ポケットモンスター陰/陽 〜ポケットモンスターが幻想入り〜   作:Mr.Pooh

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タイトルからバレそうな異変主。

絶叫する神奈子。その頃霊夢は?

では、本編どうぞ。





第九話 腹ペコ

視点:霊夢

 

「なんじゃこりゃぁぁぁ・・・。」

 

遠くで悲鳴?

 

何かあったのかしら。

 

・・・まっ、どうにしても暇してる魔理沙辺りが野次馬根性丸出しで行くんでしょうけど。

 

不完全燃焼に終わったフォッコの捕獲の後、私は博麗神社に戻って来た。

 

もう休みたい、と言うのもあるが、第一は食事だ。

 

今日起こったこの異変は、他の異変より圧倒的に時間がかかりそうだ。何せ今日一日で解決できなかったんだし。

 

そして何より疲れる。

 

理由は単純。

 

他の異変より動くからだ。

 

だからその分空腹が来るのは仕方ない。

 

さて、食事の準備をしましょうか・・・!?

 

 

 

 

 

 

・・・神社の食糧の貯えがすっからかんになっている。

 

 

 

 

 

 

野菜に魚に米。余す所無く全部。

 

しかも台所も相当荒らされている。

 

嘘でしょ・・・?

 

神社を出る前はちゃんとあったはずなのに、どうして・・・!?

 

・・・今日が異変も何も無い平和な一日だたらまだ良かった。

 

なぜなら、こんな危機的状況でも動けるような気力が使われずとっておかれているからだ。

 

しかし。

 

現実は甘くない。

 

今日はポケモンが大勢現れた異変で、いつもの異変以上に動き回っていた。あっちこっちに。

 

無論、気力はその時にフル稼動。

 

今になって、使われずに残っている気力もあるはずが無い。

 

疲れたフォッコのように、その場で前のめりになって倒れる。

 

何をする気も起きない。

 

と言うか、起こせない。

 

今からでは買える野菜も買えないだろう。

 

 

 

 

 

 

・・・私、このまま死ぬのかな・・・。

 

 

 

 

 

 

この世に未練は大ありだが、もう起き上がる気力もない。

 

自然に目が閉じられる。

 

いっそ、このまま楽に・・・。

 

 

 

 

 

 

「ゴーン!」

 

 

 

 

 

 

目の前が真っ暗になる直前、私はまたも聞き慣れない鳴き声を聞いた。

 

・・・何かいるのかしら。

 

瞼を開き、前を見てみる。

 

巨大な生き物が霊夢の視界を陣取っていた。似た動物を挙げるとしたら熊だろうか。全体が深緑の毛に覆われた二足歩行の動物だった。

 

「ゴ〜ン?」

 

その動物は心配からか、はたまたただの好奇心か、私の顔を覗き込んだり、頭をつついたりしている。

 

「・・・。」

 

・・・何だろう、こいつ。

 

 

 

 

 

 

キュルル。

 

 

 

 

 

 

突然、静寂に包まれていた神社に間の抜けた音が響いた。

 

紛れもなく、私の腹の音だ。

 

・・・誰もいなくて良かったわ。

 

変な安心をしていると、さっきまでとぼけた顏をしていた動物が何かを把握したような顔付きになり、懐を探り始めた。

 

見ていると、動物は懐から竹の葉で包まれた何かを取り出し、差し出した。

 

「ゴン!」

 

動物は、これ食えよ、とでも言いたげに笑顔で頷いている。

 

「・・・良いの?」

 

「ゴン!」

 

自信満々の顔。

 

「・・・じゃあ、頂くわね。」

 

私はそれを受け取ると、立ち上がって竹の葉を剥いだ。

 

中には、白米に黒い海苔のコントラストが美しい、おにぎりが入っていた。

 

 

 

 

 

 

食べ物だ。

 

 

 

 

 

 

私が求めていた食べ物だ。

 

 

 

 

 

 

思わず涎が出る。

 

・・・いや!

 

早まっちゃいけない。

 

獣の懐に入っていたようなものを不用意に食べる何てことは・・・。

 

「ゴ〜ン?」

 

動物は、どうした食べないのかと言うような目でこちらを見ている。

 

・・・ええい、どうにでもなれ!

 

一口、口に入れる。

 

美味い。

 

白いご飯は冷たいながらもふっくらしていて塩加減も絶妙だ。

 

もう一口齧ると、山菜の中身が姿を現した。具も私の好みどストライク。

 

食べ進めるうちに、あっという間におにぎりは腹に収まった。

 

「ふーっ、ごちそうさま。あんた、勝手にここまで入ってきたのには感心しないけど、意外にいいやつじゃないの。」

 

「ゴーン!」

 

動物は誇らしげに胸を叩いた。

 

よく見ると動物は私の膝より少し低い位の背丈だった。

 

多分、こいつもポケモンね。図鑑に登録しておこう。

 

No.446 ゴンベ おおぐいポケモン

ノーマルタイプ

高さ0.6m 重さ105.0kg

とにかく大量の食べ物を食べる。食べ物をどこかに隠すこともあるが、大抵はその場所を忘れて新しい食べ物を探す。食べ物が腐っていても問題なく食べる。

 

・・・図鑑には私にとって衝撃的なことが書かれていた。

 

恐ろしい程の大食漢。しかも体重105キロ。

 

「・・・まさかあんた・・・。」

 

「ゴン・・・?」

 

ゴンベと言うらしいポケモンは私を見ると、なぜかその場で後退りを始めた。

 

・・・大丈夫、あまり惨いことにはしないわ。

 

私は笑顔でゆっくりとゴンベに迫る。

 

焦った表情で下がるゴンベ。

 

そして・・・。

 

「ゴーンッ!」

 

ゴンベは一目散に逃げ出した。

 

しかし、そのスピードはお世辞にも速いとは言えない。歩きで追いつけるレベルだ。

 

「こらっ、待ちなさい!」

 

私のゴンベの襟首(脂肪が付いているおかげで掴みやすかった)を確実に捉えた。しかし、持ち上げようとしても持ち上がらない。それもそのはずで、こいつ体重105キロあるのだ。重くて簡単には持ち上がりそうになかった。その代わり、ゴンベは激しく暴れ回る。

 

「ゴンッ!ゴーンッ!」

 

「しっずかに、しなさい!あっ、そうだ!」

 

片手で袖を探って一つのモンスターボールを取り出し、「行けっ、フォッコ!」と叫んで真上にボールを投げた。中から飛び出した光は子狐の形を作り、一瞬でフォッコへと姿を変えた。

 

「フォッコッ!」

 

こんなに早くこいつを使う時が来るとは思わなかった。

 

私の最初のポケモン、フォッコ。

 

「よしっフォッコ、こいつに向かって攻撃しなさい!」

 

「コッ!」

 

フォッコはちゃんと私の指示通り、ゴンベに体当たりを仕掛けた。

 

しかしフォッコの突進はゴンベの脂肪を前にあえなく弾かれた。

 

何あれ、どんだけ柔らかいの!?

 

物理攻撃が弾かれるなんて・・・!

 

「ゴン、ゴーン!」

 

「っ!?しまった!」

 

ちょっと油断したスキに、ゴンベが私の手から離れてしまった。

 

「ゴーン!ゴーン!」

 

ゴンベはそのまま茂みに走る。

 

やばい、このままじゃ逃げられる!

 

こうなったら弾幕で・・・!

 

 

 

 

 

 

「フォッコーッ!」

 

 

 

 

 

 

突然、フォッコが一つ吠えたかと思うと、口に炎を溜めた。

 

そう言えばこいつ炎起こせるんだっけ・・・!

 

「コーッ!」

 

溜めは一秒もしないで終わったようで、フォッコは炎をそのままゴンベに発射した。大の字になった炎がゴンベに被さる。

 

何あの火力!?

 

って言うか大丈夫なのアレ!?

 

炎が晴れると、黒焦げのゴンベが立っていた。

 

「ゴ・・・ゴン・・・。」

 

情けない声でパタンと倒れるゴンベ。

 

・・・あの炎で黒焦げで済むなんて丈夫過ぎないのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!霊夢ー!」

 

遠くから声が聞こえたかと思うと、空から魔理沙のホウキが飛んでくるのが見えた。

 

「魔理沙!タイミング悪過ぎよ。もっと早く来てればこんなことにはならなかっt」

 

「霊夢!頼む!今夜何かメシを分けてくれ!・・・ってなんだこの状況!?」得意気にしている子狐と真っ黒の丸まった何かを目の前にして、魔理沙は声を荒げた。

 

魔理沙もご飯食べてないの?

 

「・・・まさか魔理沙も・・・。」

 

「・・・え?」

 

二人の間に静寂が流れる。

 

「えーと・・・念のため、状況を聞いておこうかしら。」

 

「状況も何も、家に帰ったら食べ物があらかた無くなってただけだぜ。早めに帰れたから良かったけど、もっと遅く帰ってたら間違いなく干からびたろうな。」

 

「やっぱりね・・・。私も同じよ。」

 

「同じ?どういうことだ?」

 

「そのままの意味よ。私も今食べ物を持ってないの。」

 

「霊夢も盗みか!幻想郷も狭いもんだな・・・。」魔理沙は腹を鳴らしながらしみじみと語った。

 

「・・・幻想郷が狭いことについては否定しないでおくけど、多分原因はそれじゃないわ。恐らくはこいつのせいよ。」言いながら倒れているゴンベを指差す。

 

「ん?どっちだ?その倒れてる何かか?黄色い狐か?」

 

「倒れてる方ね。これ見てくれる?」図鑑の索引からゴンベの情報を取り出し、魔理沙に見せつけた。

 

「・・・なるほど。こいつが全部食べちまった訳だな。」

 

魔理沙も納得した様子である。

 

「しかし霊夢・・・一つ聞いて良いか?」

 

「何?」

 

「・・・あんなに真っ黒に焼いて大丈夫なのか?」

 

「知らないわよそんなこと。私の神社を襲った奴には人であれ動物であれそれ相応の報復はあっても良いと私は思うけど・・・確かに命の問題とかになると話は別だけど、そうも見えないし。」

 

「・・・本気で恐ろしいな、金が関わった時のお前は。」

 

「正しい反応ね。この恐怖覚えておいて損は無いと思うわよ。」

 

「おうふ・・・。」

 

最後の言葉の意味は分からなかったが、多分あまり意味の無い、感動詞の類だろう。

 

「話を戻すわよ。多分、あなたの食べ物を平らげたのもこいつか、こいつと同じ種類のポケモンでしょうね。」

 

「ふんふん・・・ん?だとしたら、こいつと同じ種類のポケモンが、同時にこっちを襲ったのは偶然ってことにならないか?」

 

「いや、違うわね。私が聞いた限り、ポケモンがこっちに来たのは今日の早朝か、早くても昨日の深夜。だとしたら、今はポケモン達にとって幻想郷で初めてのディナータイムよ。図鑑を見る限り、こいつは普段の食事からかなり大量の食べ物が必要なみたいだから、自生している木の実とかだけでは飽き足らずにこうして食べ物を蓄えている場所が被害に遭う。同じ種類の動物は大体同じ生活リズムを持ってるでしょうから、こいつと同じ種類のポケモンはほとんど同時にディナータイムに入るはず。ならばこの被害が同時に起こるのは必然じゃないかしら。」

 

「ふんふん・・・えっ!?それなら・・・!」

 

「ええ・・・。ゴンベの数が十分に多いなら、恐らく幻想郷のほとんどの場所は被害に遭っているでしょうね。」

 

「おい・・・それってかなり大変なことなんじゃ・・・。」

 

「大変なんてもんじゃないわ。異変よこれは。それも別の異変に被さったね。」

 

「異変・・・。」

 

・・・異変。

 

私はそう言ってしまった。

できれば、ポケモンに関係する異変は起きて欲しくはなかったんだけど・・・。

 

「・・・ま、そういう訳だから、ちょっくら出かけてくるわ。帰るなり付いてくるなり好きにしなさい。」私はなるべくぶっきらぼうに続ける。

 

「好きにしろ?付いていかない訳ないだろ!」

 

キュルル。

 

魔理沙の腹の虫がまたも静寂を作り出した。

 

「・・・その前に何か食い物無いか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

視点:魔理沙

 

結局、霊夢は直接異変調査に向かい、私は軽く腹ごしらえしてから合流することとなった。

 

「キノ!」

 

「そっちか?・・・おっ!こんなにたくさん!」

 

キノスケが示した先には赤ベースに白い斑点が付いた色のカサをしたキノコが三つ四つ程まとまって生えていた。こいつは結構毒々しい見た目だが美味しくパワーも出る。

 

私は見つけたキノコをもぎ、帽子の中に入れた。キノコ狩りを始めたのはほんの数分前だったが、既に手持ちの帽子にはたっぷりとキノコが盛られている。

 

同族だからか、キノスケはキノコが生えてある場所が分かるらしい。これが速攻キノコ狩りに拍車をかけた。と言うかメインエンジンって言ってもいいだろう。もうこんなにあれば十分だ。

 

「よし、これ食って異変解決だぜ!」

 

「キノッコ!」

 

キノコを調理するため、意気揚々と自宅へ向かう。

 

こうして改めて森を見てみると、やっぱりポケモンが来たことで環境が変わってしまっていることが肌で分かった。

 

例えば虫ポケモン。こっちの虫は基本かなり小さいが、ポケモンとなるとピンキリだ。蜘蛛のポケモンのバチュルなんかはこっちの虫のサイズと似ているが、私が見た中ではコンパンとか言うバカでかい虫もいた。

 

・・・よく考えたらコンパンは何の虫なんだろうか。複眼があっただけだから予想つかないな。

 

ともかく、今はまだゴンベのことでしかボロが出ていないが、ポケモンの様子に幻想郷の環境が追いつかなければ必ず何か問題が起こる。全く、紫(多分)はなんでこんなことしたかなぁ・・・。

 

・・・おっ。

 

森を見回していると、遠くの暗がりに知った柄の服が見えた。

 

青っぽい浴衣。

 

香霖堂に足繁く通う私が見間違える訳が無い。顔こそよく見えないが、あれは霖之助の普段着だ。

 

私の覚えだと、霖之助はあまり外には出たがらない、しかもこんな夜だったら尚更な性格だったはず。何してるんだろうか。

 

暗い中で目を凝らして見てみる。

 

・・・姿勢を低くしてるようだ。何か小さいものを見ているのか?

 

視線の先が見えるように少し近付いてみる。

 

・・・!?

 

霖之助が見ていたのは・・・ゴンベ。ついさっき図鑑で見たアイツだ。

 

・・・本当に何やってんだ?あいつ・・・。

 

ゴンベと霖之助の様子を見ていると、ゴンベの方が先に動きを見せた。

 

懐から何かを取り出したのだ。青っぽい、掌より少し小さいものということは分かったが、細かい所まではよく分からない。

 

すると霖之助はそれに手を伸ばし、受け取った。何をするかと思えば、それをまじまじと見つめ、懐に仕舞うだけだった。

 

霖之助はそのままゴンベの頭を撫で、奥の方に立ち去って行った。ゴンベが手を振っている。

 

・・・何だったんだろうか。

 

一瞬の出来事だったが、妙に頭に残った。

 

もしかして、この異変、霖之助が何かしたのだろうか・・・。

 

・・・気になるが、手持ちのキノコを放っておく訳には行かない。

 

何より、腹が減った。

 

腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったもんだ。異変調査はその後でもできる。

 

まぁ、急ぐに越したことは無い。よしっ、行くぜ!




異変の犯人、ゴンベ登場。食べ物と言えばこいつ。

異変はもう少し続きますが、次回は早苗とアイツの回です。

では。
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