今代の三条小鍛冶宗近、参る   作:うすらい

8 / 14
墨俣にて死亡しているアーデルハイトです

この作品、先日1000UAをこえました
まことにありがとうございます


演練Ⅲ

 勝った。山姥切国広は、強く自身の拳を握りしめた。

 相手の練度はそれなりに高く、苦戦を強いられたが、それでも勝つことができた。

 山姥切は、誓いを裏切ることにならなくて良かったと、心の底から安堵した。

 

 

 「良かったな、山姥切の旦那。お嬢にカッコつけた手前、負けられねえしな」

 

 

 「なッ‼︎」

 

 

 「そうそう。珍しく、カッコつけてたね、兄弟」

 

 

 「違ッ」

 

 

 「『わがあるじ……さんじょうみつきさまにしょうりをごらんにいれましょう』! でしたね!」

 

 「ウァアアアァァァァ!!!!!!!!!!」

 

 

 「勇ましかったよ、山姥切」

 

 

 「はっはっは。良きかな良きかな」

 

 

 「……もういっそ殺してくれ…」

 

 

 山姥切は羞恥心に耐え切れず、その場に蹲った。

 三月に外された襤褸切はどこかに行き、顔を隠すものは何もなかった。

 

 そんな山姥切を見て、周りはニコニコと生暖かい視線を向けた。

 

 

 

 「おやおや。何だか、楽しそうであるな」

 

 

 「ととさまっ!」

 

 

 「おっと」

 

 

 三月に飛びついたのは、今剣だ。

 この上なく幸せといった表情で、抱擁を交わす姿は宛ら天使の様だ。天狗の子であるが。

 三日月と石切丸は微笑ましそうな笑みを浮かべ、堀川と薬研は苦笑しながら、山姥切の肩を叩いた。

 そして、山姥切は大声を出すこともできず、やり場のない感情の高ぶりを床にぶつけていた。

 ドスッドスッバキッと時々、不穏な音が混じるのは刀剣男士故か……

 

 

 「皆の者、良く戦うた。泥仕合の末の勝利ではあるが、勝利は勝利。本当に、良く戦うた」

 

 

 三月は誉桜の舞う山姥切の頭を撫でた。

 すると、ブワァッという音が聞こえそうなほど、勢いよく桜が舞い上がった。

 その光景に、彼らは呆然としたが、三月の笑い声で現実に引き戻った。

 

 

 「ははっ。本当に、お前は可愛らしいなぁ。山姥切の」

 

 

 「なッ!!!!?」

 

 

 「ああ、本当に……ほんに愛らしいよ」

 

 

 スルリと、山姥切の頬を三月の手が撫でる。

 優しげな笑みを浮かべているが、瞳の奥が揺らめく三月の顔は何だが泣き出しそうで、儚いと、山姥切は思った。

 

 

 「帰ろう。皆、待っておる」

 

 

 

 

〜・〜・〜・〜・

 

 

 

 

 「これ、が! 本気だ‼︎」

 

 

 加州清光の会心の一撃が、相手の宗左左文字に入る。

 打刀の威力とは思えないそれは、宗左を逆袈裟に斬りながら、吹き飛ばした。

 

 

 終了を知らせる鐘がなる。

 自陣に残るのは、部隊長の加州清光、大和守安定、蛍丸、浦島虎徹。

 敵陣は全滅。圧倒的な戦力差だ。

 

 

 

 「ま、当然かな」

 

 

 誉桜を散らす加州は、主である青年に抱きついた。

 割といい勢いで突っ込んだのだが、青年はこともなげに受け止め、ヨシヨシと頭を撫でた。

 すると、さらに誉桜を吹雪かせる。こうすると、加州のコンディションがマックスになることを分かっているのだ。

 

 

 「いつまで主に抱きついてんだ、ブス。とっとと離れろ、」

 

 

 「ハァァ!!? 誰のこと言ってんだよ、ブス‼︎」

 

 

 「お前だよ」

 

 

 いつも通り喧嘩を始めた二人に、心優しい五虎退はオロオロとし、岩融は『賑やかで結構‼︎』とガハハと大きな声で笑った。

  加州と大和守に挟まれた青年は、うるさいと顔を顰めながらも喧嘩を止めることはしなかった。

 これが二人のコミュニケーションの取り方なのだから、わざわざ止める必要もない。さすがに、抜刀したら止めるだろうが素手での殴り合いまでなら止めないのが、青年の方針だ。

 

 

 

 「相変わらず、仲良しですね。ジャック」

 

 

 鈴の音のような、涼やかな声だ。

 その声の主は非常に幼く、可愛らしかった。将来が楽しみである容姿の少年は青年ージャックに、愛らしい笑みを浮かべ、近づいた。

 近侍である歌仙が、加州と大和守の喧嘩を引いた目で見るのはいつものことだ。

 

 

 「Hi、雪海(せっか)

 

 

 「はい、こんにちわ! ジャック」

 

 

 妖精の様な笑顔は、ジャックの悪どい表情しか出来ぬ表情筋をも和ませ、微笑ませた。

 隣で『主も笑えば可愛い顔をしてんのになぁ』とからかった鶴丸は、ジャックの鋭い正拳突きに沈んだ。

 

 

 

 「あ、あの。あの人のこと、何か分かりましたか……?」

 

 

 雪海は先日すれ違った少女のことを、ジャックに伺った。

 人相の悪いこの友人は、情報収集が得意なのだ。

 

 

 「悪いな。さすがに、“綺麗な黒髪”と“研ぎ澄まされた霊力”だけじゃ、分からなかった」

 

 

 「そう、ですよね。無理言ってごめんなさい……」

 

 

 シュン…と落ち込む姿に、近侍である歌仙は『何とかしろ!』と必死な視線を送り、ジャックは罪悪感で胸が痛かった。

 悪人面だが、ジャックは子供好きなのだ。

 

 

 「大将、もう一回探したら会えるかもしれないぞ。なっ? ジャックの旦那」

 

 

 「ん? ああ、諦めずに探して見ようぜ。案外、あっさり見つかるかもしれねえよ」

 

 

 薬研の完璧なフォローに乗っかったジャックは、雪海の手を引き、演練場を後にした。

 

 

 

 

 

〜・〜・〜・〜・

 

 

 

 

 

 「ととさま、そのきれいな玉はなんですか?」

 

 

 「ん? これは飴といってな。今剣や、口を開けてごらん」

 

 

 「? あーん」

 

 

 三月は大きく開けられた今剣の口に、赤色の飴玉を入れた。

 すると、その甘さに驚いたのか、赤い目を溢れんばかりに開き、頬に手を当てた。

 

 

 「あまいです! あまいですよ、ととさま!」

 

 

 「そうかそうか。それは良きかな」

 

 

 「やげんもたべましょう! とってもおいしいですよ!」

 

 

 「ほうほう。薬研、口を開けてくれ」

 

 

 「いや、俺っちは別に……」

 

 

 「よいではないか、よいではないかー!」

 

 

 「はっはっはっ。諦めろ」

 

 

 

 ポスンッと柔らかな音に見合う、柔らかな衝撃が三月の背中に伝わる。

 誰かがぶつかったのだろうか。三月が振り返ると、そこには銀色に近い水色の毛玉があった。

 

 

 「や……」

 

 

 「や?」

 

 

 否、それは毛玉ではない。

 海の様に青い瞳が、三月を捉えた。

 

 

 

 「やっと、会えた……‼︎」




雄っぱい!!!!!!!!

この話の最後の方を、とうらぶをプレイしながら書いてると、蜻蛉切さんが来てくださいました
ありがとうございます。本当に素晴らしい雄っぱいです
まじ誠実な筋肉

今回は、ジャックと雪海という二人の審神者が登場しました
名前が分からないだけで、前回から出てましたが

だがしかし‼︎ 次回から話が大きく動きます


1000UA記念の蛍丸です
描いたらでるんだ……そう信じてた時期が、私にもありました

【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。