暴物語   作:戦争中毒

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エアコンを使って眠りたい、戦争中毒です。連日の猛暑。皆さんどうお過ごしでしょうか?

今回は夏休み中の話で一夏目線での話になります。


悟物語
ほうきゴーレム 其ノ壹


001

 

夏休み以降、俺は彼女とどう接すればいいのか分からなくなってしまった。

どちらかが何かをしたという事はない。ただ彼女と直接のキッカケはなかったが、酷く遠回しな、そして可能性程度のキッカケが原因だ。

 

篠ノ之 箒。

 

姉同士が友人で、同じよう友人関係。

幼少期は同じ道場で剣道を学び、同じ小学校に通った。互いに自宅に遊びに行きあうくらいには仲が良かった。

小学校の途中で転校し、入学させられたIS学園で再会した幼馴染み。

俺にとっては大切な友達。

 

俺が思いつく彼女との大まかな関係はこのくらい。

しかし、もしかすると彼女が思う関係には、ここにもう一つ言葉があるのかもしれない。

 

そう考えると、あの夏の大冒険を思い出す。

 

8月16日。

何か特別の記念日という事もないごく普通の1日が、酷く些細なきっかけから始まり、しかし果ては現実の全てを巻き込んまんばかりに大きな話になってしまった。

そんな愚かな物語を思い出す。

 

 

002

 

 

事の発端は8月16日の夕方。

休みの課題で必要な事を調べるために自宅に戻った事から始まった。

夏真っ盛りのため連日猛暑が続き、その日も温度計から目を背けたくなるほどの暑い日。そんな炎天下の中を短時間、家に帰るだけに出歩くのは吸血鬼だろうが人間だろうが嫌になる。

だから少しでも涼しい時間帯をと考えて夕方になった。

 

家に入ると通過儀礼とばかりに郵便受けを確認すると一枚のチラシが入っていたのだ。新聞などは寮に入る前に解約したのでこのチラシは広告を出してる店が配った物だろう、と推測する。

しかしそこに書かれている内容を確認した途端、自分の表情が一変したのを感じた。

 

「全商品80%OFFッ!?」

 

それはとあるスーパーの閉店セールの広告で、店内全て、一部の例外もなく全てが8割引で販売されるといった内容だった。

かつては商店街を廃れさせたスーパーは、さらに大型のスーパーとネット通販の普及で今度は廃れる側にまわったようだ。ISが登場した頃はどうだったんだろうか?

 

「洗剤類はまず絶対だな。衣類用防虫剤も少なくなってたから買わないといけないし、あとカップ麺も買っておこうか。いや、そんな物より調味料をーーー」ブツブツ

 

主婦顔負けな、高校生にしては可笑しな表情で取り出したメモ帳に備蓄品の購入リストを書き上げていく。この時には課題なんて後回し。今やるべきは買い物になっていた。

普通の男子高校生のする事じゃない?

世界最強の姉が居て、元吸血鬼で、世界に二人しかいない男のIS操縦士。これだけ盛られた個性で今更だ。 

 

だがそこで重要なことに気がついた。

 

「・・・閉店時間、午後4時」

 

そして背後の壁に掛けられた時計を確認すると、短針は『6』を差していた。

 

「もう終わってんじゃんかっ!!!」

 

 

閑話休題

 

「忍。タイムマシンを出してくれえ」

「出せるか」

 

俺は忍にすがりつくように懇願する。

だって80%オフだぜ!? いくら寮生活だからって家で生活する日がないわけじゃ無いんだから日用品の備蓄は必要だ。千冬姉や忍野はそのへんルーズだから余計に必要だ。

 

「しかしまあ、時間移動がしたいというのならば、協力せんでもないぞ」

「え?」

「昨日に戻りたいんじゃろう?」

 

そして振り返ると、凄惨に笑い、至極気軽にゲーム感覚で言った。

 

「やっちゃお」

 

 

003

 

 

夏休み中に訪れた、名も知らない荒れ果てた神社の境内にいた。すでに時刻は午後9時をまわり、町外れの山頂であるため辺りは闇と静寂に満ちている。

そこは大地の気の流れが乱れ、怪異の発生源とも言えるよくないものが集まっている吹き溜まり。そんな風にも言っていたか。

 

実は今に至ってなお、俺にはよく分かっていないんだけど、とにかく怪異的によくない場所ということだけは確かだ。

 

「なんで時間移動するのにわざわざこんな所に来るんだよ。いい加減に説明してくれ」

「究極的なことを言えばここじゃなくてもいいのじゃが、馴染みのある場所のほうがお前様にとってよいじゃろうということでな。それに・・・」

「それに?」

「それに今の儂ではエネルギー量が足りるか怪しくての、じゃからこの場のエネルギーを使ってより確実にタイムワープをしようと思っとる」

「そうは言っても、大体タイムワープって、そんな簡単にできるもんなのか?」

「アホかお前様は。怪異があるなら時間移動もあるじゃろ」

「・・・・・・」

 

まあ、怪異よりはよっぽど現実的だとは思うけどやっぱり半信半疑だな。

束さんがタイムマシンを作ったって言う方がよっぽど信憑性があるぜ

 

「よし。まあこの鳥居でよかろう」

 

よかろうって言っても、別にさっきと変わらず、何か仕掛けた様子もない。

 

「で、この鳥居がーーー」

「混沌を支配する赤き闇よ! 時の流れを(もてあそ)ぶ球体をいざ招かん! 巡りに巡る終末の灯火をただ繰り返し、溢れ出す雷で空を満たせ! 黒を歩む者、灰を泳ぐ者! 罪深きその忌み名をもって自らを運び屋とせよ!」

「呪文の詠唱だと!?」

 

素でびっくりした!

タイムワープなんてSFな事をやろうとして魔術みたいな詠唱するなんて思ってもみなかったぞ!?

 

なんて驚愕していると。

鳥居の内側。

今にも朽ち果てそうなただの四角形が、向こうが見えないのっぺりとした黒い壁のように変化していた。

 

鳥居の反対側に回り込んでみると、階段の方からは忍が立っている境内と、その奥にある本殿が見えた。

もう一度、鳥居のほうに戻ると階段は見えず、そこにあるのは暗闇。

マジックミラーのようだ。

 

「・・・異次元にでも繋がってんのかよ、これ」

「まあそうじゃが」

 

あっさりと肯定する忍。

これが過去に繋がってるという自信に溢れている。

 

「初めてやってみたが、うまくいくもんじゃのう。幼女になり、力をほとんど失ったとは言っても、さすが儂じゃわい」

「・・・異次元を生じさせる奴を、力を失ったって言わないんじゃないのか?」

 

核のエネルギーですら時空間を歪めることが出来ないのに、それをやってのけた忍の有する力とは果たしてどれだけの規模になるのだろうか。

 

「ちゅーか急いだほうがよいぞ。このゲート、もう一度はたぶん開けん。あと1分もすれば閉じてしまうぞい」

「ぞいって・・・」

 

言うや否や、早く行こうと俺の背中(身長差の都合で実際は腰)を押す忍。

 

「ちょっと待ってくれよ、まだ心の準備が出来てない」

「準備などいらん。普通に飛び込めばよい」

「そんな簡単でいいのか?」

「そう身構えることではないのじゃ。たかが時間移動じゃろうが」

「・・・・・・」

 

少し悩むが、かの有名な青いネコ型ロボットに縋る眼鏡の少年も、ドライブ感覚でタイムマシンに乗り込んでいたことを思い出し、俺は9割ほど納得する。

残り1割はこの穴が過去以外に通じている可能性からくる不安。

 

「おっけー、じゃあ行くか!」

「おう! しゅっぱーつ!」

 

案外ノリノリだ。

初めてやった、って言っていたから何だかんだで遠足前の子供のように内心わくわくしているのかもしれない。

過去なんて遠足で行くような所じゃないけど。

 

「あ、そうじゃ、お前様。その腕時計ちょっと貸せい」

「え? なんで時計を?」

「いいから」

 

そう言って手を差し出してくる。

さて、素直に渡していいのか少し悩む。

この腕時計は見た目は少しゴツいだけの時計だが、実態はガンダムサバーニャの待機形態。今の忍だと謎のドジっ子キャラを発動させて落としかねない。

仕方がない。

 

「それじゃ、巻いてやるよ」

「そ、そうか。良きにはからうぞ!」

 

俺は膝をついて忍の腕に時計を巻く。まるで貴族の娘が手の甲にキスをさせる姿勢のようで、映画のワンシーンみたいだ。そして忍は気分を良くしたのか満足げに笑っている。

・・・言えない。無くしそうだから落とさないようキツめに巻きつける意図があったなんて、あの顔の前で言えない。

 

そして忍はもう一度手を差し出し、俺の手をとる。

 

「では先に飛び込め。儂は時間の概念が薄いので、お前様のコーナリングに付き添っていくしかないのじゃ」

「あ、そうなんだ」

 

いいぜ、連れていってやるぜ、忍!

待ってろよ特売品!

 

俺は鳥居の内側、黒い壁に向かって大きく飛び込んだ。

 

 

 

004

 

 

「ーーーおい、お前様よ。起きろ。この程度のショックで気絶するな」

「・・・・・・」

 

身体を揺り動かされて目を覚ました。

“目を覚ました”、つまり寝ていたと言う事は・・・。

 

「・・・なんだ、夢だったのか」

「ちゃうわ」

 

蹴られた。

何の迷いもなく頭を蹴りやがったよ、この幼女。

 

「ったく、痛いな。それにしても知らない天じょ・・・」

 

眼前にあるのは天井ではなく青空が広がっていた。

・・・青空?

 

「あれ? いつの間に朝になったんだ?」

「この時間に来てからじゃ。ちなみに十時じゃぞ」

 

しっかりと巻かれた腕時計を見ながら忍は言う。

よし、落としてないな!

 

「やはり、時間移動には多少のズレが生じるようじゃのう。なかなか、ぴったりズレなく十二時間前とはいかんか」

「・・・・・・」

 

周囲を見回すと、山の中にひっくり返っていた。

神社の境内に居たはずなのに、どうして背中に階段の感覚が?

と言うより痛い。

 

「そりゃ、あの勢いで鳥居から外に飛び出せば、階段落ちに繋がるのは必至じゃろうが」

 

なるほど。

黒い壁に馬鹿正直に飛び込んだったから、階段飛びになったのか。

・・・自殺行為じゃねーかよ!

 

「儂もびっくりした。まさかあの角度の階段にアイキャンフライをかますとは・・・。言っておくが、儂も被害者じゃぞ。一緒にごろごろ転がり落ちてしまったんじゃからのう」

 

ほれ、と忍はワンピースのすそをまくった。

膝頭はかさぶたになった擦過傷があった。

 

「しかしこのくらいの傷、さらっと治せないのか? 力を失ってるとは言っても、お前、一応怪異なんだから」

「治そうと思えば治せるが、これを理由にお前様にたかろうかと思うてな」

「それ、言ったら意味ないだろ」

「あ・・・」

「謝って損した気分だ」

 

やることがセコいな。

そう思いながら自分の身体を見ると、俺もあっちこっち擦り剥いてした。前回の“食事”をしてからそれなりの時間が経つから吸血鬼性がほぼゼロだ。これはすぐには治らないな。

 

「で、本当に時間移動に成功したのか?」

「成功したに決まっておろうが」

 

忍は、俺の疑念に対して、不本意そうにこちらを睨む。

 

「儂は生まれてこの方、失敗したことがない」

「お前なあ、大言壮語(たいげんそうご)もはなはだしいぞ」

 

その自信はどこから来るんだ。

そもそも、幼女化して俺みたいな高校生の影に封じられてる今この時だけを切り取っても、伝説の吸血鬼として取り返しのつかない大失敗だろ。

 

「しかしな・・・、どうなんだ。本当に今朝なのか? 普通に階段から落ちて、十二時間気絶してただけじゃねーのか?」

 

改めて見ると、すごい段数を転げ落ちている。

死んでいてもおかしくないぞ。

 

「なあ忍」

「なんじゃ?」

「帰りも、あの鳥居から帰るのか?」

 

また気絶するような痛みを味わないといけないのかと、腰が引けてしまう。

 

「ん? うんうん。まあ、そんな感じじゃ」

「なんで返事が曖昧なんだ怖ぇよ!?」

「いやぁ・・・、そういえばあんまり帰りのことを考えてなかったのじゃがぁ・・・」

 

そういえば、タイムワープするゲートとやらをこじ開けるためには、忍自身の力ではなく、神社という吹き溜まり、場の力を利用したと言っていたが・・・、

 

「その力を消費してしまった以上、ひょっとし て、もうそのゲートとやらを開くことはでき ないんじゃないのか?」

「はっ! ・・・えーっと」

 

俺の懸念を鼻で笑う忍だが、その後が続かない。反射的に見栄を張るんだよ。

 

「おい、ちょっと待て忍。まさか、今朝の世界から元の世界へと帰れないなんて事態に陥ってんじゃないだろうな?」

「いやぁ、大丈夫じゃ大丈夫じゃ。我が主様、何 の心配もいらぬ。

ほれ、考えてもみい。ここは今朝の世界じゃぞ? 儂が神社に溜まる怪異の素を利用してタイムトンネルを開いたのは、つまり、今から見れば今夜ということになろう。じゃから現時点では、まだ、その霊的エネル ギーは使用されておらんということじゃから、ゲートは開ける」

 

タイムトンネルに霊的エネルギーとか、ますます胡散臭い。

 

「あれ? それってタイムパラドックス生じてねぇか?  今日、もし俺達がそのエネルギーを使ってしまえば、夜の俺達が朝に戻ってこられないじゃないか」

「・・・・・・」

 

あ、黙った。

とても不安になる沈黙が5分ほど過ぎると、彼女は自分の見解を述べた。

 

「えーっとなあ、そうじゃあ! 思い出したあ! そうそう! 未来へ戻るのは、過去に戻るよりも使うエネルギーが少ないのじゃ、流れに逆らわん分だけな。

じゃから、帰り道にあたっては、そこまでエネルギーを消費せず、儂達がここに来る分くらいのエネルギーは、残っておるということじゃ!」

「ふうん。結構厳しいけど、今はその説明でいいか」

 

たかが半日未来へ戻るためにタイムワープなんてしなくても最悪なんとかなるか。

今朝の俺が居なかった場所で時間を潰せばいいんだから。

 

「だいたい、このタイムワープってどういうタイプなんだ?」

「タイプ?  どういう意味じゃ?」

「ほら、漫画とかだとタイムワープって大きく分けて2種類あるじゃん? つまり、本人がいるタイプと本人がいないタイプ」

「なんじゃ? お前様の男性交友みたいなもんか?」

「いつだっているよ!」

 

確かに少ないけど男友達だっているよ!

いたりいなかったりしない!

 

「つまりだ!  俺が学園に帰れば、今朝の俺が居るのか。それとも、ここにいる俺が既に今朝の俺なのかって話だ」

「グー」

「寝るな!」

「ZZZ」

「より深く寝るな!」

「ふむ。よくわからんが」

 

男の癖に細かいんだよ、と文字通り目で訴える忍だけど全然細かくねえぞ? 作品によっては過去の自分と出逢うと消滅してしまうって展開もあるんだからな。

 

「そんなことはじかに見て確認すればよかろう。学園に帰って、自分の部屋を見て、そこに自分がいるかいないかでどちらのタイプなのかは判明するじゃろう」

「今朝、ってもう10時だから昼か。その頃なにしてたかな?」

 

今日の自分の行動を記憶から引き出そうとしてある事に気づいた。忍は今が10時だと言っていた。

だけど。

 

「でも忍、何でお前、今の時間がわかるんだ?」

「ん?」

「だって、お前の巻いているその時計は、未来から来たものなんだから、この時代の正しい時間を示しているわけじゃないだろ?」

「いやいや、さっきアジャストしたのじゃ。太陽の位置で時間を推測しての。時間がわからんと困るで、じゃからお前様にこの時計を外させ、借りたのじゃよ」

「ふうん」

 

しかしそれだと、その時計はアテにならない。

今知りたいのはタイムワープが成功した確証が得られる、俺達にとっての“現代”の現在時刻だ。

 

そうだ、携帯電話にも時計がある。という事を思い出した俺はポケットから携帯電話を取り出す。画面に表示されている時刻は日付が変わり、『AM00:15』となっている。

これが現代、今から見て未来時間ってわけだ。そしてこの青空で午前0時ってのはありえない。

 

だとすると、

 

「忍。お前、俺の携帯いじって壊した?」

「うわあああんっ!」

 

声をあげて大泣きした。

しかもマジ泣きだ。

 

「もういいわい! お前様なんかだいっ嫌い! 好きにすればっ!?」

「拗ね方が本当に子供だし」

 

駆け出そうとした忍だが、すぐにスッ転ぶ。

“食事”からしばらく経つので今の忍は俺の影から一歩も離れることが出来ないことを忘れていたようだ。まるで脚だけが縫い付けられたようにビタッと影の縁で止まり、そのまま母なる大地にヘッドバッド。

下が草むらで良かったな。

 

「急に走るとケガするぞ。ん?」

 

改めて画面を注視すると、隅に表示されるアンテナマークが消えてることに気づいた。

 

「あれ? ここって圏外だったか?」

 

以前訪れた際に圏外になったのは後に怪異現象だと判明したが、結局この山中で携帯電話が使えるのかは不明なままだ。

しかし登って来る際に見た時は1本か2本、アンテナマークがあった気がしてならない。ひょっとしたら見間違いや、“マークがあるのが当たり前”と思い込んでるだけかもしれないけど、もしマークがあったのなら、何故いまは圏外になっているんだ?

 

「圏外とはなんじゃ?」

「なんでビットを制御したり、タイムワープが出来る奴が圏外を知らないんだよ」

「儂は携帯を持たぬゆえ携帯用語はわからん。むしろ儂にも一台買って欲しいものじゃわい」

「買って欲しいって、そんな駄菓子感覚で買える物じゃないだろうが」

「買ぁって! 買って買って買って! みんな持っているのに儂だけ仲間外れなんて嫌じゃ!!」

「小学生か!!」

 

まさかの手足を振り回す駄々っ子交渉術。

伝説の吸血鬼が小学校低学年レベルのわがままにイラッとくるよりも情けなさと目眩がくる。確かに今は幼稚園児でも携帯電話を持っている時代だけど、俺の影に居る時点で携帯電話の必要性を感じないんだけど。

俺に話すなら口頭のほうが早いし、忍の交友は俺の交友の中にあるから彼女が電話する必要性がないと思う。

 

「儂は月額500円で使い放題の子供用すまーとふぉんがあることを知っておるぞ!」

「そのCMは俺も観た」

 

ってかスマートフォンの表記がひらがなになってないか? 大丈夫かよ。

 

「は~、分かった分かった。全部が丸く収まったら買ってやるよ。月500円だし」

「約束じゃぞ!? 鬼との約束を(たが)えると末代まで・・・いや、お前様じゃと今代で刺されて終わりそうじゃな」

 

なんだよそれ!?

俺には刺殺される兆しか心当たりがあるのか!? あるなら教えてくれよ! 

 

「まぁとりあえず、家に帰ってみるか」

「あ、じゃあじゃあじゃあ、肩車肩車ぁ!」

「どこまで幼女化するんだ、お前」

 

でも断る理由もないし、肩車をする。

そしてここが過去であると仮定して、当初の目的である特売セールに行くため山をくだる。のぼりと合わせて三回目ともなれば荒れた石段も慣れたものですぐに下山できた。

 

そして町への道を歩いていると、向こう側から道の真ん中を歩いてくる3人の女子中学生と出会った。

 

出会ったと言っても俺がナンパみたいに話しかけたわけではなく、

 

「やだ何可愛い!」

「お人形さんみたい!」

「髪の毛なんかふわっふわだあ!」

 

こんな感じで忍に興味を示した彼女達から関わってきた。恐れを知らないとはこの事か?

しかしちょうどいい。

 

「ねぇ君たち、ちょっと教えてほしいんだけど 今日って8月16日の月曜日だったよね?」

「ええっ? 全然違いますよー」

 

あっさりと答えてはくれたが、全然?

この青空と携帯電話の時計を鑑みれば時間移動自体は成功しているに、全然違う?

・・・そういえばIS学園同様に夏休み中である中学生と、なんで()()姿()で出会うんだ?

 

「じゃあ、今日って何月何日だい?」

 

俺は動揺を抑えつつ訊いた。

 

「何ですかお兄さん? まるで未来から来た人み たいなことを」

 

なかなか鋭いことを言いつつ、彼女は、

 

「5月14日ですよ」

 

と、答えた。

半日戻るはずが、月だけで三ヶ月もズレが生じていた事実と、未だに圏外のままの携帯電話。

嫌な予感が脳裏を走る。

 

「今、西暦で言えば・・・何年?」

「えっと、」

 

女子中学生は答えた。

今から、あるいは未来から、10年前の西暦を。

 





章名の『悟物語(さとりものがたり)』は一夏が何か“知る・理解”という意味で、『知』と『悟』を比べ、語呂のいいこちらをつけました。

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