 

そして魔竜がついに弾け大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―妙神山―

 

マリアは一人考えていた。

事情は聞いて理解している。だが…

 

「考え事か?」

 

「ドクター・カオス」

 

「小僧のことを考えているのじゃろう」

 

「…イエス・ドクター・カオス …マリア子供産めません。」

 

「…マリア?」

 

「マリア・子供を産めれば ……横島さん人間のままでいられました。」

 

「マリアそれは…」

 

「マリア・子供を、…ミス・ルシオラを産めれば横島さん人間のままで幸せに生きていけた。」

 

「…マリアよ 横島が本当にそれを望むと思うか?」

 

「…いいえ。横島さん・望む可能性0%です。」

 

「何故望まぬのか解るか?」

 

「ノー・マリア理解不能です。 マリア機械です。 …マリアが子供を産めれば一番横島さん・後腐れなく済みます。」

 

「何故そう思う?」

 

「マリアは機械です。横島さんも気にせずに済みます。」

 

「本当にそう思うか? あの男が機械だからとお前を今まで差別してきたのか?」

 

「ですが…」

 

「マリアよ お前には『心』がちゃんと在る。…そして横島は機械だとかは気にしないでそのままのお前を見ておる。」

 

「……」

 

「仮にお前に子供を産む機能が有ったとして、あの男は周囲の者と同じように頼まんだろうよ。」

 

「何故ですか?」

 

「お前だけではなく全ての者に言えるが、女に対し『子を産む機械』にはしたくないのだろうよ …ましてや自分の恋人を産んでくれなどな…」

 

「…」

 

「横島の幸せを願うことが出来たお前になら何時か理解できる日が来よう」

 

「…イエス・ドクター・カオス マリア・心を持っているか解りません。ですがマリア・心を理解したい。」

 

 

 

 

 

 

(姉さん、貴女はもう心を持っているわよ。 人間の役に立ちたいと言っていた貴女だけどあの人間に対してはその身を案じている。 それはプログラムには出来ないことよ! …なぜならば機械は悩まない。0と1で構成された私達の矛盾なきロジックに『悩む』という揺らぎが発生する――それはつまり自我が芽生えはじめていることを意味するから)

 

会話を聞いていたテレサはわずかな羨望を抱きながら思う。

 

 

 

 

 

 

 

「…まったく手間をかけさせるわ!」

 

「雪之丞達は?」

 

「言って聞くような奴じゃないから、面倒だしちょっと呪ってやったわ。脳筋馬鹿にはからめ手の方が効くワケ!」

 

ヒャクメの戦死報告をきいた雪之丞はすぐさま現場に行こうとしたのをエミが問答不要で黙らせた。神魔の調査部隊が動いているはずだし今動いても情報は得られないだろう。

ちなみにタイガーも泣いて煩いため同様に呪い黙らせていた。

 

 

「エミさん …貴女はその」

 

ピートはエミの肌を見て悟ってしまう。彼女の肌に刻まれているのは何時もの化粧では無い。アレは… 思わず口にしかけるが

 

「!?」

 

エミは微笑とともに人差し指でピートの口を塞いだ。

 

「……」

 

ピートはエミの表情に何も聞けなくなってしまう。何時もの笑みではなく見るものを魅了する、そんな笑みだった。

 

 

(エミさん変わりましたね。)

 

うまくは言えないが最近のエミは変わったとピートは感じている。

以前は仲間うちでも一定の距離を置いていたが最近はその壁が無くなって来ている気がするのだ。

 

 

キイイィィ----ン!

 

「「!!」」

 

「なに? この強力な霊破動は!?」

 

「この感じは…横島さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

横島は魔竜を吹き飛ばした後も霊圧の上昇が止まらなかった。

 

(頑張れ! 頑張りなよ横島!!)

 

自らの技が破られた中でメドーサは横島を信じていた。

 

―今のアイツなら大丈夫 きっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――諦めるものか! 諦めてたまるかっ!! ……あの時のように。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

横島「動くなッ!!」

 

アシュタロス『悪い冗談だな。そいつを壊せば困るのは私だけではないぞ。ルシオラを…見捨てるのかね?』

 

ルシオラ『壊して、ヨコシマ!!もうそれしかないわ!!』

 

アシュタロス『今すぐ返せば君とルシオラは生かしておいてやろうじゃないか。新世界のアダムとイヴにしてやろう。彼女は君のためにすべてを失ったのだろう?このまま死なせるのはひどすぎると思わんかね?』

 

ルシオラ『耳をかしちゃダメよ!!ウソに決まってるじゃない!!ヨコシマ!!』

 

アシュタロス『それをよこしたまえ! ルシオラを死なせたくはあるまい!?』

 

ルシオラ『破壊して、ヨコシマ!!渡してはダメよ!!』

 

二つの声にどう対応すればいいかわからない俺。そして、動きが止まったところへ一言

 

アシュ『いいか?ゆっくりそっちを向くからな。妙なマネはするなよ』

 

横島「動くなって言ってんだろ!」

 

アシュタロス『……!だが、永久にこのままというわけにもいかんだろう。決めろ!それを壊して何もかも台無しにするか―――ルシオラを助けるか……!』

 

令子「横島クン……!」

 

ルシオラ『何を迷ってるの!?結晶を破壊すればアシュ様は一気に追いつめられるのよ!!神魔族は復活し、アシュ様は力の大半を失う!!』

 

横島「しかし―――!!俺の手で……お前にトドメをさすことになるじゃねーか……!!そんなこと―――!!」

 

ルシオラ『ヨコシマ…!私一人のために仲間と世界…すべてを犠牲になんかできないでしょ!?』

 

横島「しかし―――!!」

 

その迷いに対してアシュタロスはにやりと笑う。

 

令子「もういい…!まかせるわ。横島クン次第よ。ここまでやれたのは横島クンのおかげだしね。ほかの全部をひきかえにしても守りたいものがあるなら…私はもう何も言えないわ!正しいと思うことをしなさい、横島クン!」

 

横島「美神さん…!! ウソつけ――!!本当は壊せと思ってるクセにっ!!」

 

令子「当たり前でしょ!?でないと私は世界と一緒に消えてなくなるのよっ!?でも…だからってルシオラを犠牲になんて―――私の口からあんたに言えると思うのっ!?」

 

―――正しいと思うことを

 

 

横島「………なんで……!!何で俺がやらなきゃダメなんスか……!!」

 

ルシオラ『約束したじゃない、アシュ様を倒すって…!それとも―――誰かほかの人にそれをやらせるつもり!?自分の手を汚したくないから―――』

 

アシュタロス『恋人を見殺しにするのか!?寝覚めが悪いぞ!』

 

横島「…今、お前を倒すにはこれしかねぇ……!どうせ後悔するなら―――」

 

横島「テメェがくたばってからだ!!アシュタロス――――――!!」

 

そういって『俺』は「破」と入った文珠を結晶に当てる!

 

アシュタロス『!!や…やめろ――――!!』

 

俺が結晶を破壊したと同時に眩しい光が走り、コスモプロセッサが音を立てて崩れ始める。

 

 

―――俺は …後悔するのが解っていて結晶を破壊した。……自分の手でルシオラを見殺しに

……否、彼女にとどめをさしたんだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――振り返えってみると俺は、…俺自身が情けなかった! 情けなくて…腹が立って…そして…そして…泣いた。

 

それでも僅かにでも彼女が蘇る可能性があるならアイツに生きてもらいたい。その為なら何だって受け入れる。自らの手も汚そう!!

 

――彼女ともう一度逢えるというのなら、……俺は …何もいらない!!


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