横島の道   作:赤紗

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蘇り

―――おまえは何の為にアシュタロスと戦ったんだ。世界を守る為か?

 

世界なんて考えられなかった。ただアイツを助けたかった。

 

―――なら何故おまえは彼女を選択しなかった?

 

……アイツが悲しむから …アシュタロスを倒すことを誓ったから

 

―――何の為に誓った

 

アイツやぺスパ、パピリオに自由を与えたかった。それが傲慢だとしても…

 

―――矛盾だな。

 

……解っている。それでも俺は――

 

 彼女ともう一度逢いたい!  ……たとえ

 

 

 

 

 「ダメ―――――ー!!」

 

 

 

 

――意識が闇に沈みかけていたとき、目の前に一条の光明がさした。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

学校の校門で

 

『――ヨコシマ!』

 

「ルシオラ!? 何で学校に?」

 

『いいの? 終わるまで待っているつもりだったのに…』

 

「そ、そんなことより ――どうしたの!?」

 

『なんか…まだ居場所がなくて… ね。』

 

 

『私達、こないだまで人間なんかなんとも思っちゃあいなかったのよ。

今だって……表面上は愛想良くしているけど、まだ直ぐにはなじまないわ。』

 

 

東京タワーで

 

『ばっかね~~~!! いやなわけないでしょ、ぜんぜん!!』

(ヨコシマが相手なんだからね)

 

 

病院で

 

『ヨコシマ、この病院食ってけっこうおいしいね♪ はい、あ~ん♪』

(一緒に同じものが食べられるってだけで私は幸せなんだ)

 

 

 

 

――ルシオラが笑っている。その傍にいるのは…

 

……あぁ、そういう事か。

 

俺は何をしてたんだろうな お前が笑うのにはべスパやパピリオだけじゃなく …俺も必要なんじゃないか。

アイツと共に生きていくなんて口にだしていても、本心はアイツが助かれば俺はどうなってもかまわないと考えてしまっていた。彼女に今の俺と同じ苦しみを与えてしまう。それは…駄目だ!!

 

光に手を伸ばす。…何故だか掴まないと先に進めない。そう思い手を伸ばす。

目の前にあるはずなのに、それなのに届かない。

すぐ傍にあるようで遠い光を掴みたくて手を伸ばす 手を伸ばす 手を伸ばす。 

……届かないというのなら

 

 

「伸びろーーー“栄光の手”!!」

 

その手は以前より洗練されて姿を変える。

 

かつて自ら栄光を掴む為の手と称して栄光の手と名づけたが…

 

本当に欲しかったのは栄光ではなかった。

 

それは…己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

メドーサは信じて見守っていた。

魔竜の顎を食い破り横島の霊破が黒い球体になっていたが、メドーサは動かなかった。彼の記憶(・・・)を持つが故に結末は解りきっていた。

 

 

 

 

「伸びろーーー“栄光の手”!!」

 

 

その声と共に黒い球体に霊破刀の光で球体に穴が開く。

 

パリ・・・・・・パリパリパリパリパリッ!

 

それは、まるで卵から孵化するように…球体が剥がれていった。

 

その光景を見ながらメドーサは心から安堵する表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

――俺は一体…?

 

 パチパチ パチパチ

 

振り返るとそこにはメドーサが立っていた。

 

「いい面構えになったじゃないか。答えは見つかったようだねえ」

 

「答え?」

 

「覚悟と言った方がいいのかい?」

 

「多分そうなんだろうな。彼女を助けたい…幸せにしてやりたい。その想いは今も変わらないよ。 …でも俺はもう見失わないよ!」

 

――今の自分と同じ絶望を彼女に味合わせたくはない。

 

「あ~。アンタって奴はまったくとことん馬鹿さね。まぁ私からすればアンタが魔族じゃなかったのが残念だよ。」

 

「……魔族?」

 

「なんだい自覚がなかったのかい? アンタは今、堕ちかけていたのさ!」

 

「…えっ!? って、そういえばここ何処だ! ルシオラは? 俺は死んだのか!?」

 

「落ちつきな。すぐに…」

 

その瞬間、横島の体が淡い光に包まれた。

 

「ーっ!?」

 

「お迎えが来たみたいだね!」

 

「な、何だ?」

 

「話は当事者に聞くんだね」

 

「どういう――」

 

言葉が言い切る前に横島の体の光が輝きを増して、その場には何も残らなかった。

 

 

 

 

 

『行ったかね』

 

横島が強制転移されるのを見計らってから、メドーサの背後に長き髪と二本の角のような形状が見える影が現れる。

 

「えぇ、ですが宜しかったのですか? 彼にも娘にも会わないで…」

 

メドーサは振り返らず、驚くこともせずに会話をする。

 

『……終わってみれば事件の最大の被害者は小僧だったな。

本体が消滅し魂の牢獄からも抜け出す事ができたのだからデットコピーの私の視点からすれば小僧に感謝しているよ。だが彼は私を、…本体の私を憎んでいるはずだ。所詮、私と彼は被害者と加害者の関係であり私に出来ることが有るとしたら、私が彼に怨まれ続ける事だけだろう』

 

(本来の計画では、私を討つ役割は、メフィストの生まれ変わりである美神令子だったのだが…。宇宙意思の選択で横島が選ばれたとでもいうのか?)

 

『それとルシオラは自分の道を歩み始めたのだ。何もしてやれなかった私が今更出る幕ではないな。……置き土産だけ残してきたよ』

 

その後暫しの間、二人の間を沈黙が支配する。そして沈黙を破ったのは影の方であった。

 

『君は彼を憎んでいないのか? 月戦において、君の死因は彼だろうに』

 

「……憎んでいなかったと言うのは嘘になりますね。あの時、死の間際の攻防にて殺しておくべき真の敵が横島だった事に気が付いてから私は…」

 

―――貴方様の脅威になるかもしれない存在。故に確実に殺さなければ…

 

「ですが今は…憎んでも怨んでもいません。逆に感謝すらしています」

 

―――貴方様を救ってくれたばかりか、私に最盛期の肉体と魔力を取り戻してくれたのだから

 

『…すまなかった。結果的に私では君の望みを叶えてやれなかった』

 

「それは違います! 貴方は堕天して行き場の無い私に生きる場所と目的を与えてくれました。そんな貴方だからこそ私は忠誠を近い、貴方のため戦えることを誇りとして生きてこれたのです」

 

『メドーサ!?』

 

「私の望みはとうに叶っていたのです!」

 

『そうか…。』

 

影の男の姿は陽炎のように揺らめき、少しずつ闇に呑まれるかの如く消えていく。

 

「……逝くのですか?」

 

『あぁ、未練は数多くあれど後悔はない!! …私には後を任せられる者が居る。十分だよ! …ただメドーサよ、願わくば小僧と娘達の行く末を暫し見守って欲しい。私の消滅は、我が半身の目覚めを意味する。アレのは復活は間違いなく災厄となろう。…我が最後の願いを聞いてくれまいか!?』

 

(消え逝く魔神が最後に、我が娘達を含めて、彼の幸多き事を願って想うか… それもまた一興か)

 

「……詳細は分かりませんが、出来る限りの事を!!」

 

『……ありがとう』

 

その言葉を最後に影の男は霧散する。後には何も残らずに…

 

「……どうぞ、どうぞ安らかにお眠りくださいませ。 …アシュ様」

 

出会った当初からアシュタロスの望みをうっすらとではあるが理解していたのはメドーサでありその恩人の長年の願いがようやく叶えられたのだ。

頬からポタポタと雫が流れ落ちるのを止めるすべを彼女は持ち合わせていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは?」

 

横島気が付くとあたり一面がただ真っ黒な世界だった。上下左右、見回しても真っ黒であるのに自分の手足などは、ハッキリと見える。

 

「メドーサのヤツ、一体なにを…」

 

『…ここは貴方の、…ヨコシマの内面世界。その最深部よ』

 

 ドックン

 

「え…っ…」

 

『この場所に呼んだのは私よ。久しぶりね ……ヨコシマ!!!』

 

何度夢を見るもそれが夢だと知ると絶望して…

 

何度声を聞くもそれが幻聴と分かり絶望して…

 

「…ル、ル…シオラ…なのか?」

 

だが目の前の女性は幻などではない……

彼がかつて自分と引き換えにしてでも守りたかったのに守れなかった存在

横島が求めてやまない女性、ルシオラが目の前に現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー妙神山・銭湯番台-

 

横島の霊圧を感じたエミとピートの2人は真っ先に出所の場所に来ていたが、猿神の結界に阻まれ中に入れずに居た。

 

「くそーっ! 開かない。斉天大聖様は、まだですか?」

 

「落ち着くワケ! 老師もこの霊圧は感じられてるでしょうから直ぐに来るわ!」

 

先ほどまで急上昇していた横島の霊圧が突如、弾けて感じられなくなってしい焦っていたのだ。

ガムシャラにこじ開けようとするピートに対してエミは封印した老師を待つように諭していた。

 

その時だった。

 

 ビシッ パリッ パキパキッ 

 

「なっ、…誰かが内側から空間をこじ開けている?」

 

 パキィイーン

 

「あ、アンタは…」

 

厳重に封印された空間をあっさり、こじ開けて出てきたのは……

 

『ふぅ~。思ったよりしんどかったわね』

 

ボブカットの髪に特徴的な触覚が2本生えており、体には黒いプロテクトスーツみたいな物に身を包んだ “横島の一番大切な存在” 

その彼女は、全裸の横島と小竜姫をその両手に抱えていた。その彼女が此方に気が付くと

 

『初対面じゃあ無いけれども自己紹介が必要そうね… 我が名はルシオラ!! ヨコシマと永遠に共に生きることを誓った存在よ』

 

 

 

 

 

 

―同時刻・魔界とある場所―

 

 

「うぐ… ふっ…ふふふ。あははっははは!!」

 

(今頃になって復活するだなんて …だが所詮お前は私の分身!! 本物(ルシオラ)はこの私!!)

 

「せいぜい今を楽しむがいいわ。 ……お前だけはヨコシマの前で私が殺してやる!!」

 

 

 

 




お久しぶりです

三月中に仕上げるつもりでしたが、大幅に遅れました。
すみません。次回はもう少し早く書き上げたいと思います。

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