ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜 作:Mr.Pooh
それでは、本編どうぞ。
視点:霊夢
「絶対、ゴンベを虐めるようなことしないでね!」
「はいはい、分かってるわよ。ほら、もたもたしてると友達に置いてかれるわよ?」
「・・・絶対だよ!」
チルノは名残惜しそうにゴンベを見た後、先に帰って行った大妖精達の後を追って飛び立った。
「・・・ふぅ。やっと帰ってくれたわね。」
「意外と面倒見良いんだよな、霊夢って。」
さっきから私がチルノ達に手を焼いている様子を、助けるも無く見ていた魔理沙。問題源が飛び立ったタイミングで話しかけて来た。
アンタも手伝いなさいよ、と一言言いたい所だが、ここはぐっと我慢して。
「そうかしら?私はただ最低限の所まで放っていないだけよ。」
「だったら霊夢の中の最低ラインが高いってことだ。腐っても巫女なことはある。」
「腐っても・・・か。的確に言ってくれるわね?」
「ん?私は半分ふざけて言ったんだが・・・新手の自虐か?」
「自虐じゃ無くて事実よ。第一、私巫女の仕事とかほとんどしてないもの。」
「へっ?・・・確かに、霊夢の仕事って言ったら異変解決だが・・・まさか本当に全然仕事してないのか!?」
「ええ。誰にも頼まれないから。だからいつも賽銭箱が空なのよ。」
「お前それでよく生活できてるな・・・。」
「それ、私自身不思議でたまらないのよね。収入がほとんど貰い物なのは自分でもどうかと思うわ。」
「収入のほとんどが貰い物って・・・想像難し過ぎて何とも言えないぜ。」
どうやら私の謎が増えてしまったようだが、閑話休題。
目の前の木の実の山が、私達に異変の到来を告げる。
もちろん、木の実の山、という表現は何の比喩でも無い。実際に木の実が山状に積まれている。
幅は私が手を広げてだいたい三人分。高さは・・・私の身長より少しある程度だろうか?
何の前触れも無く森に現れた、謎だらけの存在。
量も種類も無駄に豊富で、しかし一つとして見覚えが無い。おまけに山の数も相当。木の実の総数は想像も付かない。
恐らくは、全て外界出身。幻想郷に元々無い木の実と言うことなんだろう。
ただ、私達がよく知っている、幻想郷で普通に食べられている果物と良く似たものも少し混ざっているのだ。
例えば空色のイチゴ。普通のイチゴは熟れる前にしろ後にしろどう頑張っても空色にはなり得ない。もちろん、塗料を使っているような様子も無い。外界の別種のようだ。
全部が全部似てはいないのだが、青いミカンとか、黄色いカブとか、一部のそんな木の実のせいで全体で毒々しい印象を受ける。
「一応聞いておくけど魔理沙。こんな木の実は見たことある?」
「一応答えるが霊夢。無いぜ。」
「だよねぇ。やっぱりこれらって、外界産かしら?」
「それっぽいな。美味いのかな?」
確かに木の実だし、この発想が来るのは必然か。
「・・・食べるの?」
「一つ位毒味した所でバチは当たらんだろう。ど・れ・に・し・よ・う・か・な・・・。」
魔理沙は一つ一つ指差して木の実の選考を始めた。
「・・・鉄・砲・打っ・て、バン・バン・バン!っと、これか。」
魔理沙が厳正な審査の結果手に取ったのは、丸く整ったピンク色で小さなヘタが付いた木の実。あまり大きくは無かった。
「どれどれ、味は如何程か・・・ん?」
ヘタの部分を持って食べる気満々だった魔理沙だが、何かに気が付いたのか、ポケットから図鑑を取り出した。
「あら・・・私もだわ。」
魔理沙が取り出し、初めて私の図鑑も反応していることに気が付いた。
「こいつポケモンなのか!?」
「そうなのかしら・・・。」
図鑑を開いてみる。
No.23 ゴスのみ
うっとりする甘さの奥で微かに感じる大人の苦さ。ポケモンも大満足の味。
図鑑には、目の前と同じようなピンクで丸い木の実とそのデータが表示されていた。ポケモンの書き方とは相違点が多い。
目を引いたのは正六角形の形のグラフ。六つの頂点にそれぞれ甘みや渋み等味の種が書かれ、六角形の中心から伸びるものの長さでそれぞれの味の強さを表しているようだ。この木の実は甘みと苦みに大きく振られている。
木の実まで正確に分離できるとは、外界の道具はますますハイテクで多機能だ。
「ポケモンの書き方とは違うみたいだな。ポケモンって訳じゃ無さそうで安心したぜ。・・・よし、本当に甘くて苦いかどうか、本当に食べるとするか。」
魔理沙は改めて木の実のヘタの部分を持ち、果肉の部分を一口で齧り取った。
しばらく魔理沙が木の実を咀嚼するだけの空間が広がった。
「・・・うん、若干苦いが、甘さが強くて美味いな。」
「データの通りね。これでハッキリした、この木の実は外界出身。もう言い逃れようが無いわ。」
「そうみたいだな。これでこの現象が異変だってこともハッキリしたってことだ。」
魔理沙は一度うんうんと頷いてから続けた。
「それにしても・・・今日だけで異変起こり過ぎじゃないか?私の知る内では、これで三回目だぞ?」
「私の認識でもそうね。それも、全部裏では繋がってる。」
「こんなに複雑なのも初めてだな。・・・よし、整理しようじゃないか。」
「何をよ?」
「だから、三つの異変をだよ。目の前に絡み合った紐があって解かない奴がいるか?」
「残念だけど、私が頭の中じゃ三本纏めてもう真っ直ぐに並んでるわ。それに、今話すべきなのはその内の一本だけ。それなら絡まってても何とか分からないものかしら?」
「一理あるが、その紐に捻れでもあったらどうするつもりだ?」
「捻れ・・・何の比喩かしら?」
「おいおい、皮肉か?捻れは捻れだ。認識の捻れ、意見の捻れ、色々あるだろ?」
「む・・・。」
なるほど確かに。上手く言い返す言葉も見つからない。
「・・・分かったわ。もう一度最初から見直して行きましょうか。」
「よっしゃ、そう来なくちゃな!」
魔理沙は嬉しそうに手を一回叩き、その後右手の人差し指だけを立てた。
「まず一本目の紐だな。」
「最初の異変、『ポケモンが大量に幻想入りした異変』ね。便宜上、『異変①』とでもしておきましょうか。」
軽く纏めると、昨日の深夜あるいは今日の早朝から、元々幻想郷にいなかったと思われる動物が、恐らく外界から幻想郷に大量に来た。その動物達の種類は様々だったが、外界で全部引っ括めてポケモンと呼ばれているらしく、その呼び方が定着した。
・・・纏めてみると曖昧過ぎる。良く考えれば殆ど憶測じゃないか。
まぁ、この動物が外界でどう呼ばれていようと最早私達にはどうしようも無いのだが。
「じゃあそれに則って言うぜ。異変①は言わば大元の異変だ。異変①が無きゃ、後の二つの異変は起こり得なかった訳だからな。」
「そうね。もっと言うなら、多分幻想郷に一番影響を与えたものでもあるんでしょうね。」
今まで数々異変を経験して来たが、人里の人間がここまで異変に動かされる例は他に無い。
「ああ。命綱クラスの太さだぜ、この紐は。」
「紐はもう良いのよ。・・・問題は異変主の足が全然掴めないことよ。大体見当は付いてるんだけど。」
「紫だな?結局今日一日中顔を見せなかったな。」
「そう。冬時でも無いのにね。誰の目の前にも現れないのはそれだけで自分が犯人だって言ってるようなもんなんだけど、現れないせいで聞き出すこともできないからもどかしいのよねぇ・・・。」
紫は毎年冬場になると冬眠しているらしい。私自身その現場を見たことは無いので完全に本人談だが、実際紫は冬場には姿を見せない。
良く考えると、そこそこ頻繁に顔を合わせていた私でさえ紫が普段どこで生活しているのか分からない。どうやったら足取りを掴めるんだろうか・・・。
「まぁとりあえず、紫の件は置いておこう。今ここにいない奴の話をした所で意義は無いしな。重要なことは、今何が起こってるか、だぜ。」
魔理沙の言葉はもっともだが、何だか引っ掛かる・・・考えないようにしようか。
「異変①のせいで起こったことって言ったら・・・ポケモン勝負が大流行したわね。これに尽きるわ。」
「そりゃもうな。人里に午前中に道具を広めた霖之助も大したもんだよ。」
「道具・・・あぁ、ボールか。確かにね。」
霖之助さんはポケモンを捕まえる為の道具、モンスターボールを配っていた。一応商人としてだが、一人五個までタダ。
今日の午後の魔理沙の話によると、人里の人間は昼頃辺りには既にポケモン勝負が始まっていた。それより前に人里にボールを広めたのだから大したものだ。
「・・・そう言えば、チルノ達はわざわざ出向いて来た霖之助さんにボールを貰ったとか言ってたっけ。」
「おっ、それ私知らなかったぞ。捻れ第一号、発見だな。」
「そんな鬼の首を取ったように言わなくても良くない?」
「まぁまぁ。それは置いといて。今までの話を踏まえると、霖之助は人里まで営業に出てたみたいだな。珍しいことだ。」
「私もそう思う。と言うか、私はもっと大袈裟に──霖之助さんがそんなことするか?って考えてたわ。」
「・・・確かに、霖之助相手だとそれも大袈裟じゃ無い気もする。だが今日はポケモンが幻想入りした大変な日で、それもそれを捕まえられる道具を霖之助は持ってた。今日外に出て普段以上に道具を配れば、当然その日以外にも買いに来る人も増えるだろう。こう考えると自然な感じもまたあると思うんだ。」
「・・・。」
魔理沙の言葉・・・さっきと同じような違和感がする。勘が働いているの・・・?
「・・・霖之助さんってこんなに利益重視で動く人だったっけ?」
これだ。私はこれが気になってた。
霖之助さんはあまり利益を気にする性格じゃ無かったはずだ。
「・・・なるほど、そうか。確かに売れそうだからって店から出ようとしたとは思えないな。」
「何か他の理由があったのかしらね。」
自分から疑問を言って何だが、今の情報で判断が難しいものはスルーする他無い。
「もう他には論点は無いか?じゃあ、異変②だ。」
魔理沙は右手で二本指を作って二つ目の異変を示した。
「大量の食べ物が消失した異変。いかにも幻想郷らしい響きね。」
「響きだけはな。消失って言い方が誤解を生んでるぜ。何かの能力で消え去ったみたいじゃないか。」
「その通りじゃない?一匹で家一つの蓄えを食い尽くすって、普通はできることじゃ無いんだし。」
「言えてるな!・・・なぁ、ゴンベ。」
「ゴン?」
魔理沙は勢いで隣で木の実を食べていたゴンベを抱き上げようとした。
が、結果は言わずもがな。
「うぬ・・・ふんむ・・・ふんぬぬぬぬぬぬぬ!・・・重過ぎないかこいつ!?」
「食う子も寝る子と同じ位育つのよ。諦めなさい。」
「ぐっ・・・こいつも良く食べるなぁ。流石は異変主って所か。」
清々しい位堂々とした話題のすり替えで笑いそうになった。
異変②の概要をちゃちゃっと説明すると、幻想郷の一部の場所で食べ物が忽然と消えた。・・・これだけだが、ことの重大さは十分だろう。
そしてその犯人はポケモンのゴンベ。今木の実を一心不乱に食らっているのに代表して、とにかく大量に食べる食べる。そのせいで体重もメガ級。魔理沙が持ち上げられないのは相当だ。
一度に大量のゴンベが食事に入ったせいで、一部のゴンベが飯にありつこうと家まで進入して食べ物を漁った。その結果がこの異変。
「この異変も、ゴンベがいなきゃ起きなかったんだよな。」
「正確には、ポケモンがいなきゃ──異変①が起きなきゃだけどね。」
異変主が無ければ異変は起きない。異変②はそれがポケモンだっただけ。単純な話だ。
ポケモンが幻想入りして、一番最後に起こった幻想郷の不具合が異変②だった、とも捉えられるだろう。
「霊夢はあの後どうしてたんだよ?」
魔理沙が言う「あの後」は、今日の夕方博麗神社がゴンベに襲われた後。
「とりあえず人里に向かったわ。だけど誰も被害に遭って無かったのよ。」
「ふむ。理由の見当は付いてるのか?」
「ええ。博麗神社とかアンタの家の周りは自然だらけだけど、人里は違うから。自分が生活してる近くから攻めてたんだとと思うわ。」
「・・・ってことは、人里以外は殆ど被害に・・・。」
「まだ話すことある?無いわよね?」
「えっ、あ、おう。無いぜ。」
「そう良かった。さっさと三つ目に行きましょう。これが今一番大切なんだから。」
一瞬タブーが見えたが、すぐに影を潜めてくれたようで良かった。
魔理沙を真似て、親指、人差し指、中指の三本を立ててみる。
「異変③、森の中に突然、外来産らしい大量の木の実が現れた異変。やっとここまで来たわね。」
「まず状況整理と行きましょうか。」
目の前で起こっている異変に、辺りに若干緊張した空気が走る。
「とりあえず、チルノ達から聞いたことから話すわ。・・・今日の夕方頃、霧の湖近くで遊んでいると、ゴンベが一匹現れて手招きした。それに付いて行くと、木の実の山が乱立する場所まで辿り着いた。・・・正確に木の実が現れた時間は分からないけど、少なくともこの時間にはあったみたいね。」
「色々腑に落ちない点はあるな。・・・まず、ゴンベはどうして木の実の山がある場所が分かってたんだ?」
「一度行ったことがあったか、食べ物に対する五感が異様に鋭かったかどっちかね。・・・一緒に行ったゴンベも木の実食べてたらしいから、一つ目は無さそうだけど。」
「匂いを辿ったってか!それはもう驚きを越した呆れを越して頭が下がるぜ。」
「ゴンベがここまで貪欲なのは実際被害に遭った私達が一番知った事実じゃないの。今更言うことじゃ無いわ。」
「まぁ・・・それには何も言い返せないぜ。ゴンベだったらありそうだ。そんじゃ次の疑問だが、目的は何だ?いかにもゴンベの食糧被害を食い止めるように置かれてるが、それが目的か?」
「そうなんでしょうね。こんなひっそりした森の中に置いてもそれ位しか効果が望めないもの。木の実の数を見ても明らかよ。」
乱立している山の数は二十を軽く超え、木の実の総数は本当に多い。しかし、多過ぎる程の食糧が無いとゴンベの腹が文句を言うからこれ位が適量なのかも知れない。
「そうよなぁ。異変を解決するのに異変を起こすって、頭が良いのか悪いのかイマイチ分からんぜ。」
「解決するならするで一言言えば良いのにねぇ。それとも犯人には異変じゃ無きゃいけない事情でもあるのかしら?」
「そりゃおかしいぜ。自分がやりたいことが異変だった、ってのはよくある話だが、自分がしたことをわざと異変何かにした日にゃ腋出した巫女に八つ裂きにされるからな。」
「そうするつもりだけど、いかんせん足が掴めないから主に会うことも難しいわ。余計にストレス溜めさせるだけなのが分からないのかしら。」
「主の安否が思い遣られるぜ。八つ裂きがもっと惨い仕打ちに進化する前に解決するのを願うしか無いな。くわばらくわばら・・・。」
魔理沙は合掌しながら手をスリスリして呟いた。
「・・・まぁ、冗談はさておいて。真剣に犯人を探るわよ。」
「さっきの霊夢の殺気が冗談だとは思えないが・・・まぁ良いや。」
さらっと酷いことを言われたような気もするが、とりあえず魔理沙は顔を上げた。
「異変主って言っても候補は一人だ。そうだよな?」
「そう。アイツ一人。名前出す?」
「いや、要らないぜ。こうなると様式美だな、こりゃ。」
言うまでも無いが私達が疑っているのは紫だ。
「やっぱり、自分がしたことの責任でも取るつもりでやったのかしらね?」
紫が異変①の主犯とすると、異変②が起きたのも紫の所為だ。その後始末を取るのに異変③を起こした、と考えると筋が通る。
「それが今の所一番自然だな。責任を取り切れてるかどうかは別にして。」
本当に責任を取りたいなら被害に遭った家を探ってそこに木の実を送る位すると思うのだが。
「異変って少なからず誰かには迷惑を掛けるようなことなのに、紫はそれを食い止めようとした・・・大元の異変①を止めさせなく無かったのか?」
「そうなるのかしらね。・・・もしかして、わざわざ異変って言う形を取る理由って自分の身を隠すため?」
「なるほど、八つ裂きにされそうでも隠れてれば大丈夫と。」
「いや、そうじゃ無くて・・・異変①の目的を達成するために姿を消したならその目的が解消されるまでは姿を見せられないから、姿を見せないで異変②を解決する、異変③を起こす方法を選んだってこと。」
「紫にとってポケモンは自分の身以上に大切ってことか。何か裏がありそうだが・・・。」
紫が幻想郷にポケモンを呼び込んで得られるメリット・・・思い付かない。
「もう情報は無いかしら?無いならこの辺の手掛かり探すけど。」
「おう、分かっ・・・待て、何か忘れてる気がする・・・。」
まだ情報を持ってるのかしら?
「忘れてるって何がよ?」
「それが分かったら苦労しないっての。・・・主犯に当てはまりそうだって憶えておいたはずの奴が一人いたような気がするんだが・・・。」
「えっ、紫以外に候補なんてあるの?」
「ああ、怪しい所を見たんだよ。確か・・・ゴンベと・・・。」
魔理沙は何かぶつぶつと呟きながら虚空を見て歩き回り始めた。
変な妄想してなきゃ良いけど・・・。
「・・・ああ!思い出したぞ!霖之助だ!」
心配していると、魔理沙は手を叩き顔を上げた。
霖之助さんか・・・。
既に一回出た名前だけに、少しは説得力がありそうだ。
「・・・確かに多少怪しいとは思ってたけど、何を見たの?そんなに決定的?」
「ああ。私がお前と別れた後、森にキノコ採りに行ったんだが、その森で見たんだ。」
一呼吸置いて続ける。
「──ゴンベから何かを受け取ってるのを!」
「・・・ふむ。」
正直言って、あまり決定的ではない気がする、と私は思った。多分外見にも出ている。
「おい、何だよその反応。私のお陰で新しい容疑者が増えたんだぜ?もっと褒めても良いんじゃないのか?」
「いや・・・容疑者が増えたら普通面倒臭くなるからあんまり喜ばれないわよ。それに何を受け取ってたのか分からないの?」
「暗がりだったからな。青かったことは覚えてるんだが・・・。」
目を逸らして頭を掻く魔理沙。
しかし、木の実の山の方を見た瞬間、手の動きを止めた。
そして山の方を指差し、
「・・・あぁぁーっ!これだ!」
と叫んだかと思うと、山から真っ青なミカンを一つ引っ張り出した。
「これだよこれ!まんまこれだった!」
No.07 オレンのみ
自然の恵みが一つになって口の中で色々な味が広がる不思議な美味しさ。
・・・つまり、霖之助さんは異変③が起こる前にゴンベから木の実を受け取ってた?
前言撤回。魔理沙はかなり決定的な場面を目撃していた。
「・・・確かに、これは重要ね。木の実が撒かれる前に霖之助さんが木の実を受け取ってたとしたら、何かしら関連してる可能性は大いにあるわ。」
「はーっ、思い出して良かったぜ。霖之助が犯人なら話は早いじゃないか。」
「まだ決まった訳じゃ無いわよ。紫も十分怪しいんだし。」
・・・くそう、このまま容疑者が一人だけだったら楽に事が進んだものを。魔理沙は色んな意味で場を荒らすから困る。
「って言うか、さっきも言ったけどこれでかなり話が面倒臭くなったわよ。異変①と③の容疑者が一人しかいなかったのが二人に増えたってことは、それぞれの異変の犯人が違う可能性だってあるんだから。」
「確かに、霖之助はボール配布で異変①にも関係してるな・・・。」
「・・・どうにしても目的が分からないわね。霖之助さんってあんまり変化を求めるタイプでも無いし・・・。」
「まっ、そろそろ考えるより動こうぜ。この山の中に名札でも紛れてたら解決だ。」
「幻想郷でも受け入れられないドジねそれは・・・。」
私が愚痴ってる間に魔理沙が木の実の山を漁り始めたので、私も別の山でそうすることにした。
ゴンベが群がる辺りを避けて、無心木の実を掻き分ける。
無心。
心があるとしたら手掛かり発見への熱望だけだ。
避けてる理由は二つ。単に重くて邪魔なのと、近くでもしゃもしゃと食べられると鬱陶しいからだ。
・・・決して、お腹が空いてきた訳では無い。
絶対に。
いくら晩御飯がおにぎり一つとて、外界の木の実に屈服するのは嫌だ。
変なプライドだが私にとっては信条だ。
・・・そうだ、魔理沙は?
ふと、魔理沙の探っている山を覗いてみる。
「・・・。」
魔理沙も同じく無言だったが、決定的に違う点があった。
・・・木の実食べてる。
作業はしているが、片手にバナナっぽい木の実を掴んでたまに食べたりしてる。
・・・美味しそう。
「・・・おっ、霊夢か。何か見つかったか?」
魔理沙が私に気が付いた。
「いや、真面目にやってるか見に来ただけ。」
「何だよ。私はこの通り、真面目にやってるぜ。成果はゼロだがな。」
「・・・そう。」
「何か元気無いなぁ。腹減ってんなら、ほれ。」
魔理沙は私に例の木の実を差し出した。齧りかけだが。
・・・美味しそう。
私は憑き動かされるかのように木の実を受け取った。
一口食べてみる。
「・・・美味しいこれ。」
「だろ?私意外と木の実を見る目あるよな?」
「・・・。」
「・・・へっ?無視か?おーい?霊夢ー?」
何だか色々声を掛けられた気もするが、とりあえず木の実を完食した。
「・・・そんなに腹減ってたか霊夢。何で木の実食べなかったんだ?」
魔理沙は不思議そうだ。これが食ってる方の見解か。
「・・・私も今はもう分かんないわ。」
「自分の欲に正直になるのも重要なんだぜ。特に食欲はな。」
「ええ。木の実大好きなゴンベの心境が分かった気がするわ・・・ん?」
「ん?今度は何だ?」
「ゴンベの心境・・・。ポケモンの心・・・。ポケモンの・・・閃いた!」
纏まってた、と願いたい。
異変を紐に例えたのは個人的にしっくり来たから。
動物・・・心・・・次に霊夢が向かう場所、分かりますよね?
では。