暴物語   作:戦争中毒

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10日ぶりの投稿。
なんだか最近、全く執筆が出来ません。
頑張って週1投稿を目指します。

それでは本編、どうぞ。


臨海学校 1日目 其ノ貮

 

005

 

 

臨海学校初日の夜。

 

机には所狭しとお膳が並べられ、生徒たちは料理に舌鼓をうっていた。

え? 先生達は? 先生方はお酒がないので物足りない顔をしています。

 

~忍野サイド~

 

 

昼間、簪とラウラに約束させられて一緒にテーブル席で夕食を取っている。

 

にしても、金かけ過ぎだろ。

刺身と小鍋、山菜の和え物に赤だし味噌汁とお新香。これだけで万近くかかってそうだな。

 

さて、三人でのんびり食事をしていたらラウラが後ろの方を向いた。

何やってんだ?

 

「ラウラ。食事中は前を向かないと、ダメ」

「シャルロットは何を悶えてるのだろうか?」

 

簪は注意するが、ラウラが指差す先を見る。

俺もつられて見ると、一夏の隣で鼻の付け根を抑えながら涙目になって震えているシャルロットが見えた。

 

「さあね。大方、わさびの分量でも間違えたんじゃないのかな?」

「わさびとはなんだ?」

「刺身の横にある緑のやつだよ」

 

ラウラはまだ小鍋にしか手を付けてないので刺身の皿のわさびは食べてないようだ。避けてるのではなく、単純に食べるのが遅いだけなんだろうが。

 

「ふむ。では私も食べてみよう」

 

言うやいなや、あろう事かわさびの山を丸ごと摘み口へと運ぶ。

 

「「よせラウラ!!」」

 

それに気がついた俺と簪は止めようとしたが、既に遅く、

 

「ぎにゃーーーー!!!??」

 

可愛らしい悲鳴と共に、鼻を押さえながらイスから転げ落ちるラウラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

006

 

 

夕食後の自由時間。そろそろ消灯時間が気になる頃合いだが、二人だけの男子生徒(+鬼教師)の部屋の前で蠢く三つの影があった。

 

篠ノ之 箒、凰 鈴音、セシリア・オルコットの三人。

彼女達は想い人である一夏と夜を過ごそうと訪ねようとしたが、部屋から聞こえてきた声にそれをはばかられた。

 

『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』

『そんな訳あるか、馬鹿者。ーーーんっ! す、少しは加減をしろ』

『はいはい。んじゃあ、ここは・・・と』

『くあっ! そ、そこは・・・やめっ、つぅっ!!』

『すぐ良くなるって。だいぶ溜まってたみたいだし、ね』

『あぁぁっ!』

 

まさか姉弟で!?

一夏、千冬さんと!?

禁断の愛!?

 

まあ、いい感じでパニクっていたが、そこは高校一年生。やっぱりお年頃故に、そっち方面のネタは気になるようで、三人とも扉にピタッと耳を押し付けて部屋の様子に聴き入ってる。

 

そうしていると、

 

「みんなして何やってんの?」

「「「きゃっ!?」」」

メキメキーーーバタンッ!

 

突然、後ろ声をかけられて驚く三人。その拍子にバランスを崩し、扉を押し倒して部屋になだれ込んでしまった。

 

そこで彼女達が見たのは、

布団にうつ伏せで寝っ転がる千冬に跨がる一夏。多少着崩れてはいるが二人とも浴衣を羽織っており、一夏は拳・・・と言うより親指を千冬の腰に突き立てるようにしている。

所謂、指圧マッサージだ。

 

「たっだいま~。頼まれたジュース買ってきたぞー」

「ご苦労。冷蔵庫にしまっておしてくれ」

 

自分達の事なんか気にもせずに部屋に入っていく驚かした犯人、忍野。

 

やっと状況が飲み込めた三人。先ほどの声の正体はマッサージによるもだったのだと気がついた。

そして同時に、ピンク色全開お年頃の想像をしていた事が恥ずかしくなり、全員が顔を真っ赤にしてしまった。

 

「ん? どうしたんだそいつらは?」

「ああ、部屋の前で聞き耳立ててたみたいだけど」

「そうか。なら立ってるついでだ、更識とボーデヴィッヒとデュノアを呼んでこい」

「人使い荒いなぁ。そんじゃ、行ってくらぁ」

 

そう言い残して再び部屋を出て行く忍野。

 

「は、はは、では・・・」

「わたくし達はこの辺で・・・」

「さ・・・さようなら、織斑先生!!」

 

忍野の後を追うように、一緒に部屋を出て行こうとする三人だがすぐに捕まった。

 

「盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。ゆっくりしてけ」

「「「え?」」」

 

 

 

 

 

 

007

 

 

数分後、簪とラウラとシャルロットを連れて戻ってきた忍野。

千冬は三人を部屋に招き入れると一夏を追い出し、

 

「織斑、忍野。二人で風呂に行ってこい。部屋が汗臭くなってはたまらんからな」

 

そう言って男子二人を追い払った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、男子が居なくなった部屋の中で、どうしたらいいのかわからない女子が六人、言われたまま座ったところで止まってしまっている。

 

「それで? お前らアイツらのどこがいいんだ?」

 

その言葉に全員が固まった。

 

「アイツらと言って分からんお前らではあるまい」

 

 

「わ、私は別に・・・剣を捨てたことが腹立たしいだけですので」

「あたしはただ腐れ縁なだけだし・・・」

「わ、わたくしはクラス代表として相応しい様に・・・」

「ふむ、そうか。では一夏にはそう伝えよう」

「「「伝えないでください!!」」」

「次、デュノア」

「「「ちょっと!?」」」

 

箒と鈴とセシリアの話を聞き終るとシャルルを指差し言う。

 

「僕は・・・優しい所、です」

「そうか。だが一夏は誰にでも優しいぞ」

「そこは少し悔しいかな・・・アハハ」

 

照れ笑いをしながら熱くなった頬を煽ぐ シャルロット。

 

すると、千冬は簪とラウラの方を向き、それに二人はビクッと反応する。

 

「お前たちは忍野の方だな。まずは、更識妹」

「わ、私は、困っていたとき、助けてくれたからで」

「忍野は絶対認めないだろうがな。アイツは“助ける”という表現を嫌う」

「助けない・・・、君が、ひとりで勝手に助かるだけ、ですか?」

「なんだ、やっぱり言われたか。アイツはいつもそう言って人を助けるからたちが悪い」

 

簪の話を聞いた後、首だけをラウラの方に向ける。何気に他の五人もラウラの方を向いてるのでかなりのプレッシャーだろうが。

 

「で、ラウラ。お前は?」

「つ、強いところが、でしょうか・・・」

「強い、か。確かにあいつは強いな。あの戦闘狂さえなければいいやつなんだがな」

「そ、そうなんでしょうか?」

「まぁ、アイツらと付き合える女は得だぞ? 見てくれはまあまあだし、二人とも家事全般できる。一夏はマッサージが上手い。どうだ、欲しいか?」

 

「「「「「「く、くれるんですか?」」」」」」

 

「やるかバカ」

 

ええ~、と心の中で突っ込む女子一同。

 

「私に聞くな、奪う気持ちで行け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく雑談をしてから、時間も遅いので生徒たちを部屋に帰らそうとする千冬。

 

すると最後とばかりに鈴が質問した。

 

「ちふ・・・織斑先生。先生は忍野をどう思っているんですか?」

 

その質問に全員が、特に簪とラウラが反応した。

普段、あれだけ自分をからかってふざけている男の事をどう思っているのか気になったのだ。

 

「アイツか? 私からしたらアイツは・・・、

 

愛すべき悪友(居候)だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

008

 

 

 

 

「ヘェッ、クシュン!!」

「汚いのう」

「うるせえ。くぁ~~~。それにしても、温泉はいいねぇ」

「まったくじゃな」

 

露天風呂に浸かって伸びきってる忍野と忍。

忍はその髪に月明かりを映し、髪全体が輝いてるようにも見える。

 

「何をしておるお前様?」

「そうだぞ一夏。早く入ってこいよ」

 

一夏は風呂に入らず、腰にタオルを巻いたまま湯船のそばで突っ立っている。

 

「なんで、なんで忍がさも当然そうに一緒に入ってるんだよ!??」

 

ここは男湯。忍は女(と言うより幼女)

誰かに見つかろうものなら大問題に発展する。

 

「何を今更。儂とお前様は影で繋がっておるのじゃ。たかが風呂くらいで恥ずかしがる事もなかろうに」

「そうじゃなくて! バレたらどうすんだよ!?」

「バレたらって誰にだよ? この旅館、他に客いないから誰かが入ってくる心配はないぞ?」

「くッ! だけどな、仮にも女の子と一緒に風呂なって・・・」

「女の子って言っても500歳以上だぞ? 見た目は幼女、中身は老婆だ」

「誰が老婆じゃ! ぶっ殺すぞ!!」

 

忍は老婆と言われ、忍野に殴りかかろうとするが頭を手で押さえられて拳が届かず、可愛らしく空をきるだけだった。

少しして、殴ろうとするのを止めた忍はまた一夏を誘う。

 

「良いではないか、我が主様よ。お前様が旅行に行っても儂はずっと影の中じゃったのだから、たまには一緒に温泉も良かろうに。幸いにも、ここには儂ら以外誰もおらぬ」

 

忍の言葉に、どこか寂しげな雰囲気を感じた一夏。

中学時代、友達と旅行には何度か行ったが常に誰かが一緒に居たので忍は、一度として出てこれた事がなかった。温泉も観光地も、影で一緒に居たのに一人だけ仲間外れ。

もしかしたら、忍に寂しい思いをさせていたのかもしれない。

 

「はぁ、今回だけだぞ」

 

結局、一夏も一緒に湯に浸かることにし、川の字に並んだ。

もう夏とは言え、裸で突っ立っていたから冷えていたのだろうか。お湯が少し熱く感じ汗が滲み出る一夏。

 

「飲むかい?」

 

そう言うと、忍野はそばに置いてあった桶の中から牛乳瓶を取り出した。見ると桶の中は氷水で満たされ、牛乳瓶が何本か冷やされていた。

どこから用意したんだ?

 

「・・・普通、風呂上がりに飲むもんだろ」

「難いこと言うなよ。それに酒じゃないだけ良心的だろ?」

「どうだろな。一本くれ」

「儂にも寄越さんか」

「ほいよ、落とすなよ?」

 

全員が一本ずつ牛乳瓶を持つ。

一夏は瓶の中身に口を付けようとしたところで夜空に浮かぶ月が目に映った。

満月・・・ではないが大きく、そして美しく輝いている。月の片隅にかかるほんの少しの雲がまた風情があり、まるで名画の一枚を観賞している気分になった。

 

「なあ、乾杯でもするか?」

「何に乾杯するんだ一夏?」

「ん~、この月夜に?」

「在り来たりじゃのう。まあ良かろう」

 

そう言うと忍は両手で持った牛乳瓶を掲げ、一夏と忍野は同じ高さに瓶を掲げた。

 

 

「月夜に」

 

「「月夜に!」」

 

 

 

 

静かな風呂場に小さなガラスの音が響いた。




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