暴物語   作:戦争中毒

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夏休みの一幕 其ノ肆

 

011

 

~セシリアサイド~

 

本国での予定を終え、日本に戻ってきたわたくしはIS学園から少し離れた町に来ております。

いつもとは違う所でお買い物をしていたのですが、ちょっと買い過ぎてしまいましたわね。

まだ気になるお店が軒を連ねてますのに。

 

「困りましたわね。郵便局がどこにあるか分かりませんし」

 

いつものショッピングモール『レゾナンス』でしたら購入した物は学園に郵送しているのですが、知らない場所なのでそれは出来ませんわね。

えっ? この位は普通ではありませんの?

コンビニ? それは何ですの?

 

「仕方がありませんね。また後日にーーー」

「あれ? セシリアじゃないか。何してるんだ?」

「一夏さん!?」

 

諦めて学園に戻ろうかと考えていると、一夏さんが声をかけて下さいました。

こんな見知らぬ(土地)で想い人と巡り会うことか出来るなんて、これは最早運命ですわ!

 

「い、いえ・・・わたくしは買い物の途中でして・・・あ、」

「どうかした?」

「あの一夏さん。この辺りに郵便局はございませんか?」

「郵便局?」

「はい。荷物が多くなり過ぎてしまいまして・・・」

「そうなんだ。あっ、それなら俺でよかったら荷物持とうか?」

「えっ?」

「今日この後予定もないし。あ、でも一人でじっくり回りたいとかあればーーー」

「いっ・・・いいえ! 一夏さんさえよろしければ是非お願いします!」

「よし。じゃあ行くか」

「はっ、はい!」

 

こ、こっ、これはデートと言うものでは!?

 

 

 

012

 

桃色妄想全開のセシリアだったが、買い物中の一夏との会話は盛り上がりはするが彼女が望むような流れにはならず、結局いつものつかず離れずなままだった。

せっかくのデート(一夏にとっては荷物持ち)を有効活用しようと、セシリアは次から次へと店を転々とし、その店で一夏の趣向を調べようとする。

具体的には服を二着見せ選ばせたり、陳列されている品々の中からどれを真っ先に手に取るのかを盗み見たりなど。彼女の頭の中では模擬戦並みに作戦が練られ続けていた。

 

「セシリア、そんなに急いで買い物しなくても・・・」

「いいえ、時間は有限! チャンスはしっかり活かさないといけませんわ!!」

「お、おう」

 

そして次の店に入ろうと入り口に近づいた時、中から出て来た女性とぶつかってしまう。

 

「し、失礼しました! って?」

「いえ、こちらの不注意でも、あった?」

 

お互いに相手の顔を見て初めて顔見知りである事に気がついた。

 

「確か、イギリス代表候補の・・・」

「セシリア・オルコットです。お久しぶりです、ケイシー先輩」

 

英国貴族らしい美しいお辞儀をするセシリア。

その姿にぽかんとしている一夏だが、相手の女性は一夏の存在に気がつくと少しだけ眉を上げる。

 

「セシリア、この人は?」

「この方はーーー」

 

セシリアが紹介をしようとしたところで彼女は手を前に出し、自分でするという意識表示をする。

そして一夏の方を向き、姿勢を正す。女性にしては長身の彼女の立ち姿は男勝りとは言わないまでも、どこかカッコ良さがある。

 

「IS学園三年生、アメリカ代表候補生のダリル・ケイシーだ。先日はファイルス先輩を助けてくれて感謝する」

「ファイルス先輩?」

 

が、本人の名前以外に出てきたもう一つの名前に戸惑い、そして訊きなおす一夏。

 

「ナターシャ・ファイルスさんは私の先輩なんだ。機密に触れるからと詳しくは教えてもらえなかったが、臨海学校の時に助けてくれたんだろ?」

(ナターシャ・ファイルス? 臨海学校?)

 

何かあったかと記憶を掘り起こす一夏。

一つ一つ思い出していくと、

 

「って福音のパイロットの!?」

 

やっと何の事なのか分かった。

条約違反の軍用機が暴走した事件、普通なら忘れる事のないような出来事・・・なのだが彼にとってはそれ程の事でもないようだ。

 

「やっと分かったのか。一体何があったんだ?」

「別に、お礼を言われるほどの事でも・・・。それに、ナターシャさんがひとりで助かっただけですから」

 

ここまで一夏が言ったところで、

 

「プッ、ハハハハッ!!」

 

お腹を抱えて笑い出すダリル。豪快な笑い声は周囲から注目を集めるが本人は気にした様子もなく笑う。

 

「え~っと、先輩? 何がそんなに可笑しいんですか?」

「いや悪い悪い。忍野と同じようなことを言ったのが可笑しっくてな」

「同じって・・・」

「忍野の奴にも礼を言ったんだがな、『彼女が一人で勝手に助かっただけだぜ』って言われてな~。まさかもう一人にまでそんな事言われるとは思ってもいなくて可笑しかったんだ」

「・・・・・・」

 

一夏は愛想笑いをしているが、セシリアは苦笑いを浮かべるしかない。一夏が忍野と似ているのがあまり気分の良いものではないようだ。

最もそれは、一夏の性格形成に忍野が関わっているからであるが彼女は知る由もない。

 

 

 

013

 

「先輩~~~ッ!! お待たせしたッス!!」

 

ほんの少し雑談をしていると、近くの店から先ほどのセシリアと同じように、両手いっぱいに買い物袋をさげた、これまた一夏の知らない茶髪の女性が走ってきた。

 

「遅いぞ。早くお前も自己紹介しろ」

「事故紹介? そんな頻繁に人をはねてないッスよ?」

「古典的なボケをかますな」

「イテッ」

 

頭を小突かれた茶髪の女性は、叩かれた所をさすりながら一夏の方に向き直る。

 

「私はフォルテ・サファイア、二年生ッス! 頭が高いッスよ後輩ッ!!」

 

上から目線の言い方をしようとしているのだろうが、小者臭を拭えない何ともちぐはぐな喋り方だ。

 

「私は“先輩”ッスからね! “先輩”には敬意をはらうように。そこんとこ分かってるッスか“後輩”!」

「はあ~」

 

先輩だの後輩だのを強調する演説はあまり経験がないのでため息にしか聞こえない返事しか返せない一夏。しかしフォルテはそのまま喋り続ける。

 

「何でこの人、年の差を強調するんだ?」ヒソヒソ

「それが、忍野さんがサファイア先輩に対して全く敬意をはらっていませんので・・・」ヒソヒソ

「なるほど。ちゃんと先輩扱いしてほしいのか」ヒソヒソ

 

二人が小声で話していると、フォルテは一夏のことを興味深そうにジロジロと眺める。

 

「質問~! 二人は恋仲ッスか~?」

「な、なななっ、何をおっしゃいますのっ!?」

「止めて下さいよ。俺なんかがセシリアに釣り合うわけないでしょ?」

「・・・・・・」

 

フォルテの投下した爆弾(質問)に笑顔ではあるが、狼狽しながら答えるセシリア。他人から見たら彼氏彼女の関係に見えると言う嬉しさの反面、まだ想いを告げてないのにこんな形で一夏(想い人)に恋心を知られてしまうのではないかという危惧で顔を真っ赤にしていた。

 

しかし普通なら“気があるのでは?”と勘ぐられる程に取り乱していても、そこはキング・オブ・唐変木、織斑 一夏。

笑いながら、あまりにも綺麗に冗談として受け流したのでセシリアの笑顔は氷点下まで冷えこむ。

 

「先輩、あれってもしかして・・・」

「ああ、間違いないだろうな」

 

(一夏)の気づかないほんの微かな表情変化を感じ取ったフォルテとダリルは、一夏が鈍感であることも一瞬で感づく。

 

「そう言えば忍野も()()でしたッスね」

「何て報告する?」

 

二人はそれぞれ、国から男性操縦士の()()に関する情報を可能な限り集めるよう指示されている。理由は他の国の生徒がハニートラップなどで二人の生体情報の入手を察知できるようにするためだ。

もし発覚すればそれを理由に他国のISを没収、さらにIS学園の保護能力を非難して男性操縦士を“自国での保護”という名目で入手する算段をしている。

事が起こるまでは無関心を装い、有事の時には自分たちは正義だとして主張して優位に立とうとする。偽善その物だ。

 

「一夏さん。こちらのお店に入りますわよ、その次はこちらに」

「せ、セシリア、これ以上は持てないんだが・・・」

「口で咥えればまだ持てますわ」

「ええー!?」

 

「「・・・・・・」」

 

お怒りのセシリアに連れてかれる一夏を見送ったダリルとフォルテ。

彼女たちは互いの顔を見合わせてから報告書の内容を簡潔に思いついた。

 

「とりあえず“ハニトラは効果薄”って報告しよっか・・・」

「いや、“修羅場の可能性あり”の方がいいと思うッスよ?」

 

後日、この報告を受け取ったそれぞれの国の上官は何かの暗号と頭を悩ませたそうな・・・。

 




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