ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜 作:Mr.Pooh
では、本編どうぞ。
視点:魔理沙
「くそー・・・。見失っちまった・・・。」
いつの間にか、周りは森の風景。
あの電気ネズミ、ピカチュウを追いかけているうち、こんなところまで辿りついてしまった。
「森に逃れるなんて頭いいことしやがる・・・。」
四方どこを見ても木。
黄色い身体は目立つが、木々に阻まれていては意味がない。しかも、あちらこちらから動物の鳴き声が聞こえるのに、目的の動物の鳴き声は全く聞こえない。
・・・どうしたもんだろうか。
「おや、魔理沙じゃないか。調子はどうだい?」
「うわっ!・・・なーんだ、お前か・・・。」
後ろからの声の主は霖之助だ。
「なんだとは失礼じゃないのかい?」
「なんでわざわざ後ろから話しかけるんだ?暗殺者だって後ろには疎いんだぜ。暗殺者の後ろに立ったおかげで怪我を負った人の話とか聞いたことないのか?」
「流れだよ。流れ。」
「何だよ流れって。」
「それで?何をしてるんだい?」
「いやー、探してるポケモンが森に逃げちまって・・・あ、そうだ、霖之助。霊夢には会ったか?」
「うん、会ったよ。あっちからわざわざ来てくれて。・・・そういえば魔理沙がどうのって言ってたっけ。」
「あー・・・。やっぱ怒ってるか?勝手に喋っちゃって。」
霖之助は一瞬びくっとする。
「えっ?・・・なんでだい?確かにサービスでお金はもらわなかったけど、在庫は大量にあるし、宣伝効果もあるから逆に売れるよ。怒る要素は何もない。」
霖之助は早口でまくし立てた。言葉とは裏腹に、霖之助の声は若干震えているように聞こえる。
「なーんか怪しいな・・・。本当か?」
「今の言葉に嘘はないよ。何なら覚り妖怪でも呼んでくればいい。」
極端過ぎやしないか。
「分かった、分かったよ。落ち着いて。」魔理沙は少し焦っている霖之助を落ち着かせる。
「そういえば。」霖之助は話題を変えるように新しい話題を切り出した。「図鑑の調子はどうだい?ちゃんと動いてる?」
「ああ。ちゃんと登録されるぜ。まだ数は全然無いけどな。」言いながら図鑑を開いてみせる。
「良かった。・・・ん?何がピカチュウの項目だけ閲覧数がすごいね。そんなに執着してるんだ・・・。」
「その通りだぜ。あのポケモンを捕まえないと腹の虫が収まらねぇ。」
「・・・あれ、でももうポケモンが入ってるボールを持ってるみたいだけど?」
「ん?あぁ、こいつか。見たいか?」
「うん。ぜひ見せてくれ。」
「じゃあ・・・。」私はホウキに引っ掛けていた一つのモンスターボールをもぎ取って投げた。「行けっ、キノスケ!」
「キノ!」
ボールから出てきたのは、まだら模様の半球に顔が付いているような風貌をしたポケモンだ。
No.285 キノココ きのこポケモン
くさタイプ
高さ0.4m 重さ4.5kg
倒木や人間が森に捨てた新聞紙などの近くで群生する。胞子に催眠作用があるため、不用意に近付くと眠らされてしまう。
「キノココ・・・。なるほど。君らしいね。」
「あっ、私の図鑑!ったく、もう私のなんだから、勝手に使うなよ。」
「ははっ、ごめん。実は僕もう持ってないんだよ。ポケモン図鑑。使う機会なかったから真っ白だったけど。」
「えっ、そうなのか?確かお前、二つ持ってたような・・・。」
「うん。そうなんだけど、もう一つは霊夢にプレゼントしたよ。」
「 へっ?」魔理沙は素っ頓狂な声をあげた。「霊夢って、霊夢だよな?」
「うん。」
「あいつ、見た限りほとんどポケモンに興味無さそうだったのに。あくまで異変として捉えてた感じだったぜ。そんなに欲しがったのか?」
「・・・うん。」一瞬、言葉を詰まらせた。「異変の解決に必要だ、とか言ってたかな?」
「どうせ守銭奴の言い訳だろ。・・・ま、霊夢は霊夢でやってりゃいいか。それよりピカチュウだ。あいつを探さなきゃ!よしキノスケ、行くぞ・・・ゑ!?」
「ピカピカッ♪」
「キノキノ!」
ピカチュウが、足元のキノスケと戯れている。
「「・・・。」」
・・・どうすればいいのだ。
何か霖之助まで黙っちゃってるし。
あっ、そうだ。
「・・・おーい。キノスケ。聞こえるかー。」声を潜めキノスケに話しかける。
「キノッ?」
「・・・胞子、きのこのほうしだ。ピカチュウにきのこのほうしをかけるんだ。」
「!? ピカッ!」
「あっ!まずい!」
私がホウキと図鑑をひったくるのとほぼ同時に、ピカチュウが駆け出した。
「やべっ!キノスケ!乗れ!かっとばすぞ!」
「ノッコ!」
「じゃあな霖之助!また会えたら!」
待ってろピカチュウ、絶対捕まえてやる!
キノスケがホウキにしがみついたのを確認して、ホウキを発進させた。
もちろん、最大スピードで。
霖之助?知るかよ。
「うおおおおおおおおおおお!!」
私は全速力で森を突き進んだ。しかしそのスピードでも、ピカチュウには簡単に追いつけるものではない。
あのネズミの素早さはハンパじゃない。それを十分承知の上で、私はこうして速さで勝負している。これは私にとっての一種のプライドだ。
「絶対に、絶対に追いつく!」
スピードをさらに上げて、ピカチュウに迫る。
視線の先にあるのはピカチュウ、ただ一匹。もはや木なんて無いも同然のように思えてきた。
既にピカチュウは私の目と鼻の先で走っている。ボールの射程圏内だ。
だけど私はここでボールを投げるようなアホじゃない。
「今だ!何でも良いからピカチュウに何かしろキノスケ!」
走りながら、必死に(足だけで)ホウキしがみついているキノスケに指示した。
「キノッ!?」
キノスケは変な声を上げて答えた。
「早く!ピカチュウ逃げちまうぜ!」
「キッ・・・キノォッ!」
一瞬躊躇ったものの、キノスケはピカチュウに向かって体当たりした。ホウキのスピードによるとんでもない勢いでピカチュウに向かって飛んでいく。
「ピカァッ!」
間一髪、ピカチュウは少し横に移動してキノスケの体当たりを避けた。
刹那、スピードがほんの少し遅くなる。
「かかったな!いっくぜえぇぇぇぇぇー!」
このタイミングしかない!
私はピカチュウに向かって突っ込んだ。
「ピカッ!?」
流石に予想外だったのか、ピカチュウのスピードが一瞬鈍る。
「いけえええええええええええ!」
そしてそのまま、至近距離でピカチュウにボールを叩きつけた。
モンスターボールが開き、ボールからの光がピカチュウを包み込んでボールの中に押し込まれる。
閉じたボールがカタカタと動く。
動く。
止まらず動く。
何者の音もしていないように感じられるほど、緊張した空間がそこにはあった。
どれほどの時が過ぎたか分からなくなってきたとき。
ボールからカチッと音がした。
そのままボールは動かなくなった。
ピカチュウがボールを突き破って出てくる様子もない。
「・・・やった・・・のか?」
おそるおそるボールを手に取ってみる。
微塵の震えも感じなかった。
しかしそこには、エネルギーが満ち溢れているように感じられた。
ボールを投げる。
ボールの中の光は、やがて大きな形になり、一匹のポケモンとなった。
「ピカチュウ!」
幻想郷の方々はポケモンにニックネーム付けるのが伝統になりそう。
魔理沙がピカチュウの前にキノココを捕まえたのは捕獲が楽になりそうだからと言う単純な理由ですが、ピカチュウと一緒にキノスケも活躍させる予定なのでお楽しみに。
では。