「君が須賀京太郎くんかい?」
中学1年生の夏の頃、学校の帰り道で京太郎は後ろから丸眼鏡をかけた若い男に突然呼び止められた。
「は…はいそうですが。」
「少し君と話したいことがあるんだ。ああそんなに警戒しなくても良いさ。ほらあそこのファミレスで話をしないかい?奢るからさ。」
男は不審がられぬ様になるべく友好的な笑顔をとったが、爬虫類のような目つきと薄長い唇のせいか、余計に京太郎の猜疑心が増した。
「結構ですので、失礼します。」
厄介事はごめん被ると京太郎はスタスタと早足で去って行く。男はやれやれといった表情で頭を掻き。
「君は退屈しているんだろ?何の変化もないこの日常を、
何かスリルが欲しいんだろ?」
するとピタッと京太郎の歩が止まる。
「別にとって食おうとしてるわけじゃないんだ。ただ君と話がしたいだけだよ。」
「…」
「それじゃ僕はあそこのファミレスに入っているから興味があるなら、ついて来な。」
どう見ても怪しい男だ。十中八九ろくな話じゃないはず。
しかし心の奥底では京太郎は脱却したかった。この変化のない日常を。渋々男について行く京太郎。
「…いい子だ」
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「いらっしゃいませー。二名様でよろしいでしょうか?」
「はい。それから喫煙席で。」
すると男はガラガラの店内で、喫煙席の窓際の一番奥の席に座った。
「よいしょっと。それじゃ何頼む?あっ僕はアイスコーヒーで。」
「あ…それじゃ俺も同じで」
「ハハ遠慮しなくても好きなの頼んでいいんだよ?」
正直下校途中のため少し空腹感があったが、緊張のためか飲み物以外は喉に通りそうになかった
「うん…警戒する気持ちはわかるよ。まず僕はタバコは一本も吸わない。なのにガラガラの店内で窓際の奥の煙い席になぜわざわざ座ったのか?答えは単純。この話は誰にも聞かれたくないからだ。」
男の初めて見せた真剣な表情に京太郎はゴクッと生唾を飲む。
「故にこれから話す内容を聞いた以上は君は僕たちに無条件に協力してもらうことになる。話を聞いたけどやっぱり協力しませんはダメだ。ああじっくり考えていいよ。何時間でも待つからさ」
男は注文したアイスコーヒーを飲みながら窓際の外の様子を見ている。
京太郎の人生の分かれ道はまさにここだった。このまま何の変化のない日常を過ごすか、それとも非日常的な人生に足を踏み入れるか、答えは決まっていた。
「…協力します。だから話してください。」
「結構…それじゃまず手っ取り早く自己紹介をしようか、僕の名前は黒川要。要でいいよ。」
「須賀京太郎です…それで要さん。話というのは?」
「まあそんなに焦らなくても、別に人殺しをやってくれとかじゃないから。話はそんなに難しくない。ただこれは君のようなタイプの人間じゃないとできない仕事だ。」
「はあ…」
「どこから話していけばいいかな〜。じゃまず京太郎くんは小鍛冶健夜ってプロ雀士知ってる?」
「そ…そりゃもう世界的に有名なプロ雀士ですから!当然知ってますよ。」
「うん…しかしその小鍛冶も実は我々[影]の存在がいなければ、その麻雀の才能を開花させずに、今頃麻雀とは無縁の生活を送っていたはずなんだ。」
「はい?どういうことですか?[影]って?」
「うん?よくわからない?つまりこれから君は組織[影]の構成員になり有能な才能を持ちながらも麻雀に接点のない者を裏でスカウトして行くってことだよ。」
ポカーンと空いた口が塞がらない京太郎。その様子を見て要はプッと吹き出し、
「ハハ、まさかスリルな日常って言うからそっち系のやつを期待してた?違う違う。」
しかしまた真剣な爬虫類のような鋭い目つきをさらに鋭くして
「ただしこの[影]の存在は絶対に他言無用。家族や友人、恋人、とにかく誰にも漏らしてはいけない。」
「すいません…まだよくわかんないんですけど…」
「…今の時代何故か老若男女問わず麻雀が栄えていることは知っているよね。その理由は小鍛冶のような人智を超えたオカルト麻雀にこそある。人は自分の想像をはるかに超えた力に憧れる。これはいつの時代も変わらないよ。」
「はい。」
「元々小鍛冶は高校まで麻雀とは無縁の人生だった。しかし本人も気づいていない麻雀の類稀な才能に組織[影]は目をつけた。」
「ちょっと待ってください!」
冷静に話を進める要を止める京太郎
「ん?」
「言ってることが可笑しいですよ!小鍛冶さんは高校まで麻雀を知らなかった。じゃあ牌も握ったことがないはず。なのになんで麻雀の才能を持っていたなんてことがわかるんですか?!そもそもなんでどこにでもいる女子高校生に目をつけようとしたのか…」
「…それについては疑問に思うことは当然だ。ただその質問は企業秘密だとしか答えられないね」
「ただ[影]は我々構成員しか存在を知らない闇の組織だか、君の想像を超えた権力と強大さを持っていると思ってくれ。僕はその構成員の下っ端の中の下っ端に過ぎないよ。」
「話を続けよう。そこで小鍛冶と同じ学校に所属していた名前は明かせかないが、彼女も[影]のメンバーだ。その彼女が小鍛冶にさりげなくだか、部活で麻雀をしてみないか?と勧誘をかけたんだ。」
「まさか…」
「そうこれが我々[影]の仕事。謎の方法で、生まれながらオカルト能力を持った雀士達の存在を探り、その才能が埋もれない様に構成員を送り込み、彼ら(彼女らを)プロ雀士として仕立てあげること。彼らの存在のおかげで今のこの麻雀時代はあると言えるだろう。ちなみに構成員の数は全世界に何千何万人といる。」
「…その仕事をやれってことですか?」
「そ。まあ話を聞いた君に拒否権はもうないけどね。
…それじゃ早速任務に取り掛かってもらう。プレッシャーをかけるわけではないがこの娘は下手すると小鍛冶を超える逸材かもしれない。[影]もなんとしても発掘させたい打ち手だ。」
要は懐から写真を取り出す。その本を読んでいる写真の少女に京太郎は見覚えがあった。同じクラスだか入学式から一度も話したことがなく、彼女も誰かと話した所を見たことがないその少女は中学チャンプ宮永照の妹、咲であった。
まだ色々書きたかったですが、ここで打ち止めです。即興ネタなんで可笑しい所があったらご指摘ください