麦野「レールガン、始末完了ね」
壊れ果てた研究施設の中、麦野沈利は一人たたずんでいた。
麦野(いくら応用力で優れてても戦闘能力では私の方が勝っていたということよね)
麦野「……ざまあねえな、第三位」
彼女はうっすらと笑みをうかべてそうつぶやいた。
麦野「もしもし絹旗? 目標始末したわよ。回収に来なさい」
ひとしきり感慨に耽った後、携帯で仲間に連絡をとる。
麦野「……あ、そうそう。フレンダを逃がさないようにね」
白井「……いくらなんでもおかしいですの……」
白井黒子は御坂美琴が野暮用といって出かけたあと三日間も待っていた。
初春「はい? なにがですか?」
その言葉に一緒に風紀委員会で働く初春飾りが反応する。
白井「な、なんでもありませんの!」
初春「? 変な白井さんですねぇ」
初春は不思議そうにしながらもパソコンに向かい自身の仕事に戻る。
白井黒子は御坂美琴を尊敬し、信頼している。そのため御坂美琴がなにか悩みを抱えていても、自身で解決するだろう。それができなくばきっとこの私に助力を求めてくれるだろうと思っていた。
白井(甘かったですの…… お姉さまはご自分の面倒事で他人に、ましてや後輩に助けを求める人ではなかったではありませんか……)
彼女に思い当たる御坂の抱えそうな面倒事は、いつも楽しそうに話すあの馬鹿と呼ばれる人物のこと。
白井『あの馬鹿と呼ばれる人物になにかされたとはお姉さまの口ぶりからして考えずらい。ならばその人物になんらかの危機が及び、それに巻き込まれた……?』
いずれにせよその人物が誰だかわからないし、心当たりすらない。知る手立てがあるとすれば……
白井(……初春……)
頭に花飾り(生け花という声もある)をつけたこの少女、初春飾利は情報解析のエキスパートである。白井のもつあの馬鹿と御坂の接触に関する情報と風紀委員のネットワークを使えば人物の特定ができるかも知れない。
白井(……ですがこれはお姉さまの行方がくらませるほどの事件。風紀委員とはいえ初春を巻き込んでいいんですの……?)
初春「……どうしたんですか白井さん?」
凝視されていたことに気づいた初春が声をかけた。
白井「え?な、なんでもないですわ! ……少しのどが渇いて集中力が鈍ってしまいましたわ。コーヒーを出しますけど初春はいかが?」
必死に平静を取り繕う白井を見透かすように、初春が問いただす。
初春「……御坂さん、のことですよね?」
白井「……ええ……」
白井は迷ったが、認めることにした。
上条「……不幸だ」
自動販売機に二千円札を飲み込まれた少年、上条当麻がつぶやいた。
上条「あの食いしんぼシスターのせいでただでさえ食費が苦しいのに!! 自販機に二千円も!!」
あきらめきれないこの少年は返却レバーを動かしたり、自販機をゆすったり(ただし警報などがならない程度)で必死だった。
そんな自分の背中に冷たい視線が突き刺さっていることに気づく。
上条「…………」
おそるおそる後ろを振り向くと風紀委員の腕章をつけた少女が立っていた。
上条「ちょ、ちょっとまってくれ! 俺は決して自販機強盗とかじゃない! これはこの自販機が……!」
白井「上条当麻で間違いないですのね?」
自身の言い訳をすべて断ち切る冷たい声に彼は観念せざるを得なかった。
上条「自販機に二千円札飲み込まれ、風紀委員に勘違いでしょっぴかれ、今日はどこまで不幸なんだこの上条さんは……ってあれ?」
なぜ自分の名前を知っている?
白井「……もう一度お聞きしますの。上条当麻で間違いないですのね?」
上条「……ああ、間違いない」
自分の指名手配などの可能性を考えながら(心当たりはないが)彼は答えた。
白井「この人物を知っていますわね?」
そう言って白井は上条に一枚の写真を見せた。
白井「名前は御坂美琴。常盤台のレールガンで知られる学園都市第三位ですの」
上条当麻の記憶喪失になって間もないその頭に該当する人物はいない。
上条(でも俺が知ってて間違いないような聞き方をしてる。……この子になんかしたのか?昔の俺……)
白井「あなたがこの方に関して知っていることを話してほしいですの」
なにも知りません。と答えられる空気ではない。
上条「わ、悪いんだけどなんでこんなこと聞かれんのかな? 俺……」
白井「……三日ほど前から行方がわかりませんの」
上条「え?」
白井「お姉さまが自身の問題で三日間も行方をくらますとは考えにくい。ですが、信頼してた人物に裏切られたとあらば……」
白井は御坂のことを思い、目に涙を浮かべている。
白井「言いなさい! あなたの知るお姉さまのことに関すること全部を! さもなくば……」
威嚇のために上条をテレポートで地面にたたきつけようと、手首をつかんだが……
白井「!?」
失敗した。というよりも能力が発動しなかったのだ。
上条「……事情はなんとなくわかった。けど、俺は……」
本当に同情する上条の表情を白井は読み取った。
白井「……そう……ですの……」
これで白井の心当たりはなくなった。力がぬけ、絶望に包まれる彼女の視界の端に求めていた少女の姿が映った。敬愛して止まない人物。
白井「お姉さま!?」
上条「えっ?」
白井はすぐに御坂の下へ駆け寄る。
白井「よかった……! 本当にご無事で……」
御坂の胸に顔をうずめ白井はなんとかそう言った。
上条はその様子を少し眺めていたが、ふと違和感を感じた。
上条(あの御坂ってやつなんで無表情のままなんだ?)
感動の再開に水を差すようで気が引けたが、彼も御坂に近寄ってみる。
白井「……お姉さま?」
白井もさすがに違和感を感じたのか、顔を上げる。
御坂「私は御坂美琴ではなく、その妹です、とミサカは少し申しわけなく思いながら事実を述べます」
白井「…………」
上条(だからこんなに似てるのか。写真の姉そっくりだもんな。頭のゴーグル以外)
白井「お姉さまに妹……?そんな話ははじめて聞きましたの。それに常盤台の生徒ならなおさら私が知らないわけありませんわ」
上条はその言葉を聞いて二人の制服が同じであることにも気づいた。
御坂妹「……これ以上は話せません。それでは。と、御坂は別れを告げます」
御坂妹は言葉の通り踵を返して歩き出す。
白井「お、お待ちなさい!!」
その言葉でまた立ち止まった。
白井「三日ほど前からお姉さまの行方がつかめませんの。あなたは何かご存知ではありませんの?」
御坂妹「……私も数日ほど前にあって以来お姉さまにはあっていません。と、御坂は自分の記憶を振り返ります」
白井「そのときになにか変わった様子はなかったんですの?」
御坂妹「……なにもありませんでした。と、御坂は手短に答えます」
白井「……そうですの……」
御坂妹「これでよろしければ用事がありますので。と御坂は再び別れを告げます」
一部始終を見てた上条が白井に耳打ちする。
上条「……で、後をつけるんだろ」
白井「まだいたんですの。もうあなたには関係はありませんの」
ひどいいいようである。
上条「……関係なくねえよ」
白井「は?」
上条「もうこうしてお前とかかわっちまった。だから関係なくなんてねーんだよ」
白井「…………」
それでもただの他人という関係しかないが、上条当麻が人を助ける上で関係の深さは重要ではない。
上条「ほら行くぞ。もたもたしてたら見失っちまう」
白井「え、ええ……」
答えながら彼女は、御坂美琴がなぜこの少年のことをを好意的に話していたかわかった気がした。
御坂妹の尾行中。
白井「お姉さまはご自分のクローンがいるという噂をとても気にしていらしたんですの……」
白井自身も思い出しながら上条に語る。
上条「……クローン?」
白井「ええ。常盤台のレールガンの軍用クローンが秘密裏に生産されている。という噂ですわ。厄介なのは目撃証言が多いこと」
上条「それで御坂はその噂を気にしてたのか……」
目の前にはあまりに姉に似ている自称妹がいるため、その噂の説得力は高かった。
上条「じゃああの妹が……」
白井「……ええ、可能性は高いですわね」
しばらく尾行をしていても御坂妹は気づく様子はなく、順調にあとをつけていた。
いつの間にかあたりは薄暗くなり、人気もなくなってくる。
白井「彼女は一体どこへ……?」
そしてだんだんと異臭が漂うようになる。血生臭く、食品ではほとんど取り除かれている臓物の臭いである。道のところどころに血のようなシミと機械の破片が目立ってきた。
白井と上条の不安が駆り立てられる。
御坂妹は路地を曲がる。
曲がった先を二人がのぞき見る。
そこには大勢の御坂妹達と一人の御坂妹の死体があった。
上条「…………!!!」
必死で声と吐き気を押さえ込む。
一方白井は角を飛び出した。
白井「風紀委員ですの! あなた達はただちに作業をやめなさい!!」
体からは夏の暑さのせいだけではない、べとつくいやな汗が噴き出ていた。それでも彼女の風紀委員として身に染み付いた正義感が、行動を起こさせた。
一斉に大量の視線が白井に突き刺さる。生気の感じられない冷たい視線が。
白井「……あなた達はなにをしているんですの!?」
平静を装いながら強い口調で詰問する。
御坂妹「実験の後片付けです。とミサカは短く答えます」
御坂妹「正確には死体や武器の破片などの処理です。とミサカは詳細を伝えます」
相変わらず無表情に淡々と話す妹達。
白井「……っ。なんの実験ですの?」
あまりに自分達と違う彼女らの雰囲気に白井は気後れを隠せなくなってきていた。
御坂妹「……あなたは実験関係者とは見受けられません。速やかに立ち去るか、黙っていて下さい。とミサカは作業を再開します」
その後も問いを繰り返したが、すぐに話かける気が失せていった。まるでパスワードが合わないコンピューターに話しかけているようなものだったからだ。
結局、立ち尽くす上条と白井を尻目に、テキパキと片づけを終えて妹達は散り散りに消えていった。
白井「あれが……お姉さまの抱えていたものだったんですのね……」
荒れ果てた死体と、使用されたと思われる武器の残骸。
自分と全く同じ顔と体を持つ死体を無表情で処理するクローン達。
白井はその光景を見て、御坂の心境がようやく見えた。見えてしまい、心を折られかけていた。
上条「……調べよう」
白井「……え?」
上条「まだ終わってない。あいつらに関わったせいで御坂が消えたんなら、あいつらと御坂のことを調べればなにか掴めるかもしれねーだろ」
白井「……」
それは本来、白井が言うべき言葉だった。
白井(……そう。それがお姉さまの闇なら、黒子はそれも受け止める)
それが、常盤台のレールガンの横に立とうとするものとしての覚悟。
白井「そうですわね。少々取り乱してしまいましたわ」
そして、闇を払うのもその役目。
上条「とはいっても、あいつら見失っちまったな……なにか心当りあるか?」
白井「ええ、お姉さまの私物をまだ調べきっていませんの」
上条「私物って……御坂の部屋の中とかか。どこかしってんのか?」
白井「知ってるも何も黒子とお姉さまは同室ですのよ。さ、早く行きましょう」
上条「ああ。……って部屋に!?」
上条「……まさか超お嬢様学校の寮に入る日がくるとはな」
なんとなくうれしくない上条だった。
白井「ぼやぼやしてないで早くあなたも……」
白井(この男にお姉さまの私物を漁らせる!? 私としたことがなんと愚かなことを!!!)
上条「? 分かってるよ。これは仕方のないことなんだ。そう、決してやましいことではないんだ……」
自分に(もしくはどこぞのシスターに)言い聞かせるような独り言をつぶやいたあと、ベットの方へ向かう上条。
白井(お姉さまの、べべべ、ベットに!?)
白井「お待ちなさい!!」
上条「うわっ! 何だよいきなり!」
白井「ベッドの方は私が調べますの! あなたは机のほうを調べなさい!」
上条「? まあいいけど・・」
大声で叫ばれて少し不満そうに机の方へ向かう上条だった。
数分後。
上条(……こいつらって中学生だよな?)
自分に全く理解できない教科書類を見て愕然とする。
白井「……んっ、これは……?」
そんな上条の後ろで白井が声を上げた。
上条「なんか見つかったの……」
後ろを振り向いた瞬間、上条は硬直した。
白井「ええ……ベッドの下にヌイグルミが……とどかないっ……!」
床に膝をつき、胸も床のすれすれに這わせながら時々リーチを稼ぐために片足を上げる。上条に見えたのはヌイグルミではなく、それをとろうと必死で手を伸ばす白井の過激な下着だった。
自室ゆえの油断が原因と思われる失敗だ。
白井「とれたっ!なんであのような所に……どうしましたの?」
上条の視線を辿るときれいにめくれ上がったスカートがあった。
白井「……っ!」
このとき上条は不覚にも張り手ならかみつきよりはマシなのではないか、と思ってしまった。
白井「センスはともかくとしてこのヌイグルミを隠すようにベッドの下に置くのがあやしいですわね」
白井が出てきた熊のヌイグルミを抱えてそう言う。
上条「……そうか? いい収納スペースじゃないか」
白井「埃っぽいですし…… それに箪笥や机の引き出しなら私がよくチェックしますもの。隠そうとした意思を感じますわ」
上条「……ん?」
さらっと流したが、チェックというのはなんなのだろう……? 女の子の感性ならいいのかもしれないと思い、突っ込むのはやめる上条だった。
白井がヌイグルミをぎゅうぎゅうと抱きしめる。
白井「……紙の感触がしましたわ」
どうやら当りのようだ。
上条、白井「これは……」
試行番号〇七-二〇〇五〇七一一一二-甲
『量産異能者「妹達」の運用における超能力者「一方通行」の絶対能力への進化法』
上条「絶対能力(レベル6)?」
白井「少し黙って」
上条を黙らせ、白井は出てきた書類を集中して読む。
上条「…………」
白井「……なるほど……そういうことですの……」
量産異能者(レディオノイズ)と妹達(シスターズ)などの文面からただならぬものだと容易に想像できたので、彼は白井からの説明を待つことにした。
上条「……なにかわかったのか?」
白井「…………」
上条「巻き込みたくないとか考えてるなら気にしないでくれ。どっちにしろ俺のやることは変わらない」
白井「……確かに部屋に上がらせてから考えることではないですわね」
白井からの説明によると、学園都市第一位の『一方通行(アクセラレータ)』には学園都市で唯一レベル5のもうひとつ上、レベル6になれる可能性があるらしい。
そしてレベルを上げるためには学園都市第三位、『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴を128回、もしくはレールガンのクローン『妹達(シスターズ)』を20000回殺害しなくてはならないらしい。
白井「おそらくさっきの実験というのはこれを指していたのでしょう……」
書類とは別に地図も出てきた。
上条「……だんだん掴めてきた。一度状況を整理しないか?」
白井「ええ、いいですの」
もやもやと浮かぶ事件の概要を理解するために二人で状況の整理を始める。
上条「御坂妹によるとあいつらは御坂本人に会ったことがある。御坂はその時点でこの実験を知っていたと思うか?」
つまり実験に協力的か否かということである。
白井「……いいえ、有り得ないですの。お姉さまは……」
白井黒子の尊敬する御坂美琴は、
白井「こんな実験を知ってて許すような方ではないですもの」
上条「わかった。なら御坂はクローンに会って初めて実験のことを知った、ないし調べ始めた。これでいいか」
白井「ええ。もしくは噂を気にしていらしたようですから、もっと早くからクローンに関して調べ始めたのかもしれないですわね。」
上条「……ん? これ一般家庭の端末で出力したデータになってるぞ?」
この実験のデータ自体は一般家庭用端末では出力できないはず。
白井「……ええ。どうやらお姉さまは実験の協力者ではないようですわね。」
白井の表情が少し明るくなり、また元に戻る。その様子を見て上条もまた微笑む。
上条「……話をもどすぞ。このデータを手に入れて御坂はどうすると思う」
白井「間違いなく実験を止めようとするでしょう」
即答。
上条「なら、どう止める?」
白井「まず一つ、レベル6への到達は不可能だと知らしめる。具体的にはお姉さまがアクセラレータを倒す」
上条「それは可能だとおもうか?」
白井「…………」
学園都市第一位。その力は噂でしか聞いたことがない。だが例えるなら、他の能力者が何らかの現象を操ってるとすれば、アクセラレータはそれらの現象を超越している。もはや勝ち負けを論ずることができる実力差ではないのだ。
上条「……そうか。他の方法は?」
白井「……二つ、実験の継続を不可能にする。具体的には研究に必要な施設の破壊ですわね」
上条「それはどうなんだ?できそうか?」
白井「……そうですわね。お姉さまの力をもってすれば比較的容易でしょうね。」
学園都市においてレベル5は絶対的な意味を持つ。その中でも特に応用能力の高いレールガンなら電気回路を使ってでも、直接的にでも破壊が可能だろう。
上条「そこでこの地図か」
白井「ええ」
その地図はかなり詳細な学園都市のものだった。そして、地図の上には大きく目立つ赤い×印がいくつかついている。
白井「おそらくこの印はお姉さまが破壊した実験関連の研究施設ですわね」
上条は携帯のGPS機能をつかい、印のある場所を調べる。
上条「……どうやら筋ジストロフィー関連の研究施設だな」
白井「……おそらくお姉さまは研究施設の破壊をすることで実験を中止させようとした。その最中に……」
捕らわれた。それ以上のことは白井黒子には考えられなかった。
上条「……なあ」
白井「……なんですの」
重い空気が漂う。
上条「お前はこの実験中止させようとは思わないか?」
白井「……はい?」
今はお姉さまの救出の話をしているんですのよ?とでも言いたげな口調だった。
上条「御坂は自分の身を危険に晒してまでこの実験を止めようとした。それなら……」
白井「お姉さまは……!!!」
上条の、まるで御坂が死んだような物言いに我慢ができなかった。
上条「それにだ!!」
白井「……!!」
有無を言わせない上条の口調。
上条「御坂が捕らえられてるとしたらこいつらの手の内の可能性が高い。なら、この実験を中止させるのは遠回りにはならないんじゃないか?」
白井「……」
上条「大体、レールガンをどうにかできそうなのなんて一番手っ取り早いところではこのアクセラレータってのだろ? だったら……」
白井「けれどどうやるんですの!?お姉さますら……」
言いたくない言葉だった。
白井「お姉さまですら止められなかったんですのよ!?それを私達でどうやって……」
上条「一つ、レベル6への到達は不可能だと知らしめる」
白井「……!?」
上条「レベル0の俺に負けるようなら、レベル6なんて到底不可能だろ?」
その後、断固反対する白井を押し退ける形で上条は飛び出した。
実のところ、このとき上条当麻の中では御坂美琴とは別の話として、あの実験が許せなかった。
20000回。
その数字から想像するに実験はかなり長期的なプロジェクトなのは間違いない。一日に何度も行わなければならないだろう。
そして、おそらく野外で実験を行う場合なら人通りの少ない夕方、もしくは夜間が考えられる。
上条(つまりは今、もしくはこれから実験が行われる可能性が高いってことだ!)
行くあてはなかったがなるべく人通りの少ない所を狙って走る。
白井「お待ちなさい!」
上条「!!」
走り続ける上条の前に突如、白井黒子がテレポートしてきた。
白井「勝てるとでも思っているんですの?あの学園都市が生み出した最強の怪物に」
上条「……そんなのわかんねえよ。けど、人の命がほいほい捨てられんのをほうっておけるわけねえだろ!」
白井「……私も行きますの」
上条「! 白井……」
主に白井黒子の働きによって御坂妹は発見された。
上条「おい!」
上条の呼びかけに反応して御坂妹は立ち止まった。
御坂妹「何でしょうか。」
相変わらず話しかけるのもためらわれるほど冷たい目だった。
上条「今、実験は行われているのか!?」
肩で息をしながら上条が問いかける。
御坂妹「あなたの問いに答えることはできません。と、御坂は率直に申し上げます」
上条「いいから教えろ!!」
思わず語気が荒くなる。
御坂妹「教えません。と、御坂は恫喝に屈することなく答えます。」
隣で見ていることしかできない白井は、自分の知る御坂美琴と目の前のクローンとの余りの違いに言葉を失っている。
上条「なんとも思わないのかよ……」
御坂妹「……どういう意味か判断しかねます。と、御坂は言葉の意味を問いかけます」
上条「お前達の命なんだろ!? 他人の都合で使い捨てられてなんともおもわないのかよ!!」
御坂妹「……御坂の命はこの為に生み出されました。実験のためには命が必要。だから安く作れる私達が作られたのです。と、御坂は自分の命について意見を述べます」
白井「ふざけないで!!」
いままで黙っていた白井が叫んだ。
白井「実験の為に命が必要? 安く作れる? あなた達のためにお姉さまは姿を消したんですのよ! なのに当のあなた達は……うっ……」
白井は泣き崩れる。
御坂妹「お姉さまが……」
上条「……妹。御坂はお前たちをどう扱ったんだ? 消耗品の実験道具としてか? それとも人間としてか?」
御坂妹「…………」
上条「どんな実験だろうがお前達の命を使う権利なんてない。お前はどうしたいか聞いてるんだ!」
御坂妹「私は……」
少女は初めて自分の存在を認識した気がした。
結論を言うと、上条当麻はこの後、アクセラレータを倒して実験の阻止に成功した。
そして三度病院の世話になっていた。
御坂妹「本当にありがとうごさいました。と、御坂は心からのお礼を申し上げます」
病院に搬送されたことに気づいたのは意識を取り戻した真夜中だった。そして自分の横にはおそらく今まで付き添ってくれていたと思われる御坂妹がいた。
御坂妹は今回のお礼と自身の今後について話した。どうやら実験のせいでおかしくなった自分の体を治療するらしい。
そして、
御坂妹「お姉さまのことですが、アクセラレータが関わった可能性は極めて低いと思われます。と、状況を分析した結果を告げます」
上条「どうしてだ?」
御坂妹「アクセラレータがお姉さまと戦闘を行えば実験に大きな誤差が及ぶ可能性がありました。そのため、一度アクセラレータと戦闘しかけたお姉さまを妹達が止めたこともあります。と過去の結果も踏まえて報告を続けます」
上条「……そうか」
結局また振り出しだった。
ここまでこの作品を読んでいただいてありがとうございます。
ssとして考えていたものなので地の文がかなり少ないですね。しかも自分が初めて文章で物語を書いた作品なんで、今読み返すと色々とおかしな点があって面白かったです。
ここからは作品の補足になります。特に構成内容に疑問をお持ちでないなら、読む必要はありません。
まずこの話の冒頭は8月19日、麦野と御坂が対決した日です。
それから三日後、8月22日で禁書三巻分を終えます。
原作とは異なり、上条当麻が御坂美琴に電撃を撃たれることなく比較的軽症ですんだため入院期間はかなり短いです(まあ、作者都合ですが…)。また、一方通行戦も体力が万全に近かったため、原作よりもだいぶ余裕を持って上条当麻が勝ってます。そういうことになってます。
禁書四巻分を25、26日で片付けてます。正直ここら辺はかなり無理なスケジュールに…… 上条さんごめん。
宿題は原作よりもかなり速めに見つかりましたが、調子乗ったため終わらず。夏休みの宿題ってそんなもんですよね。
禁書五巻分は御坂と海原のくだり以外は起きてます。
禁書六巻分も御坂と白井のくだり以外は普通に進行したことになってます。そういうことにしといてください。