暴物語   作:戦争中毒

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セシリアランチ

 

001

 

 

「・・・どういうことだ」

「どうしたんだ、箒?」

 

現在はお昼休み。集まったメンバーが屋上で昼飯にしようとしている。いつもなら人で賑わっているが今日は誰もいない、みんなシャルル目当てで食堂に向かったからである。

シャルルはここに居るんだけどね。

 

ちなみにメンバーは箒と鈴、セシリアとシャルル、それと一夏である。

忍野はどっか行きました。

 

「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ。それにシャルルは転校してきたばっかりで右も左もわからないだろうし」

「そ、それはそうだが・・・(せっかく一夏と二人きりでお昼を食べれると思ってたのに)」

 

実習の後、一夏をお昼飯に誘った箒。

一夏と二人きりの食事だと思っていたが鈍感唐変木の一夏が気づくはずもなく、シャルルだけならともかく彼に好意をもつ鈴とセシリアまでも勝手に誘っていたのだ。

箒ちゃんかわいそ~。

 

「ええと、本当に僕が同席してよかったのかな?」

 

箒の反応を見ていたシャルルがそんなことを言う。

 

「いやいや、男子同士仲良くしようぜ。・・・それより、手、大丈夫か?」

 

一夏は初めて見た時から思っていたことを聞いた。シャルルの左手の甲には包帯が巻かれていて時折、左手を庇うようなしぐさをしていたのだ。

 

「だ、大丈夫だよ。ちょ、ちょっと痛むだけだから」

「そうか、それならいいけど」

 

シャルルの慌てたような返事に、多少気にかかる一夏だがそれ以上言及しなかった。

 

 

「い、一夏! 弁当だ!」

 

箒は先手をうつため、二人より先に作った弁当を一夏に差し出した。

 

「はい一夏! アンタの分」

「一夏さん、よろしければおひとつどうぞ!」

 

鈴とセシリアも負けじと料理の入った容器を差し出す。鈴は酢豚の入ったタッパー、セシリアはBLTサンドイッチの入ったバスケットだ。

 

「お、おう。あとでもらうよ」

 

セシリアのバスケットを受け取った一夏の顔が引きつっており、箒と鈴は思わず声を出しそうになった。

 

「? どうかしまして?」

「いや! どうもしていない!」

((はっきり言えばいいのに・・・))

(もしかして・・・)

 

箒と鈴は心の中で思い、三人の反応を見たシャルルが気がついた。

 

イギリス代表候補生セシリア・オルコットは料理がダメなのだ。見た目は料理本に載ってそうなほど美しいが味がとにかく酷い、不味すぎるのだ。

どれほど酷いかと言えば食べたその日の夜、忍が慌てて吸血をした。一夏の分を摘み食(横取り)した忍野がその日1日、千冬をからかったりせず真面目に授業をうけたほどだ。

 

 

「これはすごいな! どれも手が込んでそうだ」

「そ、そうだろう」

 

箒のお弁当は唐揚げやゴマ和えなど日本人らしい、これぞ日本のお弁当っといったものになっている。

 

「じゃあまあ、いただきます」

 

一夏はまず唐揚げに箸をのばした。

 

「おお、うまい!」

 

衣がパリッとしていて味付けは冷めていることを計算している。こんにゃくとゴボウの唐辛子炒めは素朴ながらしっかりとした味わいがある。

 

「いやでも、本当にうまいな。」

「まあ、その・・・、おいしかったのならいい」ボソボソ

 

一夏のコメントに顔を真っ赤にした箒。返事がほとんど聞こえないが、一夏は気づかすそのままお弁当をたべている。

 

 

「次はあたしね!」

 

鈴の酢豚は色鮮やかで食欲をそそる香りが嗅覚を刺激する。

 

「うん、うまい。・・・って、鈴。なんでお前の酢豚は温かいんだ?」

「ご飯を買ってきたときに電子レンジで温めなおしたからよ」

 

なんで俺の分は温めてくれなかった、っと一夏は思った。しかし冷めていても美味しいからいいと考えてそのまま何も言わずに食べた。

 

 

「こほん。では、わたくしの手作りサンドイッチもどうぞ」

 

セシリアのBLTサンドイッチは、まるで料理本の中から取り出したかのように見た目は美しい。見た目は。

 

「うっ・・・。い、いただきます」

 

一夏はサンドイッチを手に取った。チラッと見ると笑顔のセシリア、そしてその後ろで敬礼をしてる箒と鈴が見えた。

 

『忍、これ大丈夫かな?』

『もし危なくなったら儂が吸血すればよかろう。そうすれば一命は取り留めれるはずじゃ』

『・・・腹を括るか』

 

忍に救命の約束をしてもらった一夏はサンドイッチを一口ほおばった。

 

「! ・・・!?」

 

サンドイッチを咀嚼するが、

 

『大丈夫か? お前様・・・』

『ぐあああっ! 甘い甘い甘い甘い、無茶苦茶甘い、甘過ぎる! いったい何を入れたんだよ!? 血糖値が一気に跳ね上がりそうなほど甘い! BLTサンドじゃないのかよ!?』

『・・・一応吸血をせんでも大丈夫そうじゃの』

 

内心転げ回っていた。

因みに“BLTサンド”とは一般的にベーコン、レタス、トマトを挟んだサンドイッチだ。BLTは頭文字からきている。

 

 

 

「どうかしら?」

「あ、ああ、いいんじゃないかな・・・。お、俺は嫌いじゃないよ」

 

セシリアに問われた一夏はハッキリと答えたかったが、女子の料理をまずいって言える勇気もなく比較的優しい言い方をしてしまった。

 

「そうですか! では、残りもどうぞ!」

 

セシリアは嬉しそうにバスケットごと一夏に薦めた。他三人は苦笑いをしている。

 

その後、一夏は“これはデザートだ”と自分に言い聞かせながらサンドイッチを完食。ブラックコーヒーを買いに走ったそうだ。

 

 

 

 

 

002

 

 

 

一夏が血糖値を上げていたころ、中庭で寝っ転がって本を読んでいる忍野がいた。

傍らにはブロック栄養食の箱が転がっている。

 

すると忍野の近いていく人物がいた。

更識楯無だ。

 

「忍野くん、お姉さんとおしゃべりしない?」

「どうかしたんですか? 会長さん」

「もう少しリアクションしてくれないとつまらないわね」

 

そう言うと楯無は忍野の隣に座った。

 

「もしかして、デュノア“さん”のことかな?」

「・・・やっぱり気づいてたのね」

「骨格や動作はどう見ても“女の子”だからねぇ」

 

ま、一夏は気づいてないみたいだけどね。と忍野は言う。

それには楯無も同意した。遠目に見ても一夏が気づいてるようには見えなかったからである。

 

「狙いはあなたたち二人・・・」

「男性操縦士の生体データとその専用機」

「クラス対抗戦以降、専用機の情報開示を求める声が各国からあるのよ」

「やっぱGNドライブ目当てか、何処も彼処も意地汚いねぇ」

 

楯無の言うように二人の専用機について、各国から情報開示を迫られてるのは事実だ。一夏と忍野に個人宛で要望書が届き、酷い物では恫喝紛いの命令書だ。

しかし二人の機体についての説明を聞いた学園長は各国からの要望と言う名の命令を一切拒否、学園への干渉を許さない国際規約を盾に応戦してる。

 

「それで? 会長さんはあの子を学園を害する者として排除するのかい?」

「まだわからないわ、情報が少ないもの」

 

シャルル・デュノアは性別を偽っているだけで現時点では学園を害する存在ではない。データを盗みに来たという保証もない。

 

「それならいいさ、こっちも気になることがあるし。会長さんと敵対する結果にはしたくないからねぇ」

「あら、あの子を助けるの?」

「俺は人助けなんてしない、力を貸すだけ。人は一人で勝手に助かるだけだよ?」

「・・・ひねくれ者ね」

「それは君もだろ? 妹ちゃんと仲直りする方法は見つかったのかな?」

 

忍野の指摘に楯無は俯いた。

 

「・・・お姉さんをイジメて楽しい?」

「楽しんでるつもりはないし、君が歩み寄るだけで解決できそうなものだけどね」

「・・・簪ちゃん、楽しそうね。私の知らない間に、何かの病気を治して、いろんな友達に囲まれて、専用機作って・・・。私は簪ちゃんに嫌われてるから・・・歩み寄れないのよ」

 

それだけ言うと楯無は校舎へと戻っていった。

 

残された忍野は呆れ半分な顔でその姿を見送った。

 

 

 

 

 




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