今代の三条小鍛冶宗近、参る   作:うすらい

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またひどく間が開いてしまって申し訳ありません




戦場育ちの刃

 シャランと涼やかな鈴の音が、本丸に鳴り響く。

 出陣していた刀剣男士……今剣と山姥切の帰還を告げる合図だ。

 

 

 「ただいまもどりましたー!」

 

 

 「ただいま戻った」

 

 

 静かな本丸に、今剣の明るく元気な声が響く。

 それとは対象的に、山姥切は落ち着いた様子で、帰還を告げた。

 

 

 「ととさま~?」

 

 

 今剣は姿を見せぬ父の姿を探す為に、一枚下駄をポイと脱ぎ捨て、トタトタと可愛らしい音をたてながら廊下を走った。

 山姥切はあどけない姿の今剣を見て、函館のあの姿は幻想であったのかと、逃避的な思考を始めた。

 

 

 「ととさま、ねぇ……随分と、仲がいいじゃねぇか」

 

 

 「あれは特別だ」

 

 

 「クックック。俺には嫉妬に見えるぜ? 山姥切の旦那。」

 

 

 「……」

 

 

 

 

~・~・~・~・

 

 

 

 

 

 今剣は幼い見た目に見合う、可愛らしい動作で本丸を駆け回っていた。

 純粋な見た目とは裏腹に、山姥切には辛辣かつ無遠慮な言葉を投げつけていたのだから、外見など内側を見極めるには、全く役に立たない。

 

 

 「ととさま~」

 

 

 今剣は三月を探しながら、ふとに自分の過去を思い出した。

 岩融と共に、源氏の刀として過ごしていた日々。

 そして、自分によく似た銀髪と赤目の太刀を。

 こうして、太刀の彼を良く探していたと、今剣は懐かしく思っていた。

 元の主である義経の兄の頼朝を主とていた彼は自身の名前を気に入らず、何度も訂正していたことも、今では笑いの種だと、今剣はクスリと笑った。

 

 

 三月に会えたことはこの上なく嬉しい。だが、もう一度、彼に会いたい。

 叶わぬ願いと分かっていても、本当の兄の様に慕っていた彼のことを忘れられずにはいられない。

 次々に湧き上がる感情に肉の体は不便だと、今剣は思った。

 

 

 「! ととさま!」

 

 

 今剣は、審神者用の執務室から出てきたところの三月に、飛びついた。

 

 

 「おや、今剣か。お帰りなさい。出迎えられなくて、すまないな。」

 

 

 「いえ! ととさまにいちばんにあえてうれしいです!」

 

 

 「それはよきかな。まずは、戦装束を解いてきなさい。お八つを用意してあるから、手も洗っておいで。」

 

 

 「わかりました!」

 

 

 今剣は三月の言うとおり、身軽な格好になる為、与えられた部屋に向かった。

 本来は短刀の刀剣男士に割り振られる部屋だが、短刀が今剣しか居ないため、個室となっている。

 

 

 今剣の赤い瞳の端に、青い衣が映る。

 直接、相見えたわけではないが、同じ三条の剣として理解した。

 青い衣を身に纏っている、涼やかな美貌を持つ刀剣が自分の兄弟であることを。

 

 

 

 「あれが、みかづきむねちか……」

 

 

 今剣は廊下で、一人つぶやいた。

 幼く、可愛らしい顔は頬がだらしなく緩み、喜びに満ち満ちていた。

 

 

 「ぼくにもかわいいおとうとがいましたよ。**」

 

 

 

 

 

~・~・~・~・

 

 

 

 

 

 「兄上は随分と良い方なのですね、父上」

 

 

 三日月は唐突に言い放った。

 兄上とは同じ刀派の今剣のことで、宗近に鍛えられた時期が今剣の方が先である為、年功序列に基づき、そう呼んでいた。

 三日月は涼しい美貌に、暖かく柔らかな笑顔を浮かべた。

 

 三月は二人が仲良くなれそうな兆候に、嬉しそうに頷いた。

 

 

 「あの子は名が残るものでは、三日月の一つ前に生まれたから、弟が愛いのだろう。今は幼子の姿ではあるが、元々は大太刀で面倒見のいい子だ。存分に甘えてやれ」

 

 

 「はい」

 

 

 嬉しそうに頷く三日月を見て、三月も口元を緩めた。

 その表情は父親そのもので、中学生の少女がする様なものではなかった。

 

 

 

 「入るぞ」

 

 

 三月が政府からの書類を片付けていると、襖の向こう側から、山姥切の声がかかる。

 戦跡報告だろうか。三月は襖を開けた。

 

 

 「あんたが、俺っちの大将か?」

 

 

 そこには三月と変わらぬ小さな背丈、幼さと凛々しさが同居した綺麗な顔立で、藤色の瞳をした少年がいた。

 少年は幼い見た目にそぐわない、低い声で三月に問うた。

 

 

 「俺っちは薬研藤四郎だ。兄弟ともどもよろしく頼むぜ」

 

 

 随分と男らしい性分だと、三月は思った。

 天下人に仕えていたのだから、元の主の影響を受けたのだろう。

 

 

 「粟田口の子か。私は三条三月。この本丸の審神者なる者だ。末永く頼むぞ、薬研藤四郎。」

 

 

 三月はそう言い、自身の右手を差し出した。

 薬研は手を差し伸べた意味が分からなかったのか、小首を傾げた。

 

 三月はクスリと笑い、握手の意味を教えた。

 

 

 

 「なるほど……これは異国式の挨拶ってわけだな」

 

 

 「そういうことだ。私はお前を歓迎する、という意味になるな」

 

 

 「了解。改めてよろしく頼むぜ、大将……いや、お嬢の方がいいか?」

 

 

 「ああ。こちらからもよろしく頼む、薬研藤四郎。好きな様に呼ぶといい」

 

 

 三月と薬研は互いの手を、力強く握った。

 お嬢という呼び方はヤのつく自由業の様な雰囲気が漂うが、薬研が言うと不思議と似合っていた。

 

 

 「では、そろそろ居間に行こうか。今剣が腹を空かせて待っているやもしれん」

 

 

 三月は袖を纏めていた襷を解きながら、背後を振り向き見た。

 薬研には三月の刀剣への愛が、ひどく奇異なものに思えた。




柄まで通ったぞ!!

やっとニキが出てきてくれました

うちの本丸でも、ニキが二番目に強くて頼もしいです
一番は小夜たんだがな!


次回は少し時間が飛びます
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