ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜   作:Mr.Pooh

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もう既に7分ルールが崩壊してる。どうしてこうなった。

今回は宴会の続き。一万字超えです。では、本編どうぞ。




第二四話 宴会バトル

視点:霊夢

 

周りの笑いが収まり落ち着いた頃、私はキスメに事の次第を問い詰めることにした。

 

「・・・っくくく。」

 

未だに思い出し笑いしてる鬼は一人いるが、そいつは除外してだ。

 

「まず確認だけど、あんたはなんで私を驚かせようとしたのよ?」

 

「えーっと・・・それは・・・その場の流れで・・・。」

 

遠慮がちに結構ひどいことを言うキスメ。

 

が、状況的にやりやすかったのも事実だし、構ってても先に進まないのでとりあえず今はスルー。

 

「えーっと、じゃあ次に、あんたはどっから降りてきた訳?」

 

キスメは確かに上から落下してきた。が、今見ても分かるが上で待機できるようなスペースは無い。一体キスメはどこから・・・。

 

「あっ、それは、へびの頭に乗って・・・。」

 

「へび?」

 

「この子の名前・・・。」

 

キスメは桶から手を出して、イワークの岩肌を撫でた。

 

「ヴィワー!」

 

ここで初めていわへびポケモンの口が開いた。鳴き声・・・と言うよりは咆哮に近いような気がする。

 

キスメの話を要約すると・・・イワークの名前がへびで、キスメはその頭の上から落ちてきた、と。

 

なるほど。確かにイワーク──もといへびの頭は私達の真上にあった。これなら私の真上から落ちることも・・・ん?

 

「・・・あんたこいつに名前付けてるってことは・・・。」

 

「えっ?・・・うん。へびは私が捕まえたポケモンだよ。」

 

「やっぱりか。」

 

最初からイワークはキスメのポケモンだったようだ。

 

「でも凄いギャップだよね。ちっちゃいキスメがこんなに大きいポケモン捕まえたなんて。」

 

ヤマメが感心そうに言った。ヤマメはキスメと仲が良いからそれだけ意外だったんだろう。

 

「ねぇ、へびってやっぱり強いの?」

 

一方で萃香は、へび自体の強さが気になっているようだった。まだ酔いも醒めてないようなのに・・・萃香らしいと言うべきか。

 

「うーん・・・戦わせたこと無いから分かんないかな・・・。技は強そうだけど。」

 

「ふーん・・・じゃあさ。」

 

萃香の目が光った。

 

全員がこの後の展開を察したのか、一瞬辺りが静まる。

 

「このまま初対決と洒落込まないかい?」

 

あぁ、やっぱりか。

 

予想できた答えだが、とりあえず内心驚いたような表情を出しておく。

 

全員私と同じ予想だったようで、キスメと萃香以外私と同じ表情をしていた。何と言うか・・・驚いてはいそうなんだけど、あぁ、やっぱりな、とでも言いだけな顔と言うか。そのままだが。

 

「えっ、勝負・・・?ここで・・・?」

 

だが当人のキスメは明らかに狼狽えていた。予想ができなかった訳では無かろうが、自分のことで驚いているんだろう。

 

だが萃香はそんなキスメの心境など露知らず、ボールを突き出して高らかに叫ぶ。

 

「私のポケモンとキスメのポケモン、どっちが強いか勝負だぁ!行けぇ!ムサシ!」

 

同時にボールを投げて自らのポケモンを召喚する。

 

「グァーィアァ!」

 

No.127 カイロス くわがたポケモン

むしタイプ

高さ1.5m 重さ55.0kg

二本の角は非常に力が強く、自分の二倍の重さを持ち上げてそのまま切断する。

 

ボールから飛び出したのはクワガタ・・・には似ても似付かないポケモンだった。

 

二足歩行なのはまだ良いが、ベージュの身体は甲虫からはかけ離れている。さらに、頭から生えているそれは大顎でも何でもない。

 

角だ。

 

確かにクワガタに似ていなくも無いが、ヘラクロスと比べても十分酷い。

 

だが、この際そんなのどうでも良い。

 

萃香のカイロス──ムサシは大きさで言って大体勇儀のコジロウより少し小さい位だ。へびとはいくら何でも体格差があり過ぎる。

 

「ねぇ、それって無茶なんじゃ・・・!」

 

「ふふん、見てなさぁい、私の強さぁ!」

 

キスメが萃香に忠告するが、萃香は聞く耳を持たない。おまけに酔いを露わにしている。

 

私は確信した。

 

多分、ここで萃香は絶対負ける。

 

それで酔っ払いが静かになってくれれば万々歳だし、止める必要も無いかしらね・・・。

 

「行くぞぉ、ムサシ!あばれろぉ!」

 

「グァィィィ!」

 

悪巧みをしている間に萃香側が動き始めた。腕を振るいながらへびに向かって一直線。

 

あばれろ、と。何て単純な技なんだろうか。

 

「うわっ、よっ、避けてへび!」

 

準備が整っていなかったらしいキスメは慌てた様子で指示した。

 

へびは本物の蛇のように俊敏に横に避けた。

 

「うわっ!?」

 

その影響をモロに受けたのは私達である。へびの巨体に薙ぎ払われるように四方八方に散る私に勇儀、ヤマメ、パルスィ。飛んで避けるコジロウ。

 

薙ぎ払われたのは人に限らず、焼き鳥に酒瓶に徳利にお猪口・・・。

 

「ちょっ、忘れてた!ここ宴会中じゃないの!?」

 

へびが回避にちょっと動くだけで宴会料理が大量に台無しになる。被害は甚大だ。

 

やばいやばいやばい!あれは私の焼き鳥なのに!

 

「萃香!頑張りなさい!あんたなら行けるわよ絶対!」

 

私は一転して全力で萃香の応援をすることにした。私からしたらこの上無い掌返しだが、口には出してないからバレまい。

 

「任せろぉ!霊夢!」

 

萃香はご丁寧にこっちを向いてガッツポーズしながら言った。

 

「ばっか、早く攻撃しなさいよ!」

 

「えっ?何ー?」

 

「だからぁっ・・・!」

 

「うっ・・・へび、ラスターカノン!」

 

私と無駄話をしている間に体勢を整えたキスメは、へびに強そうな技を指示した。

 

もちろん余所見をしている萃香は気付くはずも無く・・・。

 

「ヴァァァァク!」

 

へびは口に灰色の球体を作り、回転させながらムサシに向かって放った。

 

言わんこっちゃない!

 

・・・と、思ったら。

 

「ムサシ!跳び上がって!」

 

「グァイィ!」

 

萃香は視線を私の方に固定しながら遠くのムサシまで指示を飛ばした。ムサシは言う通りにしてラスターカノンを回避。

 

「「!?」」

 

私もキスメも意外なことにはっとする。

 

似たような顔が増える中、勇儀だけは感心したような顔を見せていた。

 

そのまま萃香は腕を組み、目を閉じて余裕を見せる。

 

「ふふふ。鬼なんだから、こんなの感覚で掴めないとね。酔ってても。」

 

──鬼たるもの、こんなの感覚で掴めるようじゃないとな・・・。

 

萃香の自信の一言が勇儀の言葉に重なった。萃香も意図的に重ねたんだろう。

 

恐らく、萃香は目を閉じたまま勝負の様子を手に取るように知覚している。

 

「さて、そろそろ終わりにしようかぁ。・・・ムサシ、インファイトォ!」

 

萃香は戦いの場に改めて目を向け、ムサシに指差して技の指示を出した。

 

「グァー・・・!」

 

飛び上がったままの体勢で腕に力を込めるムサシ。

 

更にムサシはそのままへびの胴体に目掛け直滑降。それも、へびが反応できないスピードで。

 

「へびっ!」

 

キスメが叫ぶも、もうムサシの攻撃からは逃れられないのは確実だ。

 

「イロォォオ!」

 

気合の込めて鳴きながら、ムサシは光る拳を振り下ろした。

 

「ヴァァー!」

 

拳がへびの岩肌に当たり、持ち上がっていたへびの上半身がその勢いで地面に叩きつけられた。

 

轟音と共に宴会料理が潰され、皿の破片やらが飛び散る。

 

しばらく、轟音だけが響く時間が続いた。

 

「へびっ!?」

 

音が止んだ後、慌ててキスメが駆け寄る。

 

が、跡に残っていたのは、腕をへびに打ち付けたまま動かないムサシと、目を回したへびだけ。

 

戦闘不能。

 

ムサシの勝利だ。

 

「私の勝ちだぁ!」

 

無邪気に笑いながら、少し遠くからムサシの元へ駆け寄る萃香。ムサシもようやくへびの上から飛び降りて萃香を迎える。

 

「よく頑張ったね、へび。ゆっくり休んで・・・。」

 

「イワ・・・。」

 

敗北したキスメはへびに慰労の言葉を掛け、二、三回撫でた後に桶からボールを取り出し、へびに翳した。

 

へびの身体は瞬く間に赤く包まれ、手のひら大のボールに収まった。

 

(家一軒分の大きさでもちゃんと仕舞えるのね・・・。)

 

と、余計なことに少し感動していると、周りからぱらぱら手を叩く音が聞こえてきた。

 

見てみると、手を叩いていたのは勇儀やパルスィじゃ無く、見覚えの無い普通の妖怪だった。それも一人や二人に収まらないで、かなりの数。

 

やがてぱらぱらとした拍手は数を増やし、最後にはどっとした拍手になった。

 

どうやらキスメと萃香のポケモン勝負は、単なる身内の対決に収まらず、宴会客の目の保養になっていたようだ。その代わり料理やお酒は失われたようだが。

 

「ははっ、ありがとーっ!」

 

その様子を見た萃香は、ムサシに片手で持ち上げられながら前に後ろに手を振った。嬉しそうだ。

 

一方キスメは拍手の雨に恥ずかしそうに桶に身を隠したが、元気に手を振る萃香に感化されたか、桶の中で小さく手を振っていた。

 

しかし、本当にあのでかいへびを打ち負かすとは・・・ムサシが見た目以上の強さだったのか、へびが見掛け倒しだったのか。観客が沸いたのも頷ける。

 

ともかく、料理の被害が最小限になって良かった。この後別の場所でゆっくり宴会料理を食べることができそうだ。何を食べようか、今から涎が・・・。

 

「さぁ〜て・・・次の相手はお前だぁ!」

 

・・・ん?次の相手?

 

妄想と涎を振り払って前を見ると、未だにムサシに持ち上げられたままの萃香がどこかを指差しながら叫んでいた。

 

指先を目で追う。

 

対象物は・・・勇儀?

 

いや、違う。

 

・・・コジロウだ。

 

「・・・まっ、いつか挑まれるだろうとは思ってたよ。そっちは二本角でこっちは一本角。あたし達と同じだからね。」

 

「ヘラクロッ!」

 

売り言葉に買い言葉で、勇儀が答えた。同時にコジロウが鳴く。

 

その声が起爆剤となったのか、観客達はおぉっと声を上げた。

 

・・・あれ、これってもしかしたらまだ続くの?

 

「コジロウ、まず一発、ストーンエッジだ!」

 

私が唖然としている間に、勇儀がコジロウに技を指示した。

 

勇儀もやる気満々。観客もいるし、戦いは避けられなさそうだ。

 

「ヘラ、クロォォッ!」

 

コジロウは技の指示を受けると同時にどこからともなく発生させた青白い光輪で自分を包む。

 

そして同じように目を青白く光らせると、光輪から無数の尖った岩が正面に向かって飛び出した。もちろん、岩の進行方向にはムサシがいる。

 

豪快な技に歓声が漏れた。

 

「横!そのまま前に出ろぉ!」

 

萃香達も負けてない。ムサシは飛んでくる岩を素早く横に避け、その勢いで前に加速。身体の重さを跳ね除け、とんでもないスピードでコジロウと距離を詰める。

 

走るムサシがコジロウを捉え、待つコジロウがムサシを睨む。

 

ポケモン使いの二人の鬼も同時に笑みを作り、互いが互いを見据る。

 

そして、

 

「「インファイトオォ!」」

 

全く同時に、全く同じ名前の技を宣言した。

 

「ガァイロォォォ!」

 

「ヘラックロォォォ!」

 

互いに叫びながら拳を光らせて、二匹が激突。そして、文字通り拳を交えた。

 

ドォンと派手な音がして、衝撃風が辺りのものをあらかた吹き飛ばした。少し近くに立っていた私も衝撃風に吹き飛ばされそうになる。

 

衝撃風を足に力を入れて耐え忍び、再び戦いの舞台へ目を向けた。

 

二匹は自らが生み出した衝撃風を諸共せず、拳同士をぶつけた状態で静止していた。

 

実力伯仲。

 

「やるねぇ〜勇儀・・・こりゃ面白くなりそうだぁ。」

 

「そりゃそうだよ。あたしのポケモンなんだから。そっちこそ、面白い勝負にしてくれよ?」

 

「上等!」

 

萃香が言うのと同時に二匹が互いを弾き飛ばし、拳が身体ごと離れた。

 

お互い、力で力をねじ伏せるスタイルだ。小細工無しに自らの力だけで相手を潰しにかかっている。

 

流石鬼。戦い方からして豪快だ。

 

双方の力量は互角。つまり、どっちが先に倒れるかの勝負になる。だが二匹の体力もどっこいどっこいだ。これは本当に結果の予想が難しいぞ・・・。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。」

 

白熱した勝負に魅入られている中、急に声を掛けられて腰を折られた。

 

見ると、話しかけたのは古和風な暗い色の着物を着た見知らぬ少女。人間の見た目で七歳か八歳位だが、ここが地底である以上は妖怪だろう。

 

「・・・なぁに?私に何か用かしら?」

 

とりあえず私は人間の幼児用の、物腰柔らかな受け答えをした。こういう見た目幼い妖怪は精神年齢も相応であることが多い。

 

「あのね、お姉ちゃんは・・・。」

 

どうやら答え方は正解だったようだ。さて要件は・・・。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんは戦わないの?」

 

 

 

 

 

 

「・・・は?」

 

素で「は?」が出た。

 

幼児相手に。

 

・・・いやだってそれ位質問の意味が分からない。

 

「えと・・・私が戦うって?」

 

しどろもどろになりながら、真意を聞いてみる。

 

「うん。だって、あのお姉ちゃん方がやってるから・・・。」

 

少女は指差す。そうか、萃香と勇儀が戦ってるからそれで・・・。

 

と、思ったら。

 

指はムサシとコジロウの方を向いていなかった。

 

その方向ではムサシ達よりもっと小さい二匹のポケモンが戦っていたのだ。

 

おまけに、その内一匹は緑色をした蜘蛛のポケモン。

 

かなり見覚えがある。と言うか、このポケモンを使役する妖怪に憶えが・・・。

 

「っえええぇぇぇ!?」

 

考えが巡る前に声が出た。

 

軽い身のこなしで戦っているあの蜘蛛のポケモンは間違い無くイトマル、いや、ミドマルだ。理由は近くでヤマメが指示を出してるから。

 

そしてもう一つ判明した。相手の、灰色の楕円体から緑の棘をいくつも生やしたようなポケモン。そいつの使役者はキスメだ。理由はやはり近くで指示を出してるから。つまり、今あっちではヤマメとキスメが戦っている、って訳か。

 

No.597 テッシード とげのみポケモン

くさ・はがねタイプ

高さ0.6m 重さ18.8kg

主に洞窟に生息。全身に生えた棘で岩壁に張り付き、鉄の成分だけを吸収して硬い身体を作る。

 

キスメに「たね」と名付けられたらしいテッシードは、素早いミドマルの攻撃を跳ね転げて回避している。

 

「避けてばっかじゃ勝てないよ。もっと攻めて良いんだよ?」

 

「・・・攻めてるだけでも勝てないよ。特にこうワンパターンだと。」

 

キスメの言う通り、たねはただ攻撃の回避をしている訳じゃ無く反撃のタイミングを伺っているように見える・・・って、そうじゃ無くて。

 

いつの間にこいつらはポケモン勝負を始めたんだ。確かにまぁ、萃香達のアレ見たら誰だってやりたくなるだろうけど、行動に移す早さが尋常じゃない。

 

「あのお姉ちゃん達は凄い楽しそうにしてるのに、お姉ちゃんは仲間外れだったから心配で・・・。」

 

目の前の少女はさっき私があいつらと一緒にいたのを見ていたのか、どうやら私が仲間外れに見えていたようだった。そして、顔を赤くしながらも、そのことを私に伝えてくれた。

 

何て健気だ。

 

見知らぬ人、しかも年上(に見える人)に勇気を持って話しかけられる人はなかなかいない。立派なもんだ。流石に私の場合は疎外感とかは無かったが、私自身が自然に笑顔になれた。

 

「心配してくれてありがとう。大丈夫、私は仲間外れじゃ無いから。安心して。」

 

例え勘違いと言えども、この子の厚意を無駄にはしたくない。

 

「本当?」

 

「ええ、本当よ。」

 

「じゃあ、お姉ちゃんのお友達とお姉ちゃんの勝負見せてよ!」

 

おっ、そう来たか。

 

少女はキラキラした目で、私の勝負を期待しているようでもあった。わざわざ私を心配してくれたんだし、勝負を見せる位ならいくらでもやってやろう。

 

「分かったわ。私の勝負強さ、目に焼き付けなさい!」

 

私は最初の幼児用口調も忘れて、なるべく力強く言った。

 

さて、勝負するとなれば相手を・・・っと、早速見つけた、緑の眼。

 

「パルスィ!」

 

「ひゃあっ!?」

 

後ろから声を掛けたからか、パルスィは変な声で驚きながら振り返った。ぼうっとしていたらしい。さっきへびに吹っ飛ばされてから見ていなかったが、どうやらこっちは何もしていなかったようだ。

 

「あっ、あぁ・・・霊夢だったの・・・。びっくりした・・・。」

 

「・・・何もそんなに驚くことも無かろうに。」

 

「だって死角から話しかけてくるから・・・で、何の用よ?」

 

「今ここで、あんたにポケモン勝負を申し込むわ。」

 

「あぁ、ポケモン勝負ね・・・はっ!?」

 

パルスィはまたもやオーバーリアクションを取った。

 

「なっ、何でまた急に・・・あんたもヤマメみたいに鬼達に感化された訳?」

 

やっぱりヤマメは萃香達がやってるのを見てやり始めたのか。それが嫌だったパルスィは遠慮したと。ならばそこの誤解は解かねばなるまい。

 

「いや、そう言う訳じゃ無いの。頼まれたのよ。勝負して見せてくれって。」

 

「誰に?」

 

「あの子。」

 

私はさっきの少女の方を人差し指で指した。少女も手を振って答える。

 

「・・・!」

 

少女と目が合ったパルスィは、何故か驚いたように目を見開く。

 

おまけに、黙ってしまった。

 

もしかして何か気に触った・・・?

 

「あの・・・パルs」

 

「やろう!さっさと!」

 

パルスィは右手にグーを作って私に向き直り、嫉妬の欠片も感じない瞳で私に言った。

 

「えっ、あ、うん。」

 

パルスィの豹変に面食らった。子供の力って凄い。

 

「行けっ、ヘル!」

 

私の返答が終わるか終わらないかのスピードでパルスィがボールを投げた。

 

「デゥッ!」

 

No.228 デルビル ダークポケモン

あく・ほのおタイプ

高さ0.6m 重さ10.8kg

遠吠えで自らの縄張りをアピールする。群れで行動し、鳴き声を使い分けてコミュニケーションを行う。

 

口元と腹は暗い赤、頭と背中は同じく暗い白で、後は全身黒。ダークポケモンに相応しく、地獄の番犬を思わせる風貌である。

 

ほのおタイプか・・・なら、こっちが繰り出すポケモンは決まってる。

 

「行けっ、フォッコ!」

 

同じくほのおタイプのフォッコ。相性が良い訳では無いが、魅せる勝負をするなら丁度良い。

 

「フォッコッ!」

 

フォッコは勢いを付けてボールから飛び出し、ヘルに啖呵を切った。

 

どうやら私達にも注目が集まっているらしく、観客な集まって来ている。

 

・・・楽しくなってきた。

 

パルスィもやる気なのか、まっすぐこっちを見てくる。

 

良い勝負にしなさいよ。

 

相手と一緒に技を宣言。

 

「ヘル!オーバーヒート!」

 

「フォッコ!だいもんじ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがこのザマですか・・・。」

 

さとりが呆れたように言った。

 

「いや本当・・・やり過ぎたわ。ごめん。」

 

「ええ・・・。」

 

私もパルスィも項垂れるしか無くて。

 

その理由は、今この状況が私達によるものだから。

 

「しかし、派手にやりましたね・・・。」

 

さとりは改めて辺りを見回し、溜息に近い言葉を吐いた。呆れに感心が少し混ざったような、そんな声色。

 

呆れているのに感心している、と少し矛盾しているような感じになっているが、それもこの状況を見れば納得するだろう。

 

と言うのも、辺り一面真っ黒焦げなのだ。地面から何から全部。

 

もちろん比喩では無く実際に。

 

そしてその原因が、私のフォッコとパルスィのヘル、と言う訳である。

 

どちらともほのおタイプのヘルとフォッコの勝負となると、当然炎の撃ち合いになる。そしてその勝負がエキサイトするとなるとどうなるか。

 

飛び火するのである。

 

あっちこっちに飛び散った火は燃え移り続け、いつの間にか周りが火事に近い状態になったのだ。さとりが止めに入ってくれたおかげであまり被害が出なかったから良かったが、そうならなかったらどうなっていたのか、考えたくない。

 

もっと言うと炎を起こした張本人であるヘルとフォッコは今私達の腕の中だ。なぜかって、勝負でお互いクタクタになって火事になる時には動けなくなっていたから。

 

よって今は色んな意味でどうにもならない状態になっているのだ。

 

「だけど、いっつも落ち着いてるパルスィがポケモン勝負で周りが見られなくなるとは・・・意外ですね。」

 

「うっ・・・それは・・・私もそう思うわ。」

 

私も。パルスィの勝負中の様子はいつもじゃ考えられない位だった。日頃の鬱憤でも晴らしてんじゃないかって思うレベルで。

 

そう言えば、私やパルスィを勝負に走らせた少女はいつの間にやら消えていた。この火事なら当たり前だが。

 

「それじゃあ、霊夢さん。」

 

さとりは早々にその話を切り上げ、私を名指しで呼んだ。

 

そうか。この宴会に出たのもこのためだった。

 

ここでうっかりしてはいられない。

 

さとりの妙に真剣な顔が緊張感を走らせる。

 

そして、さとりの口が開いた。

 

「例の話でs」

 

「あっ、ここだったのか!」

 

さとりを遮って二つの人影が押し込んできた。その方を見てみる。

 

「霊夢にさとり様に・・・パルスィ?珍しい組み合わせだなぁ。で、何で真っ黒焦げなの?」

 

「さとりさまー!」

 

「ティニ!」

 

鬼の二人かと思ったが、正体は私と一緒に宴会に来た三匹、燐と空とだぶりゅーだった。だぶりゅーはボールから出てきたらしい。

 

「うっ!?お空、あんまりのしかからないで・・・。」

 

小柄なさとりの上から被さる空は相対的に大きく見える。実際、他の人と比べても大柄なのだが。

 

空をようやく振り払い、一度咳払いをしてさとりが続ける。

 

「さて、遮られてしまいましたが、続きとしましょうか、霊夢さn」

 

「おぉう、みんなお揃いで、楽しそうだねぇ〜。」

 

さとりの話は再び遮られた。主は酔った声である。

 

「おい大丈夫か萃香。さっきまであんなに勝負で盛り上がってたのに。」

 

大体予想は付いていたが、主はやはり鬼二人、萃香と勇儀だ。勇儀は良いが、萃香は幼女体型でムサシを担いでとんでもないルックスになっている。そしてそれに誰も突っ込まない。これが地底の常識なのか?

 

「何やってたんだい?」

 

「ちょっと霊夢さんと話をする所だったのですが、ちょっとした邪魔が入りましてね。」

 

「あぁ、ごめんごめん。邪魔したか?」

 

イヤミが込められたさとりの発言は勇儀により爽やかに返された。

 

「・・・もう誰も来ませんよね?」

 

横入りされたことがよほど気に触ったのか、四方を見渡して確認を取るさとり。

 

そう言えばここにいる中ではまだ見ない奴がいるが・・・まぁ、大丈夫だろ。

 

「よし、じゃあ今話しちゃいまs」

 

「おっ、やっぱり皆集まってた!」

 

「ヤマメですか!」

 

「えっ!?」

 

急に現れたばっかりに暴言を浴びたのはヤマメである。

 

「・・・?」

 

後ろからしずしずとキスメも付いていた。

 

「もうっ、何で誰から誰まで私の邪魔するんですか!」

 

理不尽なお預けに遂にさとりは怒りを露わにした。流石の三連続。

 

「ま、まぁ、もうこの宴会に知り合いいないし、多分もう大丈夫よ。」

 

私は慌ててさとりをフォローした。このまま結局話をしなかったとかになってしまったら骨折り損だ。

 

「・・・本当ですね?」

 

「ええ。本当よ。多分。」

 

多分とは言え、私に萃香、キスメ、ヤマメ、パルスィ、勇儀、さとり、燐、空、だぶりゅーと知り合いが一同に会しているのは事実だ。もう割り込まれる心配は恐らく無いだろう。

 

「・・・分かりました。じゃあ言いますね。」

 

さとりも立ち直った。どこまで考えてなのは分からないが。

 

「とりあえず、私はこの宴会にいたポケモンのほぼ全員の心を読みました。」

 

「えっ、そんなことしてたの?」

 

ヤマメが驚いたように声を上げた。キスメとパルスィと萃香と勇儀に燐も同じような顔をしている。

 

「あっ、そうか。あんたらは事情知らなかったんだったわね。って言うか部外者の方が多いし。」

 

別にいても構わないが、ここは話を面倒にしないためにもいなくなって貰った方が嬉しい。

 

「悪いけど、一旦席を外して貰えるかしら?」

 

「駄目です!」

 

さとりがまた声を荒げた。

 

全員、硬直。

 

「えっと・・・何で?」

 

一応の当事者として聞いてみる。

 

「また割り込まれたら困りますから!」

 

そんな理由で!?

 

全員、呆然。

 

「ま、まぁ、分かったわ。そうしましょう。」

 

下らない位間抜けた答えだったが、断る理由も無いし、語り部の意見は尊重したい。

 

「ありがとうございます。では続きを。」

 

本人は大真面目なのがまた下らなさを誘う。

 

「心を読んだ結果ですが、スキマでは無い幻想入りの正体が一応分かりました。」

 

「本当!?」

 

「ええ。しかし一応です。正体は分かりましたが、それが何によるものなのかは分かりませんでした。」

 

「それでも構わないわ。後はこっちの仕事だし。」

 

方法さえ分かれば突き止められる確率はグンと上がる。

 

「分かりました。では、一息に。・・・光輪です。」

 

光輪。

 

正体は意外にあっけなく明かされた。もう少し勿体ぶってもいい気がするが、それはそれで冗長だ。この方が私には合ってる。

 

「光輪・・・ねぇ。どんな風だったの?」

 

「光輪、つまりリングが地面に突然現れ、その中に入ってしまうと別世界。スキマより単純ですよ。」

 

「ふむ、そんな能力聞いたこと無いわね・・・。」

 

リングで瞬間移動する人物は聞いたこと無い。そもそも光輪って位光るリングをって見たことあっただろうか。

 

「皆に聞き覚えは?」

 

周りの橋姫や鬼にも聞いてみたが、首は縦には動かなかった。

 

「ふうむ・・・でも、こりゃあ好都合かも。」

 

「なんでです?」

 

さとりが不思議そうに言った。

 

「特徴的なシンボルがあるから。光輪がね。ちょっとでも見たら記憶に残るでしょ?」

 

「あぁ、なるほど。確かに。」

 

よし、情報が手に入ったならここにいる必要は無い。

 

「ここからはとにかく情報集めね。さとり、ありがとう。このまま行ってくるわ。」

 

「そうですか。こちらこそ色々とありがとうございました。」

 

「ティニー!」

 

さとりとだぶりゅーから別れを受けた。だぶりゅーにも一言言っておくか。

 

「だぶりゅー、また今度、勝負する?」

 

「ティーッ!」

 

周りを飛び回りながら返事した。やっぱりちんまいのって可愛いな。

 

「ふふっ、じゃ、また今度ね。」

 

最後にだぶりゅーに挨拶して、私は地底の出口目指して飛び立った。




後半少し無理矢理だったかしら。

今回まで地霊殿組のポケモン紹介しましたが、手持ちが出てない人物はまだポケモンを持っていません。それがどう関わってくるのか必見。

では。
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