ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜 作:Mr.Pooh
では、本編どうぞ。
視点:霊夢
・・・なんなの、これ。
「今だ!でんこうせっか!」
「避けてどくばりを打って!」
「ねんりきでトドメだ!」
「みきりで避けろ!」
「つばさでうつ!」
「ひのこを出せ!」
人里では、ポケモンらしい動物を使って大量の人が勝負に興じていた。
「あっちこっちで・・・霖之助さんが言ってたのはこれだったのね。」
見た限りでは、モンスターボールはポケモンを捕まえるだけでなく、使役させる能力も持っているようだ。それを使って勝負することも、恐らく外界では当たり前なのだろう。確かに異変と言えなくもない流行りっぷりだけど、今のところめぼしい事件も起こっていないみたいだし、あまり止める意味もないように思える。
・・・止めさせるべきなのかしら。
「あ、霊夢さん。こんにちは。」
考え事をしている矢先、後ろからの自分を呼ぶ声で振り返った。
視線の先には、小さい身体に和服を身につけた少女。
「阿求!」
転生により、一人間として古くから幻想郷を見てきた人物、稗田 阿求その人だ。
これはラッキー。
初めに話を聞こうと思ってたから好都合だ。
「どうしたんですかそんなに慌てて?」
「異変と思しきものの調査に。ちょうどあなたにも話を聞きたかったところだったのよ。」
「その異変らしき出来事ってやっぱり、あれですか?」言いながら、阿求は近くでやっているポケモン勝負を指差した。
「そうそう。全く、今さっき来たから驚いたと言うより呆れたわ。どうしてこう影響されやすいのかしら。」
「ここの人達はずっと妖怪に脅かされながら生活してますからね。自分が使役できる動物がいるだけで心強いものですよ。その動物を使って勝負までできるとなればなおさらです。」
「なるほどね・・・。」
これも、ただの流行りに過ぎない訳ではないらしい。
「・・・あの・・・それで私には何の用で?」
「・・・あぁ、ごめんなさい。」霊夢は一つ咳払いをして続ける。
「あなたも一匹助けたんでしょ?異変解決の第一歩だと思って、その子を見せてくれないかしら?」
「ええ、もちろん良いですが・・・何でまた私が?」
「魔理沙から、あなたはかなり朝早くからその子を見つけたって聞いたのよ。もしかしたらあなたがポケモンを見つけた一人目かもしれないって思って。」
「そういうことですか。じゃあ・・・。」阿求は懐を少し探って一つの道具を取り出した。
モンスターボールだ。
しかし、阿求のものはあの黒いはずの小窓がカラフルに光っていた。
「出てきて、ヤマト!」
阿求は叫んでボールを放り投げた。
するとボールの赤い部分と白い部分が開かれ、中から光が現れる。それは地面に立つ四つ足の動物の形を作り出し、そのまま動物へと姿を変えた。
「テリッ!」
「ヤマト」と呼ばれたそのポケモンは、全身が黄土色の逆立った毛に覆われていた。
「この子ね。・・・当たり前だけど、私も見たことがないわね。ヤマトっていうのはあなたが付けた名前?」
「ええ。かなり直感的に付けちゃいましたが。モンスターボールのおかげで名前は分かりましたが、やっぱり図鑑が無いと辛いですね・・・。」
「図鑑・・・あ。」
思い出してしまった。
「霊夢さん?何か気付きました?」
「いや、そうじゃないんだけど・・・霖之助さんからこれ貰ったのを忘れてたわ。・・・それとも、忘れていた方が良かったのかしらね・・・。」懐からあの機械を取り出しながら言った。
例の「図鑑」だ。
「・・・何の機械ですか?外来のもののように見えますが。」阿求は首を傾げる。
「まだ私も使ったことないんだけど、『ポケモン図鑑』っていう機械らしいわ。」
「図鑑!霊夢さん。その中にこの子の情報はありますか?」
「それがね、これ見てよ。」索引を開き、何もポケモンが登録されていない画面を見せつけた。
「・・・図鑑なのに、何も書かれていないんですか?」
「そうなのよ。霖之助さんによると、自分で登録して図鑑を作っていくらしいわ。」
「へぇー・・・。それはそれで便利そうじゃないですか。自分で図鑑を作るなんて面白そうです。」
「私には合いそうにないわ。こう見えてあんまり暇じゃないのよね。特に今みたいな異変のときには。」
「あっ、じゃあそれ私に譲って頂けませんか?大丈夫です。有効活用しますから!」
「嫌よ。タダで貰ったものは簡単に渡せないわ!」
「や、やっぱりですか・・・。」
阿求は苦笑しながらも、妙に納得した表情だった。
・・・何か腹立つわね。
「・・・まぁ、こう言ってしまった以上は使うしかないわね。確か・・・ポケモンに翳すんだったかしら?」
渋々、図鑑をキョトンとした顔をしているヤマトに翳すと、画面には一瞬でヤマトと同じポケモンの写真とそのポケモンについての情報が映された。
No.506 ヨーテリー こいぬポケモン
ノーマルタイプ
高さ0.4m 重さ4.1kg
強敵にも恐れない勇敢な性格で、立ちはだかる者には本気でぶつかるが、普段はレーダーの役割をする鼻で天敵を避けつつ餌を探す。トレーナーに忠実に行動するとも言われる。
「・・・へぇ。感心したわ。そこそこ詳しい情報が分かるのね。」
「大きさに体重まで・・・。かなり高い分析の能力があるみたいですね。・・・でもこの番号は何でしょうね?」阿求はポケモンの名前の横に書かれた番号を見て言った。
「さぁね。それぞれのポケモンに番号でも付けてるんじゃないかしら?」
「でもそれじゃあ、世界に何種類のポケモンがいるか、この図鑑は知っていることになります。最初この図鑑に何も記録されてないなら、この番号は形式上1番が妥当のはずです。」
阿求は疑問に感じた場所を羅列していく。
「だいたい、ポケモンに翳しただけで名前が付けられるのもおかしな話です。動物の名前は本来昔からその名前が伝承されているか、それらを専門にしている方達が話し合うかで普遍的に付けられるものです。もし個々のポケモン図鑑が自動的に名前が付けるとしたら、名前を付けるにあたって重要な普遍性がゼロになると言っていいでしょう。」
何だか小難しい話だ。
「えーと・・・つまりあなたは、この図鑑には元々全てのポケモンの情報が記録されていて、あえて隠してるっていうの?だったらなおさら私には合わないわね。」
「断言はできませんが、その可能性は高いでしょうね。」阿求は考え事をしているような仕草で続ける。「しかしそれなら、わざわざ図鑑を白紙にする目的がハッキリしません。この図鑑を商品と考えると、図鑑を販売する際は図鑑の情報が限界まで入っている方が売る側からも買う側からも得をするはずです。逆に最初白紙だとお互いにメリットがありません。何かウラがある気がしますね・・・。」
「裏、ね・・・。」
わざわざ登録されている情報を隠し、ひと工程加えないと情報が表示されない。
確かに何かありそうだけど、私の勘はあまり関係ないことと言ってるわね・・・。
「おい、そこのちっこい女の子!」
不意に後ろから声が飛んでくる。
「・・・へっ?私ですか?」自分のことだと気が付いた阿求は振り返る。釣られて霊夢も振り返った。
「そうだ。その子、お前のポケモンだろ!」見た所9歳か10歳辺りの少年は元気よく言い放った。
「俺とポケモン勝負しろよ!」
いよいよ、次回初バトル。
では。