魔法少女リリカルなのはstrikers~幻想から、尊き人たちへ~   作:瀬津

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いつも思うけど、クロスオーバーはホント難しい。どうすればキャラブレイクしないかとか、いつの間にかキャラブレイクしていたり。とにかく原作何度も見たりやったりしないと痛い目見ますね。
そんな今回も、粗が目立ちますが、楽しんでくれると幸いです


邂逅

 水で満たされたその空間は、中央に岩石でかたどられた浮島以外は何もない、非常に殺風景な場所だ。

「結構長い道のりでしたね」

 メガネを指で少し押し上げながら言ったのはアスベルの実弟であり、異国ストラタの将官であるヒューバート・オズウェルだ。蒼いストラタの軍服に身を包んだ彼は今回、彼の国が送ってきた調査団の団長として参加している。ちなみにマリクは北国であるフェンデルの使いである。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 うっすらと笑みを浮かべ、リチャードは呟いた。その目はどこか嗜虐的な色を写していた。

「陛下、楽しそうですね……」

 かなり楽しそうに呟いたウィンドル現国王リチャードに小声でツッコミを入れたのは、アスベルの幼馴染であるシェリア・バーンズ。立場としては一般人も同然なのだが、彼女自身が優秀な治癒術師であるが故、この魔物がはびこる地下遺跡の案件に協力してもらっている。

 

 アスベルは、この空間に自分たち以外の人間が居ることを察知した。薄暗い空間で、必死に目を凝らし、その気配が何なのか突き止めようとする。

 そうして、一分もしない内に、それを突き止めた。

「! 皆、待ってくれ」

 アスベルは中央の岩場を指差した。

「あそこは……」

「人だ……ね。どう見ても」

 そう、人が居る。四人だ。遠目には、同系統の白い服を着ている程度しか判らないが、この場に居るのはどう考えてもおかしかった。

「どうやって入ってきたのかしら……?」

 シェリアがつぶやいた。確かに不可解だ。この遺跡に入るための転送装置は、既にウィンドル――この場所を収める王国の名である――の兵士たちに抑えさせてある。他の入口が無いことも調べが付いている。一般人が偶然立ち入ってここまで来てしまうということは、そうそうないはずだ。

「どうします? 捕縛しますか」

 ヒューバートが提案する。軍人の彼としては、不審な人物をそのままにしておくのはあまりいい考えとは思えないのだろう。

 そんな彼の顔をマリクは一瞥した。

「とりあえず、直接聞くしかないだろう」

 マリクはそう言い、武器も構えずに中央部までスタスタと歩いていく。

「ちょ、マリク教官!」

 ヒューバートの静止の声も聞かない。残された四人――内、一人だけはいつでも応戦できるように、武器を取り出してから――走り出した。

 

  *

 硬い軍靴が砂利を踏みしめる音で、ようやく『何か』が近づくのに気付き、ティアナは即座にデバイスを起動し、物音の方向へと構えた。

「誰!?」

 白い銃身の先五メートルには、一人の男が立っていた。

 目の前にいる男は、枯葉色のジャケットにその筋骨隆々とした身を包み、華麗で少々くすんだらしい金髪は後ろに撫で付けている。蓄えたひげのせいか、どこか胡散臭い。

(警戒はしておく……)

 クロスミラージュを相手に向けつつ下げていた腰を上げ、ティアナは相手に舐められんと睨みつける。

 油断は出来なかった。

 

 今は武器を構えていないようだが、もしスバルと似たタイプの近接戦闘型なら油断できない。幸い、周りの三人もきちんと臨戦態勢だ。が、まだ別の人間がいることをクロスミラージュがティアナにこっそり知らしている。ちらりと大男の向こう側を見やると、四人ほど近づいてくる――そのうちの一人は両手に大口径の拳銃を携えている。

「おっと、そんな、いきり立つな。こちらには交戦の意思はない」

 いけしゃあしゃあと男が言う。武器を向けられているというのに、随分余裕な態度だ。

「そんなこと言う前に、後ろの人の手にある物を下げさせてもらいませんか? 和睦の使者は、槍を持たないものでしょう」

「……随分なことを言うな」

 

 たっぷり皮肉を込めて言ってみたが、意外にも男はすぐに従った。男の後方四人のうち青髪の少年の武器を下げさせて、到着を待った。

 早速、先ほどの少年が男に向かって苦言を呈した。

「教官! 武器も用意しないで行くなんて……」

 

 黒のハーフフレームのメガネと、きっちり着込んだ蒼いコートが相まって生真面目な印象を与えるその少年の言葉を、男はやれやれといった様子で諌めた。

「まあ、そう言うなヒューバート。確かにこの子達に害意があるのが判っていたら、俺だってこんなことはしない」

「今、彼女は武器を構えました」

「俺みたいな大男が後ろから突然現れたんじゃあ、武器の一つや二つ構えたくもなるだろ。年頃の娘は」

「そんな屁理屈! そもそも僕はあなたの行動が迂闊だから」

「……あのなぁヒューバート、こういうことは」

「最初から喧嘩腰じゃ、話もできない……そうだろう、マリク?」

 二人の口論は、ティアナたちを置いてけぼりにしたが、それは別の人物によって遮られた。

 長く美しい金髪と、マント。ファンタジー小説か何かに出てきそうな凝ったデザインの翡翠色の衣服に身を包んだ、まるで一昔前の貴族のような出で立ちの青年に、言いたいことの先を越されたようで、『教官』と呼ばれた男は微妙に憮然とした顔になった。

「……陛下はなんでもお見通しのようで」

 『陛下』と呼ばれた金髪の青年、『教官』『マリク』などと呼ばれた男性、『ヒューバート』と呼ばれた少年に、赤茶けた髪の色をした白い服の青年。女性もいる。臙脂色のジャケットに紫のミニスカート。ジャケットと同系色のくせっ毛が、彼女自身にふわふわとした印象を与える。

「私たちに争う気がないのは、本当よ。私はシェリア。おっきい人がマリク。金髪の人が判るかと思うけど、リチャード陛下。メガネの人はヒューバートで、残りがアスベル。えっと、よかったらあなたたちの名前を教えてくれない?」

 いつの間にか近くまで来ていたキャロやエリオに合わせたのか、まるで迷子の子供(実際そう見えているかもしれないが)に母親の所在を聞くかのような優しい口調でシェリアという女性は彼らの名前を告げた。

 

「おいシェリア、俺の紹介適当すぎないか?」

「私はスバル! 敵じゃないんなら本当に助かったよ。迷ちゃって大変だったんだ~」

 残り物扱いされたアスベルという青年が文句を言っているが、スバルはそれを無視して元気良く自己紹介をした。ついでにいらん情報まで説明せんでよろしい。

「ふっふっふ。元気がイイね。そこの君たちはなんて言うんだい?」

 リチャードが口元に笑みを浮かべ、キャロとエリオの二人に話題を振る。ちなみにキャロのフリードは、主人の白い帽子の中で小さくなっているらしく、辺りには見当たらない。

 

「おっと陛下、実は意外と年下シュミで?」

 先ほどのお返しと言わんばかりに、マリクがリチャードに悪口スレスレの軽口を叩く。

「マリク、ここでやりあっても僕は構わないんだよ?」

 マリクの軽口に、リチャードが反応して、マリクがそれに悪乗りして、他の人はそれを生暖かく見守る。

「……何というか、神経張り詰めらせる根気もなくなっちゃったなぁ……」

 ここまでのやり取りを見て、ため息とともに思わずそんなことを呟いた。見れば、エリオ達も一緒になって笑っている。

 きっと、本当に敵意はないのだろう。なんというか、今まで変に気合入れていたのが馬鹿らしく思えてくる。

「君は、なんて言うんだい?」

「あっ……名前?」

「そう」

 ティアナは思わず、目の前の青年の顔をまじまじと見つめた。

 右目が青く、左目が紫だ。虹彩異色、というやつだろうか。

「……何か顔についているかい?」

「あ、いえ、そんなんじゃないんです」

 彼の瞳を見て、ティアナは、つい自分たちの教官の義娘を思い出していた。それで、思わずまじまじと見つめてしまっていたのだ。

「ティアナです、先程は失礼なことをしました」

 謝罪の言葉と共にぺこりと頭を下げる。するとなんだか相手は恐縮しきって、

「い、いや、こちらこそごめん。とりあえず、君たちがどうしてここに居るのか知りたいんだが……」

 などと言った。なるほど、確かに彼らにとってはここにティアナ達がいることは奇妙だろう。

「えっと……」

 ここで困ったことになった。ここは管理外世界。管理局のことは何一つとして認識されていないだろう。それで、管理局の事などヘタに話して信じてくれるかどうか……

(ティア……)

 

 どうしたものかと考え込んでいたところで、スバルからの『念話』が聞こえてきた。念話は、魔力を持つ者同士なら脳内に言葉を浮かべるだけで会話できるとても便利なものだ。

(本当のこと話そうか、悩んでいるでしょ?)

(当たりよ……馬鹿正直に説明して、納得してもらえる自信ないわ)

(でもさ、信じてくれるかもしれないよ?)

(うーん……)

(もしかしたら協力だってしてくれるかも)

(……)

(前向きに考えようって!)

 話せ話せと頭の中で強く訴えかけてくるスバル。こちらとしては、アスベル達に妙な解釈をされて、危険人物として引っ捕まえられる方が厄介なのだが、このまま押し黙ってやっぱり不審者としてとっ捕まえられるのも七面倒だ。

(しょうがない……か)

 どちらにしろ、このままじゃ埓があかない。正直に話して信じてくれるなら儲けもの。危険人物認定されたら、六課から救助があるまで牢屋なり留置所なりで休憩タイムだ。

「話します、私たちがここに来た理由を」

 ティアナは、語りだした。

 

  *

 「――と、これが私たちのここに来た理由と、その他諸々の説明です」

『……』

 目の前で棒立ちになって傍聴していたアスベルたち五人に向かって、ティアナは最後の言葉を結んだ。

 時空管理局に、魔物の問題、そして誤転送でこの建築物に至ったこと……あらゆることをバカみたくそのまま話した。反応は、この通り呆気にとられているという感じだ。

「……確認するが」

 沈黙が続く中、マリクが口を開いた。

「君たちは別世界から来た人間で、その自分たちが住んでいる世界では魔物が暴れまわり、その解決方法を探しにエフィネアに来た。そして、手違いによりこの『風機遺跡』まで来てしまった……そういうことで合っているな?」

「はい、その通りです」

「ふむ……」

 

 マリクは腕を組み、ティアナ、スバル、エリオ、キャロの順番で目線を移していった。ティアナは、それが嘘を言ってないかどうか見定めているように感じた。

「どう思いますか、陛下?」

「君と同じさ、きっと」

 マリクの問いかけに、少し軽い調子で答えると、リチャードは若干下がった位置から聞いていた他の三人――シェリアとアスベル、それに依然訝しんだ目つきでティアナたちを見ているヒューバートの方を振り向いた。

「三人とも、僕はこの四人に出来うる限りの協力をしたいと思う。君たちも付き合ってもらって、構わないかい?」

「えっ……?」

 

 その言葉を聞いて、ティアナは思わず、間の抜けた声を発してしまった。なぜなら、その場にいた者で誰よりも彼女が、その提案に驚いたからだ。

 横を向くと友人が『どや、わたしのゆーことあってたっしょ!』みたいなしたり顔をしている。小突きたい。

「……失礼ですが、陛下」

 しかし、そのリチャードの申し立てに、メガネをかけた少年がまたも異議を唱えた。

「先ほどの話には何も事実を証明するモノがありません。それに、突拍子がなさ過ぎます。大体……」

「おっと、お小言はそこまでにしておこうか」

「ですが……」

「まぁ、君にも色々思うところがあるのは解るさ。けど、僕も考えなしでこんなこと言ったんじゃないさ。それに、こんな話聞いたら、僕の親友は無理にでも助けようとするだろうし……ね、アスベル?」

 突然自分の名前が話に出てきて、言われた本人はしどろもどろに

「いや、俺、そんなことは……」

「どうせ『今回の件が終わって落ち着くまでラントに滞在してもらって、その後手助けできることはできる限りしたい』ぐらい考えていたんでしょ?」

「……ぎくり」

 

 追撃でシェリアに指摘され、思わず俯いたあたり、図星なのだろう。それはそうと、この時ティアナは初めて、口で『ぎくり』と言った人間を見たのであった。

「……と理由の一つはこんな感じさ。後は……そうだね。出来れば君たちには僕らの手伝いをしてもらいたいのだが、構わないかい?」

「手伝い……ですか」

「そう、手伝いさ」

 エリオがチラリとティアナに視線を流す。最終的な判断は彼女に任せる、ということのようだ。

「……分かりました。私たちに出来ることであれば、是非」

 そう返答すると、金髪の美丈夫はさも嬉しそうに顔を綻ばせた。

「そうか! ありがとう。こちらとしても、手練は多いに越したことはないからね。助かるよ」

「はい、任せて下さい!」

 少し大仰なセリフに対し、スバルはやや興奮しているのか威勢良く答えた。

 

  *

 長ったらしい前振りの後、リチャードたちは、何かの装置を地面に設置している。ティアナたちは、その装置を設置している間の護衛をやっている。

 リチャードたちはこの遺跡に巣食っている魔物の退治に来ているとのことだった。ここに来るまでの道中、たくさんの魔物がリチャードたちに襲いかかってきたが、そろそろ移動しながら戦うのは辛い。ならば誘き寄せよう、という話になり、この場所でそれを行うことにしたのだという。

 

 しかし、こんな撤退も補給もやりづらい袋小路のような場所でやる必要があるのだろうか。疑問に思ったが、それについてはメガネを掛けた堅物そうな(そう思っているティアナ自身も比較的にお堅い人である)少年が説明してくれた。

 

「この遺跡の上には、ウィンドルの城、バロニア城。そして、そのお膝元には城下町があります。仮に今回の作戦を入口近くでやった場合、魔物はすぐに地上に出てしまいます。そうなった場合の被害は計り知れません」

 という風に解説をしてもらっていたところ、それに対してスバルが口をはさんだ。

「いや、それなら入口近くに兵士を待機させたり、そもそも、こんな少数で来る必

要が……」

(スバルが少し頭のいい発言をしてる……)

 

 パッと聞き真っ当な意見を言っているスバルの横顔を、ティアナは物珍しげに眺めた。忘れがちだが、彼女は士官学校を主席で卒業するくらいの頭は持っているのだ。が、

 スバルの意見に対し、ヒューバートはダメダメだ、と言わんばかりにため息をついた。

「暴星魔物がバリアを張ると、ただの攻撃では傷一つ付かないことくらい、分かりますよね?」

「そ、それは分かるけど……」

「そんな魔物に対し、そのバリアの対抗策を持たない兵士が数百集まっても、無駄な犠牲を払うだけですよ」

「そ……そっか」

 

 その機械的な物言いに、明らかにスバルが凹んでいるのを尻目に、ティアナはぼうっと自分の反対側を眺めていた。

 そちらには、シェリアと楽しげに喋っているキャロとエリオがいた。

 十メートルくらい離れているので、会話の内容はうまく聞き取れないが、そんなものよりも、二人の表情に目が行った。

(あんな子供みたいな顔するんだ、あの二人)

 瞳を輝かせ、熱心にシェリアの話すことを聞いているその顔つきは、普段の二人からは想像がつかないような、無邪気さが湧き出ていた。

 

(フェイトさんにもあんな顔、しないわねぇ)

 

 二人は、訳あって保護者代理であるフェイト執務官の世話になっている。その経緯は齢十歳の子供には重すぎるものがあるが、今の生活はとても充実しているらしく、不平不満はないという……が、

(何ていうか……変なところで子供っぽくないのよねー。押し殺しているというか)

 彼らの言動、その端々からどこか無理に我慢しているものが感ぜられてしまうのだ。

 別にそれが悪いこととは言わない。むしろ、『スターズ4のティアナ』としては非常に助かっている。ワガママも言わなければ、ちょっとのことで文句をブー垂れることもない。機動六課内の仕事仲間としては非常にいい人たちに分類されるだろう。

 

 一方で『二人の年上の友人であるティアナ』としては心配なのだ。抑圧されたものというのは、やがて歪んだ形で表面化されてしまうものだ。もしそれが起きてしまえば、本人と周りの人は傷つくだろう。どこかで、何かしらのガス抜きをすべきだと考えていたのだが――

 

(あんなにいい顔ができるなら、安心かな?)

 どうもその必要は少しだけ省かれたように見える。あのシェリアという女性の何によってなせる技なのか知らないが、今、二人の心には『子供』が戻ってきている。

(必要なのは優しいお母さんって感じなのかしら? フェイトさんにそれを求めるのは……)

 

 そこまで考えて、ティアナはそれ以上の思考は止めた。これ以上こちらが無駄に考えるのは、何か不可侵な問題に足を突っ込むような気がしてならなかったからだ。

 何にせよ、無事に終わったらシェリアと話でもしよう――それだけは忘れたらいけない

 




 最後のほうに書いたことは、ぶっちゃけフラグです。書くのはだいぶ先だろうけど。後、もうこの小説を十人もの方がお気に入り登録してくださって、びっくりしています。嬉しい限りですね。
 感想指摘その他もろもろ、書いてくださると嬉しいです。
 次回の更新で、多分年内はラストかなぁ。それでは
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