壊れた超電磁砲   作:てるゆき

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アイテムといちゃいちゃ

 上条自身は退院後すぐにでも御坂美琴の捜索に復帰するつもりだったが、学園都市第一位アクセラレータを倒した男は治安と自身の安全確保のため学園都市を一時離れなくてはならなくなった。

上条「……本当にすまん……」

白井「いいんですのよ。本来はお姉さまの捜索は私一人で行うべきものでしたの。それに、学園都市に残る妹達が捜索に協力してもらいますし、今は体を休めると思って外出を楽しんでくださいまし」

 

白井「といって送り出した筈ですのに、どうしてあなたはまた病院のベットに納まっているんですの?」

上条「本当にすまん……」

 外出時、とある事件に巻き込まれたため、入院を余儀なくされたベットの中で上条は見舞い客の白井黒子に呆れられていた。

 

 退院後、御坂美琴の捜索に上条も復帰したが、難航していた。

白井「あなたは今日まででいいですの」

上条「まさかのクビ!?」

 復帰初日の捜索の結果を報告しあうために立ち寄った、ファミレスの中での会話。

白井「そうではないですの。実際問題として、この広い学園都市であなたの足が捜索に加わったところで効率はあまり変わりませんの。本当にあなたの力が借りたくなった際には必ず声をかけますから」

上条「本当にいいのか?」

白井「ええ。というよりも、街中走り回ってるときにその不幸体質のせいでトラブルに巻き込まれ、いざというときに入院中では話になりませんの」

上条「……」

経験上からも否定できない、耳の痛い話だった。

白井「あなたは夏休みの宿題でもやりなさいな。いえ、もう終わってるかもしれませんが」

上条「」

 

 その後、上条が宿題を見つけ出したころには夜になっていた。

上条(いまから夏休みが終わるまであと三日…… 明日から徹夜すれば間に合うかも……!)

禁書「とうま~その紙なに~?」

上条(だが、こいつに構ってたらいつまで経っても宿題は終わらん……!)

 もはや居候の食いしんぼシスターの食事を作る手間すら惜しかった。

上条「インデックス、すまないが明日から宿題をしなきゃならなくなった」

禁書「? とうまって今人探しを手伝ってるんじゃなかったっけ?」

上条「ああ、そうなんだが、もう少し進展があるまでそっちは手伝わなくてよくなったんだ。で、今度はこの宿題だ。また少しの間、構ってやれねーけど勘弁してくれ」

禁書「……むー。少しの間だけなんだよ!」

なんとか宿題に集中する許可を得た上条はこの日ゆっくり休むことにした。翌日からはきっと寝る暇などないだろう。

 

 翌日(8月30日)の正午付近、上条当麻とその連れのインデックス、そして飼い猫のスフィンクスはペット同伴可能なファミレスにいた。

 自宅にいると結局インデックスに構ってしまい集中できなかったため、漫画などを持ち込んでしばらくここでインデックスをおとなしくさせておくことにしたのだ。

禁書「とうま~!ドリンクバーに変な機械とスープしかないかも~!」

上条「……」

 完全記憶能力を持ち、魔術全般に対してとてつもない知識量を誇るインデックスだが、機械に対しては自販機でジュースを買うことすら困難な彼女にはドリンクバーの使用はできないようだった。

上条「いいか?一度しか見せないからちゃんと覚えるんだぞ?」

禁書「おお~!!ボタンを押したらジュースが出てきた~!!さすが科学の最先端、学園都市なんだよ!」

 世界中のファミレスで見られるであろうこの光景でここまで感動するレベルだ。

 上条はコーヒーを持って席に帰る途中、少し気になる他の客がいた。

上条(なんであの子机に突っ伏してるんだろう……)

 4人組の女性客で、うち一人がずっと机に突っ伏していた。

上条(ま、暑いし体調悪いのかな)

 あまり他人をまじまじと眺めるのも失礼なので、自分の宿題に集中することにした。

 しばらくして、上条はドリンクバーにコーヒーのおかわりをするために席を立つ。ちなみにインデックスはしばらくいろいろなジュースを飲み比べていたが、今は落ち着いている。

 ふと先ほどの女性客が気になってそちらを見ると、これから店を出るところのようだった。

上条(あれ?)

 そして、突っ伏してた女の子の座っていたあたりにジャージのジャケットが落ちていた。

上条「ああ、おい! ちょっと待って!」

 呼びかけるも残念なことに気づいてもらえることはなかった。

上条「悪い、インデックス。少し外出る」

禁書「ふぇ? ちょっととうま?」

 インデックスに一言だけ告げて店の外に出る。

 あまりインデックスを待たせるのも悪かったので、小走りでさっきの女の子を追う。

上条「お~い!待ってくれ!」

 4人組なのだろうが、忘れ物をしたと思われる女の子は他の子から少し遅れてふらふらと歩いていた。というか全く呼びかけに反応しない。

 仕方ないので肩に手を置き呼びかける。

上条「ちょっと!」

 女の子はようやく自分への呼びかけに気づく。

?「え……」

上条「あ、これさっき忘れ物……」

?「あなた、変……」

上条「え!?」

上条(変な女の子に変って言われた!? 俺ってそんなに変か!?)

 一瞬、変という言葉に混乱する上条だが、すぐに現実に引き戻される。

 別の女の子に手首を掴まれたためだ。

?「まさか滝壷さんをナンパする人がいるとは、超いい趣味してますね。けど、今急いでるんで今度にしてもらえませんかね」

 どうやらその子はジャージを忘れた滝壷という女の子の友達のようだった。

上条「ちょ!? 違う!! この子がファミレスに忘れ物してたから届けただけだって!」

?「? そうなんですか滝壷さん?」

滝壷「さあ……」

上条「さあ、じゃねーよ!! これあんたのだろ!!」

 掴まれてない方の手で忘れ物のジャージを差し出す上条。

滝壷「あ、私の…… 何でそれ、持ってるの?」

上条「ファミレスに忘れたのお前だろうが!!!」

?「……まあ、滝壷さんが忘れ物してたのは本当みたいですね。一応、超感謝しておきます」

 ようやく上条の掴まれていた手が開放された。

上条「ああ…… もういいよ。そんじゃな」

 なんだかひどく疲れたため、気だるげに別れを告げる。

 この後、ファミレスに戻ってから事情をインデックスに話した際に、また揉めたことは記すまでもない。

 

 ここから全力を振り絞り何とか宿題が間に合いそうな上条だったが、8月31日の夜にまたしてもトラブルに巻き込まれたため宿題を完遂することはなかった。

 

 

 9月2日。

 

 前日の侵入者騒ぎの後始末を終えつつ、白井黒子は妹達からの調査報告に目を通す。

 内容は、御坂美琴が最後に訪れたと思われる実験関連施設を特定したことについてだ。

白井(……ようやく尻尾を掴みましたの……!)

 風紀委員としてのネットワークを張り巡らせ、妹達の足を使いながらようやく得た証拠。そこを調べれば、直接御坂につながらなくともその加害者の身元が明らかになるかも知れない。

白井(……呼ばないわけにはいきませんわね)

 上条の同行について少し迷ったが、今まで世話になっていたため、呼ぶことにした。

それに、いざというときに役に立つ可能性は高い。

 

麦野「それほんとに必要ある?」

?『こいつときたら! 風紀委員なんかに現場押さえられたらやったのがあんただってバレるでしょうが!』

 学園都市第4位、麦野沈利は学園都市の暗部組織「アイテム」のリーダーである。電話の相手は一応は上司に当たるが、敬意を払う気配は一切ない。

麦野「だからなんなのよ? 風紀委員ごときが私のことを調べたからってどうにかできるわけないでしょ?」

?『まあ普通だったらそうなんだけどね…… この風紀委員は私怨で動いてて、それなりの調査力を持ってる。正直これ以上ほっとくのは得策じゃないのよ』

麦野「へぇ…… 私怨って面白いじゃない。早く言いなさいよね」

?『こいつときたらーっ! ……まあいいわ。相手はレベル4のテレポーター。おそらく今日明日中にレールガンをやったとこに現れるわ。それなりに厄介だろうから注意しなさいね」

麦野「はいはい。そんじゃーねー」

 余韻もなしにすぐに電話を切った。

麦野「というわけ。OK?」

絹旗「……テレポーターとか超相性悪いんですけど…… 私休んでていいですかね?」

麦野「あー、確かに絹旗は相性悪いわね。まあ、フレンダと私で遠距離からちゃっちゃと終わらせるからあんたは出番ないかもね」

フレンダ「確かに! 結局すぐ終わるでしょ!」

麦野「じゃあ滝壷と絹旗は一応近くに控えてなさい。万が一接近されたら絹旗、逃走されたら滝壷に働いてもらうわ。いいわね?」

滝壷・絹旗「了解」

麦野「じゃ、またあそこに待ち伏せしに行くわよ」

 

 上条と白井は夜を待ってから御坂が行方不明になったと思われる研究施設跡に侵入した。

上条「すごい状態だな……」

 その惨状はまさに破壊の限りを尽くしたようなものだった。

 コンクリートが爆散し、所々焼け焦げたあともある。そんな中でも特に目を引く破壊の後がいくつかあった。

上条「どうやったんだよ、これ……」

 丸い穴が壁や研究機材に大量に開いていた。ドリルで開ける穴に似ているが、削った後はなく熱で溶けているようだった。ゲームやアニメに出るレーザーで開けられた穴を連想させる。

白井「ほとんどお姉さまの手によるものではないですの。ここで待ち伏せされてかなり激しい戦闘になったようですわね。」

上条「……なんか施設ぶっ壊しに来たやつよりも派手にぶっ壊したんだな、その待ち伏せは」

 本末転倒といえなくもないのかもしれないが、学園都市第三位を撃退する代償としては安いほうなのかもしれない。

 白井は自身の携帯で特徴的な破壊の跡を撮影したり、爆発物の破片を回収している。

白井「……もう十分ですわ。これから犯人の特定に入りますの。今日のところはもう帰りましょう」

上条「そうだな。犯人を取り押さえるときも一応呼べよ?」

白井「今日みたいに全く必要ないかも知れないですけどね」

上条「だといいけどな……。 ……!! 白井ッ!!」

白井「えっ……」

 上条が思い切り白井を押し倒し、上に覆いかぶさる。

 それとほぼ同時に白井がもといた付近の爆弾が爆発した。

白井「これは……!!」

上条「やられた……! こいつらよっぽど待ち伏せが好きみてーだな……!!」

 入るときには全く動作していなかったが、研究施設から出ようとしたときを狙い罠が作動した。

 つまり退路を断つつもりのようだった。

白井「脱出させないような罠の配置…… どうやら完全に追い詰められてるようですわね」

上条「……白井、先に脱出しろ」

白井「!? 何を言ってるんですの?」

上条「テレポートした先にも罠があるかもしれない。なるべく急いで行くんだ」

白井「そういうことでは……!!」

 会話を遮るように青白い光が飛んでくる。

上条「ッ!!」

 そして上条は右手ですぐにそれを打ち消す。この施設で見られる奇妙な破壊の跡はこの光によるもののようだった。

上条「いいか、俺はこの右手があるからお前のテレポートで一緒に脱出はできない。だから俺は後からついていく。先に待っててくれ」

白井「……わかりましたの。ただ、無理は禁物ですのよ」

 言いながらこの忠告が全く意味を成さないであろうことを白井は理解していた。

上条「ああ、わかってる」

 白井はテレポートで脱出していくが、テレポートを使う先々で爆発が起きる。どうやら敵も自分がテレポーターであることを知った上で罠を設置しているようだった。

白井(先ほどの青白い光…… おそらくあれがお姉さまを捕らえた者の能力。使い手を調べる手間が省けて助かりましたの)

 ついに白井が建物から脱出し終えたところで、その光が白井めがけて飛んできた。一応、身をよじらせたが当たらなかったのは偶然だ。

白井「!! これは……」

麦野「全く…… フレンダのトラップ全然役に立たないじゃない」

フレンダ「えぇ!? いや、けど、そう相性!! 結局、相性が悪かった訳よ! 思ったよりこいつがポンポンテレポートするから爆弾が反応しきれなくて……」

絹旗「超見苦しい言い訳はもういいですから。今はあれをさっさと片付けましょう」

建物から出てすぐのところに4人の女が待ち構えていた。

白井(こいつらがお姉さまを……)

白井「あなた達がお姉さ……御坂美琴をおそったんですわね!?」

麦野「御坂? ああ、レールガンのことね。そーよ。ていうかほぼ私一人だけどね」

 麦野が白井の問いかけに答える。その表情はどこか自慢げだった。

白井「う、嘘ですの!! お姉さまがあなたごときに……」

 御坂は学園都市第三位の能力者だ。それがたかが一人の能力者に負けるわけがない。そう思っての発言だった。

麦野「嘘じゃないわよ。応用力は高かったけど、直接的な戦闘能力なら私のメルトダウナーのほうが上だもの」

白井「メルトダウナー!?」

 学園都市第四位の能力名だった。どんな能力かは知らなかったが、あの光の威力は確かにレベル5に値するものだ。

麦野「ま、嘘だと思うなら自分の身で味わってみなさい」

 言い終わるのと同時に白井に向けて手をかざし、2本の光を放つ麦野。

白井「くっ……」

 白井はテレポートで少しだけ移動し、その光をかわす。しかし、そこにはいつの間にか接近していた絹旗がいた。

絹旗「ッ!! やっぱ超うっとうしい能力ですね、テレポートって」

 攻撃してくる絹旗から大きく後方にテレポートして距離をとる。

 白井黒子は少し迷っていた。

白井(私の能力を使えば致命傷は与えられる。普段はあれで怪我を負わせたくはないですが、この手だれ達を相手にそんなことを考えている余裕はないっ!)

 ジャッジメントとしてなるべく相手にも大怪我をさせないように戦う白井だったが、『アイテム』の四人相手にそんな余裕はもはやなかった。

 やらなければやられる。現に彼女らの攻撃はどれも殺意に満ちている。

白井(とはいえ、命まで奪うのはさすがにできませんの……)

 それが白井にとってギリギリのライン。だが、それ以外なら相手になんでもするという覚悟も決めた。

 麦野は落ち着けば回避できる。フレンダは罠を使うのがメインと思われるため危険度は低い。麦野の後ろでボーっとしている滝壷には注意を払う必要すら感じない。そのため、まずは接近してくる絹旗にターゲットを絞る。

白井(足を狙う!)

 麦野の光線を回避しつつ、テレポートで太ももに忍ばせた金属矢を一本放つ。

絹旗「ツッ!! ……超やってくれンじゃないですか……!」

麦野「ありゃ、キレた?」

滝壷「大丈夫。これだけ離れてれば問題ないから」

見事に命中したものの、絹旗の様子がおかしい。

白井(なんですの……?)

 4人の中で最年少に見える少女だったが、醸し出す雰囲気には落ち着いたものがあった。いや、落ち着いてるというよりも安定していた。

 それが急にその雰囲気が揺らぎ、不安定さと危険性をあふれさせ始めた。

 直後、白井は驚きで目をむいた。

白井(片手で車を持ち上げた!? 何らかの能力!? いえそんなことより……!)

 放り投げられた車が落ちてくる前に白井は我に帰ってテレポートによって回避した。

 絹旗は自分の近くにあった(おそらく彼女らが乗ってきたであろう)車を片手で軽々と持ち上げ、白井に向けて放り投げたのだ。

 車は白井のいた地点でバウンドし、勢いをほとんど失わないまま研究施設跡の塀にぶつかって爆発した。

絹旗「チョロチョロとほンっとに超うざったい能力ですね」

 絹旗と白井の目が合う。

 その隙を突くように麦野の光線が白井を襲う。

白井(まずい!!)

 何とか反応して回避に成功したものの、とっさのことだったためテレポートは行えずに体制が崩れる。

 倒れていく白井の足元に何らかの人工物が転がっていた。

白井(これは……!)

 フレンダが麦野の光線に合わせて白井の足元に投げたスタングレネードだった。

 気づいたときにはもう遅く、白井の倒れた体の目前でまばゆい光とけたたましい爆音が放たれた。

白井「うっ……」

 目は閃光に、耳は爆音にやられて利かない。それでも懸命に立ち上がろうとする。

白井(このままではやられる……)

 そしてそんな白井の腹部にブーツのつま先が突き刺さる。

 麦野に蹴られたのだ。白井は蹴りの衝撃で数メートルも吹き飛び悶絶する。

白井「がはっ……!!」

麦野「あーうっさかった。どう? 目と耳が使えないとテレポートなんてできないでしょ? つーか聞こえてねーか。あっはっは!」

 そして麦野は白井の元までゆっくりと歩み寄り、倒れてる白井の腹を思い切り踏んだ。

白井「ぐうっ……! うっ……」

麦野「どうだ? そろそろ目と耳は治ってきたかにゃー? つってももう逃がさねーけどな!! ぎゃはははは!!」

 麦野のブーツが白井のみぞおちをえぐる。白井は痛みと呼吸困難で集中力が乱れてテレポートが行えない。

げらげらと笑う麦野の後ろでフレンダと絹旗がひそひそと話す。

フレンダ「いいの? なんか麦野があいついじめ始めちゃった訳だけど……」

 絹旗が白井に対して怒りを抱いてることを慮ってのセリフのようだった。

絹旗「べつに超どうでもいいですよ。それに私より麦野にやらせた方が確実にひどい目に会うでしょうし」

フレンダ「……それは間違いないね」

麦野「あんた、レールガン探してんだっけ?」

白井「ッ!?」

麦野は白井を痛めつけながら意外な問いかけをする。

麦野「ばっかじゃないの? 私のあの力食らってまだ生きてると思うわけ!?」

白井「!!」

 その破壊力は身をもって体感していた。建物を容易に貫通するあの光線を人体に食らえばどうなるか。

麦野「アイツ、空中でどてっぱらに食らって体が真っ二つになって死んだわよ。残念だったわね~♪ あんたの大好きなレールガンは腹からきったねえひもとその中身ぶちまけながら情けねえ顔で死んだよ!! ぎゃはははははは!!!」

白井「……ッ!!!」

 そのとき、研究所跡の入り口から爆発音がなる。

麦野「なァによ。フレンダ!! 何事!?」

フレンダ「うぇっ!? 罠が作動したんだと思う、けど……」

上条「おい!」

爆発で巻き上がった粉塵から一人の少年が現れる。

絹旗「あなたは……」

滝壷「!」

上条「白井から足をどけろ」

 上条のことをほんの少しだけ知っている絹旗と滝壷が反応する。

絹旗「……あなた、彼女の仲間だったんですね。これは遊びじゃないんです。首突っ込まないでください」

上条「遊びのつもりなんかねえよ。おい! 白井から足をどけろっつってんだよ!!」

 呼びかける絹旗をほとんど気にかけず、麦野と白井に向かって進む上条。

絹旗「警告です。それ以上こっちにくるなら敵と認識してあなたも排除します」

 絹旗も上条に向かって歩きながら警告を発する。

 そして上条はそれを完全に無視して突き進む。

絹旗「了解しました。超ぶっ潰します」

上条「邪魔すんな!!」

 絹旗は上条の進路に割って入り、窒素を操る拳を繰り出す。上条もそれにあわせて渾身の右クロスを打ち下ろす。

 絹旗のオフェンスアーマーは学園都市第一位の思考パターンを移植されたために、攻撃に対してかなり強固な防御力を誇る窒素の鎧を反射的に発生させる。

 自分の攻撃より早く当たるであろう上条の右クロスに対して、回避行動をとらなかったのは油断ではなく自分の力への自信だった。

 上条のイマジンブレイカーが規格外だったに過ぎないのだ。

麦野・滝壺・フレンダ「!!」

人は想定内の衝撃にはかなり耐えられるが、想定外の衝撃には思いのほかもろい。

意識の外に置いていた右クロスに絹旗の意識はあっさりと刈り取られた。

絹旗を退けた勢いそのままに麦野に突進する上条。

麦野「チッ……!!」

 麦野は舌打ちをしつつ上条に光線を三本発する。

 上条は自分に向かってくる光線のうち、一本を消しながら残り二本を潜り抜ける。

麦野「なんだとっ!?」

 麦野は破壊力に関して絶対の自信を持つ自分の能力を打ち消され、動揺する。

 その隙に上条は麦野の懐へ潜っていた。

上条「そっからどけぇぇぇぇ!!!」

 自分の全体重を乗せた右ストレートを麦野に叩き込む上条。殴られた麦野は大きく吹き飛ばされる。

上条「白井、大丈夫か!?」

白井「うっ……ええ、なんとか…… 正直、間に合わないと思いましたの……」

 白井の上体を起こさせる上条。

上条「わりい、罠が結構多くて手間取った」

白井「いいんですの。それより……」

フレンダ「麦野!!」

 フレンダが麦野に駆け寄る。

フレンダ「うわっ!?」

上条「!!」

 倒れたままの麦野から上条に向けて光線が走る。そして上条はすかさずそれを消す。

麦野「あーくそったれ…… なァんなんだよそれはァァ!!??」

 むくりと体を起こし上条をにらみつける麦野。その表情はすさまじいまでの憤怒に染まっていた。

上条「白井、俺はアイツをなんとかする。ほかを任せていいか?」

白井「しょうがないですわね」

麦野「なんとかァ!? てめえ如きにあたしがなんとかできると思ってんのかよお、オイ!!」

 上条の言葉が麦野の神経を逆撫でたらしく、怒号を発しながら上条に光線を乱射する。

上条「いけ、白井!!」

白井「言われなくてもわかってますの!」

 それを合図に上条と白井も二手に分かれる。

 上条は麦野、白井はフレンダと滝壺に相対することになった。

 白井には懸念があった。

白井(肋骨が折れてる…… 呼吸をするたび痛むのは厄介ですわね……)

 どうやら麦野に蹴られた際にできた傷のようだった。テレポートは繊細な演算を必要とする能力のため、痛みや驚きなどの刺激に弱い。

白井(一回の使用なら問題ありませんが、連続使用はかなり危険ですの……)

フレンダ「な~んか麦野に蹴られたとこが痛そうだね~♪ そんなんでテレポートできる訳?」

 脇腹を押さえる白井にフレンダが嬉しそうに尋ねた。

白井「あまりいい調子とは言えませんわね…… ただ、あなたと戦うならちょうどいいハンデですの」

フレンダ「ふ~ん。結局、まだまだお仕置きが足りなかったって訳だ♪」

 言い終わるやいなや、フレンダは白井に何かを投げる。

白井「これは……」

フレンダ「なんでしょう!?」

 白井はその一瞬にすばやく思考をめぐらせる。投げられたものの形状は? どの程度の質量か? どんな効果を及ぼすものか?

難しく考える必要はない。ヌイグルミである。

フレンダ「バイバイ♪」

 別れの言葉を言い終えるより先にフレンダは手に持つスイッチを押した。そのスイッチを見た瞬間に白井は理解する。あのヌイグルミは爆弾であると。

白井「ぐっ……」

 白井は姿勢を低くして飛びのき、なんとか爆発から逃れた。

 いや、まだ逃れたというには早かった。

フレンダ「読んでるっつの!」

 爆風の中からもう一つ爆弾が転がってきた。よける方向が読まれていたのだ。

白井「!!」

 白井のごく近くでまたしても爆音が轟く。

 

上条「白井っ!?」

 爆発音に気をとられ、上条の意識が一瞬麦野からそれる。

麦野「よそを気にしてる場合かテメェはああああああ!!!」

 それを逃さず麦野は光線を発して攻撃をする。

上条「っ!!」

 麦野の言う通り、上条にそんな余裕はない。この攻撃もすんでのところで右手をかざしてよける。

 一見単調な麦野の攻撃であったが、その破壊力は上条が学園都市で出会った超能力者の中でもトップクラスだ。

 上条の右手は超能力、魔術などのあらゆる超常現象を打ち消すイマジンブレイカーを持っていたが、かざしたその手をはじいて体を貫かんばかりの威力だ。

上条(すげえ威力だ……! 気を抜いてたら右手がはじかれそうになる……!)

麦野「チッ!!」

 上条の右手に何らかの力があると見て麦野は出力を上げて光線を撃っていた。

麦野(どうやら出力を上げてもあの右手は消し飛ばせない…… なら)

麦野「こいつはどうするよ!?」

上条「!?」

 麦野は懐から一枚のカードを取り出した。それは紙ではなくガラスのようなものでできていた。

 そのカードを宙に投げ、落下してきたところに光線を放つ。

上条(ビームが、割れた!?)

上条「まずい!!」

 麦野の放った光線はカードを通ると一気に複数に分かれた。

 

フレンダ「……やった?」

 もくもくと爆煙の立ち込める中、フレンダは白井黒子の安否を確かめる。

 煙の晴れたところには白井黒子の履いていた革靴が片足分だけ転がっていた。

フレンダ「ぃやったーーー! 目標撃破ーーー! にゃははははーーーーっ!! 結局テレポーターも私にかかればたいしたことない訳よ!」

 有頂天になっていたフレンダだったが、残念なことに白井黒子はそこまで容易な目標ではなかった。

滝壺「フレンダッ!!」

 滝壺の警告に反応できない油断しきったフレンダの首根っこを、背後から白井が掴む。

白井「ぬか喜びご苦労様ですの」

フレンダ「うぇっ!?」

 テレポートでフレンダの体を仰向けに浮かせ、そのまま襟を掴んでしたたかに地面にたたきつけた。

フレンダ「グゥッ!」

 フレンダは後頭部を強打して失神した。

白井「……テレポートが万全でないことは事実でしたの。だからってあんな手にそう何度も引っかかると思われるのは心外ですわ」

 白井はそのまま滝壺に視線を向ける。

白井「あなたはどういたしますの? やるというならお相手しますが」

滝壺「……降参」

白井「……戦力外と思ってはいましたが、本当に無抵抗ですのね」

 これで麦野以外の戦力は沈黙した。

白井は上条の援護をすべきか一瞬考えたが、今の体ではあの破壊の嵐をさばくことはできないと判断し、傍観するしかないという結論に至った。

 

 光線を拡散させる戦法は上条に対して大いに有効だった。

麦野(アイツが能力を消せるのは右手だけだ!)

 その証拠に上条は光線を全て打ち消すことはせず、致命傷を回避しながら全速力で駆けずり回っていた。

上条(やばい、このままじゃジリ貧になる!)

 リスクを覚悟しなければならない。そうでなければ上条はいずれあの恐ろしい光線につかまる。

上条(やるしかねえ!)

 無数に分かれた光線を紙一重でかわしたあと、上条は一直線に麦野に向かう。

上条「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

麦野「やけになって暴走か!? いい度胸だ、消し飛ばしてやるよ!!!」

 走ってくる上条に向けて二枚カードを放る麦野。すかさずその横から青白い光が迸る。

上条(あのカードを投げるってことはそれに向けてビームを撃つってことだ。なら……)

上条「避けられる!!!」

 二枚のカードのうち上条に近い一枚を大きく踏み出した一歩でかわす。

 そこを正に上条の顔の横を光線が横切り、避けたカードに当たって分裂した。そして上条は右手の指を精一杯広げながらもう一枚のカードに向けて手をかざす。

 光線はカードに当たり分裂した。だが、拡散しきる前にほとんど上条の右手に消され、消えなかった残りの光線も上条からことごとく外れる。

麦野「なんだとっ!?」

上条「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 そのまま減速することなく麦野に向けて走る上条。右手は大きく振りかぶっている。

麦野「テンメエエエエェェェェェェェェェェェ!!」

 すさまじい形相で上条を睨みながら叫ぶ麦野。その横には今にも光線になって上条を射殺そうとする光の粒が無数に現れる。

 しかし、それらが放たれるよりも早く上条の右手が麦野の顔面を捉えた。

麦野「ガフッ!」

 衝撃に吹き飛ぶ麦野。意識は飛んでないらしく、両手と膝を地面について体を支えていた。

麦野「はあっ……はあっ…… よくも、あんた如きがあたしの顔を、二度も殴ってくれたわねぇ」

 とはいえダメージは深いようで強気なセリフを吐きながらも光線を上条に放たない。

上条「言え。御坂をどうした」

麦野「……っ、あんたもあのクソガキの情報をご所望ってわけね」

 観念したのか麦野は地面に座りながら上条に向き合う。戦いが終わったのを見て白井も上条に駆け寄る。

麦野「殺したよ」

上条「っ!」

麦野「そっちのガキには言ったわよねぇ? 体真っ二つになって死んだって」

白井「……」

 麦野は歪んだ笑みを浮かべながら二人に語りかける。白井の表情が殺意に染まっていく。

麦野「死体は暗部組織の下っ端共が片付けて行ったわよ。そのあとどっかの焼却炉持ってって灰も残らないくらいしっかり焼かれたんじゃないかしら? ぎゃははははは!!」

 大きく笑い声を上げる麦野。白井は目に涙を溜め、怒りのせいか悲しみのせいか肩を震わせている。

麦野「馬鹿なヤツよねぇ? 何の苦労もしないで育ったお嬢様が半端な気持ちで暗部に首突っ込んで死んだんだから」

白井「……あなたなんかに、なにがわかるんですの」

 声を震わせて白井が反論する。

白井「お姉さまは、学園都市に利用されて消えていく自分のクローンの命を救おうとしたんですのよ!? 黙って見過ごしたっていいのに!!」

麦野「結果自分が死んでりゃ間抜けな話だろうが!」

白井「お姉さまを侮辱するなっ!」

 白井はにやける麦野に向かって金属矢を投げようとする。それと同時に麦野もダメージが抜けたのか、白井に光線を撃つ。

上条「白井っ!!」

 反応した上条が白井を突き飛ばす。すんでのところで光線は外れた。

麦野「偽善者が安っぽい正義感でこっち側きてんじゃねェよ!! この世界はそういう薄汚いモンの上にできてんだよ!」

上条「……お前の言うことは正しいのかもしれない」

白井「!?」

上条「けど、だからって御坂や白井は中途半端な気持ちじゃなかった。こいつらの幻想をお前なんかに踏みにじらせたりはしない!!」

麦野「ほざくな偽善者アアアァァァァァ!!」

 二人の距離はわずか。麦野に能力の照準を合わせてる時間はなかった。

 上条と麦野の腕が交差し、今度こそこの戦いは終わった。

 最後まで立っていたのは上条だ。

 とはいえ上条は途方に暮れていた。

上条(御坂を探していままでやってきたのに……)

 結局捜索は最悪の形で終わった。御坂は死んでいた。遺体を弔うことすらできなかった。

上条「ちくしょう……」

 うなだれる上条の視界の隅にのそりと立ち上がる白井の姿が映った。

上条「白井……? やめろっ!!」

 上条は白井に掴みかかる。麦野を殺そうと金属矢を構える姿が見えたからだ。

白井「放しなさい!! そいつはお姉さまをっ……!!」

上条「放さねえよ! そんなことしたって誰も喜ばないだろ!! 御坂だってそうだ!!」

白井「あなたなんかがお姉さまはわからないですの!! お姉さまは、お姉さまは……」

 言いながら泣き崩れる白井。

上条「……たしかに、お前に比べればたいしたことはわかんねえよ。けど、お前を見てればわかる」

白井「……ぇ?」

上条「お前みたいなヤツに心から尊敬されるようなやつなんだろ? そんなヤツが自分のための復讐で後輩の手を汚させたらきっと悲しむ」

白井「……」

上条「御坂を救うことはできなかったけど、だからってこれ以上この事件で犠牲者を出すのはだめだ」

 それきり白井は黙り込んでしまったが、上条の意思を汲んでくれたようだった。

「殺してない」

 急に響いたその声に上条は大いに驚いた。

上条「お前っ!!」

麦野「もうやる気はねえよ。これから言うことは信じても信じなくてもどっちでもいい。あたしの独り言よ」

上条「なんだと……?」

 仰向けに倒れながら麦野が語り始める。白井は麦野に敵意を向けながらも耳を傾けているようだ。

麦野「レールガンとあたしは根っこの部分で同じ能力者だった。だからあたしはヤツの電撃を避けられたし、あたしのメルトダウナーもヤツには通じなかった」

上条「…………」

麦野「だから攻撃の仕方を変えた。瓦礫でヤツを直接攻撃したのよ。降ってきたコンクリートを避けきれずに頭に食らってヤツは気絶した」

上条「!!」

麦野「別にそこから殺してもよかったんだけどね。ヤツはレベル5だから莫大な研究価値がある。つまるところ高く売れたんだ」

上条「それじゃあ……!!」

白井「お姉さまは!」

麦野「どこにいるかは知らないけど、運がよければまだ生きてる可能性がある。勘違いすんなよ。生きてるって知らせたほうがあんたらを苦しめられるって思ったから教えたのよ。せいぜい苦しみなさい」

上条「……ありがとう。望みがつながるだけでもすげえ助かる」

白井「……」

麦野「ふん。あんた、名前は?」

上条「え? 俺か?」

麦野「そう、あんた」

上条「上条当麻だ。お前は?」

麦野「麦野沈利」

上条「じゃあな。行くぞ白井」

白井「……ええ」

 上条と白井は麦野に促されて立ち去ろうとする。白井はいまだ気を抜かず麦野に注意している。

 そんな二人に滝壺が駆け寄ってきた。

滝壺「麦野を殺さないでくれて、ありがとう」

上条「え!? あ、どういたしまして……」

白井「なに照れてるんですの。早く行きますわよ」

上条「あ、ああ。わりい」

そしてようやく二人は去って行った。

 

麦野「上条……当麻……」

 麦野がぼそりと呟く。

麦野「ぜぇったいにぶち殺す……!」

 

白井「いろいろありましたけど、ひとまずお姉さまが生存している可能性があってよかったですの」

上条「あとはどこにいるかだな。調べられそうか?」

白井「……無理ではないでしょうね。ただ、かなり難しいのは間違いありませんの」

 実のところ、今のところ白井は初春飾利の力をほとんど使っていなかった。彼女も御坂の行方を心配するものの一人だったが、巻き込むにはかなり危険な事件だったため積極的には関わらせずにいたのだ。

白井(しかし、今回はさすがに初春の力なしに探し出すのは難しそうですの……)

上条「……実は居所を知ってるかもしれないヤツに心当たりがある」

白井「本当ですの!?」

上条「いや、可能性はかなり低いんだけどな」

 というより、上条にとっては知らないでいてくれたほうが嬉しいと言えるかもしれない。

上条「明日、聞いてみる」

上条当麻の周りの事件を把握している男。自称魔術サイドと科学サイドの多角スパイ。

土御門元春なら。




 思いのほか長くて驚きました。白井さんマジヒロインですね。これ書きはじめた当初は白井人気ってゲテモノ的な扱いだと思ってたんですが、書いてみて細かいところの可愛らしさに気付いてだから人気なのかって納得したりしました。
 むぎのんもかわいいよ。振り切れてて楽しい悪役ですしね。

 終了一歩手前ですが、残念ながら話はここで中断です。一応この後の話も考えてるんですが、オリキャラを出すことになりそうで設定やら展開の発想に迷いが出ちゃって書けないでいます。いつかは書きたいんですけどね……
 ただ、一番書きたかった麦野と上条さんの絡みやアイテムの面々を書けて個人的には満足しちゃってるのも事実です。
 FC2の方にはこの一つ先の御坂の出番もあるんですが、上記の理由でこちらでは掲載しないでおきます。
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