暴物語   作:戦争中毒

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いちかイボルブ 其ノ参

007

 

 

ラウラはプラズマ手刀とワイヤーブレード、箒は二振りの刀、『雨月(あまづき)』と『空裂(からわれ)』を構えて接近戦を仕掛ける。

福音はエネルギーを纏わせた両腕の爪で二人の攻撃に応戦。遠距離攻撃をしないのは箒にとっては僥倖だったが、軍属のラウラは言いようのない不気味さを感じていた。

 

二人の前衛の援護のためにシャルロットはアサルトライフルで、セシリアは二人の攻撃の合間にビットで援護射撃をする。ビット制御は入学時より洗練された鋭い動きで、攻撃タイミングも素晴らしいものだ。

しかし、四人がいくら攻撃しても一撃すら入れる事ができない。刃による攻撃は爪で弾くか避けている。ライフルの弾丸はエネルギー翼に阻まれる。セシリアの狙撃はあろう事か、爪を揃えて盾のようにしてレーザーを弾いてしまう。

完全に手詰まりだった。

 

 

鈴と簪は何時でも参加できるように少し距離を置いて待機している。

二人の現在の武装では援護は難しく、直接戦闘に参加できないのだ。鈴は接近戦をする手もあるが、ここで彼女が参戦するとセシリアやシャルロットによる援護のバランスを崩してしまう。

つまるところ、見ている事しか出来ないのだ。

 

(こんなんだったら銃の練習しとくんだったあ!!)

 

因みに鈴は、銃の腕前が最悪である。

 

 

 

しばらくそんな戦闘が続いたが、いい加減に鬱陶しくなったのか、福音は二人のうちどちらかを捕まえようとするかのように両手を伸ばす。ラウラの左目(越界の瞳)が捉えたのはほんの僅かに箒の方を向く福音の頭部。

咄嗟の判断で、ラウラは箒を突き飛ばす。

しかし変わりにラウラは脚を掴まれてしまった。

 

「ラウラを離せぇっ!」

 

シャルロットはすぐさま武装を切り替えて近接ブレードによる突撃を行う。

けれど、その刃は空いた方の手で受け止められて止まった。

 

シャルロットは迷う事もなく掴まれたブレードを手放し、ショットガンを呼び出して福音の顔面へと銃口を押しつけた。

だが引き金を引くよりも早く福音の胸部、腹部、背中から小型のエネルギー翼が生えてくる。

 

「「ッ!?」」

 

掴まれていたラウラと、銃口を押しつけるような距離まで接近していたシャルロットはそれによるエネルギー弾の直撃を受け、吹き飛ばされて堕ちた。

 

ラウラのおかげで光弾の直撃を逃れた箒は多少のダメージはあったが、すぐに刀を構え直し斬りかかろうとしたが、

 

「貴様ぁ!」

「ダメです箒さん! 接近戦は不利になります!」

「ぐっ・・・ううっ」

「いいからコッチと合流しなさい!」

「・・・分かったっ」

 

セシリアと鈴の制止の声に思いとどまり、急いで三人の元まで下がった。

 

福音は何を考えているのだろうか、品定めでもしてるかのように四人の方を向いたまま動かない。

小型のエネルギー翼は常時維持するものではないのか、二人を攻撃した直後にはなくなっていた。

 

「来ないならこっちから仕掛ける、集束ミサイル」

 

簪はデンドロビウムのコンテナから4本の三角柱を射出した。三角柱は先程使用した物とは違い、三発のミサイルを束ねた物で小さな破裂音の後に分離。4本の柱は十二発の(ミサイル)へ。

無人機に使用した物とは比べ物にならない程の炸薬を搭載したミサイルは福音へと加速する。

 

けれども、福音はつまらないものを見せられたかのような怠慢な動きでエネルギー翼を向け、迎撃のための光弾を放つ。

光弾はいとも簡単にミサイル命中。ミサイルに積まれた多量の炸薬によって、福音との間に大きな炎の壁を作り出した。

 

『・・・!?』

 

その光芒を飛び越えるようにして福音へと肉薄する鈴。

 

ミサイルの爆炎が一時的にセンサーを鈍らせていたようで、福音はやっと驚きのような反応を示した。

そこへ鈴は両手に分離させて握った青龍刀『双天牙月(そうてんがげつ)』を容赦なく振り下ろす。

突然の出来事に福音はエネルギー翼ではなく、その二つの刃を両手で掴み、斬撃を止める。刀は両手に固定されてピクリとも動かせない。

だが鈴は最初から斬撃は期待しておらず、本命の衝撃砲による弾雨を降らせる。

 

至近距離での連続砲撃。小型のエネルギー翼が生える前に、撃墜は無理でも多少のダメージを、と期待してた。

しかし、

 

「嘘・・・、この距離でもダメなの!?」

 

何発撃ち込んでも目に見えるようなダメージがない。

今の福音にとってそよ風に程度なのか、衝撃砲を食らいながらも青龍刀を砕き、鈴が逃げる間も許さずエネルギー翼で(いだ)く。

刹那、あのエネルギー弾雨をゼロ距離で食らった鈴は、全身をズタズタにされて堕ちていく。

 

 

「な、何ですの!? この性能・・・軍用とはいえ、あまりに異常なーーー」

 

鈴の堕ちていく様を見て恐怖に支配されたセシリア。気づいた時はすでに眼前まで福音が迫っていた。

 

「くっ!?」

 

長大な武器は総じて接近されると弱い。距離を置いて銃口を上げようとするが、その銃身を真横に蹴られてしまう。

足掻(あが)きとばかりに、蹴られた勢い利用して体を回転させてスナイパーライフルで福音を殴打する。

だがそんな物を気に留めないかのように、福音は両翼からの一斉射撃。セシリアは蒼海へと沈められた。

 

「このっ!」

 

セシリアが被弾した時の爆煙の向こう側に居る福音を狙い、簪はメガ・ビーム砲を発射する。

だが福音は煙で見えない死角からの攻撃も、大きく上昇して難なく回避。紅椿とデンドロビウムを沈める為に全身からエネルギー翼を広げた。

 

「間に合わない・・・、下に隠れて!」

「すまないっ!」

 

離脱が間に合わないと判断した簪は、箒にデンドロビウムの下に隠れるように指示する。

 

「Eシールド、上部に最大展開!」

 

シールド発生装置が甲高い駆動音を鳴らし、本来は全方位に展開するシールドを最大出力で上面のみ展開させる。

現在のデンドロビウムの持ちえる全力の防御だ。

 

「クッ! 重い・・・!!」

 

放たれた光の雨。

Eシールドに次々と着弾する高密度のエネルギー弾雨により機体が大きく揺れる。徐々に攻撃範囲が狭められ、降り注ぐ光弾の数が増えていく。

 

『キアアアア・・・・・・!!!』

「ッ!? シールド、臨界出力!」

 

福音の咆哮に危機感を感じた簪は、シールド発生装置を破損覚悟の臨界運転をさせて出力を上げる。

だが臨界出力のエネルギーを全て上面に回してるにも関わらず、『パキッ!パキッ!』っと嫌な音が響き、シールドに亀裂が生じはじめる。

 

「シールドが!?」

 

ついに限界を迎えシールドを破られ、右のコンテナと推進器が被弾してしまう。

 

「あうっ! ・・・コンテナ、パージ!」

 

中に積載されたミサイルに誘爆する前に、簪はコンテナを切り離した。直後、コンテナは激しい轟音を響かせ大きな火球となり消えた。

シールド発生装置は先ほどの臨界運転の影響で黒煙と焼け焦げた臭いを放っている。使用できるような状態ではなさそうだ。

 

「簪! すぐに海に降りるんだ!」

「ごめんなさい・・・」

 

簪は黒い尾を引きながら海へと降りていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

008

 

 

 

~箒サイド~

 

 

一人になった私は、すぐさま逃走する。急上昇急降下を繰り返し、雲の中を突っ切ったりしなが福音から逃げる。

 

それを追撃する福音は両肩に生やした小型エネルギー翼からバルカンのように光弾を撒き散らす。さながら戦闘機のドッグファイトのような光景だろう。

 

「もうエネルギーが・・・」

 

度重なる被弾で絶対防御が発動し、紅椿のエネルギーは枯渇寸前だった。

両手に握っていた刀も具現維持限界(リミット・ダウン)を避けるために片方だけにしている。

 

(もう少し、もう少しだけ近づいてくれば!)

 

しかしただ逃げ回っているわけではない。

1対多における剣術ではあえて逃亡を図り、追い付いて来た者から倒すというものがある。今まで逃げていた相手が突然向かって来ると反応が遅れ、不用意に近づいてしまったり、逆に懐に入られてしまったりするからだ。

今の福音は遊んでいるかのように、遠距離からの高威力攻撃ではなく低威力攻撃による中距離。それなら、最接近した時に此方から一気に接近できれば攻撃に転じれるはずだ。

 

残存エネルギーは危険域一歩手前。

最後の攻撃チャンスを作るために急降下をした所から急上昇をする。

エネルギーの少ない紅椿は上昇速度が上がらず、福音との距離が徐々に狭まる。

 

あと少し、あと少しだけ・・・

 

そうしていると、遂に福音との距離が60mを切る。IS同士の戦いなら近接戦闘の距離。

私は急制動をかけ一気に福音へと迫る。

 

「貰ったあっ!!」

 

両手で刀をしっかりと構え、その刃を福音の頭上へと振り下ろした。

 

ギィンッ!

 

 

 

甲高い音を響かせ、私の刃は福音を斬りつけた。しかし刀傷の場所は頭部ではなく、腕部についていた。

防がれたのだ。

 

二太刀目を入れようとしたが、すでに福音は全身からエネルギー翼を生やして照準を此方に向けている。

今の一撃に怒ったのだろう。エネルギー切れ寸前の機体で、この距離での一斉射撃を受ければ良くて大ケガ、悪ければ死だな。

 

(避けられない・・・)

 

そう諦めて目をつむりそうになった瞬間。

突然、視界がブレる程の急加速をし、弾幕から逃れた。

 

(今のは・・・瞬間加速(イグニッション・ブースト)?)

 

瞬間加速(イグニッション・ブースト)”はISの操作技術の一つで、圧縮したエネルギーを一方向に放出し爆発的に加速する高等技術、だと授業で習った。

 

だから分からない。

私は瞬間加速を技術として習得していない。そして偶然や無意識での発動が出来るような技術でないはずな上に私は諦めて一切の機体操作をしていない。

にも関わらず瞬間加速が発動した。

 

紅椿が私の意識に反して動いたのだ。

 

 

「一体なにが・・・」

《いや~、危ないところでしたね》

 

突然通信機から聞こえてきた幼い声。

それはもう二度と聞くことのないと思っていた、居なくなったはずの少女の声。

 

「その声は・・・八九寺!?」

《はいっ、お久しぶりですね篠山羊さんっ》

「人を届いた手紙を読まずに食べる白いヤギみたいに呼ぶな! 私の名前は篠ノ之だ!」

《失礼、噛みました》

「違うわざとだ」

《手紙見た?》

「だから私はヤギではない!」

 

モニターに映し出されたのはツインテールに大きなリュックを背負っている少女の姿。

この姿といい、先ほどの遣り取りいい、間違いなく八九寺 真宵(はちくじ  まよい)だった。

 

「お前っ、成仏したのではなかったのか!?」

 

確かにあの時、八九寺は母親の家にたどり着き、迷い牛から解放され成仏して消えた筈だった。

 

《実は成仏し損ねて行く所がなく、つい昨日まで篠ノ之さんの携帯電話に取り憑いていたんですよ。ですがあまり居住性に優れておらず窮屈な思いをしていたのです。そんな時にこの紅椿がやって来たのでお引っ越して現在に至るわけです》

「サラッと恐ろしい事を言うな! 取り憑いていた!? ここ最近、携帯電話の調子がおかしかったのはお前の仕業か!?」

 

道に憑いていた地縛霊が、成仏し損ねて浮遊霊になったのだろうか?

一夏に訊けばわかるのかもしれないが、今は取りあえず置いておこう。

深く考えたら頭痛になる。

 

それより、

 

「話す事が出来たのなら何故もっと早く声をかけてくれなかったのだ!?」

《いえですから普通に声をかけるんじゃつまらないじゃないですか。そんなのはこの、八九時Pが黙ってませんっ! 悲しい別れ方をしたらカッコ良く再会、これが王道っ! という訳で篠ノ之さんがピンチになるのを待っておりました。所謂スタンガンモードですっ》

「どんな極悪プロデューサーだ! ピンチになるまで待っているな! それとスタンバイモードだ!」

 

私の感動を返せ!!

スタンガンモードってなんだ。護身用具をモード扱いするな。

 

『キーーー!!!』

「《!?》」

 

再び照準をこちらに定めて接近してくる福音。

 

《来ますよ篠ノ之さんっ!!》

「血気盛んなのはいいが、紅椿にはもうエネルギーが・・・」

《えっ? ああっエネルギーですか。ちょっと待って下さいねっ。今、とっておきの物を出しますので》

 

とっておきとは何だと訊こうとした所で機体に変化が現れた。

紅椿の装甲の隙間から赤い光と黄金の粒子が溢れ出す。ハイパーセンサーからの情報で、機体のエネルギーが急激に回復していくのがわかる。

 

「エネルギーが回復している・・・。これは一体っ!?」

《紅椿の単一仕様能力、『絢爛舞踏(けんらんぶとう)』ですっ。これでエネルギーの心配はないでしょう》

「まだ、戦えるのだな?」

《お供しますよ篠ノ之さんっ!》

「ならば、行くぞ! 八九寺!」

 

拡張領域に仕舞っていたもう一振りの刀を取り出し、二刀流で福音へと駆ける。

 

1対1の戦い。先程は四人掛かりでもダメージを与えれなかったが、今は違う。

私の攻撃を捌く福音の動きには、先程は感じなかった『焦り』のようなものを感じる。

 

(パワーが上がっている?)

 

どうやら紅椿の出力が上がっているらしく、刃と爪が衝突する音が重く、そして力強い。だとするなこのまま押し切れば私達の勝ちだ。

 

しかし福音は私の間合いから加速して飛去る。

獲物を見失った私の刀は空を切り、大きな隙が生まれてしまう。

 

そこへ迫るエネルギー弾の雨。

しかも今度はかなりの広範囲に光弾が広げ、回避の困難な攻撃の仕方だ。

 

「広がり過ぎだ!」

《篠ノ之さんっ、刀を大きく振ってくださいっ!》

「何故だ!?」

《いいから早くっ!》

「ええいっ、この!」

 

言われるがまま、刀を交差させるように振ると、帯状のエネルギー斬撃が放たれた。

放たれた斬撃は、福音のエネルギー弾の弾雨にぶつかると巨大化、いや、エネルギー弾を喰らって大きくなり福音へと襲いかかる。

 

『!?!?』

 

混乱したような挙動をした福音。斬撃はその左のエネルギー翼を喰らい、さらに巨大になって空の彼方へ過ぎ去っていった。

 

・・・なんだこれは?

 

「ははは八九寺!? な、何だ今の!?」

《対集団仕様の攻撃ですっ。リミッターがついてたんですが、外しちゃいました》

「それは大丈夫なのかあっ!??」

 

あの姉さんがリミッターをつけるような機能のロックを外した!?

絶対危ないだろ!? え、これ大丈夫なのか?

ちょっとした操作ミスで町一つ消えたりしないだろうな!?

 

《前見て下さいっ!!》

「前?」

 

いつの間にか接近していた福音による攻撃で両手から刀を弾き飛ばされてしまった。

 

「しまっーーーぐあっ!」

 

福音は右腕で私の首を掴んで締め上げる。絶対防御が発動して呼吸はできるが非常に息苦しい。しかしいくらもがこうと銀の腕は決して緩まない。

そして、福音はゆっくりとその翼で私を包み込んでいく。

 

《篠ノ之さんっ!!》

 

八九寺の声がハッキリ聞き取れたがもう無理だ。

さらに輝きを増す翼に、私は覚悟を決めてまぶたを閉じた。

 

 

 

ィーーーンッ!!

 

 

突然、甲高い風切り音が響き首の圧迫感が消える。

瞳を開けた時に見えたのは桜色をしたビームによる狙撃を受けて吹き飛ぶ福音の姿だった。

 

私は知っている・・・。

あのビームを放つ機体を纏う人物を、私は知っている!

 

「俺の仲間は、誰一人としてやらせねえ!」

 

 

「あ・・・あ、あっ・・・」

 

目尻に涙が浮かぶのを感じた。

 

そこには、光の粒子を放ちながら飛ぶ深緑色の機体が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

009

 

 

「一夏っ、一夏なのだな!? 無事だったのだな!?」

「おう。待たせたな」

 

聞こえてくる声は間違いなく一夏のもの。

だがその機体は大きく変化していた。

 

ケルディム同様、深緑を基調としてはいるがその姿はまるで違っていた。白の基礎にまるでブロック状の装甲を取り付けたかのようなゴテゴテした姿で、ケルディムがスマートなフォルムだったのに対し、今の姿はずんぐりムックリな印象を受ける。

外付けの装備は腰から伸びたアームに左右5ずつ、縦長のコンテナのような物が接続されているだけだ。

 

「一夏、その姿は・・・」

 

「こいつは“ガンダムサバーニャ”、俺の新しい力だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~シャルロットサイド~

 

 

 

「大丈夫ですかっ、鈴さん! シャルロットさん!」

「え、ええ・・・、何とか」

「ハハハ・・・、ごめんね」

「いいから手を伸ばしてください!」

 

撃墜組みは着水していたデンドロビウムの上に集まった。

ラウラやセシリアの機体は何とか自立飛行が可能だったみたいだけど、僕と鈴の機体はボロボロ。海に投げ出されて浮かんでる状態だった。

 

セシリアの手を掴んでデンドロビウムに引き揚げられ、少し飲んでいた海水を吐き出し肩で呼吸を整える。

 

「大丈夫か、シャルロット」

「ハァハァ、それより、戦況は?」

 

僕の問いに簪が答えてくれた。

・・・ごめん、上に乗っちゃて。

 

「ついさっきまで・・・“紅椿”と“福音”による交戦が続いてた。でもが捕まったところで、所属不明の機体が乱入」

「所属不明って?」

「あの機体だ」

 

ラウラに促されて上空に視線を向ける。

攻撃目標である銀色の機体。そして友達(ライバル)の紅い機体。

そしてもう一機、そこには緑色に輝く粒子を放って浮かんでいる、深緑色の全身装甲の機体が見えた。

 

「あの機体は・・・」

「あれってもしかして・・・」

「ええ。わたくしもそう思いますわ」

 

 

無事だったんだね、一夏・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

010

 

 

 

 

「箒、下がっていてくれ」

「分かった。勝つのだぞっ、一夏」

「オーライ」

 

箒を後退させて福音と対峙する一夏。

すると、忍が話し掛けてきた。

 

《随分と寝ておったようじゃのうお前様。しかし何じゃ、この姿は?》

《まあ、いろいろあったんだよ》

《ふんっ。それで、これからどうするのじゃ?》

《そんなの、借りを倍にして返してやるに決まってるじゃん!》

 

決着をつけるために、一夏は左右にあるコンテナから一丁ずつピストルを引き抜いた。

両手に握られたGNピストルは以前の物より大きくなっており、下部に取り付けられた刃もそれに比例してより刀身の長い物へと変化していた。

 

「ピストルビット展開!」

 

すると、左右に接続された縦長のコンテナからハンドガンが出てきた。コンテナに収めるためか、センサーとグリップは折りたたまれているが一夏が手にしているのと同じ物。そのピストルは8機、周囲に展開された。

その全ての銃口が福音を向き、同時に両肩の装甲がスライドし、大型のガンカメラも姿を現した。

 

「乱れ撃つぜぇ!!」

 

二丁拳銃を構え、8機の猟犬を解き放つ。

自由自在、縦横無尽に飛び回るピストルビット。

凄まじい連射速度で福音の翼とエネルギーを削り取っていく。

福音はピストルビットの包囲網から逃れようとするが、常に二方向以上からの攻撃にさらされ、身動きが出来ない。全身から小型のエネルギー翼を生やして反撃するも、一つたりともビットには命中しない。

 

ビットを破壊できないと判断した福音は、即座に狙いを深緑色の機体に定める。

 

瞬間加速で包囲網を強行突破、すぐさま両翼を大きく広げ攻撃体制をとりエネルギーを貯める。

先程墜とし損ねたのを覚えているかのように、ピンポイントで一夏だけを狙ってエネルギー弾を放たれた。

 

さながらパイプを流れる水のごとく、一定の範囲以上には広がらず飛翔する弾幕は、遠目には一つの柱のように映り神々しい光を放っている。そして美しくも凶悪な力をもつその光の束は一夏へと迫る。

 

 

だが一夏は、なんと直立不動に構え両手の銃口を福音へと向け、展開していたピストルビットを自分の周囲へ呼び戻し、真っ正面から迎え撃つ姿勢をとった。

 

「撃ち合いなら負けねえぞ!!」

《GNミサイル発射!》

 

額のセンサーカバーが上へと開放。中からケルディム同様のガンカメラが現れ、両膝の側面からガンカメラがせり出した。それに呼応して両腕、両膝、両脚、胸部、フロントアーマーの装甲が可動し、ミサイルの発射管が出現。ピストルビットと同時に攻撃を開始する。

 

絶え間なく放たれるビームとミサイルは福音の放つ光弾を次々と撃ち抜き、爆撃し、5つの目は一発たりとも見逃さず、光弾の全てを一夏に着弾する前に迎撃していく。

 

双方の攻撃の衝突は拮抗し、二機の間には凄まじい連続した爆発の光芒が生まれている。

 

 

 

 

 

その光芒は海上からも見えていた。

 

「凄い・・・」

「だが拮抗しているだけで、こちらが有利になったわけではない」

 

ラウラの言う通り。

互いの攻撃が完全に相殺しあっているだけ、どちらかがダメージを与えているわけではない。寧ろミサイルと言う消耗品を使っている一夏の方が不利と言えるだろう。

 

 

 

先に拮抗を破ったのは福音だった。

 

攻撃を止め一気に上昇。ビットを手元に戻している一夏にはその動きを阻止する術がなく、上空さらの広範囲攻撃を許してしまう。

一夏の回避を阻止するように放たれた攻撃。その攻撃範囲には箒と海上にいる者達も含まれていた。

 

「ちっ! シールドビット展開!」

《ホルスタービットじゃ!》

 

腰のアームに接続されていたコンテナが外れ、10機の盾としてみんなを守るために展開された。

 

「これって・・・」

「シールドビットの発展型!?」

 

箒達の眼前に強固な盾。

ホルスタービットは第二移行で強化された光弾を受けながらも微動だにせず、その表面には傷一つ出来ていない。

 

 

一夏は自分に迫る光弾をビットとミサイルで迎撃する。しかし、弾雨に気をとられて福音を見失ってしまった。

 

「福音は何処へ行った!?」

《お前様がバカスカ撃ちまくるから分からんくなるんじゃ! 未だどのような力を持っているか分からん機体で無理をするな!》

「うぐっ。それを言われると痛いけど・・・」

《待てっ、後ろじゃ!!》

 

振り向くと背後から両手を大きく広げ、その両爪で襲いかかろうとしている福音の姿。

 

手に持ったピストルの刃で攻撃を防ごうとした。

その刹那、二機の間を血のような色をした巨大な粒子ビームが立ちはだかった。

 

「遅いぞ忍野!」

『贅沢言ってんじゃねェよ一夏ァ』

 

海上に見える島の一つ。

そこには破壊されたGNアームズのGNキャノンを腰だめに構えているアルケーガンダムの姿があった。

 

「にしても外すなよ!」

『無茶言うな! こちとら突貫工事でGNキャノンを無理やり繋いでんだ! テメェみたいに機体ダメージが回復した奴と同じ働きが出来っか!!』

 

通信越しに一夏を怒鳴りつける忍野。

 

アルケーガンダムの胸部と右脚部のGNドライブにはケーブルが繋がれ、そのケーブルは右脇に抱えられたGNキャノンにと繋がっている。

 

だがそれは誰の目から見ても有り合わせで使えるようにしているのは明白だった。

キャノンは本来装甲で覆われているはずの精密部分を剥き出しにしており、配電盤らしき物がまる見え。アルケー本体もそのゴツい脚部の装甲を外し、ケーブルが繋がれている。

 

「それでもやるのがお前だろ!」

『あんま期待されても困るってェの!』

「それで、あと何発撃てる!?」

『知らねェよ! 無理やり繋いでっから出力が安定しねェし、見ての通り砲台だ! 出たとこ勝負っ、サッサと決めろ!』

「上等! 支援よろしく!」

 

そう言うと一夏はホルスタービットを呼び戻し、追撃戦を仕掛ける。

今までは向かってくる相手には接近戦で対応していた福音。しかし現状を不利と判断したらしく、向かってくる一夏から逃げ始める。

 

 

「逃がすもんか! ライフルビット展開!!」

 

ホルスタービットから新たなビットが射出される。しかしそのビットは武器としては随分と奇妙な形をしており、銃口らしき物があるにも関わらず一切攻撃をしない。

だがそのビットは展開されているピストルビットの先端、銃口に装着され初めてその力を発揮した。

 

「さっきまで同じだと思うなよ!」

 

再び福音を追うビット群。距離が離れているにも関わらず、次々とビームが命中する。

 

先程のように包囲されまえと、複雑な軌道をとりながら福音は必死にビームを避けようとするが、一発避けも二発が命中。それに気を取られれば次のビームが命中。

威力も先ほどまでの物より上がっており、ダメージ量は増える一方だ。

 

福音は逃げ切れないと考えたのだろうか、ライフルビットからの攻撃でダメージを受けながらも一夏を撃破しようと無理やり翼を広げた。

 

「一夏っ、危ない!!」

『もォ一丁ォ!』

 

箒の叫びに応えるかのように再び地上から放たれた粒子ビームが福音の妨害をする。

出鼻を挫かれた福音の攻撃はまるで見当違いな方向へと飛去り、サバーニャの進行を阻止する物は無くなった。

 

 

「ナイス忍野!」

《粒子チャージ量は十分! 行くぞお前様!》

 

 

「《トランザム!!》」

 

GNドライブが甲高い唸りを上げ、それに同調するようにサバーニャの機体が赤く発光し始める。

推進スラスターから多量の粒子を噴射し、残像を残しながら福音へと急接近する。

 

福音はエネルギーを纏わせた爪で突撃してくるサバーニャの首を抉らんと振りかざす。

だが一夏は危なげもなく右手の銃で弾き返すと、間髪入れずに左手に握った銃を叩きつけ一発を福音の胴に見舞う。

 

予想外の攻撃に怯んだ福音。

銃で殴られたと思ったらそのままエネルギー弾を撃ち込まれ、空中でありながらよろけるような動きをしたが、一夏の攻撃は終わらない。

 

右の銃で中段を斬り払う。間を空けず左の銃を突き付けトリガーを引く。右、左、また右。腕がもげそうになるような速度で一夏は銃を振るい続ける。斬撃と打撃と銃撃の連続攻撃は福音の反撃を一切許さず、シールドエネルギーを削っていく。

一夏は攻撃のトドメとばかりに、力一杯回し蹴りを喰らわした。

 

一気に吹き飛ばされた福音。

だが福音は未だ健在で、蹴り飛ばされた状態から何とか姿勢制御を取り戻そうと、翼を大きく広げ空中で制止した。

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

福音を取り囲むように浮かぶ銃。

一秒にも満たない制止した瞬間にGNライフルビットはゼロ距離まで接近。その銃口を突き付けていた。

 

「終わりだ・・・」

 

ゼロ距離でビームの乱れ撃ちを受けた福音は遂に力尽き、動きを停止した。

 

 

 

 

 

 

 




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