(・∀・)おさけ!
朝晩の冷え込みもだいぶ収まってきたこの季節。満開だった桜は一斉に散ってしまい。今はもう青々とした葉しか残してはいない。
昔、子鬼が起こした異変では花なんて咲いてはいないのに、皆でお花見をしたこともあったね。懐かしいものです。
一斉に咲き誇り、一斉に舞い散る。そんな桜の潔さが昔から日本人には愛されてきた。
桜の終わりは春の終わり。もうすぐ人里でも田植えの始まる時期なんじゃないかな。春の始まりと共に籾を撒き、暖かくなるまでになんとか芽を出してもらう。きっと土の見えていた米畑にも水が入れられ、水田となる日も近いはず。
お米、それは日本人の主食として愛され、これからもそれは変わらないだろう。
「お邪魔するわよ」
「や、いらっしゃい霊夢」
店の扉が開くと、暖かな風が店内へ広がった。夏の香りはまだしないけれども、それもきっとあともう少し。
「珍しく呼ばれたから来たけれど、今日はどうしたの?」
「ん~……たぶん、これが最後だからねぇ。どうせならと思ったんだよ」
「うん?どう言う……意味?」
そう言う意味なんです。
博麗神社へ行くってのも考えてはみたけれど、やはり面倒くさいもの。
さて、今日はお米のお話。ただ、お米のお話と言ってもちょいと幅が広すぎる。だからその中でもお酒について話そうかな。
お米から作られるお酒には、日本酒や米焼酎なんかがあるよね。ただ、今日は日本酒のお話をするのです。米焼酎はまたいつか。
「てなわけで、今日は皆大好きお酒の日です」
「どんなわけよ……」
萃香も呼んであげれば良かったけれど、最後はやっぱり博麗巫女の方がしっくりくる。
お酒と言っても、醸造、蒸留、混成酒と種類は様々。
んじゃあ、その三種類について説明するね。まず醸造酒ってのは日本酒やワイン、ビールのことで、原料をそのまま、もしくは糖化させたものを発酵させたもの。
次に、蒸留酒だけど代表的なのは焼酎やブランデー、ウィスキーがあるよ。この蒸留酒と言うのは、醸造酒を蒸留させ、アルコール分を高めたもの。日本酒を蒸留すれば米焼酎に、ワインを蒸留すればブランデーに、ビールみたいなものを蒸留させればウィスキーになる。
最後に、混成酒についてです。混成酒ってのは梅酒とかリキュールのこと。主に蒸留酒へ果実や香草なんかを入れて香りを加えたり、糖分を増やした物だね。
そして、今日は醸造酒である日本酒についてのお話です。
「あら、じゃあ今日は料理はなし?」
「いや、お酒だけじゃあつまらないし、適当におつまみは出すよ」
桜も散ってしまったんだ。お酒以外にも何かなければ寂しいものね。
まぁ、残っているのは枝豆と干し肉くらいしかないんだけどさ。
二種類の常温の日本酒をコップに注ぎ、霊夢へ渡す。
「どうして二つも?」
「一つは辛口の日本酒。もう一つは甘口の日本酒だよ。まぁ、ちょっと飲み比べてみてよ」
日本酒が好きな年配の方に甘口と辛口、何方が好きか尋ねるとほとんどの方は辛口と答えると思う。どうして、辛口が好まれるのかそんなお話をします。
「ん~本当にこれって甘口と辛口なの?違いがわからないけど。強いて言うのならこっちの方がさっぱりしているかしら」
そう言って霊夢は辛口の日本酒が入っていたコップを指差した。
まさか全部飲み干すとは思っていませんでした。なみなみ注いだわけではないけれど、別に全部飲まなくても良かったんだけどなぁ。まぁ君、お酒好きだもんね。あとでちゃんとおつまみ持ってくるよ。
「うん、そうだね。辛口と甘口の違いはそんなもんだよ。霊夢が言ったように、辛口の方がスッキリとした物が多いし、甘口の方が深みのある物が多いんだ」
「そうなの?」
「そうなの」
日本酒の甘口と辛口と言うのは、味覚的な甘い辛いで分けられているんじゃなくて、日本酒度ってので分けられているよ。日本酒度が高ければ甘口に、低ければ辛口と言った感じ。
だから、日本酒は果実のような甘さを感じても日本酒度的には辛口に分類される物もあるんだ。
話を少し戻して、辛口が好まれる理由だけど、第二次世界大戦後の日本は非常に貧しかった。ちゃんとした日本酒なんて高くて買えないし、そもそも作れない。だから、一般の人たちが買えるような日本酒が全国で造られたんだ。それは三増酒って呼ばれるもので、それは普通に造られた日本酒へ糖とアルコールを入れて三倍に薄めたお酒。
そんな三増酒が日本では、地酒ブームが来るまで数十年ほど飲まれ続けた。
そんな飲まれ続けていた三増酒だけど、糖を加えていたせいで、今の日本酒と比べてとても甘かった。口の中に粘っこい甘さ残り、どうしても飽きてしまう。そして、戦後の貧しさが消えていくとともに、この三増酒も徐々に消えていったよ。
やっぱり皆、さっぱりとした味わいの日本酒が好きだったってことだね。
甘口の日本酒、なんて言われると、どうしてもこの三増酒のことを思い出してしまう。だから、辛口の日本酒の方が好きと言う人が多いんだ。まぁ、それもきっと時代の流れとともに変わっていくと思うけど。
日本酒の甘口と辛口にはそんな歴史があったのです。
さて、そろそろ僕もお酒を飲もうかな。話だけじゃあお腹は膨れないのだから。
「珍しいわね。あんたが昼間からお酒を飲むなんて」
「たまには、こう言うのも悪くはないさ」
食べる物のことを知れば、いっそう美味しくなることもあるけれど、それが邪魔になることだってある。料理において雑味は大切。けれども、雑味ばかりが多くては料理の味を曇らせてしまうもの。
少しのおつまみと、2升ほどのお酒を持って霊夢の隣へ座る。日本酒は精米歩合四割五分純米大吟醸淡麗辛口。最後くらいは贅沢にいきたいものね。
「そう言えば、賽銭箱へキノコを入れた犯人は見つかったの?」
「いつの話をしているのよ……それならだいぶ前に捕まえたわ」
ああ、魔理沙もバレちゃったのか。賽銭箱だけは手を出しちゃいけない神域だものね。仕方が無いね。
霊夢との談笑を交えながらお酒を一口。吟醸香が口の中へ広がり、鼻を抜けていく。さらりとした喉越しとスッキリとした味わい。
うんやはり美味しい。こりゃあ、飲み過ぎちゃうね。
「……美味しいわね。このお酒」
そりゃあ、高級品ですから。これで美味しくなかったら悲しいです。
安くても美味しいお酒は沢山あるし、高くても口に合わないお酒だってある。けれども、値段の高いお酒にはそれなりの理由があって、それは決して悪い理由なんかではないはず。
値段の高いお酒と言うのには貴重だからとか、珍しいからとか言うだけではなく、造り手の思いだってちゃんと込められているんだ。
ま、値段だけが全てとは言わないけどね。
悲しいことに美味しいお酒はなくなるのも早いもの。
2升も用意したはずのお酒はなくなり、残すは僕と霊夢のコップにあるだけ。ホント、君はお酒が好きだねぇ。
「むぅ、やっぱりあんたお酒に強いわね。顔色とか全然変わってないじゃない」
流石の霊夢と言えども、アルコールが回り始めてきたのか、その頬は少しばかり赤みを帯び始めていた。
桜の葉々と晩春の香り。暖かな風に誘われて、ちょいと頬染め話落とすも悪くはないはず。
過ごしやすい季節となりました。
「まぁ、それなりに永く生きているからね」
「関係あるの?」
「ないかもね」
「ふふっ、なによそれ」
残すお酒は最後の一口。できるなら味わっていただきたいものです。
たった一口だけ残されたお酒が入ったコップを、霊夢へ向けて軽く持ち上げる。
そう言えば、まだ言っていなかったものね。最後になっちゃったけれど、やっぱりお酒の席なら一度はしておかないと。
僕にならって霊夢も同じようにコップを軽く持ち上げた。
「「かんぱい」」
「それじゃあ、私は帰るわ」
楽しかったお酒の席も、お酒がなくなれば終わってしまう。悲しいことではあるけれど、それは仕様が無い。
「うん、気をつけて帰りなよ」
霊夢の頬もだいぶ赤くなっている。飲酒飛行には充分ご注意くださいな。
う~ん、それにしてもこれで霊夢ともお別れか。きっともう会うこともないだろうし、寂しくなるねぇ。
「…………」
帰ると言ったはずの霊夢が何故か此方をじっと見つめていた。
どうしたのかしら?
「どうかしたの?」
「……今日はいつものように『うん。また、いつか』って言わないのね」
おろ、随分と勘の鋭いことで。
流石は博麗の巫女さん。
「そう言う気分なんだよ」
この幻想郷にも随分と長い時間居てしまった。確かに楽しい時間ではあった、でも、そろそろ体を動かしたい気分。ものぐさな性格ではあるけれど、今は外の世界をふらふらと旅をしてみたい。
「そう言う気分、ねぇ……」
そんな言葉を残し、霊夢は僕に背を向け、店の出口へと向かって行った。
しかし、扉を開けたところで、また霊夢は此方を振り返った。
「一応、言っておくけれど、あんたと出会えて、私もそれなりに楽しかったわよ……さようなら」
霊夢にしては珍しいセリフ。もしかして酔ってる?
……うん、僕も君と出会えて楽しかった。
さようなら。楽園の素敵な巫女さん。
ぱたんと扉が閉まり、これで店内に残っているのは僕だけとなった。
さて、と。
それじゃ、そろそろ僕も準備をしようかね。アルコールが残り気分が良い時にやっちゃいたいもの。
そう言う気分なんです。
読了お疲れ様でした
お酒のお話は違う作品でがっつりと書かせていただいたので、書けるかどうか心配でしたが、予想以上に筆が進んでしまいました
お酒の力はすごいものです
これで、この作品もあと1話を残すのみとなりました
次話は、短めになる予定
では、次話でお会いしましょう
感想・質問何でもお待ちしております