婚約者は魔界のプリンセス〜これって逆玉ってやつですかい?〜   作:kokon

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八夜

ふん、ふふふーん、ふん、ふんふふーん。

買ったばかりの剣の柄を撫でながら、鼻歌混じりにリリと街の中を歩いている。

剣はすぐに装備したよ、買ったらその場で装備するのがお決まりでしょう?

腰に下げるには長い気がしたので、背中に回して腰の位置に携えている。

気分は勇者だね、男なら一度は憧れる職業だよ!

俺も中学生ぐらいまでは憧れてたんだ、知ってるかい?厨二病って言うんだぜ。

 

「ご機嫌ですね、兜太様。私も喜んで貰えて幸せです 」

「そりゃ、剣なんか持つの初めてだしね。なんか、強くなった気がしちゃってさ!勇者ぽいだろ?なんて言ったら笑われるかな? 」

「あー、勇者ですか・・・・ 」

「異世界でも勇者なんていないのかな?アニメや、漫画の話だもんね 」

 

それに、勇者は魔族からしたら敵だもんなぁ。

あんまり好きな話題じゃないんだろうな、リリも微妙な顔してるし。

 

「いますよ、勇者。私も会った事があります。私がまだ小さかった頃に一度会った事がありますよ 」

いるんだ!勇者!!魔族のリリには悪い気がするけど、少し興味があるな。

どんな人か聞くぐらいなら良いよね?

 

「へー、会った事あるんだ。どんな人だったの? 」

「そうですね・・・・丁度、十年前に人間との戦争が停戦したんです。勇者が戦争を止めたっと言っても良いと思いますよ 」

リリは嫌々っといった感じだが、教えてはくれるようだ。

アシアラ国、人間が統治する国の中で最大の勢力を持つ国。

ミドラーシュ王国とは五十年の間、戦争をしていたそうだ。

戦争も最終局面を迎え、両軍共に玉砕覚悟で総攻撃をかける局面で勇者は現れた。

アシアラ国の最終兵器と呼ばれ、期待を一身に背負い戦場に降りたった勇者は勇敢にも単身、ミドラーシュ王国の本陣に突撃。

無謀とも思えた勇者の行動だったが、その凄まじい強さに、マナ女王の所まで侵入を許してしまった。

女王の横に控えていた当時、七歳だったリリを見て勇者は言った。

 

「天使だ・・・・俺と、俺と結婚して下さい 」

 

戦場を駆け抜けてきた勇者は、血塗れで、泥まみれ。

息も上がり、ハァハァしている勇者を見たリリは、幼いながら危機感を感じて

 

「む、無理です、勘弁して下さい 」

 

リリの返答に勇者の心は砕かれ使い物にならず、アシアラ国の士気も急降下。

戦争はそれ以降、十年間の停戦に入っている。

 

「ただのロリコン変態勇者じゃねーか!」

「そうなんです、本当に怖かったんですよ。しばらく、お父様でも拒絶するぐらいのトラウマでした。マールも拒絶してしまって・・・・その頃から、顔が見えない様に影を着てくれてるんです 」

「あれ、着てたの?!そういう種族なのかと思ってたよ!」

「そんな人、いる訳ないじゃないですか!兜太様ったら 」

 

いや、知らんがな。

最初に会った時からずーっと、黒いモヤモヤみたいな人だったよ?そういう人だと思ってましたよ、普通に。

「それに、私の男性恐怖症を治して下さったのは、兜太様ですよ? 」

「え?俺、なにかしたっけ? 」

「はい、初めて兜太様と出会ったテーマパーク。私、怖い男の人に囲まれて動けなかったんです。でも、兜太様が手を引いて逃げてくれて・・・・最初は兜太様も怖かったんです。それでも、私の為に必死に走ってくれる兜太様を見て、男の人にも良い人がいるんだなぁって! 」

 

恥ずかしいから、この話は終わりです!っとリリが走って先に行ってしまった。

去り際のリリを見て俺は、素直に可愛いと思えた。

 

 

 

 

 

その後、一時間ぐらい街をブラブラした後に昼食を食べに定食屋に入る。

前から疑問に思っていた事をリリに聞いてみる。

 

「リリは王女様だけど・・・・街でブラブラしても騒ぎにならないんだな 」

「私は成人していませんから、国務には関わっていないんです。十八歳以上で結婚している者に王位継承の権利が与えられます。ですから、国民の方々は知らないんです。私の顔は 」

「それで、お婿さん探しをしていた訳か 」

「いえ、私は兜太様を探しに地球に行っていたんです! 」

 

ちょっと照れてしまった、とりあえずリリの頭を撫でておく。

注文を取りに来た狼顏のおばちゃんに、リリは唐揚げ定食らしき物を頼む。

リリらしいとは思うけど、庶民的な王女様だ。

俺はコピコピとザリザリの炒め物にした。

あいかわらずの、謎食材だな、味は酢豚みたいな感じだったよ。

 

「この後は、ギルドに登録してドマルカードを作りに行こうと思いますが、宜しいですか? 」

「ドマルカードって? 」

「買い物をする時に使うものです。魔界では通貨が流通していないので、カードに記録して運用するんですよ、兜太様 」

「さっき、武器屋でマールさんが使ってたカードだね。」

「はい、ギルドに行けば発行して貰えます。それに、身分証明書にもなりますから 」

 

身分証明書か、確かに必要だよね。

行かない理由も無いので、お願いします、とリリに伝えた。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、ギルド、ミドラーシュ本店にようこそ!」

 

木造りの大きな平屋の建物、中は意外と立派で白をベースにした室内に、机が並び受付の人が待機している。

天井に吊るされている案内をみると、銀行業務、戸籍登録業務、冒険者業務に分かれている様だ。

冒険者業務が気になるが、とりあえずは戸籍だろう、担当の机に声をかける。

 

「すいません、戸籍を登録して貰いたいんですけど 」

「はーい、かしこまりました!この用紙の枠内を全て記入して頂けますか? 」

 

背中に蝙蝠の羽根を生やしたお姉さんが、元気良く対応してくれる。

エプロンらしき物を着ているが、下に着ている服の布地が少なすぎて裸エプロンにしか見えない。

一度、素敵エプロンを想像してしまえば、現役高校生の俺の妄想は加速する。わかるだろう?

指の間にペンが刺さる事で、無理矢理現実に戻される。

反省してるから、光が無い瞳で見つめるのは辞めて!

用紙に集中する事で雑念を消そう、まずは名前だ、ファーストネームが先にくる様だからトウタ=オニシロで良いだろう。

次は住所か、これは城で良いのだろうか?リリに聞いても分からない様なので、受付のお姉さんに聞いてみる。

 

「トウタさん、ですね?お城にお住まいですか・・・・住み込みで働いているっという事で宜しいですか?? 」

「リリの・・・・えーっと、リリト=ミドラーシュの婿として居候してるというか 」

「リリト=ミドラーシュ様は、この国の王女様ですよ 」

「あ、はい。そうです 」

 

しばし、沈黙・・・・えっ?

明らかに不審者を見る様な目で、お姉さんに上から下まで見られる。

俺はリリから借りた町民服だし、リリもシンプルなワンピース、信じられないだろうなぁ。

リリにアイコンタクトでどうしよう?っと聞いてみるが

 

「私、一応王女なので。身分証明書、持ってないんです 」

 

リリがオロオロしていると、マールが説明に現れてくれる。

とりあえず疑いは晴れたが、その後が大変だった。

受付のお姉さんは膝をついて頭を下げ始めるし、騒ぎを聞いた他の客に囲まれる。

挙句に、リリが王女だと分かると握手を求めて並び始めるカオスな状況。

ギルド長さんに、別室に通されやっと、一息つけた。

カードの発行は無事に終わり、ついでに冒険者登録もしてきた。

街の外に出た事が無かったから知らなかったが、街の外には魔物がいるらしい。

魔物を狩った証拠に部位を持ってきて換金する。

魔物を狩る事で生活費を稼ぐ人を、冒険者というらしい。

なんか、異世界っぽいな!いや、異世界なんだけど。

とりあえず、魔物とか怖いんで・・・・会う機会もないと思うけど。

 

 

 

 

 

ギルドの一件が終わり、城に戻ってきた。

まだ、夕飯には少し早い時間なので、昨日の修練場へリリと向かう事にした。

買ったばかりのロック鳥の剣を試してみたいのだ。

修練場に着くと、ムーさんが待ってましたと、地面を高速で這ってくる。

だから、怖いってば。

 

「できましたぁ!この腕輪を付ければ兜太さんでも魔法、使えますよぅー!」

「もう出来たんですか?!本当に凄いんですね、ムーさんて 」

「これでも魔導師ですからぁ!えっへん!!でも、作り方は全部、書いてあったからぁ・・・・実は、そんなに大変じゃなかったんですぅ 」

 

腕輪型の魔力抑制装置をムーさんから受け取り、腕に嵌める。

太めの金属製の腕輪に、十個の綺麗な宝石が付いている。

これがあれば俺にも魔法が使えると思うと、テンションがあがるな!

 

さて、とりあえずはロック鳥の剣の風魔法・・・・は壊れたら困るから後回し。

昨日の火魔法に再チャレンジしてみよう!!

 

 




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