横島の道   作:赤紗

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想い

「……報告は以上になります」

 

『ご苦労やった。下がってええで』

 

「はっ! 失礼します」

 

『…申し開きはあるんかいなキーやん?』

 

『弁明のしようもありませんね。彼らが直接介入するとは私も思っていませんでしたので』

 

『今回の一件は魔界最高指導者として抗議する』

 

アシュタロス戦以降で神魔の緊張感は高まっており、その中で神族が神魔の混成軍を相手に戦死者を出てしまったのだ。これにより神魔の関係は一気に悪化してしまった。

 

『……犯人達(天使)を処罰したいのですが今は難しいですね』

 

 

天使族

神界において最も強力な戦力を保有しており、彼らの住まう場所は天界と呼ばれる

現在天界の実権は四大熾天使が握っており、現神界最高指導者(・・・・・・・・)ですら彼らの“主”ではないのだ

 

 

『…情けないなお互いに』

 

『美神美智恵とその娘の美神令子は現在も行方不明なままです。こちらの調査は魔界の方でお願いいたします』

 

『まかしとき! そっちは神界で治療中の2人とその男に憑いていたチューブラー・ベル《霊体癌》を頼むで』

 

『承りました。ですがよろしいのですか? 男の方は?』

 

『かまへんよ! 自業自得や!!』

 

『分かりました。後、妙神山に報告並びに彼の監視をする者を合わせて行かせたいのですが、此方の者では面識の無いものが多くって…』

 

『アイツの監視か。…ならワイが引き抜いた新入り共に行かせるわ。本人と面識も有るしアッチの事情も報告して貰いやすい相手だからな』

 

パンパンパン

 

『はっ! お呼びでしょうか?』

 

『すまへんが最近入った新入りの二等兵を連れてきてくれ』

 

「了解いたしました!」

 

『彼ですか? 確かに最適な人材ですね』

 

『そやろ。アイツとは確執も無いだろうし、何より元人間やから人間界での諜報活動には使えるんや』

 

 

 暫しの間が経つと

 

 

「お呼でしょうか魔界最高指導者様?」

 

『わざわざ来てもろうてスマンな。仕事を頼みたい』

 

「…何の仕事でしょうか?」

 

『簡単な仕事や! 気軽に頼むで~。』

 

「はっ!!」

 

『お前さんの仕事は妙神山に行き猿神にこの書類と任命書を届けて欲しい』

 

「妙神山、…神族の拠点にですか?」

 

『なんや?不満か!?』

 

「いえ、そういうわけでは…。ただ…」

 

ブアァッ!

 

その瞬間、魔界最高指導者が有無をいわさずに圧倒的な魔力を解放した

 

「ひぃっ!?」

 

『不満は無いな!!』

 

「りっ、了解しました!」

 

『ほなあんじょうきばってな』

 

「失礼します」

 

 

 

『宜しかったのですか? 彼女の詳細…資料も持っていかせてしまって』

 

『隠すメリットが無いやろう! 神魔が関わったのならともかく彼女は―――同族の人間に殺されたんやから…。神魔は動けへんよ!』

 

『しかし…』

 

『事実は事実や。どないせいゆーんじゃ!!』

 

『……』

 

『この件はアシュタロスが起こした霊症とも関係が無い。…ワイらが干渉する事は出来へん』

 

『…彼がそれで納得しますかね?』

 

『アイツが納得するかなんてどうでもええ。 神も魔も決して全知全能やない。出来る事しか出来へんのや!!』

 

『ですが万が一彼が暴走してしまえば状勢にも影響…』

 

『キーやん!!』

 

『……失言許されよ! 魔界最高指導者殿』

 

『真の英雄が道を間違わんことを祈るしかないな』

 

 

“キーやん”は言えなかった。すでに神界で龍神族に不穏な動きが出始めていること

それに横島忠夫が関係している可能性が高いことを

 

だが“キーやん”も知らなかった。龍神族の不穏な動きは横島のせいなどではなく、小竜姫がもたらした結果だという事を…

 

 

 

 

 

 

ー妙神山ー

 

 

騒ぎを聞きつけ集まった一同の空気は重かった

 

上級魔族ルシオラ

 

彼女の復活は喜ばしい事である。少なくとも此処に居るメンバーは横島を心配していたのだから…

横島が唯一愛し愛された女性であり、彼が始めて己の意志で戦う決意を持たせた人物でもある

そんな彼女の復活は以前に美神令子が言っていた『ハッピーエンド』の結末になったはずであったのだが…

 

 

「…言いたい事はそれだけ!?」

 

「はい。ヨコシマの中に居た私が目覚めたのは小竜姫様のおかげです」

 

険悪な表情で迎えているのはエミだった

 

一同が集まった時に小竜姫と横島は全裸で意識も無かった為に、小竜姫は彼女の私室にマリアが付き添い、横島は客間にカオスとテレサが付き添った。両名が席を外すとエミのルシオラに対する質問…否、尋問が開始されていた

 

「…そう。そうしてオタクは蘇った。でも小竜姫様が復活に手を貸さなければオタクは蘇らなかったワケ」

 

「……何が言いたいんですか!?」

 

「そうね…。横島の心に傷をつけて救いの道すら閉ざしたのも結局はオタクだったって話なワケ」

 

「なっ!!」

 

そう、それは事実。だからこそヨコシマの心はあんなにも…

 

「自分を犠牲にして恋人を助ける? はっ! 一見すると美談だわね。

けど、そのことにアイツは耐えられないわ。優しすぎる横島の心は絶対に耐えられない!! そしてその心は押しつぶされていくでしょう。横島を想っていたなら容易に想像が出来たでしょうに」

 

「小笠原さん」

 

「あの時オタクは諦めたワケ。生きることを…あっさりと」

 

「それは、…そうです」

 

「本当に相手を想うのならどうやっても横島を一人にしないように策を練れ!!

時間も余裕もなかっただろうが絶対に自分から諦めるな!!

潔さはGSの世界にとっては美徳じゃない、往生際の悪さこそが美徳だ!!

自己犠牲の精神なんてただの自己満足で結局残された者には心に深い傷を負うワケ。…一生消えないかもしれない傷をね」

 

「……」

 

「さっきオタクは『ヨコシマと永遠に共に生きることを誓った』なんて言っていたわよね?」

 

「ええ。誓いました」

 

「アンタそれがどういう事か本当に理解しているワケ?」

 

「それは…」

 

「……もういい。テメェは歯ーっ、食いしばれぇ!!」

 

「っく…」

 

エミは霊力の篭った拳を呆けているルシオラの顔面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

ー猿神私室ー

 

当初、意識のない横島を客間に運ぶはず役を請け負ったテレサだったが、カオスが指示したのは何故か猿神の私室であった。

 

そして…

 

 

「何でコイツの意識が戻るまで待てないの?」

 

「小僧はまだ霊気構造が安定しきっておらん。故に安定し定着する前に移植をせねばならん。…早い段階の方が拒絶反応が少なくてすむしのぅ」

 

気に入らない

 

「だからってコイツの意思は? そもそも何故最初から本人に聞かないのよ!?」

 

「テレサ?」

 

気に入らない。あぁ気に入らない! 何故自分がこんな風に思うのか理解不能だ。だが…

 

「あんた達全員身勝手よ!」

 

『小僧の意思が重要なのでは無い』

 

「っ!? …どういう意味よ?」

 

『重要なのは、こやつの想いの方よ。ワシは横島の意思よりも、こやつの想い …いや願いの方を優先する!』

 

そういう猿神の手には証拠として一度は魔界正規軍に押収さてしまった証拠品だが、再びこの手に帰ってきた

 

 

 

 

 




個人的ですが最終戦でルシオラにも非は有ったと思います。
そこをエミなら指摘するだろうと思い書いてみました。
次回もどうかよろしくお願いします
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