この世界では酒はかなり忠実に再現されている。
ジン、ウォッカ、バーボン、ワイン、珍しい物でベルモットまである。
日本風の層では日本酒や焼酎まである。
カクテルが作りやすくていい。
勿論ナーブギアの検査で未成年判定が出たら封を切った瓶を触ることが出来ない。
前にキリト君がジュースの瓶と間違えて触ったときに軽く弾かれていた。
そういえば家の常連には良い飲みっぷりをする客がいるんだ。
噂をすればなんとやら早速来たようだ。
最後の客が帰ってから三十分がたち時間は深夜を回ったので暖簾を下ろそうとカウンターから立ち上がろうとすると一人の男が現れた。
「お~いバールよやってっか~?」
「やあ、クラインの旦那ギリギリセーフだよ」
クラインの旦那はこの店を始めた頃からの常連さんだ。
この店で飲む酒が一番旨いってことで結構通ってもらっている。
「酒くれ酒!」
「はいはい最初はビールですね」
そう言ってサーバーから一杯のジョッキにビールを注ぐとクラインの旦那の前に置く。
「おうよ!わかってんなバール!」
「もう半年以上通ってもらっているんですぜ。常連の好みぐらい覚えておかなきゃやってらんねぇよ」
「それもそうだ!」
そう言ってクラインの旦那はビールをイッキ飲みした。
「いつもなら勿体ねえって半分くらい残すのに何かあったのかい?」
「ああ!聞いてくれよ!女に降られちってよ!」
「またですかい。飽きねぇですね」
「彼女作るのはいわば男の義務よ!そういやバールにゃ気になる女は居ねえのか?」
「はあ、残念なことに今は居ないですね」
「バールはどんな女が好きなんだ?」
「さあどうでしょう」
「さあっているだろう。胸デカイとか可愛いとかよ」
「ぶっちゃけると俺は好きになった人それがタイプですね」
「かぁ~甘酸っぱいねぇ!初恋はまだってか」
「まさか初恋は中学生の時ですよ」
「どんなんだよ?」
「恥ずかしいので内緒です」
俺は口に人差し指を当ててそう言った。
「俺は初恋の甘酸っぱさを忘れちまったぜ」
「良かったら初恋の甘酸っぱさを作りますぜ」
「作れるのか!?」
「はい....たまにはカクテルなんてどうでしょう?」
俺は冷蔵庫からオレンジジュースに似たジュースとカンパリというリキュールを取り出す。
氷を入れたタンブラーにカンパリとオレンジジュースを入れて軽くかき混ぜる。
俺が作るときはオレンジジュースを少し多目に入れる。
「どうぞカンパリオレンジです」
「へぇ~、カクテルってのはあのカシャカシャするやつだと思ってたよ」
「カクテルって言ったらそっちの方が有名ですね。俺はシェイクはできませんが。ささ飲んでくださいや」
「あ、ああ」
クラインの旦那はカンパリオレンジを少し口に含んだ。
「かぁ~甘酸っぺぇなあ!」
「どうです?初恋の味はしましたか?」
「ああ!高校生の時を思い出したぜ!」
「聞いても?」
「恥ずかしいから内緒だ!」
「はははでしょうね」
「あれ?だんだん眠くなってきたぞ」
クラインの旦那はカンパリオレンジを飲み終える頃には寝てしまった。
まあ夜遅いし当たり前か。
俺は風林火山の人に連絡を取るとクラインの旦那を迎えに来てもらった。
「かぁ~甘酸っぱいね」
俺はクラインの旦那が帰るとカンパリオレンジを作って飲んでいた。
やっぱり初恋は甘酸っぱいね。
色々な人が来て色々な物語が生まれる。
人はここを仮想食堂って呼ぶよ。