横島の道   作:赤紗

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“太極図”

 

 魔界

「横島忠夫の監視を命じます」

 

「「なっ」」

 

「それはどういう事ですか」

 

「彼は戦友であり、三界の恩人であります…その彼を監視とは恩を仇で返せとおっしやられるのですか?」

 

 

 

(ワルキューレ性格変っとるやないか)

人間に対して嫌悪感や侮蔑を隠そうともしないが、任務は任務と割り切れる奴だったはず

間違っても命令に異を唱える奴じゃあなかったはず

 

それにジークもメチャメチャ怖い目で睨んどるし、コイツは人間に対して失望していなかったっけ?

 

サタンは内心の動揺を表面に出さず

 

「お前ら、勘違いするなよ…横島忠夫に対する監視じゃあないで」

 

「今回の事件で横島忠夫は神魔で名を知らぬ者がいないほど有名になった。」

 

ソロモン七十二柱の魔神の一柱にして爵位は大公爵のアシュタロスが人間界に侵攻しただけでも大事件だが、あろうことかアシュタロスは世界中にある108の冥界のチャンネルを破壊し、妨害霊波で塞いだため主神クラスの神族や他の魔王たちは人間界に来ることができなかった

また人間界に駐留している神族や魔族たちも多数いたが、冥界のチャンネルが破壊されたことで神界や魔界から人間界で存在を維持するために必要なエネルギーの供給が絶たれ、すぐに活動が不能になってしまい、本来人間を助けるはずの神々が来れなかった。

絶望的な状況の元で人間たちが戦うしかなかった。

そんな中で横島は美神と同期合体したとはいえ、その魔神の一柱を討ち取り、世界を救ったのだ

神話の時代も含めても類を見ない大英雄として名を残したのだ

 

「だが有名になるのは良いことだけじゃあないで …敵も多くなる」

「今、横島忠夫が討たれることはデタントにも影響が大きすぎるんや 反デタントの過激神魔は勿論の事、真実を知って危険視する人間にもな」

「それら全てを監視するより本人を監視した方が安全に対処できるんや ほな頼んだで」

そう言って2人を下がらせた。

 

 

だが2人には伝えていないこともある

横島忠夫がアシュタロスとの対決のさいに目覚めたという“太極文珠”

これは大仙人・太上老君秘蔵の宝貝“太極図”とあまりに似通っているのだ

“太極図”は仙力を込めて開放すると「森羅万象すべてを自在にする」

…簡素に言えば、展開した空間を支配して自由に弄り回すというものである

一方“太極文珠”は“文珠”の発展系であり、文珠とは霊力を物質化しキーワードで開放するイメージを実現化させると言われている

だがその詳細はエネルギーの方向指示作用能力であり根本的に同系統のものなのだ

その文珠の発展型の太極文珠はアシュタロス戦以降のデータがなく未知数だが、太極図のように森羅万象すべてを自在にする事も不可能ではないと思われる。

 

 

そもそも、大仙人・太上老君とは、中国の思想家であり道教の基礎となった【老荘思想】の開祖である老子の尊称であり、彼を"伝説の仙人"として神格化した存在。

とくに有名なのは『西遊記』と『封神演义』(ほうしんえんぎ)で、あの金角・銀角兄弟の師匠として名前が挙がっている。また猪八戒の武器も彼の作品とされる。

『封神演义』では羌子牙(太公望)たちのサポーターとして太極図などの宝貝を貸し与えている。

そして斉天大聖老子こと猿神は『西遊記』の孫悟空であり太上老君の仙丹を盗み食いした挙句、捕まって太上老君の八卦炉に押し込められるも、炉をぶちこわして大暴れしたエピソードが有名である

その猿神が自ら妙神山における最難関の修行を人間の横島に施したのである。その成果が文珠というのは猿神が一番驚いていたが…

 

ともかく横島忠夫は下手をすれば仙骨(整体で言う仙骨とは別物)を生やしてしまい、仙人になる可能性も否定出来ないのだ

 

もっとも位が高い存在は「天仙(てんせん)」肉体を持ったまま天へと昇った存在であり

神々すら凌駕するだけの力があると言われている。

その次は「地仙(ちせん)」こちらは、天仙を目指して修行をしている、不老不死の肉体を持った存在であり、天界には行かず、深い山奥などで修行を重ねている者達。

最後が「尸解仙(しかいせん)」。自分が死んだ後で肉体を消滅させて仙人になった存在

 

「もし横島が仙人になるため神格化したら」

 

ただでさえ今の神魔バランスが崩れているのに“天仙”とかになったら収集は不可能や

 

「…頭の痛い問題やな この忙しいのに目が離せんとはな」

 

色んな意味で横島忠夫は神魔それぞれの注目を浴びているので無視が出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間界

横島はカオスの研究所の場所探しに苦戦していた。

コスモプロセッサー復活は神魔に要らぬ警戒を与えるため話せず、人間も同様だ

もっとも人間に対する不信感が原因という事も関係しているのだが

「どうするかなぁ~ 放置された除霊現場を探したほうが速いかな」

と危険なことを考えていると

 

 

「「横島さん」」

 

 

…つい先日会ったばかりなのに、ひどく懐かしい声がした。

 




作中の封神演义(ほうしんえんぎ)中国の明代に成立した神怪小説で史実の商周易姓革命を背景に、仙人や道士、妖怪が人界と仙界を二分して大戦争を繰り広げるスケールの大きい作品である。

集英社の封神演義『週刊少年ジャンプ』とは類似点がありますが別物です


 西遊記に孫悟空の犯罪ファイル

・竜宮へ行き、如意棒はじめ鎧一式をたかりとる。
・寿命が尽きて幽冥界へ連れて行かれると、暴れたあげく鬼籍から自分と郎党の名前を消して逃走。
・天上界へ就職するも、役不足として出奔。「斉天大聖」にしなければ天界へ攻め上ると脅迫。
・金星のとりなしで「斉天大聖」にしてもらうが、桃園の番を任されると、九千年に一度実るという超貴重な仙桃を盗み食い(猿に桃の番をさせるのもどうかと思うが…)。
・ついでに西王母主催の蟠桃会のごちそうも食い荒らす。
・さらについでに太上老君の仙丹を盗み食い。
・これはやばいと仙酒を盗んで下界に出奔。
・攻めてきた天上界の軍勢相手に大暴れ。
・遂に捕まって太上老君の八卦炉に押し込められるも、炉をぶちこわして大暴れ。
・玉帝の位を譲れとまで言い出したので、ついに釈迦如来に取り押さえられる。

というわけで、五行山の下で三蔵法師の来るのを500年待つことになるのであった。
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