婚約者は魔界のプリンセス〜これって逆玉ってやつですかい?〜   作:kokon

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十五夜

外が薄暗い中、部屋のベッドで俺は目覚めた。

昨日の事で少し興奮してるらしい、眠りが浅かった様だ。

そっと、自分の唇に指を当てる。

お父さん、お母さん、あと妹、俺は大人の階段を少しだけ登ったみたいです。

なにか、キスした後にあった気がするが思い出したく無い。

きっと忘れた方が良い事なんだろう。

 

「随分嬉しそうだな、鬼城兜太。国王様がお呼びだ。支度をしたら外にいるメープに声を掛けろ 」

「うぉ!マールさん?! 」

 

びっくりした!いつから部屋の隅にいたんだ?驚かさないと気がすまないのか、マールさん。

 

「いるなら声を掛けて下さいよ、マールさん。びっくりするじゃないですか 」

「良いな?国王様は既にお待ちだ。急げ 」

 

そう言って、マールさんは消えた。

会話をする気は無いんですか、そうですか。

いつもと雰囲気が違う気がするが、二人で話す事は初めてだ、こんなものかもしれないな。

 

「国王様がお呼びか・・・・昨日の事だよな、たぶん 」

 

俺が先程、忘却の彼方へ忘れさった事。

それは、数時間程遡り、リリとキスをした時の事だ。

 

「これで、三度目ですね。兜太様とキスしたのは 」

「いやいや、一回目は救助活動だし、二回目は俺が忘れてたから仕方なくでしょ?実際、初めてみたいな物じゃないかなぁ 」

「私、二回目の時はかなり勇気を出してキスしたんですよ?もう! 」

 

そんな話をしながら、リリとイチャイチャしていた。

俺は凄く幸せだった、少なくともその時までは。

「兜太様、もう一度。その、お願い出来ますか? 」

 

あぁ、良いよ、と顔をゆっくり近づける。

自慢じゃないが、彼女なんて架空の者と思っていた俺だ、キス経験なんか全く無いに等しい。

歯を当てない様に慎重に近づいく、そんな時、俺は気づいたんだ。

窓の外に不審者がいる事に、俺はハッとして視線を窓の外に固定する。

そいつは城の最上階に近い俺の部屋を覗く為、国旗を吊るすポールによじ登っていた。

なにを浮かれていたんだ!俺は圧倒的な存在感を持つそいつに何故、気づかなかったんだ。

そいつは、まるで山の様な肉の塊、一度見たら脳裏から離れない、その血走った瞳。

そう、リリのお父さんだった。

俺はそっと、リリを遠ざけた。

急に遠ざけられた事に、不安そうな顔をするリリ。

そんな顔をするなよ、リリ。

 

「リリ、その、言いにくいんだけど。このままキスをすると、止まれなくなりそうで。リリとの約束を果たすまでは、良くないと思うから 」

「兜太様・・・・。わかりました。私を大切にしてくれてるって事ですよね?大好きですよ、兜太様 」

 

そう言って、リリは笑顔を向けてくれた。

ごめんね、本当は自分の命が惜しいからなんだ。

 

「明日は学校ですから、早く寝て下さいね!」

そう言って、リリは自分の部屋に戻って行った。

リリが部屋を出るまで手を振り、ゆっくり振り向き窓を確認すると、先程の事が嘘の様に窓の外は静かだった。

 

「アハハ。いくらお父さんでも、それは無いか!幻を見るなんて疲れてるんだな、きっと!! 」

 

自分にそう言い聞かせて、俺は眠った。

四月も終わる春の陽気に、寒くも無いのにベッドで震えながら。

 

「終わった。短い人生だった 」

 

ブツブツと独り言を言いながら、俺は死地に向かう為の支度をする。

せめて、お父さんをこれ以上怒らせない為に。

 

 

 

 

 

メープさんに案内されて、俺は城の修練場に向かっている。

待っているのは、お父さん。

この国の国王であり、リリの父であり、そして、狂気の王。

殺戮の神に愛された、巨大な要塞な様な男の元へ、俺は歩いている。

まるで、断頭台の階段を登る様な気分だ。

海賊旗を掲げた、金色なロジャーも、こんな気分だったのかなぁ。

 

「待っていたよ、兜太殿。悪いね、急に呼び出したりして 」

「いえ、こちらこそ。お待たせしちゃったみたいで 」

 

さて、どうしたものか。

身体は既に全力で逃げろと警告しているが、リリの手前、逃げるのは不可。

例え、逃げたとしても直ぐに追いつかれるだろうけど。

考えるんだ、兜太!普段使ってない分、全力で動け!俺の脳味噌!!

 

「兜太殿、何か勘違いされている様だか。私は昨日、妻と二人でゆっくりしていただけだよ、部屋で。決して、娘の後を追いかけたりはしていない 」

「はあ、ええ。そうですか・・・・ 」

「そうとも、決して貴殿の部屋に娘が入って行く所も見ていない。ましてや、心配で貴殿の部屋を覗いたりもしていない。わかるね? 」

「え、えぇ。国王様がそうおっしゃるならそうなんでしょう、ね 」

 

なんだ?これはあれか、セーフか?

ここで俺を始末すると、娘に言い訳が出来なくなると思って、逆に俺に釘を刺しに来たのか?自分が覗いていた事は言うな、と。

 

「ハハハ、わかってくれれば良いんだ。貴殿が話のわかる男で良かった 」

 

そう言って、後手に隠していたバスターソードを地面に刺した。

いやいや、その剣なにをするつもりだったのかなぁ?

とりあえず、命は助かったらしい。

 

「それにしても、今日は良い天気だと思わないかね?兜太殿 」

「えっ?そう、ですね。雲一つない空ですし、いい天気だと思います 」

「ハハハ!そうだろう、そうだろう!こんな朝は稽古をするべきだ、貴殿も付き合いたまえ 」

「あー、はい。わかりまし・・・・」

 

稽古と言いましたか?言いましたよね?

このお父様との稽古が、ただの稽古な訳無いじゃ無いか!見ろ、あの嬉しそうな顔!!

奴は殺る気だ。

 

「貴殿はまだ、魔力の操作が苦手だと聞いている。なーに、緊張するな。そうだな、時間は朝食まで、我輩は貴殿を一切攻撃しない。胸を貸してやろう、存分にくるが良い 」

 

これなら大丈夫か?攻撃してこないなら、安心出来る気がする。

 

「わかりました!胸を借ります! 」

 

メープさんの掛け声と共に稽古は始まった。

お父さんは素手、対する俺はロック鳥の剣を構えている。

遠慮する事は無い、と言うので魔力を通さず斬りかかる。

正直、人に斬りかかるのは怖いが、大丈夫だろう。

リリのお父さんだし。

俺の剣がリリのお父さんを襲う、お父さんは腕をクロスさせ受け止めるつもりらしい。

お父さんの腕がクロスされた時、暴風の様な風が俺を襲った。

抵抗する事も出来ずに俺は吹き飛ぶ。

 

「ぐへぇ! 」

「ハハハ、どうした?兜太殿?我輩は腕で身を守っただけだそ?」

 

化け物か!いや、化け物だったな。

まさか、腕の風圧だけで吹き飛ばされるとは思わなかった。

何かあると思ったが、こういう事か。

なんだか、虐められてる様で腹が立ってきた。

こうなったら、絶対一泡吹かせてやる!

 

「まだまだ!行きますよ、国王様! 」

「ハハハ、良いぞ!まだ、筋肉も暖まってないんだ。さぁー、きたまえ!」

 

この脳筋パパめ!これでも喰らえ!!

俺は腕輪の石を一個、解放する。

汚いが、魔剣の威力を味わって貰う!!

 

「これで、どうだ!! 」

「ハハハ、甘い、甘いよ。我輩の肉体はこれぐらいじゃ、かすり傷すらつかないぞ! 」

 

ロック鳥の剣は魔力を通すと、丸太程の角材を、豆腐の様に斬る事が出来る。

その剣を指二本で止めれるお父さんは、まさに、筋肉の化け物だった。

近くにあった大岩の方に軽やかにステップして距離を取る、お父さん。

追撃するも、傷一つ付かない。

腕を上げるのも辛くなりながら剣を振るうが、状況は変わらず。

 

「ハハハ、おっと!我輩、足が滑った! 」

 

そう言いながらニヤリとするお父さん、何をするつもりだ?!

さも、転んじゃったー、テヘ!みたいな顔しているが、左足は近くにあった大岩を蹴り上げている。

 

「ゲッ!マジか?! 」

 

魔剣を使った俺も汚いが、お父さんは更に汚い!大岩が俺の方に飛んでくる。

それはダメ、死んじゃうから!そんなの無理だから!!

咄嗟に、腕輪の石を追加で二個解放する!

ロック鳥の剣が耐えられる、限界の魔力だ。

 

「斬れろ!このおぉ!! 」

 

魔剣が軋む、これ以上は重さに俺も耐えられないだろう。

斬れろ!斬れてくれ!

腕に掛かっていた重さから解放されて、その場に座り込む。

 

「ほう、今のを耐えたか。ハハハ、やるな、兜太殿!良い運動になった、朝食が上手く食べれそうだ 」

 

そう言って、お父さんは食堂に向かって行った。

 

「あ、ありがとうございました 」

 

俺は、それだけ言うのが限界で地面に寝そべる事になった。

 

 

 

 

 

外は完全に明るくなり、汗を流す為シャワーを浴びた俺は、自室で朝食を頂いている。

メープさんの気遣いで、部屋に朝食を運んでくれた。

ありがたい、慣れない事をしたもんだから身体が痛いのだ。

リリも話を聞き、一緒に朝食を食べている。

 

「お父様たら、兜太様を稽古に巻き込むなんて。お父様の稽古を受けて無事だった人なんて殆どいないのに! 」

「あー、やっぱり普通じゃ無かったんだね 」

 

過去に無傷で稽古から帰って来たのは、マールさんぐらいらしい、凄いなマールさん!

 

「お父様は気に入った人にしか稽古をつけませんから。なんだかんだ言っても兜太様の事を気に入ってるのかも知れませんね 」

 

言えない、キスを見られてたから稽古をつけられたなんて。

自分の親にファーストキスの現場を見られてた、なんて知ったら俺なら死ねる。

 

「さ、さぁ、リリ。学校に行こうか? 」

「もうこんな時間。そうですね、行きましょうか? 」

 

軋む身体を無理矢理動かし、俺はリリと登校する事にした。

 

 

 




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