ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜 作:Mr.Pooh
今回もバトルします。特殊な状況下で。
では、本編どうぞ。
視点:霊夢
空の上から見る幻想郷は今日も平和に見える。
見えると言うのは、とどのつまり平和ではない、つまり現在進行形で異変が起こっているということである。
一番問題なのはそこなのだ。私達が知らない間に徐々に異変が影響を及ぼす異変はそもそもで気付きにくいし手が打ちづらい。実際、私はこの異変を自力で見つけることはできなかった。
そして私は今、異変を解決するとはどのようなことか、と言うレベルで手をこまねいている状態だ。・・・まぁ、どうであっても動かなければならないらのは変わらないのだが。
と、言う訳で、私は今、ポケモンが大量発生した異変を解決するため、空を飛んで温泉がある方面に向かっている。
もちろん、温泉に入ろうだとは思っていない。目的はその近くの縦穴を使っての地下への進入、そして地霊殿の訪問。
地霊殿とは、幻想郷の土の下にある、幻想郷では他に類を見ない動物屋敷だ。
地霊殿には人や動物の心が読める、とある妖怪が暮らしている。そいつの力を借りてポケモン達に事情を聞くのが今回のメインイベント。ついでに地下のポケモンの様子も見られれば尚良い。
この空の旅で、新しいポケモンも一匹手に入った。昨日の夜の件もあるが、地下の輩がポケモン勝負で喧嘩をふっかけてくるかも分からない。備えあれば憂い無しだろう。
・・・と、地下にポケモンが生息している前提で考えてしまっている自分が恐ろしい。
スペルカードルールを使わないで勝敗付けるなんて、私の役目的にどうなんだろ・・・。
だがしかし、幻想郷は全てを受け入れる、という言葉もあるのだ。私の意志よりは、幻想郷の住民の意志を優先するべきなのだろう。
・・・こうでも思わないと、これから私の身が持ちそうにないわ。
色々考える内に、いつの間にか縦穴の前まで来ていた。温度良さげな温泉が私を誘惑するが、初めてじゃないから振り切るのは簡単。
縦穴の前に看板が一つ。「ここから先への地上の妖怪の立ち入りを禁ず」・・・こう言いながら穴を塞ぐでもなく、ただ看板が建っているだけ。毎回目には入るが、この禁止令を律儀に守る妖怪何ぞいないと断言できる。
紫にでも言えば撤去してくれるのかしら・・・いや、紫は今行方不明だったか。
縦穴は特段変わっている訳でも無く、天空に向かって口を開いている。
こんな大穴の中でポケモン勝負なんて挑まれたらどうしろってのよ。
・・・考えたくはないけど、ありえなくはないから用心しないと。
さて、と。
いっちょ行きますか。
一度身体を伸ばして、穴の縁に立つ。
穴の中は・・・うん、ちゃんと燭台付いてるわね。
この燭台は地底の妖怪達が自主的に設置したものらしい。地上のことを考えてなのか、それとも地下の妖怪だけを考えてのことなのかは分からないが。
フッと息を吐いて、頭から穴に突入。
丁度穴の深くを覗くような体勢で落下をスタートさせた。
私の全身を、通り過ぎる風が切る。
やっぱり地下に向かうならこの降り方が一番速い。
穴の中には日の光が入らず、燭台こそ辺りを照らしているが、燭台同士の間隔が広く見通しはあまり良く無い。
かと言って不安になるような暗さでも無くて、私は無心で穴の底へ突き進む。
今の所、妖怪が現れる様子も、ポケモンが現れる様子も無い。このまま誰にも会わずに済めば良いが・・・。
「あっ、霊夢!」
・・・そうは行かないわよねぇ。
穴の上の方に蜘蛛の糸を引っ付けてぶら下がっていたそいつは、私を見るなり一緒のスピードで降り始めた。
「ヤマメ?何の用かしら?」
私を見事に捕まえやがったのは、土蜘蛛の黒谷 ヤマメ。地底の妖怪にしては社交的で、私みたいな知り合いはもちろん他人にもよく話し掛ける。地底のアイドルと呼ばれる所以はこれか。
「地下に用事なんて珍しいね。やっぱりポケモンのこと?」
「そうよ。ポケモンの心を読んで貰いたくてね。」
やっぱり地下にもポケモンは伝わってたみたいだ。
とりあえず振り切るためにスピードを出すが、ヤマメは全く劣らずにくっついて来る。
「じゃあ、やっぱり霊夢もポケモン持ってるの?」
「持ってるけど、それがどうかした?」
「もーっ、ノリ悪いなぁ。ポケモンを持ち寄ってすることって一つなのに。」
・・・嫌な予感がして来た。
「ポケモン勝負だよ、ポケモン勝負!知らないとは言わせないよ!」
そら来た・・・。
面倒だが、断るともっと面倒なことになりそうだ。ここは腕試しも兼ねて受けて立つとしよう。
「・・・分かったわ。じゃあさっさと下に降りましょう。」
「え?どうして?ここでやろうよ!」
「はいは・・・ヴェッ!?」
おいこいつ・・・今「ここで」って言ったか!?
「えっと・・・ここって?」
「だから、ここ!」
言ってヤマメはこの辺りを指差した。
つまり・・・この穴の中でやれと?
「ちょっと!?自分がどんだけ無茶言ってるのか分からないの!?」
「別に無茶じゃ無いよ?出てきてミドマル!」
これが証拠だと言わんばかりにボールを放り投げて、ポケモンを繰り出すヤマメ。
「シィーッ!」
出てきたのは緑色の蜘蛛ポケモン。ヤマメと同じように、出した糸を穴の上の方にくっ付けている。
No.167 イトマル いとはきポケモン
むし・どくタイプ
高さ0.5m 重さ8.5kg
丈夫な糸で罠を張り、引っ掛かった獲物を捕食する。夜の内に巣を作るため、夜行性。
ヤマメが繰り出したポケモンは確かに空中に静止してはいるが、それも蜘蛛の糸があるからだ。糸を使ってスラスラ動き回るような術をこいつが持っているとは思えない。
「それで戦えるの?」堪らず私はヤマメに聞いた。
「うん、全然大丈夫だよ!見てみたらきっと分かって貰えるんだけど。」
疑わしいが、本人がそう言うのならそうなのかも知れない。
・・・やるしか無いか。
こんな穴の中じゃフォッコは全然動けない。だが、私はついさっきこの状況でも自在に戦えるポケモンを捕まえた。完全に偶然だが。
いきなりデビュー戦か・・・まぁ、大丈夫だろう。
「行けっ、ムックル!」
私もヤマメを真似るようにしてボールを放り投げた。
「ムックー!」
威嚇とばかりにミドマルに向かい一鳴きするそいつ。こいつこそ、私が捕まえた二匹目のポケモン、ムックル。鳥ポケモンだ。
No.396 ムックル むくどりポケモン
ノーマル・ひこうタイプ
高さ0.3m 重さ2.6kg
群れを形成して互いをカバーし合って生活する。鳴き声がかなり喧しい。
白黒の顔に丸みを帯びた鼠色の身体、更に目立つ蜜柑色のクチバシで見た目は十分。穴の中を自由に飛び回る元気もある。
こいつは私がここに入る前、何をするも無く無防備に空を飛んでいた。図鑑を見ると、どうやら群れを作る習性があるらしいことが分かったのだがこいつは一匹で、群れからはぐれたらしかったので保護や戦力拡大の意味で捕獲した、と言った経緯だ。
捕まえる際にフォッコで攻撃しなかった為か、飛び回ることができる位には元気が有り余っている。
「鳥のポケモンかー。確かにこれなら穴の中も動きやすいね。」
感心したように感想を漏らすヤマメ。
「糸を引っ付けてる蜘蛛がいつまで持つかしらね?」
「ふふん、どうかな?」
何か奥の手がありそうだが・・・しかし。
早苗から教えて貰ったばっかりのタイプ相性的には明らかにこっちが有利だ。
相手のミドマルはむしタイプを持つに対して、こっちのムックルはひこうタイプ。ひこうタイプの技はむしタイプに二倍、むしタイプの技はひこうタイプに半分の威力しか出ないらしいから恐らく相当楽だ。
それでも私のムックルを突破したとしたら、それはもはや快挙のレベルだろう。大丈夫、そんなことは起こらない。
互いが互いのポケモンを引き寄せて、睨み合う。
審判は・・・流石にいないか。
しばし、沈黙。
「悪いけど、さっさと決着付けさせて貰うわよ。ムックル、ブレイブバード!」
「ムック!」
私の指示で、ムックルは上半身に勢いを付けて突進を始めた。
対象はもちろんミドマル。しかし・・・。
「・・・。」
ヤマメが何も指示しない。・・・当たる気?
ムックルがぐんぐんミドマルとの距離を縮める。
もう避けるにも近過ぎる距離になった。まさかこれで終わり・・・?
「こうそくいどう!」
後少しでミドマルに当たろうと言う所で、ヤマメが指示を飛ばした。
・・・と思ったら、ミドマルは既にムックルの目の前から姿を消していた。
「ムクッ!?」
慌てて旋回するムックル。
「ムックル、後ろ!」
ミドマルは攻撃が当たるか当たらないかの一瞬で、ムックルの背後にまで糸を付けて移動したのだ。
「もう遅いよ!ミドマル、かなしばり!」
「キシッ!」
指示を受けたミドマルは、振り向いたムックルの方に向き直ると、
クワッ!
とムックルを睨んだ。
睨まれたムックルは動きを一瞬硬直させられた。すぐに元に戻ったが・・・。
「・・・なるほど、これでブレイブバードを封じたのね。だから最初動かなかったと。」
「意外と頭良いことするでしょ?」
状況を考えて、恐らくかなしばりは使った技を封印する技。ムックルの主武器を封印するために最初動かずに技を誘発させたらしい。
見事に引っ掛かってしまったか・・・。
「戦略は良いけど・・・何度もこの作戦が通用するとは思わない方が良いと思うわよ。」
「どうかな?霊夢がいくら用心してもミドマルの技の組み合わせは健在だよ。少しでも隙があればミドマルはこうそくいどうで避けられるんだから。」
「そうね。でも避けた後がちゃんとして無きゃ成功じゃ無いわ。ムックル、すてみタックル!」
「ムックー!」
ムックルは再びミドマルに身体を向かわせる。
「血迷った?これじゃあさっきと同じだよ?」余裕をかますヤマメ。
「・・・どうかしら?」
「さぁね。ミドマル、こうそくいどう!」
「キシッ!」
こちらも再びムックルの目の前から姿を消すミドマル。
・・・さっきと同じじゃ無いのはこれからよ。
「ムックル!そのまま壁に向かって!」
「ムクッ!」
「えっ!?」
ムックルはミドマルに回り込まれても振り向かずに、そのまま壁にすてみタックルを叩き込む。
ガラガラと壁が崩れる音がして、辺りに土煙が広がる。これで・・・。
「これじゃあ睨めない!かなしばりできないじゃん!」
「そうしたのよ?」
「分かってるよ!」
土煙を起こして撹乱するのは手軽で実用的。戦闘ではよく使われる手法だ。
「危ないミドマル!早く離れて!これじゃあどこから来るか分かんない!」
「ふっ、隙も何もありゃしないわね。もう一度すてみタックルよ!」
「ムクーッ!」
ムックルは完全に狼狽えているミドマルに向かい、砂煙を巻き上げてそのまま突進。
「キシーッ!」
突進をモロに受け、ミドマルは大きく上に飛ばされた。
「もう一発!すてみタックル!」
「ムクーッ!」
ムックルはさらに上を向き、三度ミドマルに向かい突進。
よし、行けたか・・・!?
「まだまだぁ!メガホーン!」
ミドマルも負けていなかった。下に向き直って額に生えた角でムックルを指す。
全身凶器のムックルと一点凶器のミドマルが対峙し、ぶつかり合った。
ギリギリと鍔迫り合いが繰り広げられる。
「ムックル!まだ行けるわよ!」
「頑張ってミドマル!押し返せ!」
互いに声援を掛け合う中、競り勝ったのは・・・。
・・・ミドマルだ!
ミドマルは光らせた角を一振りして、ムックルを下の方へと薙ぎ払った。
「ムックル!」
空中で何とか態勢を立て直すムックルだが、捨て身の攻撃を繰り返したせいで既に身体は限界が近い。早苗の言葉を借りるなら、HPが残り少ない・・・と言った所か。
「ムックル、もうヘロヘロじゃないの?大丈夫?」
ヤマメにもそれは勘付かれている。
「ええ、ヘロヘロよ。それがどうかした?」
「決まってるよ。私の勝利が近いってこと!最後のメガホーン!」
ミドマルは角を特大に光らせて下のムックルに迫る。
「・・・確かに、『最後』のメガホーンね。」
「どうせ、私のミドマルが倒れるから最後だとでも言いたいんでしょ?空気で分かるよ。」
「あら、勘が良いわね。・・・私程じゃ無いけど。
ムックル、がむしゃら!」
私が今まで全く使ったことの無かったこの技を選んだのは、全て勘を頼りにしてだ。
言い換えるなら、この技が何とかしてくれると思ったからである。
そして、実際そうなるのだ。
「ムクゥーッ!」
ムックルは指示を聞くと、その場でミドマルの方へ向いた。
さながら、最後の力を貯めているようにも見える。
「キシシシッ!」
上から落下して来るミドマルの大角を、ムックルはどうしたか。
「ムックウウウウウウ!」
受け止めたのだ。
ほとんど力が残っていないはずなのに。
「受け止めた!?」
ヤマメも驚愕している。
それでも終わらない。
「ムックウウウウウウウウウウウウウウウ!」
さらにムックルは角を両手翼で受け止めて、あろうことか上へ投げ返したのである。
がむしゃらに。
「ムックー!」
投げ上げたミドマルはメガホーンが解かれ、空中で数回転。
その間に、ムックルが高速でミドマルへと接近し、「最後」の攻撃を繰り出した。
「キシャアァッ!」
身体を貫かれたミドマルは空中を更に回り、
「ミドマルっ!」
駆け寄ったヤマメの手に収められた。
「キィ・・・。」
目を回して伸びているミドマル。
「・・・よし。これで勝負ありかしら?」
「ムック・・・ッ!」
私達の勝利が確定した。
勝利が決まってからしばらくして、私は地底の地面に足を付けた。
「負けちゃったよ霊夢・・・悔しい!」
ヤマメも一緒だ。
勝負の結果は私の辛勝。すてみタックルを使い過ぎて自滅する所だったが、何とか勝ちを修めた。
「でも、最後のムックル凄かったねぇ・・・火事場の馬鹿力って感じだったけど、あれどんな技なの?」
「調べてみたら、自分が相手より傷付いていればいる程威力が上がる技だったみたい。正にがむしゃらね。」
すてみタックルやブレイブバードの反動で傷付いた身体を利用できる技を兼ね備えていたとは・・・このムックルやりおる。
「あぁ〜。それならあんな威力にもなるね。・・・そう言えば霊夢。旧地獄まで行くんだったら、気を付けといた方が良いよ。」
「ん?どうして?」
旧地獄とは、元々地獄の一部だった地底の地域の総称で、地霊殿もその中には入る。因みに地霊殿はかつての責め具である灼熱地獄に蓋をするように建っている。
「最近、異様に暑いんだってさ。旧地獄街道の人達は灼熱地獄に何かあったって噂してるんだけど・・・私は地霊殿まで行く用事無かったからあんまり知らないんだけどね。」
「ふーん・・・。」
また新しい異変か否か。どうせまたポケモンが何かしたんだろうが。
「あっ、そうそう。何か今日はパルスィがいつもに増して不機嫌そうだったよ。何かあったかも。」
「あれより不機嫌なの?また面倒なことになりそうね・・・。」
このようにヤマメは地霊殿周辺とのネットワークが強いので良い情報源になるのだ。
「それじゃあ私はこの辺で。バイバーイ。」
元気良く手を振ったので、軽く振り返しながら遠くに行くヤマメを見る。
・・・このギリギリ今回の勝負が、今回の地霊殿訪問を予言するような感覚がしてならない。理由は勘。
私の勘は良かろうが悪かろうが恐ろしい位当たる。と言うことは・・・やっぱり、そうなのかしら。
縦穴でバトルするって発想は褒められて良いと思う。
トレーナーが普通に空を飛べる幻想郷ならではのバトルですが、あれ若干スカイバトル意識しました。イトマルはスカイ対応じゃありませんが、それはそれで面白いかと。
さて・・・始まりました地霊殿編。この先どうなることやら。
では。