我が本丸にも、ついにレア太刀なるものの一人が来ました
江雪さんを近侍にすると、精神がゴリゴリと削られます
今回は思いっきり捏造はいるので、閲覧にはご注意ください
「おい、あの女審神者……」
「ああ……白い羽織に、長い黒髪。間違いない」
「三条派の好感度のカンスト具合……奴だ」
緑の黒髪を靡かせる、演練の
〜・〜・〜・〜・
見え見えの奇襲など、間抜け過ぎて調子が狂う。
三月は内心、そうこき下ろしながら、敵陣の攻撃を見抜きながら、次の指示を喉を震わさずに出した。
自陣の刀剣たちは、当たり前だと言わんばかりに完璧に相手の奇襲を対処した。
「清光ゥゥウゥ!!!!!!!!!!」
相手の審神者が、己の最後の一振りの名を喉を潰さんばかりに叫ぶ。
大した信頼だ。三月は感心しながら、冷静に今剣と加州清光の一騎打ちを見た。
だが、この勝負、こちらの勝ちだ―――
上段からの突きを最低限の動作で避け、剣先が見えなくなるほど鋭い一撃を繰り出す。
それは加州の鳩尾を迷いなく貫き、試合終了の合図である金が鳴り響いた。
「っはっはっはっは。よきかなよきかな」
今回の勝負で、一番の武功を上げた三日月は返り血をそのままにホケホケと笑った。
血生臭い装いとは裏腹の暖かな笑顔に、他の刀剣達の背筋が凍りついたのは三月の知らぬことだ。
「まーたじいちゃんが誉か。俺も桜散らしてみたいぜ」
「ま、万年刀装剥がしの獅子王さんじゃ無理ですよ!」
「何だと! 鯰尾!!」
「でも、みかづきばかりがととさまにほめられるのは、おもしろくないです!」
「俺も主になでなでしてほしいなぁー」
「ほたるくんは、きのうしてもらってたじゃないですかー!」
プリプリと怒る今剣を獅子王と鯰尾が宥めながら、演練場を後にした。
三月は報告なり申請があると言い、席を外している。
三日月と鶯丸の爺組は、カフェテリアの様な場所で茶をしばいており、相変わらずマイペースだ。
オオカネヒラ、オオカネヒラという単語が一分に二回ほど聞こえ、よく話のネタが持つな……と孫組は生暖かい目で見ていた。
「あれ? お前ら、三月のところんの刀剣じゃねぇか。こんなところで何してんだ?」
「おっ、今日もお熱いですねー! よっ! あんみつの旦那!」
「よお、鯰尾。今日も引きちぎりてぇほどアホ毛が元気良く立ってんな。黙って頭差し出せ、一思いに済ましてやる」
「ギャ――――ッッ!!!!!!!!」
「なにあれ、アホっぽーい」
「ほたるくん、それはいっちゃだめですよ」
粟田口の刀剣とよく似た七部袖の軍服の上に、新撰組のダンダラ羽織を纏った青年は鯰尾のアホ毛を鷲掴みにした。
ちなみに、主にくっついてきたあんみつこと、加州清光と大守安定は冷めた目で二人を見ていた。
「お前ら、あれ止めなくていいのかよ」
「ん? 俺らの演練ももう終わったし、だいじょーぶ」
「主が楽しそうなら、僕は構わないよ」
「鯰尾の頭皮が構うんだけどっ!!?」
「ま、海堂さんが通りかかったら、止めてくれるだろうよ」
「雪海君は無理そうだなー。むしろ、あの文系ゴリラが殴りこみに来そうだけど」
「ぼく、おなかすきました」
「俺も俺もー」
「お前らマイペースすぎない!!?」
鯰尾の頭皮は、万延生まれの旧日本海軍大佐の海堂昌幸に救われたそうだ。
~・~・~・~・
嫌な気だ。三月の背筋に冷や汗が流れた。
石切丸ほどではないが、一応神秘の横行した平安時代を生きた魂を持つ者として、多少の霊気の流れは見ることはできる。
三月は不快さを隠さずに、前にいる青年に睨めつけた。
「何のつもりだ。態々、私に会いに来るなど……お前らしくもない」
いつもの穏やかな表情は消え、凍てつくような視線を投げつけた。
だが、青年はその視線を笑顔でかわした。
「どうしたも何も……僕は政府の善良な役人ですよ。審神者の様子ぐらい観に来ても、不思議じゃないでしょう」
「ハッ。どの口が言うか。あまり人を馬鹿にしてもらっては困るな」
「あっははは。面白いこと言いますねぇ。さすが、平安生まれは言うことが違う」
青年は、心底人を馬鹿にした様な視線を三月に向けた。
数年前、初めて会い、拉致された時から青年のことを三月は気に食わなかった。
否、許容できるはずないのだ。
己しか知るはずのない情報を何処からともなく嗅ぎつけ、人の傷を抉り、他者を見下すことしか出来ない青年を、三月は心底嫌っていた。
「そうそう。お一つ、お話があります」
青年はニコニコと笑いながら、道化を演じた。
その姿が、三月に更なる苛立ちを与えた。
「近頃、違法運営本丸……通称、ブラック本丸が増えているそうです。気をつけた方が良いですよ」
「は……?」
青年は唇に人差し指を当て、蠱惑的に笑った。
勇ましいだとか、凛々しいといった言葉とは無縁の中性的な顔立ちに、良く映える笑みだった。
「覚えておいてください。政府は一枚岩じゃない。……もちろん、審神者もね」
「ッ!!?」
「特にあなたはあちらの方々から狙われやすい。本気で気をつけないと殺されますよ」
――あなたの作品を無かったことにしたくないでしょう?
青年は三月の耳元で囁いた。
ゾワリと背中が粟立つのを感じ、無意識に自分の腕を抱いた。
気づかない振りをしていたことに、気づかれていた。
どうしてこいつは何もかも知っている。
「おい、ミツバ」
三月は青年の名を、縛り付ける思いで呼んだ。
ミツバは三月の声に、ひどく歪んだ笑みを浮かべた。
三月は嫌悪以外の感情が篭った目で、ミツバを見上げた。
「私を見くびるな。歴史修正主義者の一人、二人倒せなくて何が審神者だ。
自分の打った刀一振り守れなくて、刀工など名乗れるか!!」
在りし日の記憶が思い浮かぶ様だった。
玉鋼から立派な刃となる日まで、ずっと見守ってきた。
そんな彼らを無かったことにする? ふざけるな……!!
「もう、何も奪わせやしない! 私の手が届くものは全て守りきる!!」
一度目の生は炎に焼かれ、死んだ。あの熱さは今でも覚えている。
熱さで飽和した頭で感じる、強い強い恐怖。足先から徐々に消えてゆく感覚。息を吸うたびに喉を焼く熱風。
遠ざかっていく三日月。その涙すら拭うことが出来なかった。
今思えば、あれも歴史修正主義者の攻撃だったのかもしれない。
厄介な三条派の始祖である私を屠れば、歴史は変わると思っての行動だったかもしれない。 だが、我らは消えず。
「ふっ……ッハハハハハ!!! 随分と、強欲ですねぇ! これだから、あなたを突くのはやめられない!」
「おい」
「嗚呼、すごく面白いですよ。あなただって、一歩間違えれば、あちらの人間だっただろうに。それでも此方に来ますか」
「無論だ」
「修羅の道だとしても?」
「そんなもの、とうに越えてきた」
ミツバはまた腹を抱えて笑った。
こいつのツボが分からないと、三月はため息を吐いた。
そのまま三分は笑い続け、涙があふれる寸前までミツバの息は上がっていた。
「素晴らしい心構えですね。ですが……」
――実際に鬼と対峙した時、あなたはまだ同じことを言えますか?
~・~・~・~・
「…じ……主!!」
「!!」
うっかりしていたと、三月は額に手を当てた。
数ある審神者の仕事でも、一番集中していなければならない鍛刀で上の空になるなど、初めてであった。
三月は頭を振って思考をリセットした。
近侍である一期一振には、訝しげな目で見られたが仕方あるまい。
予め決めらた量の資材と差し入れの金平糖を鍛冶場妖精さん渡すと、愛らしい仕草で敬礼をしてくれた。
ちなみに、本丸にいる妖精さんは審神者達の密かな癒しだ。
「四時間……ですか? 見たこと無い数字ですな」
「ああ、一期は見たことなかったか。一応、三日月と同じ時間で稀有な太刀がでる時間だ」
「そうなんですか」
審神者が刀剣男士を仲間にする方法は二つある。
一つは、戦場で刀剣男士の本体を手に入れ、それに宿る付喪神を顕現させる方法。
もう一つは鍛刀する方法だ。この方法は比較的、顕現しやすい刀剣が出てくる。序盤では重宝される方法でもある。
しかし、一般的にレアリティが高いとされる刀剣が出てくる確率は低い。更に、鍛刀出来たとしても、それを顕現できる能力を持ち合わせていないということが多々ある。
政府はその状況をみて、次の当別措置を設けた。
『レアリティの高い刀剣を顕現できる能力を持ち合わせ、更にその刀剣を所持していない本丸の審神者に限り、政府から許可された刀剣の鍛刀レシピを開示する』というものだ。
しかもそのレシピというものが凄まじく、必ず許可された刀剣が出てくるのだ。
「よし。こんなところでいいだろう。戻るか、一期よ」
「はい。そういえば、燭台切殿がお探しになられていましたよ」
「燭台切が? あい分かった」
三月は紺色の袴に付いた汚れを、軽くはたいた。
汚いまま本丸に行くと、歌仙や燭台切に怒られると三月がぼやいていたことを思い出し、一期一振りはクスリと笑った。
「? 一期、お前も顔が汚れているぞ。こっちに………ッ!!!!??」
突如、世界が揺れた。
長引くことは無かったが、大きな揺れに鍛刀小屋のものは全て床に打ち付けられ、ガラスは割れた。
あまりの衝撃に、三月は立つことすら叶わず、床に座り込んだ。
「主!! 大事ありませんか!?」
「問題ない……と言いたいところだが、このとおりだ。重たいものは持てそうにもない」
三月は血の滴る左手を振り、一期一振に見せた。
ガラスの散乱する床に手をついたからか、深く切れていた。
「しかし、どうなっている。本丸で地震なんか、起きるはずないぞ」
「鶴丸殿の悪戯……の可能性は低いですね。ゲートの不調でしょうか?」
「否、不調というよりかは……」
「お嬢!! 無事かッ!!?」
「! 薬研か!」
酷い有様の鍛刀小屋に飛び込んできたのは、一期一振の弟刀の薬研藤四郎だ。
良く見ると、薬研にも細かな傷がたくさん出来ていた。
「敵襲だ!!! 今すぐ逃げろッ!!!!」
「敵は検非違使だッ!!!!!!」
ケビーンッ!!!!!!!!
貴様のせいで、短刀脇差ちゃんのレベリングがうまくいかんのじゃ―――!!!!!!!!
はい、皆大好きケビンさんが出ましたね
一面全てにダンゴムシマークがでたので、もうケビンもとい運営さんとは和睦できそうにもありませんね
さて、途中で出てきた万延生まれの旧日本海軍大佐の海堂って誰と思った方
本当は、前回で登場するはずでしたが、一気に三人も出すと、くどいだろう思いまして、登場させませんでした
実際、書いてるほうもくどかったです。すいません
なので、おまけという形で、三月と海堂さんの出会いを書きたいと思います↓
三条三月という自我は、この世に意識のある時間はおよそ九十年ぐらいである。
だが、その精神は老成するところまで老成し、ありとあらゆることを柳のごとく右へ左へと受け流す強靭さを持ち合わせていた。
しかし、その三月でも受け流せないものに直面していた
おそらく本物であろう黒い詰襟の軍服は、旧日本軍のものであることは三月にも分かった。
いったい、どうしてこんなところにいるんだ……?
そんな疑問を持った三月は恐らく間違っていない。
「日本帝国海軍大佐、海堂昌幸と申します。以後、お見知りおきを」
「あ、ああ……私は三条三月だ。こちらこそ、末永くよろしくお願いします」
三月は、海堂の完璧な敬礼に圧倒されていた。
凛々しく引き締まった表情に、スラリと背の高い体躯の持ち主である海堂は、本人に自覚は無くとも、威圧的になってしまい、日本人女性の平均的な体格よりやや小柄な三月は非常に威圧感を感じていた。
「? それは、軍刀か?」
「ええ。少将昇格の祝いに、上官から贈られたものです。まぁ、無駄になってしまいましたが」
「……見せてくれぬか?」
「え、ええ。かまいませんが」
「何。これでも、目利きの腕は天下一品だと自負しておる」
「いえ。あなたは日本刀にしか興味が無いのかと思っておりましたが、違うみたいでした」
「この日本にも、剣と呼ばれるものはあるよ。私はその全てを知りたいだけだ」
三月はそう言い、微笑んだ。
海堂は目を少し見開いたが、すぐに軍刀を三月に差し出した。
「ふむ……軍刀にしては軽いな。それにバランスもいい。『豚も殺せぬ昭和刀』と嗤われたものとは全く別物だ。少し刀身が薄めに作られ、振りの速さを追求したものか……使い手の技量が試されそうな刀だ」
「分かりますか?」
「ああ。これは素晴らしい。名刀とも勝るとも劣らない傑作だ!」
刀好きがいい方向に傾いたかは分からぬが、この会話がきっかけで二人の仲がグッと縮まったのは確かであった