今回も前回同様シリアスな話です。次話からは、明るくなっていきます。
※投稿ペースの変更について
新学期が始まり、高校受験を控える年になりました。それにより、部活や勉強(塾)などが忙しくなってきました。したがって、投稿ペースを一日に一回から二日に一回とさせていただきます。御了承ください。
俺はあれを読んだあと、その部屋の端っこに小さくなって座り込み、眠るわけでもなくぼーっとしていた。
寒いわけじゃないのに体がどうしようもなく震え、自分の方をそっと手で包み込む。
今日、楽しく映画を見てきたなんて信じられない。裏ではあんなに酷いことが。俺が楽しんでいる間も、苦しみに耐える人がいたというのに。
しかしその気持ちの一方、あれだけひどい事実を知らされたというのになにも行動を起こさず、涙でさえ出てこない。
『人は人のためには泣けない』
M.Tの作品の一節が頭の中に浮かぶ。初めてそれを読んだときは果たしてそうだろうか、と思った。よく映画とかで恋人が死んでその事実を泣いて受け止める、というシチュエーションがある。人は人のためには泣けないというのなら、この場面は嘘だというのか。
今俺が泣くとしたら、人のためだろうか、自分のためだろうか。
置き去りの人たちには申し訳ないが、俺は彼(彼女)たちのためには泣けない。俺には名前も知らないような人のために流す涙はない。
実際、赤の他人に対して泣ける人間などいるのだろうか。
俺は思う。赤の他人の不幸を見聞きして泣く、という行為はほかでもない自己陶酔だと。「私は赤の他人の不幸で泣けるほど優しい人間なんですよ~」という陶酔、もしくは周りへのアピール。
涙は驚くほど簡単に売り物になる。可愛い人が泣きじゃくっていたらそれこそ絵になるし、そうでなくとも周りの人が声をかけてくれる。
俺はそれが嫌で泣かずに生きてきた。自分のためでさえ人前では泣けなかった。
俺はその言葉に自分を当てはめ、自分が人なのではないかと思うことができた。以来その言葉にすがって生きてきた。
・ ・ ・
あれから何時間が経ったのだろうか。
横になって寝ていたらしい。
眠っている間に死ねてしまえばいいのに。
だからといって、自殺する勇気なんてものはない。これだけこの体が誰かのコピーだと分かっていても、長年寄り添ったこの体が愛おしいのだ。
俺はJ.Mによって作られたばけもの。J.Mがいなければ俺が生まれてくることもなかった。
さしずめ悲劇の主人公といったところか。物語ならきっと今すぐにでもヤツの居場所を必死になって探して殴り込みに行くのだろう。
床に着いた体を持ち上げるとひどい頭痛がした。
世界が歪んで見える。
無知は罪である。よく耳に格言であるこの言葉を俺は噛み締める。
無知が罪なら知ってて何もしないのは?果たして罪だろうか。俺は自問してみる。
自分の力によって変わってくる、と俺はすぐさま自答する。
ヤツはきっと恐ろしく強大な力を持ってるに違いない。それがなんなのかはまだわからないけど、俺と同じ力を使っている俺のオリジナルを制しているのだから間違いはない。なら、オリジナルと同じくらいの力を持つ俺が一人でそこに攻め込んだって、捉えられていいように甚振られるだけだ。
怖い。死にたくない。手紙には捕まえに来るという趣旨が含んである。逃げなきゃ。捕まったらきっと・・・。
だがここは学園都市。逃げてもどうせ捕まってしまう。殺されてしまう。
逃げても逃げなくても殺される。俺は・・・。
声を上げた。あーあーあーと誰を責めるわけでもなく、ただ声を出す。息が切れて途中で声が途切れてもすぐに再び声を出し始める。
怖い。その思いを消し去るためにただひたすら声を出し続けた。涙が溢れてきた。
立ち上がって壁を蹴る。ドンドンドン・・・。途中バランスを崩して転びそうになっても続ける。爪先が痛い。
あーあーあー。
気持ちはモヤモヤしたままだったが、いつの日かに、頭の中に浮かび上がってきたその言葉がもう一度蘇ってきた。
「世界と繋がりたいのなら自分の手でそれを実現させなさい」
残されてる道は一つだろう。
俺はもう逃げない。体のせいにして人と深く関わってこなかったその愚かな行為を改めたい。世界と、人と繋がってみせる。
俺は、誰のためでもなく、ただ自分が前に進むためだけに、J.Mを。
殺す。殺してやる。
ということで、J.Mを殺すために主人公くんが頑張っていきます。
戦闘シーンは慣れてないのでクオリティが下がるかもしれませんが許してください。
誤字脱字の指摘などよろしくお願いします。