引きニートだった僕が、再び引きニートになるのに要した時間は、おおよそ6年。
それまでは外でちょっと公園デビューしたり、幼稚園に行くために仕方なく外に出たが、小学校に入った僕はいじめられた『フリ』をして念願の不登校になった。
母親や父親、近所の同級生や教師、果てはカウンセラーなどが僕の部屋の前まで来たが、全てガン無視してやった。
父母は嘆き、子どもは呆れ、大人は匙を投げ、ようやく以前の僕らしくなってきた。
ああ、近所の子ども達から『あんちゃん』と呼ばれている年上の子がかなり粘っていたが、父親の仕事の都合で僕らが引っ越すことになってからは何のアクションもない。
そして引っ越しの日。
僕は渋々部屋から出て、引っ越し業者に運ばれる部屋の中の私物を眺めていた。
僕が不可抗力ながらも部屋の外に出たことに、両親は感激したようで涙を流していたが無視した。
最後の荷物が運ばれて家の中がすっからかんになったのを見計らって、僕は父親の車の後部座席に乗り込んだ。
しばらくは引きニートできないな。
ぼーっとしながらそんなことを考えていると、例の『あんちゃん』が車に寄ってきたのが見えた。
両親に僕の居場所を聞いたのか、まっすぐ僕のいる車窓に向かってきた。
「よう
気さくに話しかけてくる『あんちゃん』。
が、僕は無視して運転席のシートの裏を見続けた。
「……結局、俺はお前を立ち直させることはできなかった。だがな、あげはやほたる、マー坊も、お前のことを親友だと思ってるんだ」
あー、そういえば、嫌々ながら行った公園やら幼稚園やらで一緒に遊ぶフリをしてた時にいたやつらがそんな名前だったなー。
「もちろん、俺もお前のことを親友、いや、弟のように思っている。……お前は俺たちのことをなんとも思ってないかもしれない」
ざっつらいと! その通りだよ。
「けれど、これだけは覚えておいてほしい。ここにはお前の居場所があるんだ。だからいつでも帰ってこい、碧」
もう会うこともないことを祈ってみるよ。悪魔的美女に。
「じゃあ、向こうに行っても元気でな!」
そう言って『あんちゃん』は去って行った。
ふう、ようやくうるさいのがいなくなった。
引っ越しても引きニート生活を満喫する予定なんだから、変なフラグ立てないでほしいよ。
プルルルル、プルルルル。
突然、頭の中に電話のベルが鳴り響いた。
プルルルル、プルルルル、ガチャ。
勝手に受話器を取るなよ。
『ああ、悪魔的美女だが』
あの女、人の頭の中読みやがったな。
『ここまで君が強情だとは思わなかったよ。おかげでこちらはブーイングの嵐だよ。どうしてくれる』
知らんがな。
『そこで私の上司の上司の、そのまた上司的な上司が、あることを決めた』
……なんか、嫌な予感しかしないんだが。
『君が原作の舞台となる学校を卒業するまでにメインヒロイン全員を落とさないと引き籠もれない体質にする、とのことだよ』
は?
『だから、ヒロイン全員を落とさないと引き籠もれなくなるの』
誰が?
『君が』
僕が、引き籠もれなく、なる?
「はあぁぁぁぁぁああ!?」