ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜   作:Mr.Pooh

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某北海道大学まで学校祭に行って来ました。

そこで色々キャラをモチーフにしたノンアルカクテルを出しながらひたすらニコニコ動画を流すBARがありまして、楽しかったです。本当に。

チルノ美味かったぜ!←これが言いたかっただけ

さてこっちでもチルノのターン。

それでは、本編どうぞ。





第一二話 闇夜の決闘

視点:霊夢

 

「うわっ!」

 

隣から聞こえた声の主は・・・チルノだ。いつも一緒にいる大妖精に加え、リグルとルーミアも一緒のようだ。

 

「・・・霊夢?なんであんたがここに!?」

 

それはこっちのセリフなのだが。

 

「あんた達こそ四人揃ってなんでここにいるのよ?あんたらも因縁持ち?」

 

「いんねん?何それ?」

 

チルノには難しい言葉だったようだ。

 

「つまりはゴンベに何かされたのか、ってことよ。」

 

「ごんべ?」

 

「あら、知らなかったかしら?ゴンベはあのポケモンのことよ。」

 

隣でベーゴマのような木の実を千切って食べているポケモンを指差して言う。例の深緑の熊だ。

 

「なるほど。あのポケモン、ゴンベって言うのね。アタイもまた一つ賢くなったわ!」

 

「名前一つで大袈裟ね・・・。その様子じゃ、何にも無いみたいだけど。」

 

「いやいや、あのポケモンはアタイ達をこの木の実がたくさんある場所に連れて行ってくれたのよ!」

 

「連れて行ってくれた?」

 

「うん。ガンボ、アタイ達をここまで案内してくれたの。二匹で。」

 

「ガンボじゃ無くてゴンベよ。どうやったら短時間でそうなるのよ。・・・そう言うことならこんな夜遅くにあんたらが固まってたのも納得出来るわね。」

 

多分、こいつらは最初霧の湖辺りで遊んでた。そこから紆余曲折あってゴンベに目を付けられて、ここまで案内された、と。その間に時間が経ったんだろう。

 

「そう言えば、あんたらはどうやってポケモンを知ったの?人里でポケモン勝負でも見た?」

 

「人里でも見たけど、その前にあの人が教えてくれたの。えーと・・・魔法の森の近くに住んでる・・・えーと・・・りん・・・何だっけ?」

 

「・・・霖之助さん?」

 

「あっ、そうそう、そんな名前だったわね!」

 

「こんな大人数で香霖堂まで押し掛けて邪魔にされなかったの?」

 

言った後、香霖堂の閑古鳥の鳴きっぷりだったら大丈夫か、とも思ったが、帰って来たのは予想の斜め上だった。

 

「ん?アタイ、お店までは行ってないよ?」

 

「・・・えっ?」

 

「霖之助が霧の湖まで来て、モンスターボールとかをアタイ達にくれたんだよ!」

 

「霖之助さんが?」

 

「うん!」

 

・・・信用して良いのだろうか。

 

「・・・あんたらはその時一緒だったの?」

 

残りの三人に振ってみた。

 

「えっと、はい。私もその時にモンスターボール貰いました。」

 

「僕も。」

 

「なのだー。」

 

・・・信用して良いみたいだ。

 

「そう・・・霖之助さんがねぇ・・・。」

 

あのインドア派の霖之助さんがわざわざ営業に出るなんて・・・普通じゃない。それこそ異変じゃないのか。

 

「じゃあそう言う霊夢は何しに来たのよ?」

 

色々考えたい所ではあるが、今はこいつらの相手をしなければならないようだ。

 

「私?私は異変調査の一端よ。こいつが行く所行く所食べ物盗み歩いてたから、妖怪と同じように退治しに来たんだけど・・・その必要も無くなったみたいね。」

 

目の前にある大量の見たことが無い木の実の山。これもポケモンと同じように外界出身、それにゴンベが一心不乱に食べているのを見るとゴンベの好物だけを集めているのかも知れない。

 

ここに来る途中でもそれなりの数を見かけた。ゴンベがどれだけの木の実を一日に消費するかは分からないが、ゴンベの鋼腹でも少なくとも三、四ヶ月は持ちそうだ。

 

解決の方法も経緯も違和感しか無いが、一応これで異変は解決したことになる。しかし、異変が解決されてしまったからこそ、その調査を続けなければならないパラドックス。誰かは知らないけど、面倒なことをしてくれたもんね。

 

「・・・さて、ここからは私の仕事よ。あまり遅くまで残ってちゃ私の面目が持たないわ。早い所帰りなさい。」

 

「そーなのかー。」

 

「うん、その方が良いみたいだね。皆、帰ろう。」

 

ルーミアとリグルには分かって貰えたようだ。しかし・・・。

 

「待って!」

 

急に発せられた言葉に、辺りに静寂が走る。

 

発言者は見なくても分かる。チルノだ。

 

「ここをちょーさする何てこと、アタイが許さないから!」

 

「・・・やっぱり噛み付いて来たか。」

 

この通り、チルノは何にでも首を突っ込みたがる。それだけならまだ良いにしても、身体より先に動く頭が無い・・・って言うかそもそも頭が無いから扱いにくいことこの上無い。だからいつもチルノだけには異変を嗅ぎ付かれないように注意を払っているのだが・・・今回は失敗。

 

こうなったらいつものように実力行使で・・・。

 

「・・・チルノちゃん、どうして霊夢さんの邪魔になるようなことしようとするの・・・?」

 

おっ?良いぞ大妖精。流石のチルノも大親友の大ちゃんにこの言われようじゃ堪んないんじゃないかしら?

 

「だって大ちゃん、このままじゃ霊夢にゴンベが何されるか分からないよ?」

 

「どう言うこと・・・?」

 

「アタイ知ってるもん。霊夢は異変解決のためだったら何でもするってこと!ゴンベだって追い払うかも知れないよ!?」

 

「えっ・・・!?そっ、そうなんですか!?霊夢さん!?」

 

「ええっ!?えぇーっと・・・それは・・・。」

 

・・・完全に否定できないのが悔しい。

 

実際、状況によればゴンベを追い払うことも考えたので、いいえと言えば嘘になる可能性があった。

 

「ほらっ!霊夢はきっと無理に解決するつもりなんだ!アタイ達に木の実を食べさせてくれたゴンベを、アタイは守る!」

 

だがチルノは多少過敏に反応しているようだ。飽くまでゴンベを取り除くのは最後の手段。

 

・・・元気があるのは良いことがだが、聞き分けが悪いとなると話は別だ。

 

私は解決者として、この異変を調査する義務がある。それがゴンベの平和を多少脅かすようなことがあっても、私的なことを優先する訳には行かない。

 

それでも頭から反抗するなら、やるべきことは一つ。

 

「・・・そんなに言うのなら、私とスペr」

 

 

 

 

 

 

「待ていっ!」

 

 

 

 

 

 

・・・またあの魔法使いが場を荒らしにやって来たか。やれやれ。

 

その魔法使い──魔理沙は颯爽と夜の森に降り立った。

 

手にはモンスターボール。中に入っているのは恐らく今日の昼神社を荒らしやがったあいつだろう。

 

「よう霊夢!調子どうだ?」

 

「あんたが来たおかげでたった今絶不調になったわ。早く引き取ってもらえないかしら?」

 

「・・・ちょっと前から遠くから見てたんだが、トラブルになってるみたいだな?」

 

ガン無視・・・?

 

「・・・話が分からないなんて、もしかしてあんたもその妖精と同族になったの?話が面倒臭くなる前に帰って欲しいんだけど。」

 

「むむむ・・・⑨妖精にだけは一緒にされたくないz」

 

「おい魔理沙ぁっ!⑨って言うなーっ!」

 

いきなり横からチルノが飛び出したが、魔理沙はそれを片手であしらった・・・と言うか掴んだ。

 

「言うなって言ったって・・・本当に⑨の奴が言っても効き目無いと思うぜ?」

 

「離せぇ〜っ!」

 

魔理沙はチルノを離さないまま、 やれやれとした様子で続ける。

 

「とにかく霊夢、お前はこのいざこざを弾幕勝負でケリ付けようとしてないだろうな?」

 

「愚問ね。当たり前じゃないの。他に何も無いわ。」

 

「・・・全く、お前は異変解決者としての自覚がさらさら無いな。こう言うポケモンが原因で起こった問題は・・・。」

 

「──ポケモン勝負でケリを付けろ、って言いたいんでしょ?」

 

「おう!理解が早くて助かr」

 

「駄目よ駄目。スペルカードルールを粗末にしちゃ、それこそ博麗の巫女の名折れだわ。」

 

「かぁ〜っ!頭固過ぎるぜ霊夢!何のためにポケモン持ったんだっての!ってか私の話を遮るな!」

 

「・・・ねぇ霊夢。霊夢もポケモン持ってるの?」

 

「持ってるわよ。まだ一匹だけだけど。」

 

「そうなの!?じゃあアタイも霊夢とポケモンで戦いたい!それで霊夢を倒す!」

 

「・・・チルノ。私がポケモンを持ったのはポケモンでの勝負に興味が出たから。それは認めるわ。でも幻想郷のトラブルは弾幕ごっこで解決するのが決まりごとなのよ。私はトラブル解決のためにポケモンを持ったんじゃないのよ。」

 

「ふーん・・・。」

 

「そういう訳だから。そこの魔法使い。帰りなさい。」

 

「いきなりかよっ!?ぐぬぬ・・・。だいたいよぉ、お前が妖精と弾幕勝負したって勝負になるのか!?」

 

「え゛っ!?ええ〜っと、それは・・・。」

 

・・・変な所で鋭い、この魔法使いは。

 

「おっ?何だ?言い返せないか?・・・はっはーん、お前ひょっとして、理屈云々じゃなくただ勝てるから弾幕勝負を推してるんじゃないのか?」

 

「ばっ!違うわよ!」

 

「えっ、霊夢そうなの!?」

 

「違うってば!」

 

「ほらほらぁ、声が荒くなってるぜぇ?図星かなぁ〜?」

 

「違うったら!私はただ巫女としての誇りを持ちたいだけなのよ!勘違いも程々にして欲しいわね!あんたは魔法使いの自覚無いわけ!?」

 

「人形使いだって幻想郷にいるんだから、魔法使いだって動物を使役して戦ってもおかしくないぜ!それこそ、負ける要素がない勝負で賭けをしてる方が人格疑うってもんだ!」

 

「ぐぎぎ・・・。」

 

ここまで言われてどうやって引けば良いのか・・・諦めるしか無いか。

 

「・・・分かったわよ!やればいいんでしょ!やれば!」

 

「ようやく言ったか・・・骨が折れるぜ・・・。」

 

「全く誰が引っ掻き回したせいかと思ってるんだか・・・。」

 

「えっと・・・ポケモン勝負するってことで良いの?」

 

「そうよ。チルノも早いとこ準備しなさい。」

 

遠くでリグルが「何だこの茶番・・・。」とか言ってたが、聞かなかったことにしよう。

 

「・・・それでチルノは何匹持ってるのかしら?」

 

そういえば未だにチルノは魔理沙の手の中だ。

 

「一匹!それだけで十分!」

 

「そう。じゃあ一対一ね。」

 

よく考えれば、対人戦はこれが初めてだ。・・・相手がチルノで良かった。弾幕ごっこじゃないにしても、こいつだったら勝ち濃厚だろう。

 

「頑張って、チルノちゃん!」

「そうだ!頑張れ!」

「なのだー!」

 

隣で大妖精達が応援している。本当に仲が良いんだな。あの子達。

 

「でも、ふぶきを使えなかった雪ん子で大丈夫なのかー?」

 

思い出したようにルーミアが呟いた。

 

「何かあったのか?」

 

「実はさっき四人で対決してたんですけど、チルノちゃんのポケモンの使ってた技が突然出なくなったんです・・・そういえば、大丈夫なのかな・・・。」

 

リグルにも不安が伝染した。

 

「・・・。」

 

案の定と言うか、大妖精が一瞬で暗く、不安に支配されているような表情になって応援を止めてしまった。

 

「だっ、大丈夫だよ大ちゃん!もし出なかったとしても、他の技だって強いんだから!」

 

「でも・・・!」

 

「大丈夫だって!心配しないで大ちゃん!」

 

「・・・。」

 

大妖精はまだ不安気に顔を伏せている。

 

・・・大妖精は間違い無くチルノを一番知っている人物だ。手を出すことも難しいこの状況では不安になるしかないのだろう。

 

 

 

 

 

 

「不安なら一緒に戦えば良いんじゃないのかー?」

 

 

 

 

 

 

「「「「「・・・!?」」」」」

 

ルーミアの言葉は全員を硬直させた。

 

今まで(今朝からだが)ではポケモン勝負は一対一が常識。

 

しかしルーミアはそれを無視した提案をしたのだ。固まるのも当たり前だろう。

 

「・・・それ、面白そうじゃないか!」

最初に食い付いたのは部外者であるはずの魔理沙だ。全く、とことん場を荒らす・・・。

 

「・・・そうか・・・一人で敵わなそうなら二人でやればいいんだ!」

 

次いでチルノに元気を与えた。

 

・・・嫌な予感がする。

 

「・・・チルノ?もしかしt」

 

「大ちゃん!手伝ってくれる!?」

 

「ちょっと!話聞きなさい!」

 

「うっ・・・うん!」

 

「大妖精まで!?常識あると思ってたのに!?」

 

「・・・私、チルノちゃんを守りたいから・・・!」

 

そうだ・・・この子、チルノの為なら何でもする子だったんだ・・・!

 

「でっでも、流石に一対二は卑怯なんじゃないの!?」

 

「じゃあ・・・二対二だったらフェアなのか?」

 

魔理沙が片手のモンスターボールを見せびらかした。

 

「・・・もしかして、私はあんたと組めって言ってるの?」

 

「もっちろんだぜ!」

 

もう、これは。

 

動けない。

 

「分かったわよ・・・。幸か不幸かか、魔理沙と組むのは慣れてるしね。」

 

もうどうにでもなれ。チルノだろうと大妖精だろうとまとめて蹴散らしてやるわ。

 

魔理沙はようやく手に持っていたチルノを放して、空いた手の方にボールを持ち替える。チルノも私達の真正面で大妖精と並んだ。

 

「お互い、使うポケモンは一人一匹ずつ!そして、それらのポケモンを同時に出して戦う!それで良いかしら?」

 

「おうっ!」「うんっ!」「はいっ!」

 

私達は、それぞれ思い思いのボールを手にする。

 

私と魔理沙。

 

チルノと大妖精。

 

どちらが勝つのか、これは本当に分からないかも・・・。

 

いや。

 

私の誇りにかけても、

 

これは負けられない。

 

私達は、まずパートナーを。そして次に相手を見てからボールを投げた。

 

「行けっ!フォッコ!」

「出番だピカチュウ!」

 

「行っけーっ!雪ん子!」

「頑張って、ヒラちゃん!」

 

四人がそれぞれ投げたモンスターボールは空中で同時に炸裂した。

 

「フォッコッ!」

「ピカチュウ!」

 

「バニプッ!」

「シュシュッ!」

 

放たれた四匹のポケモンもまた、パートナーと相手の顔を見た。

 

No.582 バニプッチ しんせつポケモン

こおりタイプ

高さ0.4m 重さ5.8kg

朝日を浴びた氷柱から生まれたとされるポケモン。吐く息は-50℃にもなる。

 

No.682 シュシュプ こうすいポケモン

フェアリータイプ

高さ0.2m 重さ0.5kg

いつも身体全体から香水のような香りが漂っている。食べるものによって香りを操作することができる。

 

「ってあんたも図鑑持ってたのね。いつから?」

 

「あれ?言ってなかったか?今朝からだぜ。」

 

「おーいっ!始めるよー!」

 

「おっと、開戦のようだぜ。」

 

私達は正面を向き返り、二人と二匹を見据えた。

 

 

 

 

 

 

しばし、沈黙。

 

 

 

 

 

 

「じゃあリグル!お願い!」

 

リグルは手を軽く挙げてチルノに応えると、真剣な顔で宣言した。

 

 

 

 

 

 

「それでは、フォッコ・ピカチュウ対雪ん子・ヒラちゃん、戦闘開始!」

 

 

 

 

 

 

「行っけーっ、ふぶき!」

 

宣言が出されるや否や、チルノは雪ん子に技を指示した。

 

ふぶき・・・かなり危なそうな響きね・・・!どうなるか・・・!

 

 

 

 

 

 

「「「「「「・・・。」」」」」」

 

 

 

 

 

 

・・・出てきたのはチルノの叫びのエコーだけだった。

 

「・・・あっ、忘れてた。この技出せないんだっけ。」

 

私を含む全員、盛大にずっこけた。

 

「・・・おいおい、技が出ないから二対二にしたのに、忘れるってあるのか?油断してるようなら、こっちから行くぜ!10まんボルト!」

 

「ピカ・・・チューッ!」

 

魔理沙のピカチュウはミス何ぞ無かったように雪ん子に向かってかなり威力の強そうな電撃を放った。

 

「あっ!避けて雪ん子!」

 

「パニプッ!」

 

雪ん子はふわっと電撃を避ける。電撃を受けた地面は黒く焦げた。

 

「うわっ!すっごい強い電気だねそれ!」

 

「ふふん、ポケモンはパワーだぜ☆」

 

「あんたは何でもパワーね・・・。」

 

「こっちからも行くよ!雪ん子!れいとうビーム!」

 

「パニィ!」

 

雪ん子の口から氷の光線が放たれる。

 

「この程度のスピード、フォッコが避けるには造作もないわ!」

 

「同じくだぜ!」

 

言葉通り、フォッコもピカチュウもれいとうビームを避け切った。

 

よしよし、ちゃんと戦えてるわねフォッコ!

 

「むっ、もう一回!」

 

「パニィー!」

 

雪ん子はれいとうビームを連発した。しかし相手がこっちより遅かったのも手助けして、避け続ける私達のポケモンを捉えることはできなかったようだ。

 

よし、このまま行けば、勝てる!

 

しかし。

 

 

 

 

 

 

「ヒラちゃん、トリックルーム!」

 

 

 

 

 

 

今まで蚊帳の外だった大妖精が唐突に技を指示した。

 

「シュシューッ!」

 

そしてヒラちゃんから波動が拡散したかと思うと・・・。

 

「「・・・!?」」

 

いきなりフォッコとピカチュウの動きが鈍った。

 

「ピカッ!?」

 

今までヒラヒラ避けてたビームが避けられずに、ピカチュウが少しビームを受けてしまった。ピカチュウの肌が少し凍りつく。

 

「なっ!?」

 

流石に魔理沙も驚きが隠せない。

 

私もだ。

 

それに・・・。

 

「大ちゃん凄い!相手も遅くなってるし、こっちは素早くなってる!」

 

そうだ。

 

今まで素早かった私達が遅くなり、遅かった相手が素早くなっている。

 

 

 

 

 

 

まるで、素早さが逆転しているような・・・。

 

 

 

 

 

 

正面を見ると、微笑を浮かべた大妖精。まさか、トリックルームって・・・!

 

「ヒラちゃん、ムーンフォース!」

 

「シュシュプーッ!」

 

「!?」

 

私が思案したその瞬間、ヒラちゃんは技を放った。月のような黄金色の光がフォッコを襲う。

 

「避けてっ!」

 

しかし、私の叫びは届かず、と言うか鈍くなったフォッコの動きが間に合わず、

 

「コーッ!」

 

フォッコはムーンフォースをモロに食らった。

 

「フォッコ!」

 

だが私のフォッコは一撃で倒れる位ヤワじゃない。攻撃を受けた直後も、空中で態勢を変えて地面に着地する。

 

危なかった・・・考え過ぎたせいで前が見えなくなっていた。

 

そして・・・未だに素早さが逆転する現象──トリックルームが解けていない。

 

「こっちの動きをノロくした所で、またピカチュウにそのビームを当てられるか?」

 

「駄目!油断しないで魔理沙!これは多分、元々素早ければ素早い程不利になると思うわ!」

 

「むっ・・・なら相手の動きを止めるまでだ!ピカチュウ、でんじは!」

 

「ピカッ!」

 

雪ん子のれいとうビームを避けつつ、ピカチュウは細かいでんじはを放った。

 

「パニッ!?」

 

素早く放たれたでんじはは雪ん子にうまくヒットし、動きを止めた。よく見ると身体が小刻みに震えている。

 

「よっし、上手いことまひしてくれたみたいだな。」

 

「雪ん子!大丈夫!?」

 

「よし今だ!ピカチュウ、10まんボルト!」

 

動かない雪ん子に向かって稲妻が輝いた。

 

これで一匹仕留めたか・・・!?

 

「危ない!雪ん子!みがわり!」

 

「バ・・・バニッ!」

 

稲妻が雪ん子を貫く瞬間、チルノが技を宣言した。すると一瞬で雪ん子の目の前に獣人形のようなものが現れ、稲妻を受け止めた。

 

「またか!次は何だぜ!?」

 

稲妻を受けた人形はそのまま消滅。

 

「なるほどー!みがわりはこう使うんだね!」

 

「ちょっ、初めて使ったのその技!?」

 

「ん?そうだよ。今までふぶきしか使ってなかったし。」

 

「あいつ・・・何でこの時に限って⑨じゃないのよ!?」

 

「⑨って言うなーっ!雪ん子!れいとうビーム!」

 

「バ・・・ニ・・・。」

 

雪ん子は動けない。

 

「あれっ!?どうしたの雪ん子!?」

 

「ふふっ、さっきこそ動かれちまったが、でんじはでまひすると動きが鈍り、ひどい時には止まる!これで私達のチャンスだぜ!」

 

「何ぃーっ!?がっ、頑張れ雪ん子!」

 

「ふふん、応援した所で痺れを取らないとどうにもならないわよ!よしっ、次は私g」

 

「ヒラちゃん!アロマセラピー!」

 

「だから被るなったら!」

 

大妖精が私を遮ってまで出した技も見たことがない技だ。

 

「シュシュシュシーッ!」

 

ヒラちゃんが振り撒いた霧が雪ん子を包む。そして・・・。

 

「バニプッチッ!」

 

霧を元気良く払った雪ん子の痺れは完全に無くなっていた。

 

アロマセラピーは回復技か・・・。

 

「う・・・まさかまひを突破するとは・・・。」

 

魔理沙も心底驚いている。

 

しかし私は、不利な戦況を目の当たりにしながら先程の大妖精の言葉を思い出していた。

 

──私、チルノちゃんを守りたいから・・・!

 

大妖精は言葉通り、自らのポケモンの技を完全に把握し、最初からひたすらチルノのサポートに回っているのだ。

 

これも、チルノへの大妖精の「想い」なのだろうか。

 

残念ながら、魔理沙への私の「想い」なんて持ち合わせていない。そんなのまっぴら御免だ。しかし・・・。

 

「へっ・・・面白くなってきたじゃないか。これだけ壁が大きくなきゃ、私達の力は出せない・・・なぁ?霊夢?」

 

「・・・そうね。ようやく七割位の力を出せそうだわ。私達、でね。」

 

想いは無くとも縁はある。そしてそれを使って異変を解決してきた。それが私達だ。

 

「おおーっ、霊夢も魔理沙もカッコいい!でも、勝ちはアタイ達が貰うよ!雪ん子、れいとうビーム!」

 

「バニッ!」

 

雪ん子は再びれいとうビームの攻撃を開始した。フォッコとピカチュウの二匹はもはや言わずともビームを避ける。まだトリックルームの影響が残っているが、しかし・・・。

 

「コッ!」

「ピカッ!」

 

空間が少し震えたかと思うと二匹のスピードが突然元に戻った。よし、トリックルームが解けた!

 

「あっ、解けちゃった!ヒラちゃん、もう一度・・・!」

 

「待ちなさい!今度は私が、おにび!」

 

「フォッコッ!」

 

フォッコは私の指示通り、戻った素早さでスキを見出しておにびを放った。

 

「パッ!?」

 

れいとうビームの雨が止む。

 

「あっ、雪ん子!」

 

雪ん子にヒットしたおにびは着火部に赤い傷を残した。

 

「フォッコのおにびは火量こそ少なかれ高温よ。当たったらやけど必至でしょうね!」

 

そして私は魔理沙とアイコンタクトを交わす。

 

「やけどっ!?いけない!ヒラちゃん!アロマセラピー!」

 

「シュシュシューッ!」

 

さっきと同じように、ヒラちゃんから出た霧が雪ん子を包む。

 

霧が晴れたら、雪ん子のやけどは全快していた。

 

 

 

 

 

 

計画通り。

 

 

 

 

 

 

「かかったな!ピカチュウ、アンコール!」

 

「「アンコール!?」」

 

二人の声がシンクロした。そしてヒラちゃんの前に出たピカチュウは・・・。

 

「ピーカッ!チュッ!ピーカッ!チュッ!ピーカッ!チュッ!」

 

・・・文字通りアンコールを始めた。具体的にはコールをしながらの手拍子だ。

 

「「・・・。」」

 

チルノと大妖精はあんぐりしている。しかし気を取り直したのか、

 

「・・・ヒラちゃん、トリックルーム!」

 

大妖精が技を指示した。

 

しかし。

 

 

 

 

 

 

「「・・・。」」

 

 

 

 

 

 

チルノが出せなかったと言う技を出そうとした時のデジャヴのように、流れたのは静寂だけ。

 

さらに。

 

「シュシュ・・・ッ。」

 

ヒラちゃんは何だか頬を染めてもじもじしている。言うなれば、照れている感じに。

 

私と魔理沙は互いをちらっと見た。

 

さっきも見た、その目つき。

 

 

 

 

 

 

やっぱり成功していた。

 

 

 

 

 

 

そして、

 

「シュシュシューッ!」

 

・・・ヒラちゃんが出した技は、

 

トリックルームではなく、

 

アロマセラピー。

 

行き場を失った霧が空中に消える。

 

理由は簡単。ヒラちゃんがピカチュウのアンコールに応えたのだ。

 

「・・・ええっ!?ど、どうしてっ!?」

 

一拍子置いて、まず驚き声を出したのはチルノ。それに魔理沙が答える。

 

「へっへーん!アンコールを受けたポケモンは直前に使った技しか使えなくなるんだぜ!」

 

「なぁっ、何ぃーっ!?」

 

「行くぞピカチュウ!10まんボルト!」

「フォッコも、だいもんじ!」

 

「ピカ・・・チューッ!」

「フォッコーッ!」

 

二匹は同時に大技を放つ。

 

その二つの大技を、突然の事態とやけどが相まってオロオロしていた雪ん子となぜか恍惚な表情をしていたヒラちゃんの二匹がトリックルーム状態ではない時に避けられる訳も無い。

 

まず稲妻が二匹を襲い、その上に大の字の火炎が被さった。

 

「バニィーッ!」

「シュプーッ!」

 

後に残ったのは、黒焦げのグルグル目で倒れ込む雪ん子とヒラちゃんだけ。

 

「決着!雪ん子・ヒラちゃん、戦闘不能!勝者、フォッコ・ピカチュウ!」

 

「「私達こそ、人生の勝利者よ(だぜ)!」」




SS内初マルチバトル、レイマリ対大チルでした。大ちゃんは健気にチルノを護る良い子です。

後々気が付いたことですが、バニプッチとシュシュプの図鑑番号は丁度100違い。ベストタッグじゃ無かろうか?

因みに霊夢はまだ「状態異常」の概念を正確には知っていません。最後のアンコール固めが成功した決め手は勘。

では。
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