暴物語   作:戦争中毒

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クラス対抗戦 其ノ弐

 

004

 

 

一夏はスナイパーライフルを構えて鈴を狙い、鈴は青龍刀を構えて衝撃砲の狙いを一夏に向けた。

 

「これで終わりだ!!」

「やらせないわよ一夏!!」

 

互いに攻撃をしようとした瞬間、

 

 

 

ドガアァァァァァァンッッッ!!!!

 

 

 

何かがアリーナを覆うシールドを貫き、飛び込んできた。 互いに武器を引き、轟音が響いた方向に視線を向ける。

 

いきなりの大爆発ともくもくと立ち上がる黒煙。突然の事態にアリーナ内の観客達はパニックに見舞われた。アリーナのシールドが何者かに破壊されたのだ、

すると爆発で起こった炎と黒煙の中から高出力ビームキャノンが一夏と鈴へ放たれた。

 

「忍!!」

《わかっておるわ!》

 

シールドビットで防御をするが、あまりの火力にビットが数機、破壊されてしまった。

 

「一夏! なんで防いだの!?」

「もし避けたら客席に当たってたんだよ!」

 

ビームは一夏ではなく、まるで客席を狙ったかのように発射されたのだ。

アリーナのシールドバリアーを破るようなビームだ、客席に命中すれば観客に被害が出ていただろう。

徐々に黒煙が晴れ、中から姿を現したのは異形のISだった。

深い灰色のカラーリングで巨体、手が異様に長くて巨大、そして首がない。姿勢制御用と思われるスラスター口が全身に見え本来首がついてる場所には剥き出しのセンサーレンズ。腕には先ほど使用したと思われる砲口がこちらを向いてる。

 

「とりあえず、客席を狙われないようにあいつを引きつけるぞ!」

「わ、わかったわ!」

 

 

 

 

005

 

 

~楯無サイド~

 

「試合中止!! 織斑! 凰! 直ちにピッ トへ避難しろ!!」

 

織斑先生は無線機を使って試合中だった織斑君と凰さんに退避命令を下す。まだ敵が何者なのか判断出来ない以上、避難させるのは当然の事だ。

 

「山田先生! 大至急、観客席に居る生徒の避難誘導員の派遣と教師部隊に突入命令! 更識、お前も突入隊に加われ!」

「「はい!!」」

 

織斑先生の命令を聞くとすぐに山田先生は手元のコンソールをタイピングし教師陣の非戦闘員に避難誘導の命令を下した。私も準備のために管制室を出ようとした。

警報が鳴り響き、避難命令が出された所で

 

「なっ!?」

 

織斑先生が目を見開いた。 見ると突如モニターに映しだされていたアリーナの観客席の通路が轟音と共に鋼鉄の壁に次々と塞がれたのだ。 さらにアリーナのシールドが肉眼でも認識できるほどに出力が上がっていた。

それが何なのか、教師である真耶や千冬はよく知っていた。

 

「っ!? 学園のシステムにハッキングされてます! アリーナの遮断シールドがレベル4に設定! 此方からの命令を一切受け付けません!!」

 

緊迫する山田先生の声。生徒を守るためのシステムは、アリーナを覆い尽くし生徒たちの逃げ道を無くした。

 

「観客席からの避難は!?」

「駄目です! 誘導員が着く前に防護扉を締め切られてしまいました! 観客席には生徒が残ったままです!!」

「あのISの仕業ですね」

「そのようだ・・・完全に隔離されたというわけか」

 

「簪ちゃん・・・」

 

私は無意識のうちに、観客席に取り残されてるであろう妹の名前を呟いていた。

 

 

 

 

 

「くそ、また外れた!」

「もー! 何なのよあれ!」

 

謎のISはデタラメな動きで鈴と一夏を翻弄する。

射撃をしても全身のスラスターによる立体機動で予測がつかず、掠めはするが一発も当たらない。

鈴も接近戦を仕掛けるが、その豪腕による反撃にパワー負けして思うようなダメージを与えられない。

そんな時に忍からとんでもない情報がもたらされた。

 

《お前様、あやつ人が乗っておらんぞ》

《どういうことだよ!?》

《知らん。じゃが人の匂いがせんし、センサーにも反応がない。見てみい》

 

忍が表示したセンサーのデータには生命反応が一切ない、人間の反応があるはずの場所には動力源らしきエネルギー反応しかなかった。

 

「鈴、あれ人が乗ってないぞ!」

「何言ってるのよ、“ISは人が乗らないと動かない”。そういうものだもの」

 

無人のISは世界各国が研究、開発を試みてるがいまだに糸口すら見つかっていない・・・とされている。本当のところは不可能かどうかすら分かっていないのだ。

 

「でもこっちのセンサーには生命反応がないんだよ」

「どんだけ凄いのよ、そのIS・・・」

 

第三世代のISのセンサーをもってしても敵のジャミングが酷く、生命反応どころか攻撃の直前までエネルギー反応を感知できない状態なのだ。

デタラメ過ぎるセンサーだ。

 

「でも無人機なら・・・一夏! 援護してちょうだい!」

「何をするつもりだ!?」

「あいつをぶっ潰す!」

「ダメだ! 下手に壊したらさっきのビームが暴発するかもしれないんだぞ!」

 

一夏の言うとおり。ビームが砲口から発射されるのであれば回避や防御ができるが、もし破壊して砲口以外からビームのエネルギーが放出された場合、客席に被害がでるかもしれなのだ。

 

「ならどうすんのよ!?」

「あいつの“コア”を破壊する!」

「どうやって!? コアの場所もわからないのに!?」

「奥の手を使うんだよ! いくぜ!」

 

 

「《トランザム!!》」

 

 

甲高い駆動音が鳴り響き、ケルディムが赤く発光し始めた。初見の鈴はその現象に驚いた。

ケルディムの額のガンカメラが開かれ、フォロスクリーンが展開された。

 

《忍、あいつのコアの位置を探してくれ!》

《まかせよ!》

 

「鈴! コアの場所を見つけるまで時間を稼いでくれ!」

「わ、わかったわよ一夏!」

 

鈴は衝撃砲を撃ちながら接近し、一夏はライフルビットを展開して鈴の援護しながら忍の解析を待った。

 

 

 

 

006

 

 

「二人共!? 無茶は駄目です!!」

 

真耶の叫びはスルーされ、一夏と鈴はフォ ローし合いながらISを引きつけている。

 

「現状、あいつ等に任せるしかだろう」

「お、織斑先生! 何を暢気な事を言ってるんですか!?」

「落ち着け。コーヒーでも飲め。糖分が足りないからイライラするんだ」

 

困惑した表情で問い詰める真耶に千冬は表情を微塵も変えずに、傍に置かれていたカップにインスタントコーヒーの粉とお湯 を注ぐ。 サラサラと近くにある小瓶から粉を入れてスプーンでかき混ぜていると

 

「あの、織斑先生・・・? それ、塩ですけど?」

「・・・・・・」

 

千冬の持つ小瓶には大きく塩と書かれている。ふと目線を横にズラすと楯無に一瞬、目があったが即座に顔を逸らされた。

 

「・・・何故、ここに塩があるんだ?」

「さ、さぁ? でも、大きく塩と書いてあ りますし・・・」

 

千冬のボヤきに律儀に答える真耶。

 

ガタン

 

すると後ろから物音がして三人が振り返って見ると砂糖の小瓶を持った忍野が椅子に座っていた。

千冬はカップを机に置くと、

 

「なるほど。貴様の仕業か、忍野!!」

「ちょ、そんな怒んなくても」

「知らん! 私自らの手で今度こそ殺してやる」

「ギャアァァァ!」

 

どこから取り出したのか、訓練機のブレードで忍野に切りかかる。忍野はそれを必死に避ける。

真耶と楯無は唖然としているが今の状況を思いだし、すぐに止めに入った。

 

「織斑先生! 落ち着いてください!」

「そうですよ織斑先生! まず生徒たちの避難を!」

「えぇい、離せ二人とも! こいつはストレスを生み出す根源だ!」

 

二人掛かりで必死に千冬を抑えるが、忍野はのんきに千冬の作ったコーヒーを一口啜り、顔をしかめてから一言。

 

「大変ですねぇ、山田先生、会長さん」

「「あなたがそれを言わない!」」

 

楯無は千冬を抑えるのを真耶に任せて忍野に質問した。

 

「それで、何をしに来たの?」

「会長さんに預けてた物を返して貰いに」

「預けてた物?」

「専用機ですよ」

「! あなたまさか・・・」

 

この時、楯無は気づいた。自分が隙をついて専用機を没収したつもりだったが最初からそれが狙いだったのだと。

そんな事を考えながらポケットから忍野のチョーカー取り出し、手渡した。

 

「どうもありがとう。それじゃ、とりあえず生徒の避難を手伝いますかな」

「あまり壊すなよ」

「出来る限り、ね」

 

忍野は千冬の忠告に軽い返事をすると管制室を出て行った。

と、言うより、

 

「山田先生、どうやって織斑先生を正気に戻したんですか?」

 

そうだ、千冬は数分前まで怒り狂っていたのに今はいつもの、冷静沈着な雰囲気を醸し出している。

 

「織斑先生の淹れたコーヒーを飲ませたら・・・」

 

どうやらソルトコーヒーを飲んで、そのあまりの味に冷静さを取り戻したようだ。

 

「すまなかった、真耶、更識」

「そうですか・・・あれ? さっきあのコーヒー、忍野くん飲んでませんでした?」

「は?」

「へ? それじゃ、織斑先生と忍野くんが、関節キスを?」

「・・・・・・」

 

イヤな沈黙だ。真耶はまずいことを言ってしまったと気づき、話を逸らそうと試みる。

 

「あ、あのですねっ・・・」

「山田先生、事がすんだら、組み手の相手になってください」

「え? で、でも」

「なってくれますね?」

「は、はいぃ」

 

先輩である千冬の目力に瞬殺された真耶、まさにライオンに睨まれた子犬といった所だろう。

楯無は心の中で合掌してから忍野を追って部屋を出た。

 

 

 




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