ついに、サーバー難民から解放されます
やったね!
2205年、現代。“歴史修正主義者”の活動は激化の一歩を辿っていた。
もともと、歴史修正主義とは歴史学において、新しく発見された資料や既存情報をもう一度見直し、歴史を叙述し直すことに重きを置いた試みのことである。
例を挙げると、聖徳太子は実在したのか、鎌倉幕府の始まりは1192なのか、ということだ。
しかし、現代に蔓延る歴史修正主義者は、自分に都合の良い様に歴史を捻じ曲げるのだ。
最初は、耳障りの良いことを主張していた。
2105年、タイムトラベルが実現し、限られた人達ではあるが過去へ行けるようになったその時から、
人が消え始めた。
恐ろしいことだった。
何時もどおりに会話をしていた友人が、ある瞬間を境に忽然と消えるのであった。
しかし、消えたことには誰も気づかず、元から存在していなかったかの様に、周りは生きていくのだ。
目の前で友人が消えたとき、三月は理解した。
過去を変えるということは、非常に恐ろしいことだということを。
人は成す術なく、歴史修正主義者に百年間、いいようにされ続けてきた。
しかし、五十年前、一人の霊能力使いが歴史修正主義者の使役する歴史の異物を討ち取った。
それから、政府は歴史の異物を討ち取る為に、“時空管理局”というものを設立し、政府は霊能力者が討ち取った際に使役していた刀の付喪神を参考にして、歴史修正主義者に対抗しようとした。
名刀に憑く付喪神を刀剣男士と、それをおろす人柱を審神者と呼ぶようになった。
~・~・~・
「これが、私の知っている審神者と刀剣男士の歴史だ。」
三月は食後のお茶をすすりながら、淡々と語った。
賑やかであった食卓の面影はなく、今剣と山姥切の顔は浮かなかった
「とと様。とと様はれきしをかえとようと思ったことはないのですか?」
「……一つだけある」
「いったい、なにを……?」
おずおずと質問する今剣の頭を、三月は撫でた。
そして、薄く笑い、疑問に答えた。
「私の最期を」
「!」
今剣は甘える様に、三月に抱きついた。
だが、腕は震え、決して顔を上げようとはしなかった。
三条宗近。その男の生涯の終わりは、燃え盛る炎の中であった。
「今日はもう寝よう。疲れたろうし、明日はいよいよ初陣だ。」
山姥切は特に反対する理由も無かった為、素直に頷いた。
今剣は未だ、臥せったままで 、三月になぐさめられていた。
胸の内に燻る黒い感情を、山姥切は未だ理解することが出来なかった。
~・~・~・~・
晴れ渡った夜空に、三十日月が浮かぶ。
綺麗に手入れの施された庭の池の水面には、優しげに揺らめく逆さ月。
山姥切は終わりかけの冬の庭で、佇んでいた。
纏うぼろきれは自身を写しと蔑む象徴で、真作に対抗したかの様な金髪は主から認められた証。
あれほどまでに、刀への愚直な思いを持っていた人間は初めてだと、山姥切は思った。
真作の様な伝説を持たずとも、山姥切は神の端くれである。人間の内に潜む感情を見抜くなど、容易い。
だが、何処まで見透かしても、見えてくるのは刀への愛。
これが伝説と謳われた刀工かと、素直に感心した。
今剣への、素直な愛を見れば分かる。本当に、自分の作品を心から愛していたのだろうと。
だからこそ、羨ましかった。
(嗚呼、そうだったのか……)
山姥切は、胸の内に燻っていた感情の正体に気がついた。
今剣が妬ましかった。
素直に三月に甘えられることが、三月から愛されていることが、唯一無二の刀であることが。
このぼろきれを脱ぎ捨てられたら、どんなに楽だろうか。
自分を堀川国広が最高の一振りと言えたら、どれほど幸福だろうか。
「今は、まだ……捨てることはできない」
池の鯉が跳ねる音が、よく響いた。
~・~・~・~・
「刀装はちゃんと持ったか?」
「はい!」
「竹筒は?」
「ここにあります!」
「やる気は?」
「まんたんですっ!」
「よし。なら、大丈夫だ。」
幼稚園児とその親の遠足の朝の様なやり取りをするのは、この本丸の主の三月と刀剣男士の今剣だ。
三月は本丸の土間で、初陣における作戦を説明し始めた。
「まだ二人しかいない故、今回は慎重に行こう。刀装が全て壊れたら、退却。良いな?」
「はい!」
「ああ」
闘志に満ちた今剣と山姥切の表情を見て、三月は満足そうに頷いた。
「だが、慎重に行くからといって、刀装が壊れることを恐れて戦うな。刀装など、また作れば良い。なにより大切なのはお前らが
「「おう!」」
三月は不敵な笑みを浮かべ、二人の肩を叩いた。
二人は主のために、誉れをあげると心に強く誓った。
「よろしい。ならば、出陣だ。」
~・~・~・~・
「うわぁ~。ここが函館ですか!」
眼下に広がるのは、幕末の函館。
つまり、戊辰戦争の戦乱に巻き込まれた終結の地だ。
山姥切と今剣は主―……三月の命にのっとり、歴史修正主義者が操る歴史の異物と戦う準備を始めた。
「やまんばぎり」
「何だ?」
今剣は唐突に、山姥切に話しかけた。
だが、その瞳は三月に向けた幼子のそれではなく、どこか敵意を孕んだものだった。
「とと様はぼく
「……何だと」
山姥切は鋭い視線を今剣に向けた。
だが、今剣は可愛らしい笑みを浮かべた。
「ふふっ、こわいかお。とと様はかたなにみさかいがないから、だれもかれもたらしこんでしまうんです。だから、やまんばぎりもその一人ですよ。とと様にむらがるわるい虫の。」
山姥切は自分の中に燻っていた嫉妬心が、急にすぼんでいくのを感じた。
そうか、こいつも俺と同じだ、と。
「へぇ……お前は違うというのか?」
「あたりまえです。ぼくはとと様がおつくりになられたかたなのひとふり。そこらのうぞうむぞうとはちがう。」
「そうか? 俺には……」
必死になって認められようとしているように見えるんだがな。
その言葉に、今剣は目を見開き、驚いた。
そして、むきになって言い換えそうとした瞬間、後ろから衝撃を受け、吹き飛ばされた。
「ッ!!」
「!? 今剣!!」
「けがはしてません!!」
ヒラリと体を翻し、今剣は敵と対峙した。
山姥切も今剣の無事な姿に安心し、己の敵に向かっていった。
今剣は敵を睨みながら、自身の過去を思い出していた。
宗近に打たれ、義経と出会ってからの日々を。
最後の時まで、主の傍にいた記憶を。
(ぼくはまもりがたなだったから、よしつねこうを助けられなかった……だけど!)
今剣は一枚下駄では有り得ない速さで、敵の懐に入り込んだ。
敵はいきなりの接近に驚き、動きが固まった。
その一瞬を、天狗の子が見逃す訳がない。
「もう、懐にしまわれてるだけじゃない!!」
素早い三連撃を敵に叩き込む。
すると、敵は糸が切れたかのように動かなくなり、そのまま霧となって消えた。
「とと様……ぼくはあなたにふさわしいかたなになれましたか……?」
その問いに答える者は、誰もいない。
というわけで、今回の副題は今剣の裏の顔でした
この子は無邪気な顔をして、絶対に腹黒い
だが、そこがいい
次回はあの皆を悩ませる厚樫山の主と柄まで通して!の二人が出ます
三条派が全員出るまで、ほかの刀派の方々は出さないつもりでしたが、まんばの胃がマッハになりそうだったので………