この大空に、翼をひろげない   作:四季式

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短いです。
微・独自設定あり。


朝食の羽々音さんは奇なり。

「はい、皆さん。羽々音さんを連れてきましたので改めて朝食にしましょう」

 

 僕が羽々音さんを伴って戻ってきたことが信じられないのか、食堂にいた寮生たちは目を丸くして驚いている。

 

「ぉ、おはようございます…」

 

 羽々音さんが小さい声であいさつをすると、

 

「おー、おはよー小鳥ちゃん」

 

 と、佳奈子さんはいつものマイペースであいさつを返し、他の子達もぎこちなくだがあいさつしていった。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、いただきます」

 

『いただきまーす!』

 

 ぼくの音頭に合わせて寮生全員で『いただきます』をする。

 先に食べててもいいと言ったのに律儀に待っていて少し冷めてしまった朝食を、しかし皆美味しそうに食べていった。

 

「あ、みなさん。食べながらでいいので聞いてください。僕は今日から恵風学園工学科2年A組に転入します。もし同じクラスや学科の方がいましたらよろしくお願いします」

 

 そう言うと、寮生のほとんどは視線を僕から羽々音さんにスライドさせた。

 

 んぅ?

 

「んん。き、奇遇ね。私も工学科で2年A組なの。今日は体調もいいみたいだし、登校するわ。べ、別に水瀬くんと同じクラスだからってわけじゃないんだからねっ!」

 

 ああ、なるほど。

 

「それは良かった。クラスに馴染めるか不安だったけど、羽々音さんがいるなら頼もしいよ!」

 

「っ! ええ! 大船に乗ったつもりでいてよくてよ!」

 

 うん、明らかに泥舟だよね。

 半分引きこもりだったくせに大きく出たな。

 しかもこいつ、確かクラスメイトにハブられてたんじゃなかったか?

 

 そんなことをツラツラと考えていたら、いつの間にか学校へ向かわなければならない時間になった。

 

「ごちそうさまでした」

 

 残りの朝食を平らげると、僕は使った食器を軽く濯ぎ、シンクの中にある金だらいに浸した。

 

「皆さん。食器は軽くでいいので濯いでから金だらいに浸してください。学校から帰ってきたら洗っておきますので」

 

 そう言うと、僕は荷物を取りに一旦部屋に戻ろうとした。

 

「ま、待って、水瀬くん! 私も一緒に行くから置いてかないで!」

 

 羽々音さんは僕が先に行ってしまうのではないかと思ったようで、急いで朝食の残りを口にかき込んでいた。

 

「荷物を取りに行くだけですから、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」

 

「そ、そう。ならいいのだけど……ごちそうさま」

 

「あ、小鳥ちゃん。食器ならあたしがやっとくよー」

 

 羽々音さんが自分の食器を運ぼうとしたところで、佳奈子さんがその任を引き受けてくれた。

 

「ぁ、ありがとぅ」

 

「いえいえ、どういたしましてー」

 

 少し頬を赤くしながらお礼を言う羽々音さんと、それに対してニコニコと返事をする佳奈子さんを確認すると、僕は宣言通り部屋に荷物を取りに戻った。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 トビウオ荘から出て一般生徒も通る通学路に出ると、視界に入る登校中の学生がだんだんと増えていった。

 

 チラッ、チラッ。

 

 羽々音さんはクラスメイトが自分を見つけないか気が気じゃないようで、周囲を常に警戒していた。

 

(車椅子はさすがに隠せないから、警戒するだけ無駄なのにね)

 

 完全バリアフリーを謳い文句にしている恵風学園。

 車椅子を使っている人は羽々音さん以外もいるが、数はそう多くない。

 ましてや(見た目だけは)この美少女っぷりである。

 目立つな、という方が無理である。

 

 ーーーそういえば、

 

「何かあった気がするんだけど、なんだったかなぁ…?」

 

 確か最初の登校中に何かイベントCGが挟まってたような気がするのだが、一体どのヒロインのものだったかは覚えていなかった。

 

「どうしたの? 水瀬くん」

 

「いや、ちょっと考え事をーーー」

 

 していた、と言おうとしたのだが、

 

 

 

 

 

「あ、碧!?」

 

 

 

 

 

 それは、僕の名前を呼んだ赤毛の女の子の言葉でかき消されてしまった。

 

 誰だこいつ?

 

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