暴物語   作:戦争中毒

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おしのショッピング 其ノ壹

 

001

 

 

「つまり真宵が風邪をひいて・・・代わりに忍野くんが?」

「そういう事。もしかして迷惑だったかい?」

「そそそ、そんな事ない! ないないない! ハッ!」

 

申し訳なさそうにする忍野を見て、ものすごい勢いで否定する簪。言ってから気づいたらしく顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「~~~////」

「ハッハー、元気がいいねぇ。それじゃ行こうか。折角の日曜日だ、有効に活用しないと」

 

忍野はそう言うと手を差し出し、簪は若干オドオドした様子で手を取り、二人は店の中に入って行く。

 

(こ、こ、こ、これって、デ、デート、みたい、って何を考えてるの///!?)

 

簪は軽いパニック状態になっていたが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

レゾナンスに入って行く忍野と簪。その姿を物陰から見つめるふたつの影があった。

そこに居たのは買い物袋を持った鈴とセシリア。どうやら彼女たちは買い物の帰りのようだ。

 

「・・・あのさ」

「・・・なんですの?」

「・・・あれ、手ぇ握ってない?」

「・・・握ってますわね」

 

百人が見たら百人ともそう返すであろう言葉を発して、セシリアと鈴はあくどい笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、チャーンス。これをネタに忍野を弄ってみる?」

「いいですわね。あの方がたじろぐ姿を見てみたいですわ」

 

普段あれだけふざけているが、忍野がたじろいだり弄られるというのは殆どない。けしてない訳ではないのだが二人は見たことがない。

 

いつも弄られてる鈴は仕返しに、セシリアは好奇心から忍野と簪を追ってみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

002

 

 

 

~忍野サイド~

 

 

「えーっと、水着を買いに来たのか?」

「・・・うん///」

「・・・・・・」

 

今、水着売り場の前に来ています。水着を買いに来るんだったら断れば良かったかもしれない・・・。

海か~、嫌だな~。当日サボろうかな?

 

「そ、その、忍野・・・くん、わ、私のみ、みみみ、水着を、選んで・・・くれない?///」

 

水着か・・・。頼まれた以上、選ばなきゃいけないけど、

 

「俺、あんまりセンスないけど?」

「いい、選んで・・・」

 

いいんだ。なら選んであげなきゃな。ならまずは新作デザインから見てみるかな?

 

 

 

 

~簪サイド~

 

 

「これは、どう?」

「ん~、どうもパッとしないな。よし、次」

「それなら、これなら?」

「少し地味すぎるかな? 合ってないと思う」

「なら、こ、これは?///」

「ほとんど紐だから却下。っていうかそんなの選んだっけ?」

 

あれから忍野くんと店中を回って、何十着かの候補を選んで、更に候補を絞っている。新作デザインから定番のデザインまで色々見て回ったけど、まさかこんなに候補がでるなんて。

・・・冗談で紐みたいなのを選んだりしちゃったけど忍野くん、私のこと変態とか思ってないよね?

 

 

「やっぱりこの2つの内のどっちかかな?」

 

残った候補の中から二着の水着を見せてくれた。

 

一方は肌の露出の控えめなタンキニタイプの水着。白ベースのワンピースで所々小さな水色の花びらが入ったデザイン。

 

もう一方は胸元を強調するようなホルターネックタイプの水着。黒をベースに白のラインの入ったフリルがあしらわれて、胸元と腰にリボンがついているデザイン。

 

「どっちが、いい?////」

 

二着の水着を交互に体に当てて見てみる。忍野くんは真剣に選んでるのか、一切視線をそらさず私を見てくる。

見られるのは恥ずかしい///

 

「ん~、白い方は大人しさを演出するし、黒い方は大胆さを醸し出してるからね。どちらも簪に似合うと思うよ?」

 

似合うって///

大胆さ、それならこっちの黒い水着を選ぼう。これを着たらちょっとくらい私を意識してくれるかな?

 

 

 

 

 

 

~忍野サイド~

 

「こ、こっちにする」

 

ようやく決まったか。やっぱり女の子の衣服を選ぶのは自信ないな。簪も思うところがあるのか、顔を少し赤くしてるし。怒られないだけましか。

 

「それじゃあ会計してくるよ。そこで待っていてね」

「え、でもお金・・・」

「ん? ああ、奢るよ。水着のセンスとかあんまり自信ないからねぇ、まぁ迷惑料だと思ってよ」 

 

迷惑料ってのは本心であるが、女の子と一緒に買い物に来てるんだ、これくらいはしないと男が廃るってね。

・・・キャラじゃないな、うん。

 

簪から水着を受け取るとサッサと会計を済ませるためにレジへと向かおう。途中、男物のコーナーにあった水着を適当にひっつかんでいく。さすがに水着を持たずに臨海学校に行くのは不自然だからね、せめて形だけでも取り繕わなきゃな。

 

そうしているとポケットに入っている携帯電話が震える。

 

「ん? 着信?」

 

取り出して見ると電話を着信している。

発信者は、一夏か。

 

ピッ

 

「はいよー、どうした一夏? また女の子の裸でも見たのかい? 全く、ご同慶の至りだよ」

『“また”ってなんだよ!? 人をそんな変態的なキャラ設定にするな!?』

「そうだっけ? まぁいいや、それで何の用だ?」

 

すると、一夏がかなり歯切れの悪く喋り始めた。

 

『それが・・・、ーーーーーーなんだけど』

 

はぁ~、また“怪異”か。これで何度目だよ一夏、いい加減にしてくれよ。

でもまぁ、力を貸してやるかな。

 

「・・・やれやれ、全く。まさか電話で用件を済まされるとはな。さて、詳しく状況を教えてくれ」

『実はーーー』

 

・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーにしてる感じなんだ」

 

今回は行き遭ったのは一夏じゃないからな。こりゃ面倒だ、下手したら町自体を消されかねないからなぁ。さてどうするか。

 

そう思いながら会計を済ませようと電話片手にレジに立つと、

 

「アンタ、これも買いなさい」

 

突然、レジに割り込んできて、俺の買い物籠に自分の持っていた商品を放り込む女。

買い物籠に入れられたのは、多種多様な服に水着。 簪のものではない。 ましてや俺の水着でもない。

忙しいのに、面倒くさいな。

 

「知らないよ、自分で買いな」

「は? 男の分際で女の私に文句を言うの?」

 

だから何だと言うんだ。サッサと電話の続きをしたいんだけどなぁ。

 

「常識的な話だろうが。そもそもアンタとは初対面だ。 他人に奢らせるほどアンタはそこまで偉い人間でもないだろう? さっさと消えろ。それに電話中だ、邪魔すんな」

 

それ以上接するのも面倒だった。 この女が入れてきた衣服を、別の買い物籠に放り込んで返してやった。

なんだ? おもしろいほど顔を赤くしているぞ?

 

「警備員に突き出されたいの!?」

「どうぞご勝手に。あぁそれでなんだっけ?」

 

なんか好き勝手吠えてるけどわず電話に意識を向ける。

まったく、どこまで話してたか忘れちゃったよ。

 

「警備員! こっちに来なさいよ!」

 

女の金切り声に、付近をうろついていたであろう警備員が駆け寄ってくる。 会計は終わっていたが、警備員に囲まれてしまった。

 

『随分と騒がしいけど何かあったのか?』

「大した事じゃないよ。だけどもうちょっと待ってね」

 

電話の向こうにも聞こえてるのか、まったくもって面倒くさい。

 

「こちらの女性が乱暴をされたと言っていますが、本当ですか?」

「寝言は寝てないと妄言だぞ。せめて電話が終わるまで待てよ」

 

監視カメラとかの確認をしろよ、バカかよ。

 

「警察を呼びますよ?」

「呼ぶなら呼べよ。俺は電話を優先させるぜ」

 

もうどうでもいいな。こんな奴ら無視して電話の続きしよ。えーっと、何処まで話したかな?

ああ、思い出した。

 

「ああ、それで話の続きだけどーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

003

 

 

「ーーーそれじゃ、また後で」

 

ピッ

 

電話を終えて辺りを見回してみたら人集りが出来ていた。婦警さんと警備員、その後ろにバカ女と野次馬が集まっている。皆さんお暇ですねぇ~。

あ、簪もいる。

 

「電話は終わったか? それじゃあ逮捕するぞ」

 

電話が終わるまで待っていたのか、律義な婦警だな。あ、今は女性警察官って名称だっけ。まあどっちでもいいか、意味は同じだし。

しかしいきなり逮捕とは、世も末だねぇ。

 

「おいおい、ちょっと待て。俺が何したって言うんだい?」

「こちらの女性に乱暴を働いたんだから暴行罪だ。男風情がいい気になるなよ?」

 

前言撤回、この婦警ダメじゃん。男を軽視する発言を警察が公の場でするなんて、懲戒免職になっても知らないぞ?

あ、今の世の中じゃ女だから許されるんだ。嫌だねー。

さて、仕返しでもしてやろっかな?

 

「本当に、俺を、逮捕するんですか?」

 

そう聞いてから、俺はポケットから取り出した物を婦警にだけ見えるように見せた。

取り出したのはIS学園の生徒手帳だ。

 

それを見た瞬間、婦警は固まり冷や汗を流し始めた。俺がISを動かせる男と理解できたようだな。ふむ、屁理屈や言い訳をする前に畳み掛けるとしよう。

 

「俺は“ISを動かせる男”って事で、IS委員会からある程度の権限を貰っているぞ? アンタをクビにできる程度にはな。俺を逮捕するどころか、アンタが牢獄行きになってもいいのかな?」

 

婦警だけがわかるように小声で、聞いてるだけで冷静さを奪うように喋る。

 

権限とかは勿論、嘘だ。

IS学園の生徒はその学園としての性質上、多少は警察などに顔がきくが、ただそれだけで公務に口出しはできない。俺と一夏は男ではあるが、だからと言って特別に何らかの権利を与えられてはいない。

だが、そうとは知らない婦警は顔が青ざめて今にも倒れそうになっている。

次で止めだな。

 

「そこの女を逮捕するなら、アンタの事は不問にするけど、もし、俺を逮捕するって言うなら・・・明日には無職だな」

 

「わ、わかりましたからそれだけは・・・」

 

チョロいw。

 

「いやー、誤解が解けて良かったよ。悪いのはあそこにいる嘘つきだからねぇ。ちゃんと逮捕してあげてね」

 

わざと周りの野次馬にも聞こえるように言うと辺りはざわめきだした。バカ女は目を見開いて、何を言ってるのか理解できてないような顔をしていだが、すぐに吠え始めた。

 

「何言ってるの!? お巡りさん、その男が嘘つきよ! 逮捕しなさい!!」

 

しかし既に遅し、婦警はすぐにバカ女に手錠をかけた。

 

「ちょっと!? なんで女である私を逮捕するのよ!?」

「うるさいわよ! アンタのせいで・・・、アンタのせいで!!」

 

バカ女はうるさいが、婦警さんお怒りだねぇ。まぁ、プライドが高そうだから男に下手にでた事がよっぽど屈辱だったんだろうな。

そうこうしてるうちに、婦警とバカ女は互いに罵りながらこの場をあとにした。

・・・警官を罵るってやっぱりバカだな。

 

バカ女が捕まっていなくなると、野次馬たちも去っていき、数分後には何事もなかったようになっている。

 

さーて、簪はどこに・・・居た。人影に隠れててわかんなかったよ。

ってあれ? 後ろを指差しながら簪が何か言っている。

 

「忍野くん、後ろ!」

 

へ? 後ろって?

 

「痛ってッ!?」

 

振り向こうとした矢先、誰かに頭部を殴られた。

すげー痛い! でも何か慣れた痛みのような?

 

「何をしているんだ、お前は?」

 

振り向いた先に居たのは、山田先生を引き連れた千冬がいた。

 




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