001
「じゃあ、改めてよろしくな」
「うん。よろしく、一夏」
夕食後、一夏とシャルルは部屋に戻ってきた。食堂では二人目の男子転校生という事で相変わらずの女子達の質問攻めにあい、延々と続きそうなそれを適度な頃合いで切り上げてきたのだ。
今は食後の休憩をかねて部屋でシャルルと日本茶を飲んでいる。
「紅茶とはずいぶんと違うんだね。不思議な感じ。でもおいしいよ」
「気に入ってもらえたようで何よりだ。今度機会があったら抹茶でもどうだ」
ちなみにセシリアは日本茶が苦手らしくほとんど飲まない。どうも色が引っかかっているんだそうだ。まあ、緑色の飲み物は外国では見ないから。
「抹茶ってあの畳の上で飲むやつだよね? 特別な技能がいるって聞いたことがあるけ ど、一夏はいれれるの?」
「抹茶は『たてる』って言うんだよ。俺は略式しか飲んだことがないな。今は駅前に抹茶カフェっていうのがあるんだよ。コー ヒーみたいな感覚で飲めるのがあるぞ」
「ふうん。そうなんだ。じゃあ今度誘って よ。一度飲んでみたかったんだ」
「ああ、それから案内もいるか?まあ、あたりに詳しい人も知っているから一緒に行動すると楽しいぞ。シャルルはそれでいいか?」
「本当?嬉しいなあ。ありがとう、一夏」
柔らかな笑みを浮かべるシャルルに、一夏は全体的に違和感を感じたが中性的な印象がそうさせているのだと思って心の中にしまった。
「まあ、出かけるなら人数が多い方が楽し いし。シャルルならすぐに友達になれるかもな」
「ふふっ、ありがとう」
一夏とシャルルはそのまま一時間くらい話してから就寝した。
~???サイド~
「痛ッ!」
今日もまたこの出来物を潰した。
同居人が寝たのを確認してからシャワー室にこもって、持っていたハサミの刃を突き刺した。
傷口から血が出て、その痛みに泣いた。
「痛い、痛いよ・・・、お母さん」
毎日毎晩何度潰してもこの出来物は消えない。それどころか伝わってくる痛みがより強くなってくる。
いったい何なのだろう、この“目”のような出来物は・・・。
002
日付変わって数日後
忍野は簪の専用機の武装が完成したのでその試験のために簪たちと第三アリーナに来ている。
『準備、できた』
「いつでもOKじゃよ」
簪は上空で打鉄弐式を展開しており本音と真宵はデータ収集のためにタブレット端末などを持って待機している。
「それじゃ、試験開始!」
忍野の合図で専用の武器を装備した状態の打鉄弐式の能力試験が始まった。
一通りの武器の試験が終了し、後は実戦での稼動試験を残すのみとなった。
今はエネルギー補給とデータチェックのため休憩中である。
「それで、武装の技術的問題は?」
「まったくの問題ないにゃ」
「“春雷”も“山嵐”も正常だよ~。武器としては十分~」
「あとは簪さんの戦い方に合うかどうかなんじゃよ」
それぞれ収集したデータを見ながら準備に入った。
打鉄弐式の武装は速射荷電粒子砲『春雷』と高性能誘導ミサイルポット『山嵐』、そして近接武器に超振動薙刀『夢現』を装備してる。
どれも先の試験では問題なく稼動した。しかし実戦となればどうなるかわからない。荷電粒子砲の連射速度やミサイルの発射時間、それが実戦の中で使用したとき機体制御や攻撃の支障になるか確認しなければならなかった。
本当は訓練用のターゲットドローンを使用しても良かったが、簪のたっての希望により忍野との模擬戦をすることになった。
三人が簪の方を見ると水分補給をしながら試験データの見直しをしていた。
003
「準備できたんじゃよ!」
「かんちゃ~ん! 頑張って~!」
簪は二人の声援を受けながら模擬戦開始位置についた。互いに火器を模擬戦出力に変更して簪はミサイルから炸薬を抜いてある。
忍野もアルケーを展開して開始位置についたが、いつものように凶暴化、簪と真宵が若干引いていた。
「おっパじめんぞ! 先手はくれてやらァ!」
「行くよ・・・、打鉄弐式!」
簪は背中に装備されている荷電粒子砲の砲口を脇の下をくぐらせて正面に向けた。
左右計二門の砲口からエネルギー弾が発射されアルケーを襲う。
「オラオラオラァ!」
忍野は簪の攻撃をシールドで防ぎながらバスターソードをライフルモードにして簪を攻撃する。
簪もちゃんと回避をして応戦する。
「ンじゃあァ次だァ! 行けよォファング!」
両腰のスカートアマーが開き、8機のファングが展開した。
ファングは簪を取り囲んで射撃を始めた。
簪はその攻撃を冷静に回避し、ファングの位置とアルケーの位置を確認して次の武装を起動させた。
すると肩部ウィング・スラスターの発射管が開き八連装ミサイルが六ヶ所、計48発が顔を出した。
「マルチロックオンシステム起動、当たって、山嵐!」
すさまじい音を立てて、ミサイルが一斉に発射された。
発射されたミサイルは各ファングに三発ずつ飛んで行き、残りはアルケーを狙って飛んだ。
「当たれェ!」
忍野はファングとライフルで迎撃をしようとしたが命中率が低い、ミサイルが攻撃を“避けて”飛んで来るのだ。
打鉄弐式に搭載された火器システム『マルチロックオンシステム』
多数の目標にミサイルで同時攻撃するための物だったが真宵と忍野によって魔改造され、ある程度目標からの迎撃を回避することができるようになったのだ。
「チッ! ファングがァ!」
忍野が自分の所に飛んで来るミサイルに気をとられてる間に展開していたファングが破壊判定がされていた。
「ッ! ぐああァ!」
地に落ちたファングを見ていたアルケーにエネルギー弾が多数命中した。見るとミサイルから逃げるアルケーを追うように打鉄弐式が飛んでおり、忍野が一瞬よそ見をした隙を簪は見逃さず、春雷を撃ってきたのだ。
忍野はすぐに姿勢を戻し反撃に移ろうとしたが後ろからミサイルが接近していたので再び逃げ始めた。
「ファング!」
ミサイルと荷電粒子砲から逃げながら残っていたファングを射出した忍野、狙いは簪である。
「! このっ!」
接近してくる二機のファングに、簪は夢現で迎え打った。
薙刀でファングを弾き、破壊しようとしたが大きさが小さいので苦戦し、
「あっ!」
片方を破壊判定にした瞬間、もう一つのファングの攻撃が当たり春雷が破壊判定にされてしまった。
「やぁぁっ!」
すぐにファングを破壊判定にしたが簪は内心かなり困った。
(春雷が破壊された・・・。忍野くんの機体に春雷なしでの接近戦は不利になるから、ミサイル攻撃しかない)
簪はいまだにミサイルから逃げてる忍野の方を向き、迎撃された分のミサイルを忍野の正面に向けて射した。
「ッ! しまったァ!」
簪の再射したミサイルは忍野の回避ルートを塞ぐように広がっていた。後方からミサイル、前方からもミサイル。
逃げ場のない攻撃が忍野を取り囲んだ。
(回避ルートなし、勝った!)
簪は勝利を確信したが、
「なァんてなァ!」
「!?」
忍野は機体をコマのように回転させながら右手のバスターソードと両脚のビームサーベルでミサイルを切り刻んで迎撃した。そして簪目掛けて突撃してきた。
「や、山嵐!」
簪は接近してくるアルケーにミサイルで対処しようとしたが避けられ、シールドで防がれ当たらない。
あっという間に剣の間わいに近づかれてしまい忍野はバスターソードを振り上げた。
簪は諦めずに振り下ろされる大剣を夢現で防ごうとしたが武器の質量差に負けて弾かれてしまい、
「これでお陀仏だァ」
横一閃に斬られ撃破判定にされてしまった。
004
「大丈夫だった?」
「うん、ありがとう・・・」
ISを解除して簪に駆け寄り手を伸ばす忍野。簪は少し紅くなりながらその手をとり立ち上がった。
「もー、忍野さん。女の子に対してあんまりなんじゃよ!」
「おっし~の、イジメっ子~」
「酷くないか!?」
遅れてやってきた真宵と本音に非難される忍野。
確かにイジメっ子ぽかったね。
「それで、実戦で使ってみてどうだった?」
「いくつか、変更したいところがある。それと、微調整も、何ヶ所か・・・」
休憩後、データチェックをしてから三人で簪から変更部分と調整箇所を書き出し、今後の作業予定を組む。
そんな感じて作業をしていると真宵が、
「あれ? 誰か来るにゃ」
と言う。みんなで振り返って見るとこちらへ近づいくる小さい人影。
「忍野仁、貴様も専用機を持っているのだろ? 果たし合いを所望する」
やってきたのは何だかハツラツとした顔をしたラウラ・ボーデヴィッヒだった。
なんで果たし合い?
ただの模擬戦で装備を壊されたら製造元が困ると思ったので、勝手な模擬戦設定を追加しました。
・武器の火力を下げて使用、実弾は炸薬を抜いて使用する。
・攻撃を受けた場合、武器本来のダメージ分のSEが“センサー上”減少する。(つまり実際にはそんなにSEは減っていない)
・模擬戦中の武器のダメージ量はカタログスペックを参考にする。
・攻撃があたった所が『破壊判定』となり装備に制限がかかる。(武器なら使用不可、スラスターなら速力低下など)
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